著者
志倉 興紀 志倉 敬章 内川 竜太朗 山本 昭夫 富田 美穂子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.385-395, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
39

目的 : 近年, 定期歯科検診を受診する人は増加してきたが, いまだ勤労者の受診率は低い. そこで, 第3次産業勤労者の定期歯科検診への意識と口腔保健行動を調査し今後の啓蒙活動を検討した. さらに, 歯科医師が職場を訪問して実施するブラッシング指導 (TBI : Tooth Brushing Instruction) の効果を明らかにし, 保健指導の対策を考察した. 材料と方法 : 第3次産業の勤労者を対象に業種, 年齢, 性別, 定期歯科検診受診の有無と受診しない理由, 齲蝕の有無, ブラッシングの知識・回数・時間, 補助器具 (歯間ブラシ・フロス) の使用, 定期検診を受診するためのシステムに関する要望, 8020への関心度のアンケート調査を実施し, 定期歯科検診を受診している (検診有群) こととの関連項目を検討した. また歯科定期検診を受診していない群 (検診無群) のなかから抽出した研究対象者を, ブラッシング指導をする群 (TBI群 : 11名) としない群 (コントロール群 : 10名) に分け, 半年ごとに計4回各研究対象者の職場を訪問してPCR (Plaque Control Record) 計測を実施した. そして, 両群の初回と各回のPCR値を比較することでTBIの効果を検討した. 結果 : アンケート総配布数647枚に対して, 回答が得られたのは378枚 (回収率は58.4%) であった. また, 検診有群は107名, 検診無群は269名であり, 定期歯科検診を受診しない主な理由は 「時間がない」 であった. 定期歯科検診に関する希望のシステムは, 検診有群では 「リコールの連絡」 で, 検診無群では 「訪問による検診」 であった. 定期歯科検診を受診していることは, 年齢 (オッズ比1.61), 女性 (オッズ比1.83), 齲蝕なし (オッズ比2.24), ブラッシングの知識 (オッズ比3.62), 歯間ブラシの使用 (オッズ比2.41), フロスの使用 (オッズ比2.09) と有意な関連を示し, ほかの項目とは関連が認められなかった. 職場訪問によるPCRの結果は, TBI群では初回に対して2回目 (p<0.05), 3回目 (p<0.01), 4回目 (p<0.005) の値が有意に低下し, コントロール群においても初回に対して3回目 (p<0.05), 4回目 (p<0.01) の値は有意に低下した. 結論 : 定期歯科検診を受診することは, 「口腔保健に関する知識」 「女性であること」 「40歳以上の年齢」 「補助器具の使用」 が強く関与していた. また, 勤務先へ出向いて実施するTBIや検査は, 口腔清掃に対する行動変容に影響力があることが明らかとなった. 今後, 40歳未満の勤労者や男性の意識改革を強化するとともに, 訪問指導をするなどの歯科医師の能動的なアプローチが重要である.
著者
髙田 礼人
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.243-247, 2006 (Released:2015-06-19)
被引用文献数
2

Enveloped viruses have a lipid bilayer (envelope) surrounding viral components including their genomic DNA or RNA. The entry of these viruses into host cells requires membrane fusion between viral envelope and host cell plasma membrane. Envelope-associated glycoproteins bind to the specific receptors and catalyze membrane fusion. Newly synthesized viral proteins and genomic nucleic acids are incorporated into new envelope at the final stage of virus replication, budding. This article reviews the interaction between viral proteins and host cell membrane.
著者
乾 直輝 須田 隆文 千田 金吾
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第35回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.12, 2007 (Released:2007-10-12)

