著者
馬 書根 WANG Kundong
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、蛇の運動原理とミミズの移動原理を融合し、震災等における瓦礫の散在する環境下で生存者の探索・救援が行なえるロボットシステムを開発することを目的としている。平成22年度において、昨年度に試作された基本関節ユニット(直動駆動、ロール回転、及びピッチ回転の3自由度を持つ)を用いて、頭部と尾部をも持つロボットシステムの開発を行った。本ロボットには12自由度を有し、長さ92cm、直径10cm、重さ3.1kg、円柱型の外形を持つ。直動駆動自由度を持たせることで、このロボットは蛇型運動だけでなくミミズの移動原理も行え、蛇とミミズの移動原理を有機的に融合した超生物的な移動を実現することができる。次に、このロボットを駆動制御する制御システムを構築した。この制御システムには駆動電源を含め、サーボーモータ制御系や無線通信系などを全て各ユニット内に納め、ロボットを構成する関節同士やコード類などの相互干渉を無くすことができ、ロボットの運動性能、柔軟性、信頼性が向上できる。また、実機械モデルの開発と並列して、蛇の運動原理とミミズの移動原理を有機的に融合するための理論研究を行い、蛇型移動、ミミズ型移動、および蛇型-ミミズ型の混合移動を行う本ロボットの数学モデルを構築し、これらの運動について計算機シミュレーションで運動解析を行った。その結果として、開発されたロボットにミミズ型移動を導入することで、狭隘空間へ侵入が簡単となり、蛇型移動特有の特異姿勢問題も解決できることを判明した。本年度の研究は超多自由度多関節型移動ロボットを効率よく運動制御するための基礎を成している。
著者
美濃 導彦 馬場口 登 谷口 倫一郎 角所 考
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.156-161, 2006-03-01
参考文献数
11
被引用文献数
2
著者
土佐 昌樹
出版者
神田外語大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

前年度はアメリカの実態を対象としたが,今年度はその成果に基づき主に日本のサイトを対象として研究の展開と総括を目指した。手順と成果の概要を以下に示す。(1)「Yahoo!JAPAN」に登録された宗教関係のサイトをすべて閲覧し、内容の特徴と傾向をまとめた。主たるものはハードコピーし,今後の研究の基礎資料としてデータベース化した。(2)宗教サイトを運営する姿勢として、形だけのものと積極的なものに二分される。宗教活動の中でインターネットを積極的に活用しようとしている206のサイトにメールを送り(イスラム2、神道34、仏教117、キリスト教118、その他62)、ホームページの運営方針について予備的なアンケートを実施した。(3)78のサイトから回答を得た(イスラム2、神道6、仏教32、キリスト教21、その他17)。そのうち協力的に対応してくれた組織には持続的なコミュニケーションを試み、インタビュー調査も数回にわたって実施した。インターネットの普及により新たな信仰の形が出現することを予感しているところが多かったが、全体的にまだ模索中の段階にあるといえる。日本の場合はアメリカと異なり、特にニューエイジ的なサイトが突出しているわけでなく、原理主義的な傾向も希薄であった。今後さらに、インターネットの普及が宗教活動全体に及ぼす影響を多角的、有機的に調査研究すべきとの感触を得た。情報化時代における宗教的実践の将来は、社会科学的に追求すべき豊かな問題を含んでいるといえる。
著者
中野 尚夫 河本 恭一 石田 喜久男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.40-46, 2001-03-05
参考文献数
16
被引用文献数
3

