著者
高橋 政代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アメリカへ渡航しGage研究室を訪問したことによって、神経系幹細胞の培養方法を習得し、また最適な網膜移植法の検討を行った。Gageが確立した海馬由来神経系幹細胞(LacZ遺伝子でマーキング済み)を、生後5日以内の幼若ラット網膜に移植すると、2週間では移植細胞は網膜表面に付着するのみであるが、移植後4週間では移植細胞は多数網膜内に侵入、分化した。移植細胞の形態は、視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞に酷似し、しかもそれぞれの細胞に適した層に生着していた。このような現象はコントロールとして使用した線維芽細胞や死滅させた幹細胞などではおこらなかった。生着した神経系幹細胞を様々な網膜細胞特異抗体で免疫染色を行ったところ、移植した細胞の中にはGFAPおよびS-100β、Map2,5などグリアあるいは神経のマーカーは陽性のものがあったが、HPC-1、opsinなど網膜神経に特異的な蛋白は陰性であった。このことは移植した未分化な神経系幹細胞は環境因子に反応し神経やグリアに分化するが、網膜細胞へと完全に分化するためには、さらになんらかの内因的あるいは外因的因子を要することを意味する。以上の結果を受けて、今後の研究の方向性を検討し、不足している内因的因子としてRxなどのhomeobox遺伝子をアデノウイルスをもちいて導入し、網膜細胞への分化を促すことを計画しており、そのためのRx,Crx,Chx10のhomeobox遺伝子を入手した。また、今回は海馬由来の神経系幹細胞を用いたが、網膜から神経系幹細胞を培養することにより、網膜細胞へ分化しやすい幹細胞を得ることも計画している。
著者
高橋 政代 春田 雅俊 田邊 晶代 柏井 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

現在、社会的に問題となっている中途失明者の原因の多くは網膜の視細胞が選択的に障害されることによる。これらの網膜疾患に対して胎児網膜組織を移植することが欧米では試みられているが、胎児組織を利用することの倫理的問題、ドナー不足の問題、拒絶反応など問題も多い。我々は網膜幹細胞を培養して、視細胞移植の細胞源として臨床応用できないかを検討している。今回、胎児網膜、成体虹彩、成体毛様体から網膜幹細胞を分離培養しうるか、またこれらの細胞が視細胞への分化能を有しているかを確認した。ラットの胎児網膜をneurosphere法で培養することにより、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する網膜前駆細胞を培養することができた。これらの網膜前駆細胞は分化誘導条件下では効率よく視細胞にも分化する。しかし継代を重ねるとともに視細胞に分化する割合も減少し、網膜としての組織特異性が失われてしまうことが分かった。次に毛様体色素上皮や虹彩上皮から網膜幹細胞を培養できないかを試みた。成体ラットの毛様体色素上皮や虹彩上皮からは細胞分裂して増殖し、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する神経前駆細胞を得ることができた。これらの細胞は分化誘導条件下で引き続き培養するとニューロンまたはグリアのマーカーを発現するが、視細胞に特異的なマーカーは発現しなかった。そこで視細胞の発生に必要不可欠なCrxホメオボックス遺伝子を導入すると、成体の毛様体組織や虹彩組織から視細胞に特異的なマーカーであるロドプシンやリカバリンを発現する細胞を得ることができた。毛様体組織と異なり、虹彩組織は臨床的に確立された周辺虹彩切除術で安全確実に自己組織を採取できる。そのため、今回虹彩組織から得られた視細胞が生体内でも機能することが確認できれば、将来拒絶反応のない視細胞移植として、臨床応用することも期待できる。
著者
高橋 政代 高橋 淳
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ヒト胎児脳および網膜からの神経幹細胞の分離培養11週齢のヒト胎児から大脳と眼球を摘出し、眼球からは網膜のみを剥離する。大脳および網膜を機械的および酵素にて細胞に分散したのち、DMEM/F12に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と上皮細胞増殖因子(EGF)を添加した無血清培地にて培養したところ、徐々に増殖、増大する細胞塊が得られた。この細胞塊を形成する細胞の多くはネスチン陽性の未分化な神経系細胞であり、神経幹細胞を含むと考えられているneural sphereと同様の細胞集団と思われた。さらに、この細胞塊をラミニンコートした培養皿でbFGFとEGFを除去して培養すると細胞は培養皿上に接着し、形態を変化させた。神経突起様の突起を伸ばした細胞の一部は免疫細胞化学的検討にてβチュブリンIII陽性の幼若な神経細胞に分化しており、また、一部はGFAP陽性のグリア細胞に分化していた。これらの結果からヒト胎児脳および網膜から神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が得られたと考えられる。ヒト成体虹彩神経色素上皮細胞の培養我々は、成体ラット虹彩色素上皮細胞を上記と同様の培養条件で培養することにより、神経とグリアに分化する能力を有するネスチン陽性の神経前駆細胞が得られることを確認している。同様にして、緑内障手術の際に得られるヒト成体の虹彩色素上皮を培養することにより、増殖する細胞を得ている。現在この細胞の多分化能を検討中である。以上の実験はいずれも京都大学医の倫理委員会の承認を受けて実施したものである。
著者
高橋 政代 吉村 長久 高梨 泰至 栗山 晶治 喜多 美穂里 谷原 秀信 小椋 祐一郎 岩城 正佳
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

