著者
守 真太郎
出版者
北里大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

競馬、天気予報、クレジットリスクに関する予想について、スケール不変性の観点から研究を行った。競馬市場では、単勝馬券の馬の得票率と勝率がほぼ一致することが知られていたが、得票率が1%以下のときは一致せず、得票率0%からカウントした勝馬の数と負け馬の数の間にべき乗則が成立することを見出した。この発見を基礎に、多数の人が集団で予想を形成する過程をモデル化し、集団実験で検証を行った。最大の成果は、ヒトが他人の情報をコピーするという先天的な性質が、集団というマクロレベルの相転移を引き起こすことである。
著者
松波 紀幸 永井 正洋 貴家 仁志
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.111-123, 2012

児童にデジタルペンとマインドマップを用いて協調学習を行わせ,他者の意見と自身の意見を比較検討させた後,意見文を書かせることを通して,表現の論理性を高める授業を展開した.また,協調学習の後に,遠隔地と結んだエキスパートを授業に参加させることで,さらに児童の表現の論理性が向上すると考えた.実践の結果,児童の意識調査(回答選択)からは,エキスパートが意見文の推敲に最も影響を及ぼしていることが分かるとともに,授業の事後意見文を分析した結果からも,その影響を認めることができた.また,事後意見文の質的分析からは,「具体性」,「妥当性」,「明確さ」に改善が見られ表現の論理性が向上しており,エキスパートによる学習支援の有効性が示唆された.この他,マインドマップを利用した学習支援については,意識調査(自由記述)や意見文,教員評価から児童が表現の論理性を高めており,有効であったことが認められた.
著者
板東 洋介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

三年間の研究の最終年度となる本年度は、(I)これまでで得られた国学の情念論の総まとめ、および(II)その近・現代日本への射程を探ることの二点を軸として研究が進められた。その中心的な成果は、論文「悲泣する人間-賀茂真淵の人間観-」(『倫理学年報』61集)にまとめられ、査読を経て公表された。本論文は国学四大人の一人・賀茂真淵の生涯と著作のうえで反復される死者への悲泣の情念の構造を明らかにした上で、その死者への悲泣を人間の基底的リアリティーとする思想が、人倫・国家・市場といった生者の共同体における効用を至上価値とする近世および近代の通念に対する根本的な反措定となっていることを明らかにしたものである。本論文は前半の思想史的な理解のみでなく、後半のアクチュアリティーの探究についても高い評価を受け、本年度の達成目標である上記の(I)・(II)の両方を達成する、本年度の中心的な業績であると位置づけることができる。また一般向けに日本思想史の最新の知見を提供する雑誌『季刊日本思想史』の『源氏物語』特集号に、「『源氏物語』享受の論理と倫理」を、巻頭論文として発表した。本雑誌は本年度中での出版には至らなかったが、平成24年6月発売を期して校正作業に入っており、すでに一般広告としても告知されている。本居宣長の「もののあはれ」がその具体的文拠を『源氏物語』にもつように、国学の情念論にとって『源氏物語』は大きな思想源泉である。本研究でも国学情念論解明のための予備部門としてその研究を予定し、実際に研究を進めていたが、最終年度になってその研究成果を広汎な読者をもつ雑誌に公表しえたことは、本研究の進展および一般へのその意義の周知という点で、大きな意義をもつものである。以上二点の論文を中心業績とする本年度の研究は、研究全体の総括と、一般へのその意義の提示という両面において、着実な成果を挙げたと判断できる。

1 0 0 0 OA 歴史のはなし

著者
南陽山人 編
出版者
門井豊
巻号頁・発行日
vol.神代の巻, 1908
著者
兼平 大輔 川村 秀憲 車谷 浩一 大内 東
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.536, pp.57-64, 2002-01-03
被引用文献数
1

2001年4月16日, 皇太子妃のご懐妊に関する情報が育児関連用品株を急騰させた.各会社の価値に関係しない情報がその企業の株価を押し上げたのである.これは情報を受け取ったトレーダーの情報の解釈が影響していると考えられ, この現象を理解するためには, トレーダーの情報の解釈と市場の関係を明らかにする必要がある.そこで本稿では, 情報解釈とが異なる2種類のエージェントを作成し, マルチエージェント人工市場を構築し, その市場構成比を変えシミュレーションを行った.また, 情報解釈の違いと市場のマクロな構造の関係について, 相関次元分析を用いて市場の複雑さを計測した.その結果, 構成するエージェントの情報解釈と, 市場の複雑さに関係があることが明らかになった.
著者
福田 善之
出版者
宮城教育大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