1990年にタマホマレとトヨシロメ,1991年と1992年にこれらに銀大豆を加えた3品種を水田転換畑において,35cm×36cm(正方形播)と70cm×18cm(長方形播)の1株2個体(1990,1991,1992年)あるいは同1個体(1990年)で栽培し,栽植様式と収量および収量構成要素の関係を節位別の分校発生と分校の生育から検討した.播種日は1990年が6月20日,1991年と1992年が6月22日であった.いずれの品種,1株個体数においても正方形播は長方形播に比べ,分校数が多くて総節数,花数が多く,さらに結莢率が高く,莢数,収量が多い傾向であった.主茎節位別にみると,3品種とも正方形播では長方形播に比べ,第5,6節の分校発生個体数率が高く,さらにタマホマレの第3〜6節,トヨシロメの第4〜6節,銀大豆の第5,6節では分枝の節数も多かった.開花前の7月26日の地際相対照度についてみると,正方形播長方形播に比べ,条間では低かったが,株際ではかえって高かった.開花後の8月12日においても,正方形播と長方形播の差は小さかったが,同様の傾向がみられた.また,正方形播では長方形播に比べ,主茎長が短く,茎径が太く,比葉面積が小さかった.これらのことから,正方形播では長方形播より群落が早く密閉状態になるが,相互遮蔽は小さいと推察され,この相互遮蔽の小さいことによって下位の分枝数が多く,それら分技の節数が多くなったと考えられた.さらに正方形播では,この有利な光条件がその後も継続し,下位節の結莢率も高くなり,莢数,収量が多くなったと考えられた.
著者
内田 学 平田 博紀 堀井 希依子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.93-106, 2013-03-31

現在、家電量販業界では、熾烈な戦いが繰り広げられている。本稿ではその中でマーケットリーダーのヤマダ電機と人材教育に定評があるヨドバシカメラを採りあげる。ヤマダ電機とヨドバシカメラの戦略はマイケル・E・ポーターの3 つの基本戦略に照らし合せると、現在のところ、それぞれコストリーダーシップ戦略、差別化戦略を採って成功している。本論文では、両社のそれぞれの戦略について詳述し、さらに今後の激変する環境の中で両社が採っている戦略をどのような変化させていくのかを検討する。
著者
坂本 啓子
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.277-299, 1992-01-31

本学食物栄養専攻栄養士コース2年次生87人を対象に,講義主体の日と実験主体の日の生活行動別消費時間とエネルギー消費量を調査し次の結果を得た。1.生活時間は,講義日,実験日ともに,生理的生活時間が最も長く,講義日平均10時間39分(1日の44.4%),実験日平均9時間50分(1日の41%)であった。次いで学業的生活時間で,講義日平均6時間59分(1日の29.1%),実験日平均9時間33分(l日の39.7%)三番目が社会文化的生活時間で講義日平均5時間20分(1日の22.2%),実験日3時間53分(16.2%)であり,最も短いのは家事的生活時間の講義日平均62分(l日の4.3%),実験日44分(3.1%)であった。生活時間の特徴を述べると(1)睡眠時間の平均は講義日が7時間23分,実験日が6時間33分であったが,最小値が3時間5分,両日合わせて3時間台4人,4時間台が6人いた。短時間睡眠の原因の一つに家庭内学習とアルバイトがある。若い学生ではあるが短時間の睡眠が長期に続くことは健康上よくない。短時間睡眠が習慣化しているとすれば生活リズムのとり方について検討する必要があろう。(2)家事的生活時間を持っていない学生が14〜15%いる。いずれも自宅通学者である。家庭内の誰かが,学生に代って家事的行動を行っていると推察される。(3)授業(講義,実験,実習)時間の平均は講義日が3時間24分,実験日6時間2分であった。両日の最大,最小値の差も大きい。短大の特長として,学生の学習意欲が大きければ,いくらでも学習できることを示している。(4)通学時間は両日とも平均2時間20分前後で1日の約10%を通学に要している。最大値は5時間10分である。(5)家庭内学習は,76〜78%の学生が行っている。時間は講義日2時間26分,実験日2時間11分であったが最大値の学生は8時間3分も家庭内学習を行っていた。2.1日のエネルギー消費量は講義日の平均が1991kcal,実験日の平均が1949kcalで検定結果からも講義日が実験日を上まわっている。4分類の生活におけるエネルギー消費量のうち,講義日が実験日を有意に上まわっていたのは,生理的生活,家事的生活,社会文化的生活で,学業的生活のエネルギー消費量のみが,講義日の平均692kcalに対し実験日が880kcalで,実験日の方が有意に多い結果となった。また,講義日と実験日のエネルギー消費量相関をみると相関係数は0.755と有意に高く,体量の要因をとり除いた偏相関係数も0.297であり,講義日と実験日のエネルギー消費量が独立てないことを示している。このことは身体を積極的に動かすタイプの学生は両日とも同様の動きを行っていることを示唆している。3.以上の結果から学生達は実験主体の日には積極的に学業生活を過ごし,講義主体の日より長い時間と多いエネルギーを消費して,学業生活に力を注ぎ,学業以外の生活行動をセーブしている。学業的生活の時間,エネルギー消費量の少ない講義主体の日には,社会文化的,生理的,家事的生活の時間,エネルギー消費量が増加する生活行動をとっていることがわかった。学生達は短大生の特性である自主性を生かしながら,自らの一日の生活の消費エネルギーを上手にコントロールしているといえよう。

