著者
上 真一 井関 和夫 柳 哲雄 大津 浩三 井口 直樹 上 真一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

2002年以降ほぼ毎年のようにエチゼンクラゲが大量出現し、エチゼンクラゲ大発生は東アジア縁海域全体の環境問題となっている。また、沿岸域ではミズクラゲの大量出現が相変わらず継続しており、クラゲ発生の機構解明と制御方法の開発は重要な課題となっている。本研究ではクラゲ類の大量出現に関し以下の成果を得た。(1) 黄海、東シナ海のエチゼンクラゲの目視調査下関-青島、上海-大阪間の国際フェリーを利用した調査から、本種は6月中旬から中国沿岸域で出現し始め、7月下旬に対馬近海に到達することが明白となった。本フェリー調査は、本邦沿岸域の大量出現を早期予測するために不可欠の項目となった。(2) エチゼンクラゲ生活史の解明本種のポリプからクラゲに至る飼育に成功し、生活史の解明を行った。本種の無性生殖速度は、ミズクラゲに比較すると1-2オーダーも低かったが、ポドシストは水温5-31℃、塩分5-33の範囲で生残し、さらに有機物に富んだ泥中でも生残可能であったことから、高い環境耐性を有することが確かめられた。ポドシストの一斉出芽が大量発生を引き起す要因となる可能姓が指摘された。(3) ミズクラゲポリプの貧酸素耐性と天敵生物による捕食ミズクラゲのポリプは貧酸素条件下(>3 mg O_2L^<-1>)でも無性生殖能力があった。エビスガイ、クモガニは特異的にポリプを捕食する天敵生物であることが明らかとなったが、これらは貧酸素条件下では生残は不可能であった。富栄養化などに伴う海底の貧酸素化がミズクラゲの大量発生をもたらす一因となることが明らかとなった。また、温暖化もクラゲの増加をもたらすと推定された。
著者
大塚 攻
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ : 日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
no.2, pp.3-12, 1997-02-10
被引用文献数
1

The Tantulocarida are small maxillopodan crustaceans ectoparasitic on amphipods, cumaceans, isopods, tanaidaceans, copepods and ostracods. The group consists of five families, 17 genera, and 25 species, two of which have so far been recorded in Japanese waters. Their taxonomy is based mainly on the morphology of their tantulus larvae and, in addition, adult females and males. Recently two life cycles have been discovered in tantulocaridans : parthenogenetic and sexual. The dispersal phases are tantulus larvae and sexual males and females, all of which are non-feeding stages. Host-specificity seems to be relatively low because a single species has been found infesting nine species of copepods in six families and three orders. These parasites may suppress their hosts' ecdysis. Future studies on the Tantulocarida are proposed.
著者
鶴 宏史
出版者
神戸親和女子大学教育専攻科
雑誌
教育専攻科紀要 (ISSN:13432850)
巻号頁・発行日
no.9, pp.69-82, 2005-03

本論文では,筆者が担当する社会福祉援助技術演習における「非言語的コミュニケーションの観察」の演習を取り上げ,そこで学生が何を学んだのかを,学生の振り返り用紙を分析することによって明らかにすることを目的とする。27名の学生の振り返り用紙を分析の結果,1)直接的な観察による非言語的コミュニケーションの持つ特徴を学んだこと,および,2)観察で発見したことと受講生自身の過去や経験を結びつけ,「相互に『見る-見られる』関係」に気づくこと,が明らかになった。
著者
長野 翔一 市川 裕介 小林 透
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.734-746, 2012-04-01

時々刻々と変化するユーザの興味に連動して,提供する情報を変化させるために,ウェブページの閲覧履歴から短期的な興味のプロファイルを作成する試みが広く行われている.しかし,複数の短期的な興味をもって閲覧された履歴からプロファイルを構築すると,興味が平均化され,特徴が失われるという問題がある.我々は,この問題を解決するために,閲覧履歴間の意味的な類似性を利用してクラスタリングを行うことで,複数の短期的な興味プロファイルを抽出する必要があると考えた.過去の研究において,K-means法をはじめとしたクラスタリング方式により履歴を分類し,複数の長期的な興味を扱う方式が提案されている.しかし,これらの方式は,閲覧履歴が統計的な分布法則に基づいていることを前提としており,入力となる履歴数が少ないことが想定される短期的な興味抽出への適用は困難である.そこで,本論文では,入力となる閲覧履歴が少ない場合でも有効なクラスタリング方式を提案する.
著者
岸本 直樹 若原 俊彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.769-777, 2012-04-01