昨年度の開発で成功したテトラキス(アセト酢酸イソプロピル)ジルコニウム(Zr(iprac)4)を10wt.%溶解させた液体シンチレータに対し、放射線元素の含有量を評価した。鉛シールド内にCsI検出器を設置し、液体シンチレータ内部のU/Th系列から放射されるガンマ線を観測した結果、Tl-208(2.615MeV)及びBi-214(2.204MeV/1.765MeV)のピークが観測された。しかし、液体シンチレータがない場合のスペクトルと差がなかったため、各々の上限値として2.7×10の-22乗g/g及び4.9×10の-20乗g/gが得られた。従って、液体シンチレータ中のU/Thの上限値は10の-7乗g/gと推定でき、明らかな量の放射性元素は存在しないことがわかった。また、液体シンチレータは1年以上経過後も沈殿物等は生じず、エネルギー分解能や光量の低下も確認されなかった。一方、KamLAND-Zenの解析結果より、Zr-96の2重ベータ崩壊の信号領域に残存するバックグラウンド事象として、バルーンフィルム内のTl-208のベータ崩壊事象と、それに伴う2.6MeVのガンマ線であり、本研究でもそれらがバックグラウンドになると考えられる。これらを除去するために、新たにチェレンコフ光による事象再構成を着想した。アニソールの屈折率は1.518のため、0.7MeV以上の電子はチェレンコフ光を放射する。実際にチェレンコフ光の光量を観測した結果、液体シンチレータの2%程度であり、計算結果と一致した。更に、EGS5によるシミュレーションの結果、電子の多重散乱が発生してもチェレンコフ光の放射角度分布は42度付近にピークが観測され、その情報から事象の発生位置の再構成を試みたところ約6cmの位置分解能の性能が得られた。ZICOS 実験では時間情報も利用できるため位置分解能は更に向上し、Tl-208のベータ線とガンマ線の発生位置を個別に特定できることが期待されるため、KamLAND-Zenのバックグラウンド観測量の20分の1程度まで除去できる可能性を示すことができた。
著者
新川 敏光
出版者
新潟大学
雑誌
法政理論 (ISSN:02861577)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-148, 1992-11
著者
根本 明宜 水落 和也 大西 正徳
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

欧米で20年ほど前より施行されていたバクロフェン髄腔内治療が本邦に導入され、欧米並みの痙縮治療がようやく可能になった。しかし、高価な治療法であり、治療効果を確実に評価する必要性も高まっている。欧米では痙縮の評価にターデュースケールという、他動運動の速度を加味した評価法が見直され2000年頃より論文での使用が増えているが、本邦ではまだ一般的とは言い難い状況である。今回の研究の目的はターデュースケールを日本語化し、他動運動の速度に依存するという痙縮の生理学的な特徴を評価できる評価法を導入することが目的である。今年度については、ターデュースケールの日本語化をほぼ終え、妥当性を検討するための計測系の確立を行った。計測系の充実のため、本学附属病院が有する3次元動作解析装置のキャリブレーションキットの更新を行っている。角速度計を用いた痙縮の計測を行い、ターデュースケールの妥当性を検討する基礎実験を行った。角速度計での計測と標準的な方法である3次元動作解析装置とほぼ同等の結果が得られた。計測系について2007年6月10〜14日に韓国で行われた第4回国際リハビリテーション学会(ISPRM)で発表した。ターデュースケールに日本語化については、共同研究者の意見も参考にしながら行った。角速度計での計測と臨床での評価を比較する準備を行っていたが、計測系の問題が見つかり、計測系の見直しを行った。計測系を見直す中で、角速度計の計測機器の特質による誤差が生じており、一定の動作を繰り返す際には補正が可能であるが、いくつかの方向の計測を行うと、誤差が補正仕切れなくなることが判明した。計測系をビデオを用いた計測に切り替えることとし、計測を行ったが、開始が遅れたこと、本務が多忙になり十分な症例数が確保できず、論文としてまとまった形にできていない。現段階ではターデュースケールの日本語化が終了し、妥当性の検討が一部行えた。日本語化については痙縮の総論、学会でのシンポジウム、教育講演などで報告を行い周知した。
著者
原口 直樹
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

