著者
橋口 昌治
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

「若年非正規労働者の労働組合の特質および意義に関する労働社会学的考察」という研究課題に対し、21年度はまずフリーター全般労働組合とフリーターユニオン福岡の調査を主に行った。フリーター全般労働組合に対する調査では、結成に関わった人々や現在の活動に関わっている組合員に対してインタビューを行った。そして、結成当初からの問題意識の変遷や組合の形成する運動文化、集合的アイデンティティと組合員の持つ個人的アイデンティティの葛藤のあり様などを明らかにした。フリーターユニオン福岡に対する調査では、結成当初から関わっている組合員に対し結成過程や問題意識の変遷などに関する聞き取りを行った。また、結成後に加入した引きこもり経験のある組合員に対しては労働運動に参加する動機などを尋ね、労働市場において周辺的な立場に置かれた人々が労働組合に何を求めているのかを明らかにした。そして2008年末から09年年頭において現れた「年越し派遣村」をめぐる背景を分析した上で、「『労働運動の社会運動化』と『社会運動の労働運動化』の交差-『若者の労働運動』の歴史的位置づけ」と題した論文にまとめ、『生存学』第2号で発表した。そして20年度から蓄積してきた成果を、「『若者の労働運動』の社会学的考察」と題する博士学位請求論文として提出した。一方、立岩真也・村上慎司・橋口昌治『税を直す』(青土社、2009年9月)では、「第2部第2章『格差・貧困に関する本の紹介』」を担当した。そこでは、2000年代以降に出版された格差問題や貧困問題に関連する国内外の文献500冊程度の文献を紹介した。こうした研究成果は、2000年以降の日本において重大な社会問題となっている格差や貧困、若年者の労働問題と労働運動に関して、実態と言説、マクロな変動とミクロな動向について総合的な把握を行っており、非常に重要な意義を有する。
著者
Jung-ha LEE Jong-hoon LEE Hun-young YOON Na-hyun KIM Jung-hyang SUR Soon-wuk JEONG
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1112200732, (Released:2011-12-26)
被引用文献数
5 10

A six-year-old intact female Maltese dog weighing 3.8 kg presented with a history of mild lameness and swelling on both forelimbs. Radiographic and computed tomographic views revealed an extensive periosteal reaction in all four limbs and a large round mass on the right middle lung lobe. A total lobectomy was performed and pulmonary adenosquamous carcinoma was histologically confirmed. A diagnosis of hypertrophic osteopathy (HO) secondary to a lung tumor was made. Periosteal proliferation decreased significantly after surgery; however, there was evidence of dyspnea, mass recurrence, and periosteal reaction three months post-operatively. This is the first case report of pulmonary adenosquamous carcinoma with HO in a dog in which we describe clinical, imaging, surgical, and histological findings.
著者
Jae Yeon LEE
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1112200731, (Released:2011-12-26)
被引用文献数
11 24

The present study aimed to evaluate the effect of propofol and thiopental on the plasma oxidant-antioxidant profile in dogs undergoing surgery at doses used to induce anesthesia. The plasma total oxidant status (TOS) and oxidative stress index (OSI) levels increased significantly with time in both groups, whereas the plasma total antioxidant status (TAS) levels decreased with time in both groups. The OSI was significantly higher at the end of surgery than before induction of anesthesia in both groups. The TOS and OSI change ratio of propofol group were significantly lower than that of thiopental group. In conclusion, our findings show that propofol has antioxidant effects in dogs. Further studies need to be conducted to demonstrate the exact mechanism of oxidative stress due to anesthesia and surgery in dogs.
著者
Takumi OKAWA Hiroko HIRAOKA Yuko WADA Kenji BABA Kazuhito ITAMOTO Takuya MIZUNO Masaru OKUDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1112200735, (Released:2011-12-27)
被引用文献数
4 5

The second malignancies are frequent complications in the human patient with chronic lymphocytic leukemia (CLL). However, the clinical details and outcome of this phenomenon were unclear in the canine counterparts. Here we report a dog with high-grade lymphoma concurrent with T-cell CLL. A 10-year-old male golden retriever presented with lymphadenopathies. The lymph nodes contained large-sized lymphocytes, raising suspicion of high-grade lymphoma. Meanwhile, small-lymphocytic lymphocytosis in the peripheral blood was consistent with CLL. Interestingly, molecular biological analyses revealed that CLL cells were T-cell type, whereas lymphoma cells were B-cell type. Chemotherapy using the L-VCA short protocol was effective for 155 days, but the dog died on day 194 after diagnosis, despite rescue therapies.
著者
村田 吉平 白井 滋久 藤田 正平 島田 尚典 Shrestha Bhushan Wangchuk Tenzin
出版者
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会
雑誌
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会会報
巻号頁・発行日
vol.36, pp.120-121, 1995

十勝農試では、小豆の品種改良の母本として、国内(33府県)、国外(韓国、台湾)の小豆遺伝資源を1984年から、現在まで約2300点を収集している。今回、小豆栽培の西端と推定されるネパール、ブータンで収集したものが、従来と異なった特性を有していることが明らかになったので報告する。
著者
井上 浩
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum Ser. B Botany (ISSN:03852431)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.p41-51, 1987-06