網膜色素上皮細胞は神経網膜と脈絡膜の間に存在する単層上皮細胞であるが、増殖性硝子体網膜症の発生時に網膜色素上皮細胞の異常な増殖が見られることが知られている。網膜色素上皮細胞に見られるこれらの異常は様々な原因によって惹起されるものであるが、血液眼柵の破綻によって各種の細胞増殖因子が眼内に放出されることも一因として考えられる。そこで以下の4点に関し研究を行った。1)培養網膜色素上皮細胞が産生する細胞増殖因子及びその受容体についてスクリーニングを行うこと。これについては予定していたスクリーニングを終了し、TGF-β、PDGF及びその受容体、aFGF・bFGF及びその受容体、IL-1及びその受容体、TNF-α、IGFなどについてその発現を調べ、学会および雑誌にて発表を行った。2)遺伝子導入が網膜色素上皮細胞にも応用できるかどうかの検討を行うとともに必要があれば遺伝子導入法の基礎的な検討をする。-これに関しては一時的な発現を得ることには成功したが、継続的な遺伝子発現を初代培養の網膜色素上皮細胞を用いて行うことは困難であった。現在各種の細胞株を用いて検討中である。3)細胞増殖因子受容体遺伝子の発現量を変化させて、培養網膜色素上皮細胞の機能がどの様に変化するかについての基礎的な検討を行う。-これについては2)の結果を待って行う予定であるため検討中である。4)網膜色素上皮細胞に特異的な細胞増殖因子受容体の有無についての予備的実験を行う。-網膜色素上皮細胞に特異的に発現する線維芽細胞増殖因子受容体遺伝子を見つけるため共通配列をプラズマ-としたポリメラーゼチェーン反応を行った。これによりいくつかのクローンを獲得したが、その塩基配列並びに機能については現在検討中である。
著者
高橋 政代 高橋 淳
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々は過去に成体ラット脳由来の神経幹細胞網膜に移植し生着と神経への分化を確認した。しかし、網膜神経の分化に最適な環境である胎児網膜に移植しても脳由来の神経幹細胞から視細胞を分化誘導することはできなかった。そこで、眼球組織から神経幹細胞/神経前駆細胞を海馬由来神経幹細胞と同様の条件で培養した。ラット胎児網膜からは効率よく視細胞に分化する神経前駆細胞がneurosphereの形で得られた。また、成体ラットの毛様体色素上皮や虹彩上皮を同様の条件で培養して分裂増殖する神経前駆細胞を得、さらに視細胞に特異的なホメオボックス遺伝子を導入することによって視細胞のマーカーであるロドプシンやリカバリンを発現させることができた。海馬由来神経幹細胞ではロドプシンの発現はみられなかった。次いで京都大学医の倫理委員会の承認を受けて、ヒト胎児脳および網膜から神経幹細胞/神経前駆細胞を培養した。ヒト胎児脳からは神経幹細胞のクローンが得られ、網膜からはneurosphere法にて神経前駆細胞が得られた。それぞれ神経およびグリアに分化する多分化能を有することが確認された。また、ラット虹彩細胞と同様にヒト虹彩細胞からも視細胞様細胞が分化するか確認するため、通常の緑内障手術で廃棄される虹彩組織を用いて虹彩上皮細胞の培養を行い、ヒトでも虹彩上皮細胞の培養増殖が可能となった。ラットで神経幹細胞が組織特異性を示したのと同様にヒト胎児脳由来の神経幹細胞も前脳、中脳、菱脳それぞれの由来によって分化してくる神経のphenotypeや発現している遺伝子に差がみられ、組織特異性があると考えられた。
著者
高橋 政代 柏井 聡 田辺 晶代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

