著者
河野 荘子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は、非行少年の自己統制能力に関して、非行進度と家庭環境との関連性から検討し、学会で口頭発表をおこなった。本研究では、非行少年(少年鑑別所に入所中の男子少年、平均年齢16.4歳)の自己統制能力と、非行進度(過去の施設入所歴の有無・少年鑑別所への入所回数・非行の初発年齢の3つの下位分類からなる)、家庭環境(実父の有無・実母の有無の2つの下位分類からなる)の関連性を検討するため、共分散構造分析をおこなった。その結果、実父母と何らかの要因によって、生別もしくは死別し、家庭環境が不安定な状態になると、自己統制能力が低くなることが示された。家庭環境が不安定になると、しつけがおろそかになってしまいがちとなり、自己統制能力の低さに結びつくと解釈できた。しかし、自己統制能力の低さと非行進度との関係性は、意味のある結果を見出すことができなかった。こうなった要因の1つとして、少年鑑別所入所者は、受刑者よりも比較的犯罪傾向が進んでいないため、施設入所歴や少年鑑別所入所回数といった客観的指標のみでは非行進度が明確になりにくい可能性が考えられた。非行行動に関わる機会が多いなどの環境の問題も考慮に入れる必要があるかもしれない。上記の結果を、犯罪者の自己統制能力の構造と比較すると、どちらも、実父母の有無は、自己統制能力の形成に大きく影響を及ぼすことが指摘できた。ただ、犯罪者は実父の有無の影響をより大きく受けていることが示されていたが、非行少年に両親の間で影響の差は見られなかった。非行少年から犯罪者へと、反社会的傾向を強める者は、実父との関係に何らかのより大きな問題を抱えていることが推測された。
著者
小笠原 正幸
出版者
宇都宮大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

リンゴでは,伐採跡地に植えた苗木の生育は劣り,樹冠の拡大が悪いため思うように園地を充実できないことが多い.本研究では,改植障害を回避し樹勢をコンパクトに生育させ,省力的で高品質な果実生産のできる新たな栽培技術の可能性を検討した.供試品種は'ふじ'とし,伐根後定植5年目の地植区,伐根後植穴に遮根シートを埋設した定植5年目の遮根区,伐採後伐根はせず株間の中間に植穴を掘り,そこに不織布ポットを埋設した定植4年目の不織布区を設けた.調査方法は,生育特性,生育中の果実品質,収穫果の果実品質,収量,剪定時間および剪定枝重を調査した.生育特性についてみると満開時期は遮根区・不織布区で4月22日,地植区で4月24日,収穫時期は遮根区・不織布区とも満開後202日目,地植区においては満開後204日目であった.生育中の果実についてみると,果色は遮根区が優れた.収穫果実についてみると,硬度は遮根区で14.4ポンドと高かった.糖度は全処理区において15.3%前後,酸度においては,遮根区で0.227%と低かった.収量,剪定時間および剪定枝重についてみると,総収量は地植区で37.3kg,遮根区で22.9kgおよび不織布区では19.4kgとなったが,上物率からみると地植区で94%,不織布区で71%および遮根区50%と地植区が優れた.剪定枝生体重は不織布区で2,767gと多く,遮根区では140gと少なかった.剪定時間は地植区で19分24秒,遮根区で13分37秒と短くなった.以上の結果から地植区と比較すると,遮根区は遮根により根の伸長が抑制され,新梢長の早期停止による葉数の減少と葉面積の減少が着色を向上させたと思われる.不織布区はポットの側面は根が貫通する不織布のためか,地植区と同等の果実品質を示しており,樹勢の衰弱もなかった.以上のことから,根域の違いの影響は地上部の生育に顕著に現れたためであり,今後更なる検討を行い,本農場リンゴ園における改植更新からの早期成園化の適切な技術を明らかにして行く予定である.
著者
樋上 義伸 友杉 直久 西邨 啓吾 加登 康洋 小林 健一 福田 繁 岡田 保典
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.734-738, 1981
被引用文献数
2

われわれは劇症肝炎様転帰をとった悪性リンパ腫の1剖検例を経験したので報告する.症例は60歳男性で昭和54年4月20日より全身倦怠と黄疸が出現したため4月24日に当科に入院した.入院時黄疸が著明で肝は剣状突起下7横指触知されたが,表在リンパ節腫脹は認められなかった.検査成績では直接ビリルビンの増加と胆道系酵素の上昇が著明で閉塞性黄疸のパターンを示していたが,腹部超音波検査では肝内・肝外胆管の拡張は認められなかった.入院後発熱,出血傾向,腹水,無尿,意識障害が出現し,4月28日死亡した.剖検では全身リンパ節,肝,脾,副腎,皮膚,顎下腺に腫瘍細胞の浸潤があり悪性リンパ腫と診断された.肝臓は広範性肝細胞壊死の状態で,腫瘍細胞は門脈域でび漫性浸潤を示し,腫瘍結節形成も認められた.広範性肝細胞壊死の機序としては,死亡直前にエンドトキシンショックの臨床像を呈していたことより臓器Shwartzman反応の関与が考えられた.
著者
近藤 満
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

金属錯体ユニットの水素結合による連結や一次元型配位高分子の集積を利用したチューブ状チャンネルを構築した。これらの金属錯体を用いて、メタノールの除去と接触に応答したチャンネル骨格の崩壊と再構築、メタノールの添加を契機としたより大きなゲスト分子の捕捉に成功した。一方、一次元型配位高分子を用いて、温度に応答してチャンネル構造を可逆的に変化させる相転移挙動を発現させることに成功した。
著者
山下 俊一 小西 眞人 中山 晋介 中林 誠一郎 國分 眞一朗
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:13428152)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.J-38-J-38, 2006-04

rights: 日本平滑筋学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110006194618/
著者
Reeko SATO Saori KOBAYASHI Yuya ABE Hiroaki KAMISHINA Shinichi Oda Jun YASUDA Juso SASAKI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1204140815, (Released:2012-04-24)
被引用文献数
1

This study reported detailed clinical effects of bovine lactoferrin on two canine littermates (1 female and 1 male) with familial neutrophil dysfunction and an investigation of their genetic background. Clinical signs caused by severe upper respiratory bacterial infections were observed in these dogs. Oral administration of bovine lactoferrin for a long duration improved their clinical signs (severe uveitis in the female dog and coughing from pneumonia in the male dog). Their backcross dogs that have the same father didn't show clinical signs of bacterial infection. Neutrophil function tests revealed that the backcross dogs didn't have any disorders. It is likely that abnormal clinical signs are associated with neutrophil dysfunction in the colony and the mother dog of these cases might be the genetic carrier of this dysfunction.
著者
Seong-Sung KWAK Seung-A CHEONG Yubyeol JEON Sang-Hwan HYUN
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1204140816, (Released:2012-04-24)
被引用文献数
14 16

We examined the effects of porcine granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (pGM-CSF) on the in vitro development of porcine embryos produced by somatic cell nuclear transfer (SCNT) for the first time. We evaluated the effects of pGM-CSF on SCNT-derived blastocyst formation and investigated gene expression. A total of 522 cloned embryos in 6 replicates were treated with 10 ng/ml pGM-CSF during in vitro culture (IVC). This treatment significantly (P<0.05) increased blastocyst formation and total cell number in blastocysts compared to the control (12.3% and 41.4 vs. 9.0% and 34.7, respectively). However, there was no effect on cleavage rate. The number of cells in the inner cell mass and trophectoderm were significantly higher in the pGM-CSF treatment group (6.0 and 43.0, respectively) compared to the control (4.4 and 31.9, respectively). Treatment with 10 ng/ml pGM-CSF significantly increased POU5F1 and Cdx2 mRNA expression in blastocysts. In addition, Bcl-2, Dnmt1, and proliferating cell nuclear antigen (PCNA) mRNA expression were up-regulated in blastocysts in the pGM-CSF supplemented group compared to the control. These results suggest that pGM-CSF improves the quality and developmental viability of porcine SCNT embryos by regulating transcription factor expression.
著者
林 英夫
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.127-145, 2010 (Released:2011-01-22)
参考文献数
98
被引用文献数
2 1

The main purpose of this article is to provide a diverse range of positive evidence that refutes groundless arguments against mail surveys. A versatile set of methodological studies are employed to clarify key factors: return rate, length of time required to conduct surveys, cost requirements, answers by proxy respondents, and ability to obtain straightforward answers. Consequently, the author shows that mail surveys are recognized by most respondents as a survey method that is easy to respond to, simple to participate in, and convenient for filling out and submitting a questionnaire. Furthermore, this work introduces several successful cases of converting methodology from personal interviews or drop-off/pick-up surveys to mail surveys, as well as using these methods together. In particular, the author emphasizes the need for further discussion to clarify the definitions of technical terms, to concretely describe the survey processes used for research papers, and to eventually standardize the quality of survey results so that systematic reviews can be conducted sometime in the very near future.

1 0 0 0 OA かげきよ 2巻

出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],

1 0 0 0 OA かげきよ 2巻

出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
日下部 元彦
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

宇宙背景放射の観測から推測されるバリオン密度に対して標準ビッグバン元素合成理論が予言する^7Liの存在度が、昔できた星で観測される存在度と一致しない問題がある。この問題の原因として、強い相互作用をするエキゾチックな重い長寿命粒子の効果が可能性として考えられる。宇宙初期に色を持つエキゾチックな重い長寿命粒子(Y)が存在すると、色の閉じ込めにより、強い相互作用をするエキゾチックな重い粒子(X)に閉じ込められると考えられる。Xの組成は、宇宙初期のクオーク・ハドロン相転移後に、2つのX粒子の衝突に付随する対消滅で減少する。X粒子は通常の原子核と束縛状態を形成し宇宙の軽元素組成に影響を与え得るのだが、その影響は宇宙で元素合成が起こる時期のXの存在度に依存する。今年度は、強い相互作用をするX粒子に閉じ込められる、色を持つY粒子の共鳴散乱を通した対消滅を研究し、Xの存在度について知見を得た。宇宙での2つのXの衝突の際に、YとY(Yの反粒子)で構成される共鳴状態を経由してY粒子の対消滅が起こると仮定し、Yの初期組成、質量、Xのエネルギー準位、YY共鳴状態の崩壊幅をパラメターとした時の対消滅率をモデル化してXの最終組成を計算した。採用した設定での結果として、X粒子の存在度は従来の見積よりも著しく大きくなる場合がある一方で、有意に小さくなる場合はなかった。最終組成の計算結果は、^7Liの組成が減少したり、^9BeやBの組成が増大したりするのに必要な量の見積値に達している。Xの最終組成は、相転移の状況に依存する可能性がある。粒子が軽元素組成に与えた影響が観測的に確かめられれば、相転移に関する情報を軽元素の始原組成から引き出せる可能性がある。将来、このように相転移の痕跡を調べられる可能性を指摘した。
著者
大畑 健次 小西 慶幸 瀬藤 光利
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.080-083, 2010 (Released:2010-03-30)
参考文献数
15

Imaging mass spectrometry (IMS) visualizes the distribution of a wide range of biomolecules in cells and tissue sections. IMS can analyze a variety of biomolecules including unexpected metabolites, without labels in a non-targeted way. We developed AP-MALDI (atmospheric pressure matrix assisted laser desorption/ionization) which is equipped with an atmospheric pressure ion-source chamber. It allows us to analyze flesh samples with minimal loss of intrinsic water or volatile compounds.
著者
山本 明 吉田 哲也 安楽 和明 稲葉 進 井森 正敏 上田 郁夫 音羽 真由美 折戸 周治 木村 誠宏 佐貫 智行 鈴木 純一 田中 賢一 西村 純 野崎 光昭 槇田 康博 松永 浩之 松本 浩 元木 正和 矢島 信之 山上 隆正 吉村 浩司 Golden Robert Kimbell Barbara Mitchell Jon Ormes Jonahtan Righter Donald Streitmatter Robert
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.103-119, 1996-03

超伝導マグネット・スペクトロメーターを用いた宇宙粒子線観測・気球実験(Balloon Borne Experiment with a Superconducting Magnetic Rigidity Spectrometer)は,宇宙起源反粒子探索及び宇宙粒子線の精密観測を目的とする日米・国際共同実験として推進されている[1-7]。NASAおよび宇宙科学研究所を相互の代表機関とし,東京大学,高エネルギー物理学研究所,神戸大学,ニューメキシコ州立大学が研究に参加している。日本側グループがスペクトロメーター本体を準備し,アメリカ側グループが気球の飛翔,制御を担当している。この実験計画は,1980年代にNASAを中心に検討されたASTROMAG計画の準備研究に於て,ソレノイド型超伝導マグネット・スペクトロメーターの構想を提案し,基礎開発を行なった事から,その第一段階となる気球実験としてスタートした[8-9]。この実験協力が1987年にスタートして以来6年の準備期間を経て,1993年に第一回の気球飛翔実験に成功した。1994年には第二回,1995年には第三回・気球飛翔実験に成功した。実験は,北磁極に近いカナダ北部のマニトバ州リンレークからアルバーター州ピースリバーにかけて実施され,合計約50時間の科学観測に成功し,実験機器も無事回収されている。これまでにBESS93の気球飛翔実験についてデータ解析を完了し,運動エネルギー500MeV以下の運動エネルギー領域で,反陽子を4イベント検出した[10-12]。この結果は,低エネルギー領域(<500MeV)での初めての明確な宇宙線反陽子の観測として評価を受けている。BESS93&acd;95の総合的なデータ解析からは,途中経過として,運動エネルギー<1.2GeVに於て,合計&acd;50イベントの反陽子候補を検出している。また反ヘリウムの探索については,1993年&acd;1995年のデータを合わせ,従来の観測よりも一桁高い感度での存在上限値(反ヘリウム/ヘリウム比=8×10^<-6>,@95%CL)を得ている[13-15]。実験は,結果が現われ始めた段階であるが,経過と現状を報告する。
著者
米澤 明憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.p580-589, 1979-07-15
被引用文献数
4