シンコナアルカロイド、シンコナアルカロイド四級塩、キラルイミダゾリジノン塩、キラルピロリジンなどの不斉有機分子触媒を固定化した高分子微粒子や架橋高分子の合成およびキラル有機分子触媒組込型高分子の合成に成功した。得られた高分子触媒を不斉アルキル化反応、不斉Diels-Alder反応、不斉Michael付加反応、不斉非対称化反応などに用い、触媒構造、スペーサー構造、高分子構造を最適化することにより、低分子モデル触媒と同等以上の不斉選択性を有する高分子触媒の開発に成功した。高分子微粒子触媒は特に高い回収性を示し、その再使用においても、触媒性能を低下させることなく、5回程度の再使用が可能であった。次に、キラルイミダゾリジノン塩およびキラルピロリジン部位を有する2つの高分子微粒子によるワンポット反応を行った。触媒構造、スペーサー構造、高分子構造や反応条件を検討した結果、高分子微粒子内部に導入したそれぞれのキラル触媒が独立して作用し、光学活性化合物が高選択性で得られる系を見いだした。また、酸触媒としてスルホン酸、塩基触媒としてキラルピロリジン部位を有する2つの高分子微粒子によるワンポット反応が進行し、目的とする光学活性化合物の合成にも成功していることから、本手法が相反する性質の触媒の同一系内でのワンポット反応に有効であることが明らかとなった。
著者
Hiroaki Kikuchi Makoto Aoyagi Kiyotaka Nagahama Yu Yajima Chisato Yamamura Yohei Arai Suguru Hirasawa Shota Aki Naoto Inaba Hiroyuki Tanaka Teiichi Tamura
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1131-1135, 2014 (Released:2014-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
3 11

A 76-year-old woman with a history of lumbar fracture and marked proteinuria, bilateral pitting edema, malaise and pruritus was referred for an evaluation of an impaired renal function. A renal biopsy led to a tentative diagnosis of acute interstitial nephritis (AIN) with minimal change disease caused by nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs). Following the discontinuation of oral NSAIDs, the patient's symptoms disappeared spontaneously. However, nephrotic-range proteinuria relapsed one month after discharge, following loxoprofen patch use. The withdrawal of the topical loxoprofen patches once again resulted in the disappearance of all symptoms. This is the first case report of nephrotic-range proteinuria and AIN secondary to topical NSAID patch use.

1 0 0 0 OA 奈留美加多

著者
小田切春江 著述
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.三, 1903

1 0 0 0 OA 奈留美加多

著者
小田切春江 著述
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.四, 1903

1 0 0 0 OA 奈留美加多

著者
小田切春江 著述
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.二, 1903

1 0 0 0 OA 奈留美加多

著者
小田切春江 著述
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.五, 1903
著者
梶原 克教
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

イングランド、アイルランドから、カリブ海諸島を経て北アメリカにまで広がる英語圏の文化、とりわけ植民地主義以降の文化を、環大西洋圏文化として位置づけ、そこに見られる共通性として、おもに以下の2点が挙げられることを立証することができた。(1) 1960年代以降の当該文化圏文化においては、形式・媒体を通じて伝えたい意味を表現するのではなく、特定の形式・媒体自体を利用すること自体に重点が置かれている点。(2) 表現形式において俗に身体性と呼ばれるものが、言語においては「比喩的」次元と異なる「形体的」次元と関係がある点。
著者
金 志〓
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は六朝時代から唐代(4 世紀末-9 世紀頃)までの、道教の経典伝授儀礼の成立と、経典伝授と密接な関わりを持って発生した「師」観念について考察する。とくに道教の経典伝授の儀礼化の問題を、三教交渉史・宗教文化史の観点から考え、道教史の展開や六朝隋唐宗教文化史を理解することを目的とする。
著者
稲田 結美
出版者
上越教育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では、女子の理科学習に対する意識や態度の低下が顕著な中学校理科「力学」と「電流」に関する授業において、女子の学習を促進する指導方法と教材を実践的に開発した。その結果、女子の関心や経験に基づき、人体と物理概念とを関連づける「人体アプローチ」、調理と物理学習とを結びつける「料理アプローチ」、実験に美的観賞を取り入れる「美的アプローチ」を教授展開や活動に導入し、女子が協同的な問題解決活動を行える集団組織を編成することが女子の理科学習に効果的であることを明らかにした。
著者
"八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい."