著者
星野 周弘 原田 豊 野田 陽子 矢島 正見 米里 誠司 加門 博子 田村 雅幸 麦島 文夫
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、今日のわが国において非行の発現・深化の過程がどのような要因の影響によって生じているかを明らかにすることを目的とし、非行少年・一般少年に対する質問紙を用いたケースコントロール型の調査と、公的記録による追跡型の調査とを組み合わせたデザインによって実施した。平成12年度に行った先行研究のレビューに基づいて、平成13年度に、公立中学校の第2学年に在学中の少年(コントロール)と、非行をして警察に補導された同学年の少年(ケース)とに対し、同一の調査票による調査を実施した。平成14年度〜15年度には、非行少年に対する質問紙調査を継続するとともに、非行少年の非行反復状況を警察記録によって調査した。調査対象地は大阪府であり、最終的な分析対象者は、非行少年289人、および一般の中学2年生2,046人である。非行少年と一般中学生とを対比した分析の結果、家族との情緒的関係や父母の養育態度の悪さ、逸脱的な友人との相互作用、中学校入学以前の問題行動や中学校での学業不振、学校の規則や行事への関与の低さ、衝動性・攻撃性・興奮追求傾向・反抗性の高さ、および自己効力感の低さが非行のリスクファクターとなること、問題行動を許容しない保護者の厳格な姿勢、友人による遵法的活動への勧誘、地域における人々相互の親しいつきあいや少年の健全育成活動などが非行のプロテクティブファクターになることが明らかになった。非行反復状況に関する分析の結果からは、分析対象者の約4割が本件以外にも非行で警察に補導されていること、調査対象者の約25%は本件以前にも非行で補導された経験をもっていること、本件以後に再度非行で補導された者の割合もほぼ25%であるが、女子(17%)に比べて男子(27%)の再非行者率が高いこと、学業成績や教育アスピレーション、友人関係に関する項目が、再非行と相対的に強く関連することなどが明らかになった。
著者
小林 宏 橋本 卓弥 山崎 和広 平井 義和
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.76, no.764, pp.922-929, 2010-04-25
参考文献数
11
被引用文献数
1

There are many cosmetic companies and visual appreciation is undertaken by human expert though, skin texture has not been investigated quantitatively and automatically so far. In this study, image processing method for analyzing skin texture is proposed. Since sulci is very important for expressing skin texture, we apply cross binarization method for extracting sulci and by matching short lines onto sulci extracted, sulci is expressed by short lines. By analyzing short lines in terms of number, direction, and so on, quantitative indices are suggested for displaying feature of sulci. We then investigate whether it is available or not to predict visual appreciation score by quantitative indices. By using multiple linear regression analysis, we find that visual appreciation score is predictable in high rate by using quantitative indices we have proposed. This method comes into practical use since January 2009.
著者
石井 孝治 山本 裕陸
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.81-85, 1998

本稿は, 3次元空間R^3における境界要素法による3次元ラプラス方程式の数値解に関するものを考える.まず, R^3内の同心円環領域におけるディリクレ問題の厳密解と数値解を求める.境界要素法においては境界である球面を平面三角形により近似させる.厳密解と数値解を比較し, 厳密解に最も近づく近似法G_nを得た.次に, 境界が球面である非有界領域におけるディリクレ問題を考える.この問題の厳密解は求まっていない.球面に最も近似するG_nで数値解を求め, その結果をグラフ化した.さらに, R^3内の曲線族に対する2-モジュールの数値解を与えた.
著者
縣 亮 田中 啓仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OCS, 光通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.221, pp.31-36, 2001-07-20
参考文献数
8

シャノン限界に最も近づくFEC技術として、無線通信の分野で商用化に向けた検討が進められているターボ符号が、近年、光通信の分野でも検討されはじめている。本稿では、ターボ符号を高速に復号するための新しいアルゴリズムを提案する。数値シミュレーションによる検討の結果、この提案アルゴリズムを用いることにより、従来のターボ復号法と比較して、およそ3倍以上の早さでの復号処理できる可能性があることを示す。
著者
津村 耕司
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題にて、当該年度中にすばる望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡・Spitzer宇宙望遠鏡での観測をほぼ完了した。前年度までに確立した、本研究目的に特化した観測手法にて観測を実施し、データ解析を行った所、エウロパ・ガニメデ・カリストが近赤外線での波長域において木星の影中においてもわずかに明るいという新たな事実を発見した。この現象の解明は、本研究目的においても必須である為、新たに惑星科学の専門家達と相談し議論・検討をすs目多結果、木星上層大気による差太陽光の散乱が最もありえる説であるとの結論を現時点で得ている。この新発見は、今までほとんどデータが得られていなかった圧力帯(10mbar付近)での木星大気構造について、地上観測から制限を付けられる可能性を秘めており、今後の発展が期待される。そこで、これらの観測結果をまとめた論文を用意し、投稿した(現時点で査読中)。また、ガリレオ衛星食観測で目指す観測目的である赤外線背景放射について、赤外線天文衛星「あかり」やロケット観測実験CIBERによるデータ解析・成果発表等も並行して実施した。
著者
Akira Kawaguchi
出版者
日本微生物生態学会 / 日本土壌微生物学会 / Taiwan Society of Microbial Ecology / 植物微生物研究会
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
pp.ME13014, (Released:2013-05-24)
被引用文献数
7 29