肺および気道における免疫機構の特色は、豊富な血流を介した抗原のみならず、外来性の病原微生物や異物などの吸入抗原に対しても効率的に免疫反応を働かせる必要があるため、気道粘膜における免疫機構が発達してきた点にある。今回の発表では、気道粘膜免疫の誘導組織としての気管支関連リンパ組織(bronchus-associated lymphoid tissue : BALT)およびその構成成分であり強力な抗原提示細胞である樹状細胞(dendritic cell: DC)に焦点を当てる。 BALTは,細気管支粘膜下にみられるリンパ濾胞で,抗原特異的な分泌型IgA 抗体産生細胞を気道に分布させるための誘導組織として気道の粘膜免疫の中心的な役割を担っている。このBALTの発生,過形成には持続する外来性の抗原刺激と感作Th2細胞から産生されるIL-4などのサイトカインが重要であり、BALTが発生・顕在化すると、IgA循環帰巣経路の誘導組織として吸入抗原を積極的に取り込み、抗原特異的なIgA抗体産生を誘導する。我々は健常ヒトでは存在しないBALTが,びまん性汎細気管支炎,慢性過敏性肺炎,膠原病関連肺疾患において顕在化することを明らかにし、病態との関連性を解明した。 また、抗原に対して効率的に免疫応答が働くために、DCが集積し活性化され、T細胞へ効率的に抗原提示を行う必要がある。肺では大部分のDCが肺胞および気道上皮直下間質に存在し、他の細胞と協調しながら免疫応答を進めているが、我々は肺DCが脾DCや他の抗原提示細胞と比較し強力なIgA誘導能を持つことを示した。呼吸器疾患や病態におけるDCの存在と機能を検討では、びまん性汎細気管支炎で細気管支領域の粘膜下組織に主として成熟したDCが集族し、small airwayにおける抗原提示に中心的な働きをしていた。またBCG誘導肺肉芽腫病変では、肉芽腫周囲にBCG投与14日まで増加するDCが観察され、更にこのDCはnaive及びBCG特異的T細胞刺激能を有した。
著者
高橋 丈博 田中 利和 渋谷 昇 伊藤 健一 高橋 康夫
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
サーキットテクノロジ (ISSN:09148299)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.314-319, 1992-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
7

プリント配線板における配線設計を行う上での設計指針を与えることを目的とし, ビアをもっ配線板で信号伝送測定を行い, 配線ビアの信号伝送波形への影響を調べた。この結果, 立ち上がり1ns程度の波形に対して, 伝送波形はほとんど変化せず, ビアの個数やクリアランスの大きさを変えても波形はほとんど変化しなかった。ビア部分の特性インピーダンスを測定したところ, 特性インピーダンスはクリアランスの大きさに依存し, 配線部の特性インピーダンスから20%程度違っていた。しかし, 伝送波形の計算を行い, ほとんど影響を与えないことが計算でも確認された。つぎに, 信号の立ち上がり時間, ビアの特性インピーダンスとの波形歪と関係を計算し, 立ち上がり時間が速くなってくるとビアの影響が波形に現れてくることを明らかにした。
著者
緒形 俊夫
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-19, 1997-01-31 (Released:2011-04-19)
参考文献数
7
著者
清水 健太郎 小倉 裕司 高橋 弘毅 和佐 勝史 平野 賢一
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.95-102, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
41

リフィーディング症候群は,飢餓状態にある低栄養患者が,栄養を急に摂取することで水,電解質分布の異常,心合併症を引き起こす病態であるが,低血糖との関連は明らかではない.BMIが14未満の低血糖を伴うリフィーディング症候群を発症した12例の本邦報告例を検討したところ,たこつぼ型心筋症や心停止を含む致死的な心合併症を10例に発症していた.機序は不明な点が多いが,低栄養状態でのエネルギー供給による過剰なインスリン分泌が低血糖を生じ,低血糖によるカテコラミンの過剰分泌がたこつぼ型心筋症をひきおこすことが推察された.また,心筋への不十分なエネルギー供給が心合併症の要因と考えられた.この病態は重症化する可能性があるため,極度の低栄養患者には心電図モニターや血糖値および電解質管理等の全身管理を要する.目標投与エネルギー量を適切に設定し,リフィーディング症候群およびそれに伴う合併症を予防しつつ厳密な栄養管理が必要である.
著者
金村 敦夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.326-332, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

筆者は酒造会社の販売部門で50年も, 飲酒の現場に深くかかわって来て,「酒道」はどうなっているか,「飲酒の品格」はどうか,「これで将来は?」などと深い思いを重ねて来たにちがいない。筆者は飲酒の歴史を調べ, その作法 (酒道) の由って来たるところを調べ論じている。酒道は自然や稲作を通しての祈り, 神祭の中から「盃事」となり, 武家の「武三献」そして「三三九度の盃」として長く伝えられて来た。一方, 世相の変化と共に飲酒に無礼講や一気飲みの酔態など, 乱れが案じられる, と。しかし筆者は日本人の品格ある飲酒の道は日本人の和の心, 繊細な感性と武士道の精神があるから大丈夫だろうと説いています。お酒を提供する側の方々には, 生活様式が変ってしまっている今日ですが, 品格ある飲酒の道を実践して, 楽しい会話や団樂によって愛酒をひろげ, 業界の活性化にも, と願うものです。
著者
高橋 祥友
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.8-14, 2008-03-01 (Released:2012-10-30)
参考文献数
14
著者
楠木 豊
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 1971-05-30 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

