著者
伊藤 拓水
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究で研究代表者は、催奇性を有する抗がん剤サリドマイドがいかなるメカニズムで標的タンパク質セレブロンの機能を阻害するのかを検証した。セレブロンはユビキチンリガーゼとして機能する。研究結果として、サリドマイドはセレブロンの酵素活性を下げるというよりも、認識する基質を変化させることが示唆された。薬剤結合後はサリドマイドがもはや元の基質を認識できなくなることが、結果として機能阻害として検出されていたと考えられる。
著者
西本 紫乃
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.45-52, 2011-12-13
参考文献数
32

情報の自由な流通について制約のある中国において,近年インターネットが「公共圏」として「市民社会」の発展をうながすか,という可能性に関心が高まっている。ただし,少なからぬ研究者によって「市民社会」の概念については中国社会の特質を考慮すべきであるとの指摘がなされている。本稿では,中国のインターネット空間における流行語に着目した。インターネット・ユーザーがやりとりする象徴的な言葉から,その公共性と世論形成についての実態をさぐり,中国社会の文化的文脈の影響と「市民社会」の生成の可能性について考察する。
著者
川島 正行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前線に伴う雲による降水を表現する微細格子雲解像モデルにより温帯低気圧に伴う降雨帯の構造、成因について調べた。まず、理想化した数値実験により、地上の寒冷前線に伴う降雨帯のコアーギャップ構造について調べ、その成因である水平シア不安定波の発達は環境風の鉛直シア、局所的な鉛直シアに強く依存することなどを示した。また、観測された前線に伴うその他の各種降雨帯の構造、成因について現実的な設定の数値実験により明らかにした。
著者
坂田 雅正 亀島 雅史
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部会報 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.54-55, 2008-12

2007年台風4号通過後,本県早期栽培の極早稲水稲に青枯れ症が確認された.青枯れ発生の第一義要因はフェーン風(乾燥した高温の強風)と考えられたが,現地調査から栽培法も被害拡大に関与している可能性が示唆された.しかしながら,地域間差,品種間差の要因や青枯れ発生と収量,玄米品質との関係については十分に解明できなかった.そこで,極早稲水稲を対象とし,人為的操作によって青枯れを発生させ,収量,玄米品質への影響と発生要因を乾物生産特性から検討した.
著者
金 元淑 後藤 基寛 入江 満美 山口 武則 牛久保 明邦
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.175-182, 2008-07-10
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年、中国経済の発展による都市規模の拡大や農村地域の都市化への加速に伴う人口密度の集中および生活水準の向上につれて、都市ごみ中の食品廃棄物の含有量が増加しつつある。このことは、都市ごみの無害化処理率が低く、野積みのごみに包まれ、環境汚染問題が顕在化している中国の都市ごみ処理に一層困難をもたらしている。食品廃棄物のコンポスト(堆肥)化は中国現状に適した有効な処理方法の一つである。しかし、食品廃棄物には油分や塩分が含まれており、これらの濃度も異なることから、食品廃棄物のコンポスト化過程にも影響を与えることやコンポストを土壌施用した際に植物障害を生じる可能性が考えられる。本研究では、食品廃棄物中の油分および塩分がコンポスト化過程に及ぼす影響ならびにコンポスト中の油分および塩分がコマツナの生育に及ぼす影響について、原材料にそれぞれ油分・塩分を添加してコンポスト化させ、その製造コンポストを用いて、化学分析・発芽試験並びに簡易幼植物栽培試験を用いて検討した。本研究により、食品廃棄物コンポストの原料に油分を36%まで含有してもコンポスト化が可能であり、作成したコンポストもコマツナへの生育抑制は見られず、コンポストとして使用可能であることが判明した。また、食品廃棄物コンポストの原料に塩分を8%まで含有してもコンポスト化は可能であり、作成したコンポストを用い、施用量を10a あたりに1tと仮定すると、コンポスト中の塩分含有量は乾物あたり8%以下であればコマツナの生育に影響はないことが判明された。
著者
富濵 毅 尾松 直志 中村 正幸 岩井 久 瀧川 雄一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.259-268, 2010
被引用文献数
2

2007年の台風4号襲来時に鹿児島県の更新園や幼木園の徒長枝に,チャ葉の褐変症状が見られた.褐変症状からはチャ葉に高濃度で注入接種した場合に,過酸化水素の発生を伴う過敏感反応性症状を24~48時間以内に形成する細菌(以下,HRT菌)が分離された.2007年から2008年にかけて台風襲来後に発生したチャ葉の褐変症状から4種類のHRT菌が分離され,そのうち優先2種は細菌学的性質および16S rRNA遺伝子解析より,それぞれ<i>Herbaspirillum huttiense</i> および<i>Acidovorax avenae</i> に近縁な種であった.これらの細菌は,通常の付傷接種や野外条件においてチャ葉に病原性を示さなかった.しかし,台風襲来時に野外茶園においてHRT菌を噴霧接種したところ,翌日には原症状に類似した褐変症状が再現でき,病斑部分からは接種菌が再分離された.我々のデータは,台風襲来時のような特殊な条件下では本来は非病原性である細菌によって過敏感反応による被害が引き起こされうることを示唆する.<br>
著者
松浦 正孝
出版者
財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.146, pp.1-20,L5, 2006-11-17 (Released:2010-09-01)
参考文献数
56