A nonpathogenic strain of Rhizobium vitis ARK-1 was tested as a biological control agent for grapevine crown gall. When grapevine roots were soaked in a cell suspension of strain ARK-1 before planting in the field, the number of plants with tumors was reduced. The results from seven field trials from 2009 to 2012 were combined in a meta-analysis. The integrated relative risk after treatment with ARK-1 was 0.15 (95% confidence interval: 0.07–0.29, P<0.001), indicating that the disease incidence was significantly reduced by ARK-1. In addition, the results from four field trials from 2007 to 2009 using R. vitis VAR03-1, a previously reported biological control agent for grapevine crown gall, were combined in a meta-analysis. The integrated relative risk after treatment with VAR03-1 was 0.24 (95% confidence interval: 0.11–0.53, P<0.001), indicating the superiority of ARK-1 in inhibiting grapevine crown gall over VAR03-1 under field conditions. ARK-1 did not cause necrosis on grapevine shoot explants. ARK-1 established populations on roots of grapevine tree rootstock and persisted inside roots for two years.
著者
小野 修
出版者
広島大学平和科学研究センター
雑誌
IPSHU研究報告シリーズ (ISSN:13425935)
巻号頁・発行日
no.42, pp.168-188, 2009-03

松尾雅嗣教授退職記念論文集 平和学を拓く
著者
松岡 克典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.726, pp.65-68, 2003-03-10
参考文献数
6
被引用文献数
8

住宅内での生活行動の長期蓄積から、普段の生活行動とは異なる状態を自動検知する手法について検討した。複数の家族が生活する家屋に赤外線センサと電力量センサをそれぞれ各部屋と各コンセントに設置し、人の動きと家電製品の使用状況を1年間にわたって計測した。センサ情報と合わせて、生活者が記述した生活行動記録と心理テスト(POMS)を月に1度実施した。得られた住宅内行動の長期蓄積情報の主成分分析およびクラスタ分析を行って、普段の生活行動パターンを抽出した。抽出した普段の生活行動パターンと評価対象の日のクラスタパターンとを比較することにより、その日の生活パターンの普段度を評価した。これにより、気分が落ち込んだ状態や来客時などのいつもと違う生活状態を自動検知できる可能性が得られた。
著者
藤岡 惇
出版者
立命館大学経済学会
雑誌
立命館経済学
巻号頁・発行日
vol.58, no.5/6, pp.1118-1141, 2010-03 (Released:2010-06-02)
著者
市川 淳士
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

各種フルオロアルケン類に対して、金属錯体やLewis 酸による穏やかな条件下で行える求電子的活性化法を見出し、これらの活性化法をFriedel-Crafts 型環化に利用して、フッ素置換多環式芳香族炭化水素(F-PAH)の位置選択的合成法を3種開拓した。ここでは、フッ素置換基によるα-カチオン安定化効果を積極的に活用して、位置選択的な炭素-炭素結合の生成とフッ素置換基の導入を達成している。これら曲折型F-PAH合成法と直線型F-PAH合成法の両者を組合せて用いることにより、様々なピンポイントフッ素置換多環式芳香族炭化水素の系統的合成が実現できる。
著者
松原 康介
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果は、(1)番匠谷尭二氏を初めとする国際的に活動した都市計画家の業績解明を通じた中東都市計画史の研究、および、(2)歴史から学びえた都市計画論上の教訓の、現在のわが国による都市保全プロジェクト(JICA)への還元、の二点から報告される。審査付き論文として、(1)について国内誌1/海外誌1、(2)について国内誌1/海外誌1、の成果を上げた。また、学術的知見をJICAプロジェクト「ダマスカス首都圏都市計画・管理能力向上プロジェクト」に反映し、歴史的街道のファサード改善への提言を実施した。
著者
三好 達也
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.159-171, 2003-03-01

