著者
日高 昇平 藤波 努
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は社会的な学習メカニズムの解明を目指し、その一つの基礎となる身体動作の模倣の計算論的モデルの構築を目的として行った。身体模倣の実現には、複数の感覚器・効果器の間で、さらに自己と他者の間で表現を変換する必要があり、高度な計算過程を要する。制御理論に基づく既存手法では、十分な情報が与えられた下での、精密な運動制御を可能とする。しかし、既存手法では、完全な情報が得られない他者の運動から、身体的な制約の異なる自己の運動への対応付けは困難である。本研究は、異なる身体間の複数の感覚器・効果器上の運動パタンが、力学的な位相空間に変換できる事に着目し、この位相構造の類似性に基づく模倣学習理論を提案した。
著者
諫早 勇一 望月 哲男 望月 恒子 鈴木 淳一 中村 唯史 大平 陽一 阿部 賢一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011

19世紀ロシア文学はドストエフスキイやトルストイの文学にみるように、プロットの面から「移動」と密接につながっているばかりでなく、時空間感覚を含めたその表現においても「移動」と切っても切れない関係にあった。本研究では、19世紀ロシア文学だけでなく、20世紀ロシアの文学・芸術、さらには中東欧の20世紀文学も視野に収め、「移動」の果たした役割を再検討して、「移動」は文学表現において重要な位置を占めるだけでなく、視点という問題を介して、文学とそれ以外の芸術とを結びつける重要な要素であること、亡命・越境のような20世紀の大きな文化現象を表象するためのキーワードであることを確認した。
著者
田村 文誉 八重垣 健 西脇 恵子 菊谷 武
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東京都、千葉県、山梨県、沖縄県の保護者576名を対象としたアンケートの結果、食事に関する悩みは多くの母親に共通し、悩みの傾向はこどもの成長と共に変化していき、こどもの成長に伴い母親の育児負担度は減少することが示唆された。一方、摂食指導を受けている摂食嚥下障害児の母親の場合、子供が年長になるに従い育児負担は増加した。平成24年度に行った摂食相談を希望した8名において、東京都と千葉県の計7名は摂食機能に関すること、沖縄県の1名は歯に関する相談であった。東京都の3名中1名はその後、専門医療機関へ繋がった。千葉県の3名は既に専門医療機関に受診中であった。沖縄県の1名は相談のみで問題が解決した。
著者
倉智 嘉久 山田 充彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.311-316, 2005 (Released:2006-01-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

ATP感受性K+チャネル(KATPチャネル)は,細胞内の代謝状態と細胞膜の興奮性を結びつけている内向き整流性K+チャネルである.KATPチャネルは,ABCタンパクファミリーに属するスルフォニルウレア受容体(SUR)と膜2回貫通型のKir6.xからなる,異種八量体(hetero-octamer)構造をとっている.KATPチャネルは,種々のK+チャネル開口薬,阻害薬,あるいは細胞内のヌクレオチドにより,その活性が制御される.これらは全てSURサブユニットに作用点をもっており,SURのサブタイプにより反応が異なる.最近,種々のイオンチャネルやABCトランスポーターの三次元分子構造が明らかにされてきた.これらを基礎として,KATPチャネル制御の構造的機能モデルを我々は提案した.本稿ではこのモデルを中心として種々の薬物やヌクレオチドによるKATPチャネルの活性制御について考察する.
著者
久野 義徳 小林 貴訓 児玉 幸子 山崎 敬一 山崎 晶子
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

目はものを見るためにあるが、アイコンタクト等の非言語コミュニケーションのためには他者に見せる機能も重要である。また、人間と共存するロボットとの目としては、人間に親しみやすい感じを与えるものが望まれる。そこで、この2点について、レーザプロジェクタにより種々の目の像を投影表示できるロボット頭部を試作し、どのような目の形状がよいかを被験者を用いた実験により調べた。その結果、人間の目の形状程度から、さらに目を丸く、また瞳も大きい形状が、親しみやすく、また視線がどちらを向いているかが読みとりやすいことが分かった。また、目や頭部の動かし方についても調査し、人間に自然に感じられる動かし方を明らかにした。
著者
大鍋 千香子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-28, 2010-01-01

名古屋アメリカンセンター・レファレンス資料室は,米国政府のパブリック・ディプロマシーの担い手として世界中に設置されているインフォメーション・リソース・センターの1つであり,名古屋米国領事館広報文化交流部に属している。米国への理解を促進するという役割のもと,従来より核となっているレファレンスサービスに加え,情報環境の変化に対応して,新たな試みとしてのアウトリーチ活動を積極的に行っている。本稿では,レファレンス資料室の概要と活動について紹介すると共に,よりよいサービスを提供するためのサポート・協力体制について説明する。
著者
須田 良幸
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

代表者の開発したスパッタエピタキシー法を用いて提案した高濃度Pドープ基板上へのGe直接平坦化成長する方法について系統的に解析し,Si/Ge界面に90°転位が発生し,僅かな歪を残して平坦成長する機構を解明した.この転位はスパッタ法でのGeの短い表面泳動長とドープP原子に起因して発生すると考えられる.Bドープ基板でも同様の現象が見られ,本手法を用いたGe仮想基板の作製への応用展開が期待される.
著者
佐藤 誠三郎
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.111, no.14, pp.190-208, 1996-12
著者
澤入 要仁
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

南北戦争が起こるとアメリカの大衆詩人たちは果敢に反応した。彼らは愛国心や哀悼など、戦争のあらゆる面をうたった。その多くは戦意昂揚をはじめとした素朴な感情を単純にうたったものだったが、詳しく検討すると、たくみな表現によって複雑な機能を果たす作品も少なくなかった。たとえば勇猛な老婆の物語「バーバラ・フリーチー」は戦中に書かれた詩でありながら、すでに戦後の和解や平和を示唆していた。南軍兵士が憂さ晴らしにうたう戯れ歌「あの喇叭卒」は、その卑俗な笑いによって、部隊の団結や死への覚悟を導く仕掛けになっていた。大衆詩はその表面的な分かりやすさの背後に、多層的・多義的な意味を秘めていたのである。
著者
中島 俊介
出版者
北九州市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究は、平和・文化的活動を軸にした地域活動が学生およびそれに関わる地域住民のメンタルヘルス向上にどのように寄与するかを検討したものである。プロジェクト型学習と心理教育の視点から解明することを目指した。平和活動の企画を学生自らが企画し地域住民がこれを支援した。その効果を共同体感覚尺度(高坂,2011)で測定した。さらに参加者の感想文を質的に分析した。その結果、平和活動後に「所属感・信頼感・貢献感」と「.平和と人権について理解できたという感覚」の向上が示された。またメンタルヘルスの向上に平和活動の必要性と有効性が議論された。
著者
吉浦 裕 内海 彰
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ソーシャルメディアを通じた個人情報の流出が問題になっている。そこで、メディアに投稿しようとする文章から個人情報の漏洩を検知する技術を開発し、11名の被験者の投稿文各1000件を用いた評価実験で、通勤・通学先及び職種情報の漏洩の約90%を検知することができた。一方、複数の個人情報の照合によるプライバシー侵害の問題が顕在化している。そこで、注目者の投稿文を本人の履歴書との照合により検知する技術を開発し、12名の被験者の投稿文各1000件と100人の背景ノイズ各1000件を用いた評価実験で、8名の被験者について、本人の投稿文と背景ノイズ100人の投稿文の中から、本人の投稿文を特定することができた。
著者
FOLATELLI Gaston
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

超新星の集中観測を行うとともに,その物理学的性質を調べるために研究協力者により提供されたモデリング手法を用いた。この観測は,短い間隔で得られ,かつ広い波長帯を網羅している初期の分光データを使用できたことで可能となった。ここで得られた情報により,様々なタイプの超新星の研究を行うことができた。主要な結果のひとつは熱核反応超新星の爆発によっても燃焼せずに残る物質の発見であり,これが従来考えられていたよりもはるかに一般的であることがわかった。重力崩壊型超新星については,特に低い膨張速度を示す水素が欠乏した超新星の特別なクラスを識別することができた。これは現在の爆発モデルにとって挑戦的な点である。
著者
石谷 康人
出版者
事業創造大学院大学
雑誌
事業創造大学院大学紀要 (ISSN:21854769)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-16, 2011-05

本論説では、「日本は、なぜラディカルイノベーションでありながら国際的なインパクトが小さいのか(国際的に普及しないのか)」という問題を事例ベースの定性的アプローチによって解明する。事例として、マルス、パーソナル電卓、日本語ワープロ、家庭用ビデオゲーム、iモード、デジタルカメラ、Suicaを取り上げた。本論説ではまず、事例からイノベーションプロセスと技術革新の共通パターンを抽出し、モデル化する。次に、こうした分析結果に基づいて日本のイノベーションを類型化することにより国際的インパクトが小さい理由を概念的に説明する。そして、国際的普及に成功したアメリカのイノベーションと比較することにより、技術的観点からもイノベーションが国際的に普及しない理由を追及する。さらに日米ではイノベーションの性格が正反対である点に立脚して、日本のイノベーションが国際的普及や技術蓄積に深刻なジレンマを抱えていることを示す。
著者
石谷 康人
出版者
事業創造大学院大学
雑誌
事業創造大学院大学紀要 (ISSN:21854769)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-16, 2011-05

本論説では、「日本は、なぜラディカルイノベーションでありながら国際的なインパクトが小さいのか(国際的に普及しないのか)」という問題を事例ベースの定性的アプローチによって解明する。事例として、マルス、パーソナル電卓、日本語ワープロ、家庭用ビデオゲーム、iモード、デジタルカメラ、Suicaを取り上げた。本論説ではまず、事例からイノベーションプロセスと技術革新の共通パターンを抽出し、モデル化する。次に、こうした分析結果に基づいて日本のイノベーションを類型化することにより国際的インパクトが小さい理由を概念的に説明する。そして、国際的普及に成功したアメリカのイノベーションと比較することにより、技術的観点からもイノベーションが国際的に普及しない理由を追及する。さらに日米ではイノベーションの性格が正反対である点に立脚して、日本のイノベーションが国際的普及や技術蓄積に深刻なジレンマを抱えていることを示す。