毛様体色素上皮細胞の培養と神経分化誘導成体ラット毛様体組織を分離して色素上皮細胞側が下面になるようにして培養皿に接着させた。塩基性線維芽細胞増殖因子を加えた無血清培地を用いた培養により、毛様体組織から増殖して培養皿上に遊走する細胞が得られた。これらの細胞は多くが神経幹細胞のマーカーであるネスチンを発現するようになった。毛様体色素上皮から増殖した細胞を引き続き神経分化誘導条件(血清添加)下で培養すると上皮様形態であった色素上皮細胞は劇的に形態を変化させ、一部には神経様突起をもった細胞も認められた。これらの細胞の一部はニューロンのマーカーであるNeurofilament 200およびグリアのマーカーであるGlial Fibrilary Acidic Proteinを発現していた。ただしこの培養条件下では視細胞のマーカーであるオプシンの発現は得られなかった。アデノウイルスを用いたCrxとGFPの遺伝子導入次に視細胞に特異的に発現するホメオボックス遺伝子であるCrxを導入することにより、毛様体の色素上皮細胞が視細胞に分化しうるかについて検討した。毛様体色素上皮細胞に対し、視細胞特異的ホメオボックス遺伝子であるCrxまたはレポーター遺伝子であるGFP(Green Fluorescein Protein)を組み込んだアデノウイルスを感染させた。引き続き神経分化誘導条件下で培養したのち免疫細胞化学的解析を行った。GFPを導入した毛様体色素上皮細胞からは視細胞のマーカーであるオプシン陽性細胞は得られなかったのに対し、Crxを導入した細胞ではオプシンを発現する細胞が多数認められた。これらの結果から成体ラット毛様体色素上皮から未分化な神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が得られ、Crxを遺伝子導入することにより、毛様体色素上皮細胞は視細胞に分化転換する可能性があることが示された。
著者
高橋 政代 万代 道子 本田 孔士 谷原 秀信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的:増殖性硝子体網膜症の発症に網膜色素上皮細胞の増殖、遊走の関与が考えられる。今回我々は細胞の動態と各種転写因子の関与を解明し、増殖性硝子体網膜症の新しい治療法をを開発することを目指した。方法:各種転写因子中、E2F転写因子、NFκB転写因子に注目した。デコイ法を用いて、網膜色素上皮細胞の増殖、遊走を解明し、E2F転写因子、NFκB転写因子の機能的意義を解明する。動物実験で転写因子の抑制で増殖性硝子体網膜症が可能か検討した。結果:E2F転写因子:(1)増殖期培養網膜色素上皮細胞の核抽出液中に、E2Fコンセンサス領域を含む、二重鎖オリゴヌクレオチドと結合する因子の存在を確認した。(2)増殖期培養細胞でE2Fデコイは細胞周期調節因子の発現を抑制するが、非特異的デコイでは影響を与えないことをRT-PCR法で確認した。(3)細胞増殖能をbrdU labellingindex、DNA合成量で判定した。E2Fデコイの導入では効果的に濃度依存的に抑制されるが、非特異的デコイの導入では影響が無いことを確認した。NFκB転写因子;(1)培養網膜色素上皮細胞の核抽出液中に、NFκBデコイと結合する因子が誘導されることを確認した。(2)IL-1β刺激によって培養網膜色素上皮細胞中で、IL-1βの転写がさらに増加するが、NFκBデコイの導入でその発現が効果的に抑制されるが、非特異的デコイの導入では影響が無いことをRT-PCR法で確認した。(3)培養細胞創傷治癒モデルにNFkBデコイを導入すると、培養網膜色素上皮細胞の遊走が非特異的デコイの導入に比べて有意に抑制されることを確認した。(4)NFκBデコイを培養ヒト線維芽細胞に導入し、白色家兎増殖性硝子体網膜症モデル眼硝子体内へ注入した。Bluemenkrazらによる分類でPVRを判定したがNFkBデコイ、非特異的デコイで有意差を認めなかった。各実験眼で結果の偏差が大きく動物眼での有効性をさらに検討する必要があると考えた。
著者
高橋 政代 谷原 秀信 GAGE Fred H 本田 孔士 FRED H. Gage GAGE Fred H. 竹市 雅俊 高橋 政代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

