出版者
[東京回教印刷所]
巻号頁・発行日
1934
著者
田中 牧郎 山元 啓史
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.16-31, 2014-01-01

『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』の同文説話6話に対して、形態素解析を施し、パラレルコーパスを作成して、『今昔物語集』から『宇治拾遺物語』、『宇治拾遺物語』から『今昔物語集』の双方向で語の対応付けを行った。相互に対応付けられたデータから、異なる語が対応する比率の高い語彙を抽出することで、硬い文体的価値を持つ語彙と、軟らかい文体的価値を持つ語彙とが特定された。抽出された双方の語彙について、同文説話全体(83話)の語の対応状況を分析したところ、同語が対応するか異語が対応するかの違いが、語の意味・用法によって決まる傾向があることや、その傾向が、文体的価値の硬軟の段階差に応じて層をなすように変わっていくことが解明できた。また、異語対応の場合に、他方の説話集で対応する語が特定の語に定まる場合があり、これは文体的な対立関係にある類義語と考えられた。
著者
山口 智史 佐々木 司
出版者
一般社団法人 日本学校保健学会
雑誌
学校保健研究 (ISSN:03869598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.150-153, 2018-08-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
24

Background: Emphasis on importance of evidence-based educational practices has been recently increasing. The US government, for example, has announced that they would not financially support new educational practices which are not evidence-based. Most of schools, however, may not acknowledge its importance and only few evidence-based practices have been developed or conducted in schools.Objective: To examine reasons why the evidence-based practices have not been prevailing in schoolsMethods: We reviewed studies addressing how often teachers participate in educational research and employ evidence from educational research in their practices. Studies about impressions and thoughts which teachers have on the research were also reviewed.Results: Only few teachers have engaged in educational research, and evidence from the research is rarely utilized in educational programs and practices. Teachers tend to think that research is not helpful or useful in practical situations. They also seem to have an impression that research is conducted without considering real-world situations of school settings. An intervention study has, however, observed that improving teachers’ access to educational research might help teachers to consider educational research helpful in schools. Researchers should respect practical situations in schools when they conduct educational research. Careful explanations of the results of research including feed-backs to teachers may be important to increase teachers’attention on, and practical use of evidence from, research in schools. In addition, pre-service teachers should be taught methodology of research and how to employ evidence from educational research.Conclusion: School teachers in general may not have positive impressions on, or use evidence from, educational research, which could be improved by researchers’attention and careful respects to schools and teachers. Curriculum for teacher education may also need to be improved.
著者
渋谷 勝己
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.32-46, 2005-07-01

本稿では、日本語の可能形式の文法化のありかたについて、他の言語の場合も参照しつつ、その特徴を総合的に整理することを目的とする。分析によって、以下の点を明らかにする。(a)可能形式の起源となった形式には、完遂形式と自発形式がある。いずれも他の言語と共通するが、自発形式の種類が多様である点に日本語の特徴がある(第3節)。(b)日本語可能表現の内部では、状況可能>能力可能>心情可能といった変化の方向が観察され、通言語的に指摘されている能力>状況といった方向とは異なっている(第4節)。(c)日本語の可能形式は、さらに、行為指示形式や生起可能性を表すモダリティ形式に変化する場合があるが、前者はおもに禁止表現に、後者はわずかな形式に観察されるだけである(第5節)。まとめれば、日本語の可能形式の文法化は、可能形式以外の表現領域から可能形式化し、可能表現内部でさらに意味変化を起こすことはよくあるが、ときに禁止表現化する以外には可能形式の段階にとどまったまま、次の新たな可能形式に道を譲るといったケースが多い。
著者
寺島 裕貴
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-35, 2019-12-15

聴覚のニューラルネットワークとしての理解が進んだ近未来.世界は耳を騙そうとする敵対的な音刺激《Aノイズ》で溢れ,DGと呼ぶAIデバイスで耳を守ることが人々に義務付けられていた.自然音の響きに憧れるカリンは原生林に行き,勇気を持ってDGを外すが……?
著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.99-111, 2015-07-25 (Released:2018-02-01)

本稿は2014年6月に行われた社会政策学会保健医療福祉部会のテーマ別分科会のなかで行った発表を元に作成されたものである。当初の発表では,合理的配慮の規定についての基本的部分を確認しつつ,実際に障害者と雇用主の間でどのように合理的配慮を形成していくのかという点について,実務的な観点から整理し,その課題を明らかにしていった。本稿では,その内容を踏まえた上で,分科会において示されたいくつかの質問,特に労働能力と賃金と配慮の関係性について焦点を移している。そして,合理的配慮の規定において重要な鍵となる,しかしこれまで日本においてあまり議論されてこなかった基幹的能力の概念を軸に,この問いに対する一つの答えを示すことを試みている。
著者
水田 邦博 遠藤 志織
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.15-19, 2017-01-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【診断】耳管開放症の診断において, 耳閉感, 自声強聴, 自己呼吸音聴取などの症状が臥位で改善すれば, 疑い例となる. さらに鼓膜の呼吸性動揺を確認するか, 耳管機能検査で, 1. TTAG 法における鼻咽腔圧と外耳道圧の同期, 2. 音響法における提示音圧が 100dB 未満, 3. 音響法において嚥下などによる耳管の開大が継続しプラトーになる, の3つのいずれかが認められれば, 確実例と診断される. 確実例に至らない場合は, 耳管閉塞処置で自覚症状の改善を確認することが診断に有効である. 菲薄化, 硬化性病変, 弛緩部の陥凹などの鼓膜所見から耳管閉鎖不全が疑われれば, 鼻すすり癖の有無を問う. 以前は鼻をすすって改善していた症状が, 鼻をすすっても改善しにくくなったことが来院のきっかけであることが多い. 【治療】鼻すすり癖のない耳管開放症は鼓膜が正常のことが多く, 体重減少, 妊娠などが発症の誘因となる. まず, 病態の説明, 生活指導を行う. 不十分なら薬物療法を行う. 症例によっては鼓膜へのテープ貼付, 耳管咽頭口ルゴール処置も効果がある. これらの保存的療法が無効な場合, 外科的処置への移行を検討する. 鼻すすり癖のある耳管開放症の場合, 若年で中鼓室が陰圧を示し, 弛緩部の陥凹の進行が懸念される例では, 鼻すすり癖の停止勧告を優先する. 高齢者で長年のすすり癖にもかかわらず弛緩部の陥凹が円滑なら, 鼻すすり癖のない開放症に準じた治療を行う. ルゴール耳管咽頭口処置や耳管ピンで耳管を狭窄として鼻をすすりやすくすれば, 症状を軽減できる. 【まとめ】体重減少や妊娠を契機として起こる耳管開放症も鼻すすり癖をもつ開放症も同一の診断基準で診断され得るが, 病態が異なるため治療は違ったアプローチとなる. したがって, 問診や鼓膜所見で, まずその鑑別を行うことが重要である.
著者
和田 清
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.569-574, 1997-08-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
辻 和成 辻 勢都
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本調査では、グローバル経営を進める製造会社の英語事情について総合的な分析を行った。1,000名以上の従業員を雇用する企業を幅広い業種から選び、オンラインでのアンケート調査を実施した。その結果、ものづくり系企業での英語使用と英語教育の現状を明らかにし、産業界のニーズに適合するため、英語教育での企業と大学の接合の必要性を示すことができた。本調査の特徴の一つは、日本経済の中核を担う製造業に着目し、主たる部門をディスコース・コミュニティとみなしニーズ分析を行った点である。幅広い業種から機能分担がより鮮明である大手の企業を調査対象として選択し、ニーズ分析と研究成果の有用性と汎用性を確保することに努めた。
著者
津曲 敏郎
出版者
北海道大學文學部
雑誌
北海道大學文學部紀要 (ISSN:04376668)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.61-104, 1980-01-31
著者
古賀 雄二 村田 洋章 山勢 博彰
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.93-101, 2014-05-01 (Released:2014-07-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:せん妄はICU患者の入院期間延長や生命予後悪化につながるが,スクリーニングされずに見落とされ,治療されないことも多い.Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(CAM-ICU)は,ICUでのせん妄評価法として国際的に認められた方法である.CAM-ICUには評価手順を効率化したConfusion Assessment Method for the Intensive Care Unit Flowsheet(CAM-ICUフローシート)が作成されている.本研究は日本語版CAM-ICUフローシートの妥当性・信頼性の検証を目的とする.研究方法:日本の2ヵ所の大学病院ICUで実施された.妥当性評価として,精神科医が評価するDSM-IV-TR(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition, Text Revision)をせん妄診断の標準基準として,リサーチナースおよびスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシート評価と比較し,感度・特異度を算出した.また,リサーチナースとスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシートの評価を比較し,評価者間の信頼性を評価した.結果:評価対象者数は82名であり,DSM-IV-TRでのせん妄有病率は22.0%であった.興奮・鎮静度はRASS(Richmond Agitation Sedation Scale)-0.33~-0.28であった.DSM-IV-TRに対するリサーチナースとスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシート評価結果は,感度が78%と78%,特異度が95%と97%であった.日本語版CAM-ICUフローシートに関するリサーチナースとスタッフナースの評価者間の信頼性は高かった(κ=0.81).結論:日本語版CAM-ICUフローシートは,せん妄診断の標準基準(DSM-Ⅳ-TR)に対して妥当性を有し,評価者間の信頼性も高く,ICUせん妄評価ツールとして使用可能である.
著者
Yoshihiro SEJIMA Tomio WATANABE Mitsuru JINDAI
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing (ISSN:18813054)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.JAMDSM0103, 2016 (Released:2016-11-09)
参考文献数
21
被引用文献数
2

In human interaction and communication, not only verbal messages but also nonverbal behavior such as nodding and paralanguage are rhythmically related and mutually synchronized among speakers. This synchrony of embodied rhythms unconsciously enhances a sense of unification and causes an interaction-activated communication in which nonverbal behaviors such as body movements and speech activity increase, and the embodied interaction is activated. In this paper, we propose the concept of an estimation model of interaction-activated communication based on the heat conduction equation with the characteristics of precipitous speed fluctuation and develop a model that estimates the degree of interaction-activated communication by using speech input only. Further, we evaluate the developed model in estimating the period of the interaction-activated communication in an avatar-mediated communication. The results demonstrate that the developed model is effective in estimating the interaction-activated communication.
著者
藤本 徹 荒 優 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.305-313, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
35

2012年以降,世界のトップ大学が一斉に大規模公開オンライン講座(MOOC)の提供に参入したことで,グローバルなオンライン教育プラットフォームとして急速に普及し,研究テーマとしての関心も急速に高まった.この動きの当初は,コース提供した大学による教育実践報告や,将来の可能性を展望する議論が中心だったが,近年では具体的な実証研究も進展しており,ラーニング・アナリティクスを取り入れた研究も見られるようになった.本稿では,MOOC に関するラーニング・アナリティクスの先行研究をレビューし,この分野の研究動向を概観したうえで,今後研究を進めていく上での論点や課題を検討する.
著者
福田 雅幸 高橋 哲 高野 裕史 永井 宏和 山崎 嘉幸
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-55, 1998-06

野生動物の襲撃は, 時として致命的である。われわれは, 致命的な熊の襲撃を受けた患者の治療を経験したので報告する。患者は, 69歳, 男1生で野生の熊に遭遇し, 刺創および咬創を受け, 当院救急部に担送された。直ちに, 処置が施され, 一命をとりとめることができた。現在, 最終の手術から, 1年6か月が経過したが, 経過は良好である。