本論文ではSNS (Social Networking Service)の投稿記事を地図や時間の付加情報と連動させた新しい時空間情報共有システムを提案し,このシステムのユーザ間の情報伝搬特性を検討したものである.具体的には,この時空間情報共有システムのプロトタイプを構築し,ユーザに1年間実際に使用してもらい,コミュニケーション支援実験を行って,実験から得られたデータからクラスタ係数や密度,平均パス長などの指標を用いてネットワーク特性の評価を行った.この結果,本システムに参加したユーザは41人で福岡地方に限られてはいるが,クラスタ係数は0.50以上,密度の値は0.80以上と高く,平均パス長が短いという結果が得られ,非常に密なネットワークを構築できた.これにより,ユーザ間のコミュニケーション支援に役立ち,日常的に情報を共有するライフログとして活用するシステムとしての有効性を確認した.
著者
堀澤 健一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、タンパク質の試験管内スクリーニング技術であるin vitro virus (IVV)法を応用し、アルギニンメチル化酵素群の標的となる基質タンパク質を、試験管内で網羅的に解析する系の構築を目指した。代表的なアルギニンメチル化酵素であるPRMT1の基質タンパク質の試験管内スクリーニングのモデル系を構築し、種々の検討を行った。その結果、夾雑タンパク質存在下において既知基質タンパク質が1度のプルダウン操作により約11倍濃縮されることを確認でき、PRMTs基質タンパク質の試験管内探索のモデル系を確立することができた。
著者
安村 典子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ヘレニズム文学の至宝、カリマコスの諸作品を研究し、(1)カリマコス詩歌の文学的意義を考察すること、(2)カリマコスを中心とするヘレニズム文学の特質について考察すること、(3)カリマコス並びにヘレニズム文学が後代に与えた意義を究明すること、主としてこの三点に焦点をあてて考察した。カリマコスの作品は、神々への『讃歌集』6編と『起源物語』、それに風刺詩の断片が残るのみである。いずれの作品もいまだ日本語に翻訳されておらず、その研究もほとんど行われてこなかった。本研究では、これらの作品を初めて日本語に翻訳し、それらが緻密で文学技巧を駆使した薫り高い文学であることを研究した。これにより、古典文学に関心を抱く人々にカリマコス文学の全容を提示するものである。
著者
佐々木 貴教
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では、地球型惑星の大気および表層環境について、その形成と初期進化を理論的手法によって議論する。初年度に初期金星大気の進化についての結果が得られたので、前年度からはより一般的な地球型惑星に着目して研究を進めた。近年発見が相次いでいる太陽系外の地球型惑星、および巨大な地球型惑星(スーパー地球)について、その系の特徴が木星・土星の衛星系の特徴と類似している点に注目し、巨大ガス惑星周りの衛星形成についての研究を行った。具体的には、惑星形成モデルを衛星形成に適応することにより、木星・土星の衛星系(ガリレオ衛星・タイタン)の形成過程を計算した。計算の結果、衛星形成環境の違いから、木星・土星の衛星系の特徴の違いが自然に説明されることが明らかになった。また近年注目されている原始惑星系円盤内での氷境界の移動について、その表式を惑星形成モデルに組み込み、様々なパラメータの下で形成される地球型惑星の特徴について見積もった。その結果、氷境界の移動を考慮すると極めて水に富んだ地球型惑星しか作ることができないことが示唆された。以上の結果は、太陽系やスーパー地球系の形成過程の違いにも重要な示唆を与えており、今後一般的な地球型惑星の形成・進化の議論が大きく進むことが期待される。また巨大ガス惑星周りに形成される周惑星円盤の特徴を議論することで、原始星周りに形成される円盤についても新たな知見が得られている。これも地球型惑星の形成環境を議論する上で非常に重要な結果である。以上の成果について、複数の論文および学会において発表を行った。
著者
関忠盛
雑誌
臨床精神病理
巻号頁・発行日
vol.1, pp.195-209, 1980
被引用文献数
1
著者
上枝 美典
出版者
福岡大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、現代認識論(分析系知識理論)において現在脚光を浴びている「徳認識論」(virtue epistemology)の理論的整備の一助として、「徳」という概念の明確化を計るものである。方法論は以下の通りである。まず、「徳」概念を、そのルーツである西洋古典思想の文脈の中で分析し、その主要な要素を抽出する。次に、現代認識論における「徳」概念を、同様に、現代認識論の文脈の中で分析し、主要素を抽出する。次に、双方の主要素を比較することによって、二つの文脈における「徳」概念の共通性と相違点を明らかにする。最後に、それらの相違が持つ哲学的、哲学史的意味を考察する。西洋古典思想における「徳」概念の分析として注目すべきは、13世紀のキリスト教神学者トマス・アクィナスの主著『神学大全』第2部第55問題「徳の本質について」の論述である。その論述を総合すると、「徳」(特に、人間的な徳)とは、人間に固有な理性的能力をして、善い結果を生み出すように働かせるような、一種の習慣である。一方、現代認識論における「徳」についてであるが、「徳」概念の理解に関して、大きく二つのグループが存在する。この二つのグループの関係については、本研究の計画段階では、未だ明らかでなかったが、研究を進める中で、それぞれ異なる二つの徳認識論と見なすべきではないかということが、次第に明らかになった。一つのグループは、Ernest Sosaに代表されるグループであり、Alvin Plantinga,Alvin Goldman,John Grecoらが、主要なメンバーである。彼らは、様々に変化する状況において、安定して真なる信念を生み出すような能力のことを「徳」と呼ぶ。もう一つのグループの代表はLinda Zagzebskiであり、アリストテレス的な行為者の動機を重視した「徳」理論を、そのまま認識論に持ち込もうとする。これら双方は、古典的徳理論の二つの解釈可能性を示すものとして興味深い。
著者
堀 裕次
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