成体ラットの網膜を機械的に損傷し、直後にLacZでラベルされた成体ラット海馬由来神経系幹細胞の懸濁液を硝子体中に注入した。1,2,4週後に4%paraformaldehydeにて灌流固定し、凍結切片を作製、ニューロン・グリア系の各種マーカーおよび抗β-galactosidase抗体を用いて蛍光抗体法による光学顕微鏡的観察および金粒子銀増感法による電子顕微鏡的観察を行った。移植された神経系幹細胞は損傷部周囲のホスト網膜の表層から内顆粒層に多く分布していた。移植細胞は移植後1週で神経前駆細胞のマーカーであるnestinを多く発現していた。移植後4週では、移植細胞におけるnestinの発現は減少し、神経細胞のマーカーであるMAP2abやMAP5、グリア細抱のマーカーであるGFAPを発現するものがみられた。網膜神経細胞のマーカーであるHPC-1,calbindin,rhodopsinの発現はほとんどみられなかった。電子顕微鏡的には、移植細胞の一部は仮足または細胞突起により移植細胞同士、あるいは移植細胞とホスト細胞間で接触していることが観察された.内網状層のレベルにおいては、移植細胞とホスト細胞との間でシナプス様構造を形成していることが観察された。損傷網膜に移植された神経系幹細胞は、ニューロンおよびグリアに分化することが示されたが、網膜特異的な神経細胞への分化はみられなかった。しかし電子顕微鏡的には、移植細胞はホスト網膜への親和性を持つ細胞に分化することが示され、またホスト網膜とのシナプス様構造の形成は、物理的接触のみならず機能的にも連絡している可能性があると考えられた。
著者
高橋 政代 本田 孔士 柏井 聡
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

我々が、過去にin vivoで報告した角膜上皮の細胞骨格蛋白fodrinの創傷治癒過程における分布変化をin vitroにおいて再現し、さらに培養細胞を用いてfodrinの分布変化の機構を検討した。牛眼の角膜上皮初代培養細胞を使って以下の結果を得た。confluentな状態になり細胞間の結合装置も完成した状態の角膜上皮初代培養細胞において、一部にabrationを行うとその周囲数層の細胞で受傷10分後にはfodrinの分布変化を認めた。すなわち受傷10分後には細胞膜裏打ち蛋白であるfodirnが細胞壁より離れて細胞質中にび慢性に分布するようになった。また、細胞内のプロテインキナーゼCを活性化するphorbol esterを培養液中に添加すると10分後にはやはりfodrinは分布変化をおこす。一方、細胞内カルシウム濃度を上昇させるカルシウムイオノフォアを添加した場合は分布変化が起こらなかった。以上の結果より、in vivoにおいて創傷治癒過程でおこる細胞骨格蛋白の分布変化がin vitroにおいても起こること、またその変化は細胞内カルシウムの上昇を介したものではなく、細胞内プロテインキナーゼCの活性化によって起こる可能性が示唆された。今後、細胞骨格蛋白の分布変化が細胞間及び細胞基質間の接着にどのように影響しているのか検討を進める。また、網膜の機能を保つために重要な役割を果たしている網膜色素上皮細胞等においても同様の変化が起こるか検索していく。
著者
木下 秘我 福本 巧 蔵満 薫
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2014年5月と11月の2回にわたり、茨城県つくば市にある放射光科学研究施設(PF)において、走査型蛍光X線顕微鏡を用いて測定を行った。酸化ストレスが原因で線維化が進展すると言われているNASHによる肝硬変と、酸化ストレスが関与しないと言われているB型肝炎による肝硬変について鉄分布のマーキングを行ったところ、NASHの方は偽小葉辺縁に鉄が集積する傾向があり、B型肝炎の方は一定の分布を示さなかった。この結果より、酸化ストレスが関与するNASHでは、繊維化の進行は偽小葉より開始する可能性があることが示唆された。
著者
金井 太一
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