1. '69年1月から5月まで広島県下の五日市, 音戸, 三高, 安芸津のカキ養殖場で, 毎月1回海水中色素量と, そこに養殖されているカキの消化盲のうの加熱による緑変を調べた。又培養藻類でカキを飼育し, 消化盲のう中の色素との関係をみた。2. 消化盲のう部の色は1月が最も濃く, 月とともにうすくなる傾向にある。又場所別にはカキの成長の良いところが色が濃い。3. この緑変の程度は, カキの体内に取り入れられる海水中色素量と密接な関連が認められた。4. 消化盲のう部の色の変化は速かで, 5日程で, その前の影響は殆んどなくなる。5. 人工飼育したカキの消化盲のう部の色素は, 給餌したプランクトンの色素と同じ吸収曲線を描いている。6. これらのことから, 緑変の色素は海水中の植物プランクトンに由来することが認められた。
著者
松木 良介 竹之下 康治 大山 順子 清木 祐介 佐々木 匡理 堀之内 康文 白砂 兼光
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.590-595, 2005-12-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

Removal of mandibular third molars is one of the most common operations in oral surgery. Hypoesthesia of the lower lip occurring after the extraction of third molars is a serious complication, requiring a prolonged time for recovery. In this study, we investigated factors potentially affecting the incidence of hypoesthesia.A total of 781 mandibular third molars extracted at our clinic in 2002 were examined. There were 17 cases (2.2%) of hypoesthesia of the lower lip. There was no relation of gender, difficulty of extraction, or the skill of the operator to the incidence of hypoesthesia. In contrast, the incidence of hypoesthesia strongly correlated with age and the root position of mandibular third molars with respect to the mandibular canal.Eleven of the 17 cases of hypoesthesia (64.7%) resolved within 1 month, and 16 of the 17 cases (94.1%) resolved within 6 months. The patients who had hypoesthesia for more than 1 monthwere significantly older than those who recovered from hypoesthesia within 1 month and were all female.These results might be useful when informing patients about potential complications of tooth extraction.
著者
河原 武敏
出版者
日本庭園学会
雑誌
日本庭園学会誌 (ISSN:09194592)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.1, pp.6-16, 1993-03-01 (Released:2011-05-20)
参考文献数
7

庭上における四季の景物を代表する「雪月花」を契機とする私的行事及び遊びが、平安期の庭園内においてどの様に享受されたかに就いて、王朝文学から明らかにした。その結果、「雪」には、雪まろばし・雪山作り・雪見。「月」には月見の宴・月と納涼・月見。「花」には花の宴・花見と散策。その他庭上の遊びには舟遊び・蹴鞠などの存在が確認され、これらは我が国におけるこの種の行為の原点であることを、関連する絵巻物その他から指摘した。
著者
藤沢 彰
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.384, pp.97-107, 1988-02-28 (Released:2017-12-25)

A sanctuary has allways an entrance : a gate. Sometimes these gates are built with wooden stage. They are called "Ro-Haiden" in Yamaguchi area. This paper will clarify that the "Ro-Haiden" of Yamaguchi area was built and spread under the influence of Todaiji-Hachimanga Shrine and Hofu-TemmangU Shrine. The "Ro-Haiden" was used not only as a passage but also as a ritual place. The content 1. Introduction 2. The style and its' distribution of the "Ro-Haiden" in the area of Yamaguchi 3. Ceremonial practices at the "Ro-Haiden" (1) In Hofu-Temmangu Shrine (2) In Aiosho-Hachimangn Shrine 4. The formation of the "Ro-Haiden" and its' distribution. (1) A review of hitherto published theories about the "Ro-Haiden" (2) The relation between Todaiji-Hachimanga Shrine and Hofu-TemmangQ Shrine in the Kamakura era (3) The area formed by the "Kechienshn" of Hofu-TemmangQ Shrine (4) The distribution of the "Kechiensha" group [Hofu-Temmanga Shrine] and the distribution of the "Ro-Haiden" 5. Conclusion
著者
西野 力男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.530-534, 1991-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

OD(orthostatic dysfunction)の母親80例の心因的要因につき検討し, エゴグラムでは, CP;13.8±4.8, NP;18.6±5.0, adult;15.8±4.5, FC;12.7±4.3, AC;14.6±4.1でFCに比しACが高いことから自主性のなさや日ごろのイライラや不満や悩みが生じやすく, 高いNPは子供に対し過干渉となりやすい傾向にあるものと考えられた. バウムテストにおいても, 正常とおもわれるのは10%しかなく, 単純型73%, 未熟型56%, 神経質型12%, 不満型7%で, 単純型・未熟型が大部分を占めていた. 単純型や未熟型は自主性がなく, 独自性に欠ける性格と考えられる. 今回の成績からODの母親は心理的不安定となりやすく, 子供にとっては学校生活のみならず家庭においても緊張が絶えず心理的不安定が助長されている可能性が示唆された.