著者
御室 哲志 高梨 宏之
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最も多い事故形態である追突に関し、ヒヤリハットデータベースの解析を行い、36のシナリオに分類したところ、発生割合が多い重要シナリオでは、先行車より前方の交通状況が関与していることが分かった。後続車からは直接見えない前方の信号変化を後続車ドライバに伝えない場合と伝えた場合の比較を、2台の車両を用いた実車試験で行った。信号情報がある場合は、後続車の減速度ピークが16%減少し、有意な差を示した。予期しているが故に、制動動作には余裕が生じたと考えられる。このことは被験者の主観評価結果からも裏付けられた。先行車より前方の情報提供効果を確認した。これは間接的ではあるが、適応的警報の有用性を示している。
著者
坂口 慶治
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.51-82, 1998-03-31

京都府の北端に位置する丹後地方は,わが国における廃村の先行的,集中的な発生地帯である。本稿では,その地域的な発生機構の解明の中で,とくに自然環境との関連性について考察した。元来,廃村化は集落の生業・規模・立地密度等の文化社会形態に関わる人文現象であるために,自然環境との関連性についても,集落の立地態様を規定した立地受容要因としての側面と,それを介しての立地障害要因としての側面を視野に入れて考察する必要がある。ここでは地形的には中低山性山地ながらも,急斜面によって多数の山地塊に分断されている構造地形的特性が,中小規模の山地集落の,分散立地形態での高い立地密度を生み,それが廃村の多発現象の一要因となった。その結果,各山地塊間では,それぞれの構造地形的特性を反映して,廃村の発生状況に大きな差がみられた。また,地質的には,多種類の地層が錯綜分布し,その独特のモザイク的分布と多彩な接触構造が,自給型集落の高い立地密度を生み,その集落の小規模・多様性が廃村の多発現象の一要因となった。それ故,各山地塊間での廃村の発生状況の差にも,それぞれの地質構成の差異が反映している。さらに,構造地形や地質条件と密接に関連して現われる小地形が,集落の立地態様をより直接的に規定している側面が認められ,廃村化に関わる自然環境の総合的指標として,小地形の分布構成が有用であることが判明した。
著者
川上 貴文 廣瀬 敏也 春日 伸予 澤田 東一 小口 泰平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.582, pp.49-52, 2005-01-15
参考文献数
4

本研究は, 運転者の認知過程を考慮した追突防止システムの評価を検討したものである.システムは3種類を用意し, それぞれのシステムはブレーキランプに情報を提示するものである.その提示情報は(1)減速度, (2)制動力, (3)点滅による警報である.実験はドライビングシミュレータを用いて, システムを搭載した前走車の減速に伴い, 後続車の運転者が減速するものである.その結果, 制動力を提示したシステムは, 追突防止に効果が見られた.理由としては, システムが運転者の認知, 判断の時間を短縮していることが考えられる.
著者
北島宗人 編
出版者
第一出版社
巻号頁・発行日
1952

1 0 0 0 RP

出版者
ラヂオプレス (RP) 通信社
巻号頁・発行日
no.989, 1958-08
著者
長友 慶子 長町 茂樹 石田 康
出版者
メディカルレビュー社
雑誌
Pharma medica (ISSN:02895803)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.133-137, 2003

ウイルス増殖抑制物質として1950年代に発見されたインターフェロン(IFN)は,悪性腫場・ウイルス性肝炎を中心に頻用されており,1992年には本邦でC型慢性肝炎に対しての保険適応を得た。IFNには,その一般的な副作用としての頭痛・発熱・倦怠感・食思不振などのほか,不眠・抑うつ状態・操状態・幻覚妄想・意識障害などの精神症状も数多く報告されており,コンサルテーション・リエゾン精神医学の領域で重要な問題となっている。###今回のわれわれは,C型慢性肝炎に対するIFN投与の中止から約3週間後に顕性化したせん妄の症例の脳血流量の経時的変化を観察し,臨床像と比較検討した。また,この症例の治療経過中,非定型抗精神病薬の1つであるクエチアピン投与後に,過鎮静や錐体外路症状などの副作用も出現することなく,せん妄による幻覚・妄想・精神運動興奮などの精神症状が消失したことに関しても若干の考察を加える。
著者
武田 俊一 廣田 耕志 山田 亮 岡田 徹也 笹沼 博之 清水 宏泰 清水 宏泰 高橋 良輔
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