土質工学・地盤工学に関するJIS試験は,現実には詳細なテクニックが必要であり,記述手順では分かりにくい作業も多い。一方,実験や作業等はeラーニングに向かないといわれているが,試験手引きの書籍の写真と違い,実際に実験室で使用する装置を使用した動画の作成により,試験手順や学習内容がより明確になると考えた。これまで培ってきた実験実習の知識や技術をeラーニングとして構築し,内容を充実させた。実施概要は主に学生実験指導を中心に,名称や操作方法・計測方法等の試験手順を解説するためのシナリオを作成し,(1)土質試験,(2)公開講座「地震ってな一に」等,(3)体験学習「地盤の液状化」等について動画と静止画,解説を実験室に設置したサーバーに収録し,Webページで利用した。動画はダウンロード時にパソコンに負担がかからないように一つの説明を1分程度に分割した。(1)は,実験器具・装置,指導上必要なJISの4試験(密度試験,粒度,液性・塑性試験),JIS試験以外の2試験(pH試験,フォールコーン試験),(2)は,講座の解説用プレゼン資料や解説用動画を同様に作成した。(3)も,(2)と同様に作成した。また,掲示板を用いて質疑応答を行い双方向で利用できるとともに,類似の質疑応答をまとめたQ&A欄も設置した。(1)は,実際に使用する試験器具を用いたので事前学習には極めて有効であった。しかし,一部試験では,Webページから直接実験データを書き込める画面を設置したが,一連のデータ入力までに手数がかかったため紙によるデータシートやエクセル画面から直接記入が有効であった。(2),(3)は,解説用には有効に機能し,参加者の進行程度に合わせて講習等を進めることができた。これらのことから学生実験やイベント参加者にとっても,その意義や解説,応用例について繰り返し確認でき,不明な点も質疑応答できたので効果的な学習と好評であったが,そのレスポンスは課題となった。
著者
井口 克郎
出版者
三重大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

東日本大震災をはじめ、近年、過疎・高齢化地域における甚大な災害が頻発する中、継続的に被災者の医療・福祉(ケア)などの生活保障を行い、住み続けられる地域を創ることが課題である。本研究は、災害被災地の人々の生活問題の現状を把握し、とくに東日本大震災被災地では津波による高台移転や、原発事故により、地域コミュニティが脆弱化し、「自助」「共助」の限界が至る所に表れていることを明らかにした。その上で、被災者の生活の復興のため、国家による社会保障制度の役割の重要性や、拡充の必要性について考察した。
著者
田代 慶一郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.32, pp.227-259, 2006-03-31

『弱法師』は能の五流で現行の曲であって上演も稀ではなく、演者に人を得れば、素晴らしい舞台として輝くこともある。『弱法師』は世阿弥の伝書『五音』によって観世元雅の作であることが知られている。
著者
矢内 義顕
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.583-606, 2011-09-30

本稿は、西欧の共住修道制の父と言われるヌルシアのベネディクトゥスによる『戒律』と西欧の女子修道制にとって最も基礎的な戒律の一つであるアルルのカエサリウスによる『修道女のための戒律』をとおして、六世紀初頭の修道院・女子修道院における宗教教育を論じる。修道院の生活の中心となるのは、「聖務日課」と呼ばれる共同の祈りと労働だが、この聖務日課を充実するために、二つの戒律は、修道士・修道女が一日の一定時間を「聖なる読書」(lectio divina)にあてるよう定める。それは、世俗の書物ではなく、聖書、教父の著作、修道生活に必要な霊的な書物を読み、瞑想することによって、それらを学ぶことである。それゆえ、この「聖なる読書」の最終的な目的は、修道生活の完成を目指すことにある。そしてこの修道院を、ベネディクトゥスは「主への奉仕の学校」と呼んだが、それは、カエサリウスの女子修道院にもあてはまるであろう。