今日、日本におけるボランティアは地縁関係を中心とした従来の互助的なボランティアから個人の興味・関心によっておこなわれるものへと変化している。そこで、依然として根強い地縁関係をもつコミュニティである一方で「世界遺産」に登録され、観光地化されている「白川郷・五箇山の合掌造り集落」に焦点をあて、「重要伝統的建造物群保存地区」及び「史跡」指定から「世界遺産」登録後のボランティアに関する意識変化について調査し、過疎地域のおけるボランティア精神の特色やその変化について、萱葺きの葺き替えや冠婚葬祭などの互助的な慣習である「結(ゆい)」の果たしてきた役割を中心に考えてみたい。調査方法としてはインタビュー調査を用いた。テンニースの理論をもとにした分析の結果、「結」を中心とした互助的なボランティアと観光客を対象とするボランティアが混在していることが明らかになった。つまり、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」におけるボランティア精神はゲマインシャフトからゲゼルシャフトへと移行しつつあり、そこには「結」によって互助関係は継続され、観光地化によって近代化が進むことで独特なボランティア精神を形成しているといえる。
著者
武田 徹
出版者
近畿大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、葉緑体のモデル型とされるラン藻synechococcusPCC7942のカタラーゼ-ベルオキシダーゼ遺伝子をタバコ葉緑体に導入し、最終的に活性酸素に起因する環境ストレスに耐性を有する植物の作出を目的としている。今年度得られた結果は以下に記すとおりである。1. すでに当研究室で確立されているタバコ葉緑体への遺伝子導入法を用いて、まず、トマトリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼスモールサブユニットのプロモーターおよびトランジットペプチドの下流にSynechococcusPCC7942のカタラーゼ-ペルオキシダーゼ遺伝子(katG)を連結したプラスミドを構築した。2. 上記のプラスミドをAgrobacterium tumefacienceLBA4404を用いてリーフディスク法によりタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanllthi)に形質転換した。3. カルス化および再分化した後、植物体にまで生育したタバコとして6検体得られた。これら6検体のうち、サザンハイプリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーションおよびPCRによりキメラ遺伝子の導入が確認されたのは2検体であった。4. 上記2検体の形質転換タバコのカタラーゼ活性はコントロールタバコ(野生株)に比べて1.4-2.3倍であった。また、Synechococcus PCC7942のカタラーゼ-ペルオキシダーゼに対するポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングより、これら2検体の形質転換タバコにカタラーゼ-ペルオキシダーゼタンパク質が発現していることが明きらかになった。5. 上記2検体の形質転換タバコのリーフディスクを用いてパラコート耐性実験を行った。その結果、形質転換体は野生株に比べて明らかにパラコートに対して耐性であることが明らかになった。現在、上記2検体の当代(To)の植物体を自家受粉させT1世代を作製中である。
著者
牧野 泰彦
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1,安倍川は源流域に大谷崩と呼ばれる崩壊地をもち、世界的にみても砕屑物の豊富な河川の代表とみなすことができる。安倍川は全流域にわたって網状流路によって特徴づけられている。2,安倍川河口域における海岸地形について、明治28年発行の5万分の1地形図「静岡」から最新の地形図までを比較・検討した。18世紀初頭に発生した大谷崩以来、安倍川は大量の砕屑物で埋積されており、昭和30年頃まで河口には三角州が存在し、ほぼ平衡状態にあったと考えられる。このように沖側に凸状の地形が形成されている理由は、安倍川からの供給量が多いためである。その後、河口は海岸線がほぼ直線的で海側に凸状を呈していない。これは、大型の建築物や新幹線や高速道路などの土木工事がわが国で活発に施行された時期に対応しており、建設骨材として、安倍川の河床堆積物が大量に採取された結果、河口への供給量が大きく減少したためである。現在は、河口突出部がやや回復しつつあるようだ。3,河口域に到達した砕屑物は、沿岸流によって北西の三保海岸方向へ運搬されている。これは安倍川流域に産出する特徴的な礫(蛇紋岩)を追跡することによって判明している。現在の三保海岸は沿岸域に供給される砕屑物量が減少して、侵食状況にある。三保海岸侵食は、砕屑物の不足した部分が順次その運搬経路の下流方向へ移動し、現在、三保の松原付近まで到達している。つまり、この問題は自然環境に人為的な手を大きく加えたことによって生じたもので、そのシステムを理解して対応していれば起らなかったはずである。自然環境の基盤をなす地形や地質は、数万年におよぶ長い年月にわたる現象である。自然現象を眺める時間スケールは、当然それに対応していなければならない。海岸侵食のような自然環境に関わる問題では、このように長期間におよぶ現象に対する自然観を持つことで回避すべきである。