著者
唐原 一郎
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

リグニン形成は植物が陸上進出する際に獲得した重要な抗重力反応である.リグニン形成を含めた植物の抗重力反応に植物ホルモンが関与するか否かを検証した.過重力刺激を与えたシロイヌナズナのトランスクリプトーム解析から,過重力により発現変化する遺伝子の中でオーキシン関連のものが多く含まれることが確認された.そこで過重力を与えたDR5 :: GUS形質転換体を用いて過重力処理区と1G対照区においてDR5 :: GUSの発現を調べた.その結果DR5 :: GUS形質転換体の花茎において強いGUS発現が検出された.またそのときの花茎におけるリグニン合成関連遺伝子の発現は増加した.次にシュート頂からのオーキシンの供給を絶つ目的で摘芯処理を行ったDR5 :: GUS形質転換体に過重力を与え解析を行った結果,過重力による花茎内のGUS発現増加は見られず,リグニン合成関連遺伝子の発現も増加しなかった.このことから過重力による花茎におけるリグニン形成の促進には内生オーキシン量の増加が関与することが示唆された.
著者
田口 知弘
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学一般教育紀要 (ISSN:13413589)
巻号頁・発行日
no.34, pp.67-88, 2009-01-31

今回は語学や文学に関わる分野の人々がどれほど言葉によって社会と格闘をしているか、言語に関係してきた者の一人として責任を感じている。時代に向けて何を伝えたいか。ここに言葉の本質、環境、自然保護、医療現場での医師と患者の関係などを列挙した。言葉を介して人が人と関わって生きていく言語表現とは何か。ここ数年、地球温暖化に警鐘を鳴らすドイツの現状を捉え、現在の環境問題に見られるドイツ語彙と文章に視点を当ててみた。とくにドイツは環境政策に大きな比重を置いており、それに関連する語彙増大は顕著である。EU の環境政策課題から発信されている多くの環境語彙は同じ地球上に住む人々にとって重大な意味が含まれている。語学に携わる者が社会貢献しているか、人々の生きる糧になっているか、思い当れば限りなく自分自身の社会的貢献度の低さを感じている。なぜここでこんな問題を取り上げるのか。言語に携わる者の使命として言語学分野の枠を越えるべきと問い始めたからである。もう一度人間の生きる原点に一歩踏み込み、生活者の立場からその言葉の重要性を吟味すべきと考えた。言語研究も一貫した研究が大切ではあるが、いま人類が悲鳴をあげ生き抜くために苦慮している。人は現実を直視し、日常生活に直面している社会認識から掛け離れてしまっては意味がない。日常性の中で生まれる社会認識に入り込んでいかなければならない。あえて今回《社会を利する言葉の力があるのか》を取り上げた。様々な言語作用から生み出された言葉の本質、環境問題、緩和医療を中心に文章と語彙を摘出し論及してみたい。
著者
中島 淳 SHAFIQUZZAMAN MD
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

飲用地下水の砒素汚染は世界規模の環境問題であり、バングラデシュ、インド西ベンガル、中国、タイ、ベトナム等々で報告されており、バングラデシュだけでも4,000万人以上が汚染地下水を飲用しているといわれている。これまでの研究で、鉄酸化バクテリアと鉄を利用したハイブリッド型砒素除去フィルターを開発したが、今年度は、これまでの研究成果を発展させ、以下を明らかにした。(1)フィルターの適正な維持管理手法砒素除去装置をバングラデッシュの砒素に汚染された地域に設置し、その性能を1年以上調査した。雨季には使用を休止した家庭もみられたものの、1年後においても砒素除去性能が維持されていた。手によるフィルターの簡易洗浄だけで、1年間の運転は可能と考えられた。また、鉄網の使用期間は1年間程度であるといえる。(2)フィルターを用いた持続可能な水利用システムの構築現地のNGOおよびクルナ工科大学と議論をし、クルナ市郊外の農村住民を対象とした砒素除去フィルターの普及方法を検討した。その試みとして、現地NGOのトレーニングセンターを使用して、砒素除去フィルターの製作と使用および維持管理に関するワークショップを開催し、NGOのモビライザーを中心とした参加者が、フィルターを製作した。すべて現地の材料と施設で、砒素除去装置の製作が可能であった。また、砒素除去性能の信頼性を高めるために、妨害物質のシリカの影響についても検討したが、現地濃度は影響を与える濃度レベルにはなかった。
著者
若林 一郎
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.387-395, 2004 (Released:2005-01-27)
参考文献数
60
被引用文献数
1
著者
石津 浩一 杉本 直三 山田 亮 池田 昭夫 中本 裕士 大石 直也 酒井 晃二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

FDG-PET画像による認知症の診断支援システム構築の基礎的検討を目的とした。健常者とMCI(早期認知症)の鑑別を、日本人の健常者23名、MCI患者58名で検討した。FDG-PET画像上に自動処理で116個の関心領域を設定し、各領域の全脳に対するFDG集積率を用いた。クラス判別にはSVMと研究代表者が独自に開発したk-index法を用いた結果、ROC解析のカーブ下面積はそれぞれ74.3%と71.1%であった。MCIの臨床診断の精度の低さを考慮すると画像のみでの判別として良好な結果と思われた。また多数の癌患者の脳FDG-PET画像では患者体重と大脳皮質のFDG集積に逆相関が見られた。
著者
長倉 真寿美
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