Critics of Orientalism have pointed out that the concept of “Asia” lacks any real substance and that it was invented in opposition to the idea of “Europe.” Consequentially, by speaking of shared characteristics within Asia, one risks being dismissed as simply reproducing the foundations for either Euro-centric notions of “Asian despotism” and “Asiatic modes of production” or the ethnocentrism of modern Japan. Traditionally attempts to employ a politico-cultural approach that analyzes particularistic qualities of political phenomenon and systems different from Europe and America have been critiqued as tautological exercises fostering racism and stereotypes. However, while refraining from arguments based on innate particularities of a region or ethnicity, by looking at the diffusion and formation of shared systems of possible exchange, is it still not possible to historically consider a sort of political culture of the Asian region formed through path dependency? The birth of the EU brought us a greater focus on the leadership of politicians that initiated such a project, and at the same time highlighted the importance of common factors that accumulated in Europe such as the legacies of the Roman empire in the form of law and Christianity, post-medieval political unification, the history of tariff and monetary exchange, the Marshall Plan, and NATO.By employing a framework of broader regional Asian history, it may be possible to conceive of nations and regions in a new manner that corresponds to a globalization not bound by national borders. This trend was begun by pre-modern historians and has continued with recent research employing the notion of intellectual and cultural chains. However, attempts to historically analyze modern political, economic, and social conditions of a wider regional Asia as a whole have remained insufficient. To this end, this Introduction presents an historical model of six world orders that have come to exist in Asia over the course of history and thus hopes to relate events currently taking place in the greater Asian region during this century to earlier developments. The six imperial world orders elaborated include; 1) the imperial Chinese world order, 2) the Western imperial order (represented by the greater British empire), 3) the Japanese imperial order (The Greater Asian Co-prosperity Sphere), 4) the first American imperial order (from WW I to the end of the Cold War), 5) the Soviet imperial order, 6) and the second American imperial order (post-Cold War).This special issue has brought together both diplomatic historians and other specialists in order to historically analyze several phenomena unfolding on the stage of greater Asia between 1910 and 2000. Their articles all point to new possibilities for an Asian history that analyzes what traditional approaches based on unilateral and bilateral histories could not and, in their substantive quality, take a first step toward deconstructing the image of “Asia.”
著者
大井 智子
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.446, pp.30-37, 2008-04-25

3月25日、世界最長の木造歩道橋である静岡県島田市の蓬莱橋が、約8カ月ぶりに全面開通した。2007年の台風4号の被害で約70m分が流された。130年の歴史を持つ橋はたびたび被災しており、2005年に災害復旧と改良の工事を終えたばかりだった。島田市は今回の災害復旧に合わせて右岸側に根固めブロックを新たに設置し、対策の効果を検証する。
著者
寺本 行芳 下川 悦郎
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-9, 2007-12

2007年7月の台風4号に伴う大雨によって鹿児島大学附属高隈演習林で発生した林道法面の崩壊ならびに土石流の実態について調査した。得られたおもな結果は以下の通りである。(1)調査地でみられた斜面崩壊の形態として、林道法面における大隅降下軽石層とその上位の火山灰・軽石層で発生した肩部の崩落、自然斜面における風化土層中への雨水の浸透に起因した表層崩壊、林道法面および自然斜面における雨水の浸透および地下水に起因した深層崩壊が挙げられる。(2)土石流が発生した流域における生産・流出土砂量を現地調査に基づき求めた結果、生産土砂量は4,325m(3)(5,545m3/km(2))、流出土砂量は3,600m(3)(4,615m3/km(2))である。(3)現地調査の結果、流木は針葉樹林で覆われた斜面からだけでなく、広葉樹林で覆われた斜面からも発生していた。斜面崩壊に伴って生産された226m(3)の流木のうち、72m(3)が河道内で捕捉、125m(3)が流域最下流地点に流出、29m(3)が流域最下流地点より下流に流出している。
著者
小川 真
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.9, pp.450-458, 1966-09-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
5
著者
中西 千春
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.95-105, 2011

近年,欧州連合(EU)の外国語教育では,Content and Language Integrated Learningと言われる「内容言語統合型学習」(CLIL型学習)が,広く取り入れられている。教科を非母語で学ぶことにより,教科知識・語学力・思考力・コミュニケーション力を統合して育成するCLIL型学習は,画期的な学習法とされている。CLIL型学習では,「4C」と呼ばれるCで始まる4つの要素(Content, Communication, Cognition, Culture)を組み合わせて,質の高い教材・授業を作りだす。本論では,先行研究を概観し,CLIL型学習の定義と特徴,CLIL型学習導入に至ったEUの言語政策と実施状況を論じる。本論の目的は,EUにおけるCLIL型学習についての小論が,日本の外国語能力育成の議論に資するところにある。
著者
宮野 法近 国分 牧衛
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.351-356, 2010-07-05
参考文献数
10