1 0 0 0 OA 赤き死の仮面

著者
ポオ 著
出版者
言誠社書店
巻号頁・発行日
1920
著者
箕輪 潤子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.39-54, 2008

本研究では,3歳児から5歳児までの砂場における穴掘り遊びについて,ガーヴェイがごっこ遊びに見られると述べた「プラン」「役割」「物(の見立て)」「状況設定」という枠組みを用い,発達的検討を行なった。その結果,年齢があがるに従って,穴の掘り方のバリエーションが拡大し,穴を掘る際の道具の選択も行なわれるようになっていくことが明らかになった。また,発達によって,子どもが行なう行為の傾向が異なり,その結果行なわれる遊びの傾向も変化していくことが示唆された。
著者
吉田 真理子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.44-54, 2011-03-20

本研究は,実験とインタビューを通して,幼児における未来の自己の状態を予測する能力を調べた。特に,「起こるかもしれない」未来の自己の状態を予測しはじめる時期を特定するため,実験では,不確実に生起しうる未来で必要となるアイテムを前もって準備するか否か,インタビューでは,実際の未来の行事に対して自覚的に心配を抱いているか否かを検討した。対象児は幼児36名(3歳児11名,4歳児12名,5歳児13名)であった。その結果,(1)4歳頃から不確実に生起しうる未来に必要なアイテムを準備するようになること,(2)4歳頃から未来の行事に対して心配があると答えるようになること,(3)アイテムの準備と心配の有無には関連がみられること,(4)未来の複数の可能性を予測する際にはそれらの生起確率を考慮する必要があることが明らかとなった。以上の結果から,子どもは4歳頃から,未来の自己の状態を,複数の可能性があるものとして予測するようになることが示唆された。
著者
朴 啓彰 熊谷 靖彦 永原 三博 片岡 源宗 北川 博巳
出版者
高知工科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

一般ドライバーと同質サンプリングと考えられる健常中高年の脳ドック検診者2193名(男性1196名,女性997名;平均年齢53.84±9.67 歳)を対象として、過去10年間における交通事故歴に関するアンケート調査を行い、頭部MRI所見の大脳白質病変と交通事故との関連性について多変量ロジスティック解析を行った。運転走行中の衝突事故など大きな事故に対して白質病変は、グレードに応じて有意の高い関連性を示した(年齢調整オッズ比は2.937:95%信頼区間1.260-6.847; P=0.013)。白質病変は、軽度でも大脳半球両側に存在すれば、視覚情報処理能力や注意機能の反応速度が有意に低下することを既に報告しているが、白質病変によるこれらの高次脳機能低下が、白質病変ドライバーと交通事故との因果関係を説明するものと推察された。因って、脳ドック受診者1150名(男性642 名、女性508 名、平均年齢52.1±8.9歳)に対して、警察庁方式CRT 運転適性検査におけるアクセル・ブレーキ反応検査結果と白質病変との関連性を調べた。アクセル・ブレーキ検査は、選択的反応動作の速さ、反応むら(変動率)、反応動作の正確さ(見落とし率)を測定する検査である。白質病変のグレードを説明変数に、見落とし率・変動率の高低を目的変数にして、多変量ロジスティック解析を行うと、見落とし率では、オッズ比1. 530(95%信頼区間;1.094-2.140、P=0.013)であり、変動率では、オッズ比1.348(95%信頼区;0.991-1.834、P=0.013)となった。安全運転に必要と考えられる認知判断機能の不正確さと反応むらに白質病変が有意に影響することが、交通事故の発生機序の一つとして想定された。頭部MRI で定量評価される白質病変グレードに応じた安全運転対策の可能性が示唆された。