居宅サービス利用水準が高く、出来る限り住み慣れた家庭や地域で生活を送ることが可能な地域ケアシステムは、地域の現状を把握した上で、限られた資源の中で最も効果が高い方法が選択され、老人保健福祉計画・介護保険事業計画等に組み込まれている。同時に、居宅サービスの提供に関わる機関・施設がネットワークを組み、高齢化の進行等の変化に対応しつつ、介護保険内外の適切なサービスの組み合わせが総合的かつ継続的に提供されるケアマネジメントが行われている。また、看取りへの対応ができていることも重要な要素である。
出版者
巻号頁・発行日
vol.353 薩州鹿児嶋城,
著者
佐々木 緑
出版者
関西国際大学
雑誌
教育総合研究叢書 (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.3, pp.97-107, 2010-03

自律学習の重要性が唱えられ中,多くの大学で学生を自律学習者へと導く試みが行われている。学習法や学習計画の立案と見直しの重要性を解く講座や演習であったり,学生が自主的に利用できる学習施設などの提供である場合が多い。しかしながら,十分な学力および学習習慣が身についておらず,かつ自律学習指導を受けていないような学生が入学してくる大学の現状では,個々のプログラムを散発的に提供するだけでは,真の意味での自律学習者を養成することは難しい。複数のプログラムや取り組みを体系的に組み立てる必要があり,また,学習者が互いに学び合いながら,学習に対する動機付けや学習動機が継続的に強化されるような環境作りも必要である。本稿は,関西国際大学教育学部英語教育学科における自律学習促進の取り組みとその効果について報告し,体系的な自律学習支援のモデルを提供することを目的としている。
著者
渡辺 法男 安村 幹央 中川 千草 立山 健一郎 安田 公夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.310-312, 2007 (Released:2007-11-07)
参考文献数
10

【目的】オピオイド鎮痛薬は単剤治療が基本であるが, モルヒネとフェンタニルパッチ (FP) を併用することにより, 疼痛, 咳嗽・呼吸困難の症状緩和を得ることができた症例を経験したので報告する. 【症例】50歳代, 女性, S状結腸がん, 肝・肺転移. 疼痛に加え咳嗽・呼吸困難があったため, 硫酸モルヒネを開始し, 症状緩和を得た. 将来的に経口摂取が困難になることを考慮し, FPへの変更を計画した. しかしながら, フェンタニルの咳嗽・呼吸困難に対する効果は確立していないため, 咳嗽・呼吸困難に対しては少量の硫酸モルヒネを継続し, 疼痛に対してはFPにて調節を行い, 最後までモルヒネとフェンタニルの両成分を併用することにより, 疼痛, 咳嗽・呼吸困難の症状緩和を得ることができた. 【結論】経口摂取困難で, 疼痛に加え, 咳嗽・呼吸困難を有する症例に対して, 少量のモルヒネとFPの併用は, 安定した症状緩和を得るうえで有用であると考える.
著者
佐條 研 三好 匠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.365-368, 2008-02-28

アドホックネットワークにおける脅威として,ブラックホール攻撃が問題となっている.ブラックホール攻撃とは,攻撃ノードが経路応答パケット(RREP)を偽装することにより目的地ノードになりすまし,送信されるデータを不正に受信する攻撃方法である.従来のルーティングプロトコルでは,シーケンス番号の値が大きなRREPほど新しい経路として選択されるため,攻撃にはシーケンス番号が利用される.攻撃が成功すると,データは攻撃ノードに送信され,正常な通信が行われない.従来手法として,通信頻度を考慮した中継ノードによるブラックホール攻撃の防御法の提案がされているが,誤認に対する影響が大きいという問題がある.本稿では,ブラックホール攻撃に対する新たな防御手法として,指数バックオフに従ったブラックリストを用いた防御法を提案する.指数バックオフを用いることで,ノードに応じて適応的にブラックリストを機能させる.シミュレーションにより,従来手法よりも提案手法が有効であることを示す.
著者
劉 紹明 田中 栄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.1358-1371, 1995-10-25
被引用文献数
4

本論文は根があり順序がない木(R木と言う)および根がなく順序がない木(単に木と言う)について,それぞれ,強構造保存写像に基づく距離(SSPD),C写像に基づく距離(CD)および極大C写像に基づく距離(MCD),の3種類の距離の計算法を提案している.R木の場合,いずれも,時間計算量はO_T(m_aN_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.木の場合,3種類の距離の計算法の時間計算量はO_T(max(m_a,m_b)^2N_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.ここで,二つのR木,あるいは二つの木をT_a,T_bとするとき,m_a(m_b),N_a(N_b)よそれぞれT_a(T_b)の頂点の最大次数,T_a(T_b)の頂点数である.SSPD,CDの計算法は,R木および木の場合とも,従来の計算法より効率が良く,MCDは本論文で提案した距離である.R木および木の距離は,化学で研究されている構造・活性問題をはじめとして,多くの構造比較問題に応用できる.
著者
神薗 雅紀 西田 雅太 小島 恵美 星澤 裕二
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2011 論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.474-479, 2011-10-12

近年の不正サイトは,マルウェアなどにより自動生成されたポリモーフィックなJavaScriptが利用され,他のURLに誘導する手法が多くみられる.著者らはこのようなJavaScriptの動的解析システムを開発したが,条件分岐やタイマー処理による遅延処理,さらにはイベント処理などにより期待した結果が一部得られないという動的解析技術の課題も存在した.そこで本稿では動的解析技術を用いずJavaScriptを分析するための新たな特徴点として,抽象構文解析木を用いる手法を提案する.そして,本手法の検証として,抽象構文解析木を用いて自動生成されたポリモーフィックなJavaScriptの検知および分類を行う.