宮城県では南部の玄米品質等級が他地域に比べ低いことが指摘されている。前報では出穂後20日間の日最低気温、日照時間および出穂期までの気温が等級に影響を及ぼしている可能性を指摘したが、移植から出穂期における気象条件の詳細な解析には至らなかった。そこで本研究では過去28年間を、ササニシキが中心に作付けされた1977から1993年まで(以後1993年まで)と、ひとめぼれが中心に作付けされた1994から2005年(以後1994年以降)に分け、1等米比率とm2当たり籾数の関係および移植盛期から出穂期までの気象条件がm2当たり穂数へ及ぼす影響について、県内の仙南、仙台、大崎地域間で比較検討した。1993年までは、全ての地域で一定のm2当たり籾数以上で1等米比率との間に負の相関があった。1等米比率と相関が見られた年次の各地域のm2当たり籾数は、m2当たり穂数と正の相関があった。m2当たり穂数は仙南地域が7月の積算日照時間、仙台地域が幼穂形成期から減数分裂期の日最低気温、大崎地域が7月の日最低気温とそれぞれ負の相関が見られ、影響を受ける出穂期前の気象条件は地域によって異なった。1994年以降においても、仙南、仙台地域ではm2当たり籾数と1等米比率の間には負の相関、m2当たり籾数とm2当たり穂数の間には正の相関があった。m2当たり穂数と相関を示す気象要因は、仙南地域が6月の積算日照時間、仙台地域が移植盛期から夏至までの日最高気温と正の相関が見られた。また、ササニシキ、ひとめぼれでは出穂期前後の気象条件が1等米比率へ及ぼす影響が異なっていた。
著者
柴田 清孝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.541-555, 1997-04-25
参考文献数
65

高層観測, ライダー, 衛星のデータは, 成層圏バックグラウンド硫酸エーロゾルが, 人為起源もしくは自然起源によって, 徐々にではあるが全球的に増加していることを示している. 本研究はこのような事実を受けて, バックグラウンドエーロゾル増加が放射過程のみでどの程度成層圏温度を変化させるかを調べたものである. 温度変化は季節変化を含む, 対流圏の条件と成層圏の力学加熱を処方するFixed Dynamical Heatingモデルで求めた. バックグラウンド濃度の2,3倍の変化(0.55ミクロンでの光学的厚さの変化は0.0087, 0.0174)に対して放射の変化, 従って温度変化は線形応答を示した. 2倍増に対する太陽, 赤外, ネット放射の放射強制力はそれぞれ-0.18, 0.03, -0.15 Wm^2であった. 3倍増に対して低緯度中下部成層圏は赤外放射が支配的であるため, 約0.15度の昇温があり季節変化は非常に小さかった. 一方, 高緯度は太陽放射が支配的で, 約0.15度の降温があり, 夏至冬至に最大で春分秋分に最小になる0.1度の振幅の半年振動が顕著であった. 緯度帯による差や南北半球の差も基本場の温度やその季節変化との関連において述べられている.
著者
仲條 眞介 吉田 宏 大清水 保見
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東北支部会報 (ISSN:09117067)
巻号頁・発行日
no.51, pp.57-58, 2008-12-20

短稈アワ育成を目的としたγ線照射による突然変異育種の過程で、到穂日数が原品種の1/2程度しかない極早生変異系統が得られた。本系統を夏至の前後の2時期(5月25日、7月2日)に播種した場合の到穂日数は、それぞれ38日、35日と変化が少なかった。本研究では、この変異系統の極早生化の成立要因を明らかにするために、短日処理と長日処理を行い、その出穂反応を調査した。日長。条件。
著者
桑原 尚夫 大串 健吾
出版者
電子通信学会
雑誌
電子通信学会論文誌 A (ISSN:03736091)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.p545-552, 1983-06
被引用文献数
18
著者
青海 忠久 木下 泉 田中 克
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.321-326, 1993
被引用文献数
12 45

The predator-prey relationship of crangonid shrimp <i>Crangon affinis</i> and juvenile Japanese flounder <i>Paralichthys olivaceus</i> was examined under laboratory conditions.<br> Visual observation and the carcasses of the juvenile flounder provided an insight to the predatory process. The shrimp hooked the juvenile flounder with their movable chcla, and devoured in the order of the abdomen, tail, trunk, eyes, and head.<br> Predation rates: the percentage of flounder lethally attacked by the shrimp per container and numbers of lethally attacked flounder juveniles per shrimp decreased as the size of the flounder increased. These values were greater during dark periods than during light periods. This fact indicates that shrimp are more active and effective predators at night. The daily ration of shrimp was roughly estimated to be 20-25% of their body weight, based on the mean weight of prey consumed daily per 1g of the predator. The maximum size of flounder susceptible to shrimp predation was expected to be larger than 25mm SL. These results suggest that predation pressured by shrimp is considerably heavy on newly-settled Japanese flounder, especially at night.