変異原性化学物質をハイスループットに検出するバイオアッセイを、ニワトリDT40細胞由来のゲノム編集細胞(DNA損傷修復遺伝子の欠損細胞)を使って創った。開発した試験の妥当性を、米国National Toxicology Program (NTP) の化学物質ライブラリー(約10,000種類)を解析した。感度および特異性ともに高いことが示された。上記の変異原性試験は、ニワトリ細胞を使っていることを問題点として指摘された。そこでCRISPR/Cas9手法を使い、OECD諸国政府が変異原性化学物質検出に使う標準ヒト細胞株(TK6)をゲノム編集し、DNA損傷修復遺伝子の欠損細胞を創った。
著者
秋友 勝 本名 俊正 増永 二之 藤山 英保
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.269-274, 2007-06-05
被引用文献数
1

熔成微量要素複合肥料(FTE)の長期連用試験を実施し,その施肥効果や利用率,土壌への蓄積経過,ホウ素の残効,無施用で栽培を続けた場合のホウ素欠乏の発生程度などについて検討した.1)FTE区では作物が健全に生育し,ホウ素の過不足とみられる症状は発現しなかった.無施用区では,試験開始から2〜4年目以降,ほとんどの作物でホウ素欠乏症状が発生した.このためFTE区の収量は無施用区をつねに上回った.2)FTE区の熱水可溶性ホウ素含有率は,3種類の土壌ともに10年間は0.6mg kg^<-1>前後で推移し,その後やや上昇し,淡色黒ボク土と普通黒ボク土では1.0mg kg^<-1>前後,陸成未熟土では0.8mg kg^<-1>前後で推移した.土壌および作物中ホウ素含有率の推移より,施肥ホウ素が土壌中に過剰蓄積する傾向は認められなかった.3)土壌の熱水可溶性ホウ素含有率の推移は,雨量とそれに伴う溶脱量との関連性が示唆され,ホウ素肥料の施肥にあたっては当該地域の雨量を考慮する必要がある.4)FTEの連用を中止すると,土壌の熱水可溶性ホウ素含有率は,はじめ数年間は急速に低下し,その後は徐々に低下する傾向を示した.セルリー茎葉中ホウ素含有率は,FTEの連用中止から4〜5年後には無施用区とほぼ同じ濃度まで低下した.長期間ホウ素肥料を施用した場合でもそのホウ素の残効は数年間と考えられた.5)FTEを16年間連用した場合の施肥ホウ素利用率は,淡色黒ボク土で9.9%,普通黒ボク土で10.6%,陸成未熟土で8.2%であった.普通黒ボク土の20年間連用では13.5%であった.
著者
ニーフ アンドレアス SINGER Jane 水野 啓 勝見 武 乾 徹 藤井 滋穂 原田 英典 小林 広英 藤枝 絢子 深町 加津枝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は沿岸コミュニティが大規模災害からの復興するために必要な要件を、タイ、フィジー、ベトナム、日本の事例を学際的に比較することで検証するもので、以下の成果が得られた。(1)タイ南部で2004年に津波被害を受けたPhang Nga省の住民の再定住過程について現地調査を実施し、観光業や漁業を中心とする経済復興に際して外部からの援助の不適切な配分が住民間の格差を導くことを確認した。また少数民族Moklenのコミュニティにおいては、不適切な住宅整備や観光開発により災害の影響が拡大している現状が確認された。(2)フィジー西部Ba川流域において、2009年と2012年の洪水による影響と復興過程について約120件の聞き取り調査を行い、物的・人的支援が高い効果をもたらしているとともに、下流部の村落においては災害時の情報共有や相互扶助によるソーシャル・キャピタル向上の自助努力が被害軽減や迅速な復旧に寄与していることが判明した。(3)ベトナム中部フエ省で1999年、2009年に洪水被害を受けた60世帯で聞き取り調査を実施し、住居や生計を含む多様な災害の影響と、復旧過程における社会的ネットワークや生業多様化戦略の重要性を検証した。(4)宮城県気仙沼市および南三陸町における自然公園周辺地域を対象としてケーススタディを実施し、震災時に自然公園に関する施設などがどのような役割を果たしたかをふまえ、国立公園と地域をつなぐ「資源」や「人材・組織」の観点から今後の国立公園の保全管理や利用のあり方について考察した。(5)これらの事例研究に際し、災害前後と復興過程における生活に対する満足度をスコア化して回答する新しい調査法を提案・実践し、災害の影響や回復状態の個人間・世帯間の差異が明確に把握できることを確認した。