Arl13bはArf/Arlファミリーに属する低分子量G蛋白質であり、近年の順遺伝学的手法を用いたスクリーニングにより、その欠失により繊毛の形態や機能に異常を生じることが明らかとなってきた。ヒトにおいてもArl13bの変異が繊毛性疾患であるジュベール症候群を引き起こすことが知られている。これまでに申請者らは、哺乳動物細胞および線虫を用いた解析により、Arl13bがN末端側に受けるパルミトイル化修飾により繊毛の膜に局在し、繊毛内物質輸送システム(IFT)を介した繊毛の正常な形成および機能に関与することを見出していた。本年度はArl13bの繊毛への局在化メカニズムの解明を試み、Arl13bのパルミトイル化酵素の探索を行った。その結果、Arl13bがゴルジ体に局在するパルミトイル化酵素によってパルミトイル化される可能性を見出した。そこで培養細胞を用いてゴルジ体からの小胞輸送系を阻害したところ、Arl13bの繊毛への局在量が減少し、代わりにゴルジ体に集積する様子を観察した。実際にゴルジ体からの小胞輸送系を遺伝子発現抑制法により阻害しても、Arl13bの繊毛への局在量が減少したことから、Arl13bがゴルジ体でパルミトイル化された後、小胞輸送系を介して繊毛へと運ばれている可能性を見出した。今後Arl13bの機能および局在化メカニズムのより詳細な分子基盤を探ることにより、繊毛の形態維持機構や繊毛性疾患の発症機構が明らかになることが期待される。
著者
石川 裕
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.759-764, 2003 (Released:2005-09-28)
参考文献数
4

This paper introduces an overview of the SCore cluster system software running on the Linux operating system. SCore utilizes PC cluster hardware efficiently and provides its users a high-performance parallel programming environment. This paper also presents brief installation information for the end-users.