31 species of Plagiochila (DUM.) DUM. are enumerated from Bhutan, including two new species (P. monalata INOUE and P. parvivittata INOUE). P. exigua (TAYL.) TAYL., P. kitagawae INOUE, P. sawadae INOUE, and P. trabeculata STEPH. are newly reported from the Himalayas.
著者
馮 忠剛 中村 孝夫 梅津 光生
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、従来の細胞組織工学的な手法による構築したコラーゲンゲル足場での心筋再生組織を基づいて、新しい技法・改進を開発・実現し、生体心筋組織拍動特性を有する心筋再生組織を作った。3年間の研究活動によって、以下の成果を得た。1.体外培養ラット胎児心筋細胞の遺伝子発現の比較実験によって、培養心筋細胞における心筋細胞の分化・成熟に係る重要な伝写因子であるSRFとmyocardinおよび心筋組織介在板の構成を司るN-cadherinとconnexin43の発現低下を示した。この知見に基づき、遺伝子転移技法によって、N-cadherinの強化発現を促す、心筋細胞間の相互作用を強化することを試みた。2.3次元コラーゲンゲル足場の添加物による高浸透性化、並びに培養液供給と老廃物代謝の改善を実現した。4種類の添加物に対して、それぞれの混入実験を行い、その内heparinとalbuminが足場のglucose透過係数を約2倍に上がることから高浸透性に最も有効であることを判明した。3.心筋再生組織構築の各々の過程により詳細な検討・最適化を行った。その内二つ重要な処理は:i)心筋採取および組織構築におけるコラーゲンナーゼの残留効果を無くすために培養液にcysteineの添加が有効である;ii)ゲル形成の過程に、ゲルに埋め込む心筋細胞の沈殿による不均等性を防ぐためにゲル形成直後のゲル反転が必要である。4.新型電気一応カバイオリアクタを開発した。従来のバイオリアクタと違って、新型における応力の印加は外部から能動的な方式ではなく電気刺激による再生組織の収縮に伴う収縮応力と収縮ひずみの自然登生である。これによって、より実際の心筋組織収縮に模擬することができ、電気刺激と応力印加の協調も自然に解決された。5.再生心筋組織の拍動特性を解明するために、独自の拍動変位一拍動力解析法を開発した。6.以上の方法によって、構築した3次元心筋再生組織はその拍動力が約16倍に向上させ、最大収縮ひずみ速度と最大収縮力が対応する生体内の心筋組織拍動特性と似た特性を有している。
著者
須田 年生 鄒 鵬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度はp57による造血幹細胞静止状態維持の分子機構を詳細に検討するために、ノックアウトマウス胎生期の肝臓由来の造血幹細胞を用いて、放射線照射したマウスに移植するin vivo実験系で解析した。1)p57の欠損に従って、p27が造血幹細胞の細胞質における発現が特異的に増加することがわかった。その結果より、造血幹細胞のp57が欠損する場合、その静止期維持における機能はp27が代償する可能性が考えられる。2)静止期造血幹細胞のcyclin Dの転写活性は高いレベルを維持することを見出した。また、新規p57結合タンパクHsc70がcyclin Dタンパクの局在を制御することによって、造血幹細胞の細胞周期制御に重要な役割を果たしていることが示された。3)Hsc70のinhibitorデオキシスパガリン(DSG)を用いて実験では、DSGは造血幹細胞の静止期での維持を阻害することがわかった。この結果より、p57とhsc70、およびcyclinD三者の相互作用が造血幹細胞の細胞周期制御において重要な働きをしていると考えられる。4)CDK inhibitorであるp27もHsc70と結合し、Hsc70/cyclin D複合体を細胞質に安定化させることによって、幹細胞の静止期維持に働くことがわかった。p57とp27は単独に一つでも存在すると静止期維持の機能できるが、両者の発現がともに抑制される場合、Hsc70/cyclin D複合体が核内に排出され、幹細胞静止状態の維持ができなくなることが証明された。
著者
西野 順二
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第24回ファジィ システム シンポジウム
巻号頁・発行日
pp.136, 2008 (Released:2008-12-06)

本発表は「このへんファジィ」による知的な情報表現とその利用について検討することが目的である。多次元のパラメータ空間上で展開される人間にまつわる様々な事象を、多次元のファジィ集合を用いて表現する。これをもとに推論、演算を行い表現力の検証を行った結果について示す。
著者
水野 千恵 入江 久代 高木 良助 大鹿 淳子
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-8a, 1989-12-25
被引用文献数
1

(1)ヤーコンは、水分が多く、食物繊維、還元糖量が高く、無機成分に富んでいた。(2)ヤーコンは、「揚げる」という操作により、食物繊維含有量が非常に高い加工食品ができた。この食品は食物繊維を供給するための機能性食品となりうる。また、でき上がったヤーコンチップは、外観、食感もよく、甘味、うま味もあり、塩分を添加する必要がなかった。(3)ヤーコンチップは、厚さ1.5mmの輪切り、水浸時間15分間、油800gに対してヤーコン50g(1.5mm厚さ16枚)を投入した場合、外観は160℃で3.5分揚げたものが適し、味覚は150℃で4.0分揚げたものがよかった。
著者
中村 久美
出版者
京都ノートルダム女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戸建住宅および公団分譲集合住宅を対象に住み方調査を行った.その結果,選択的に保有,出納される生活用品の保有率の高さや,収納や出納状況に対して不都合を抱える世帯の多さ,中でも死蔵品の問題を明らかにする一方,戸建住宅における納戸保有率の高さと,それらが4畳未満の小室中心でほとんどが寝室近くや屋根裏などの寝室圏に設置されていることを明らかにした.以上より,持ち物の見直しなど,生活管理行為と集中収納空間の使いこなしによる収納様式の構築の必要性を指摘した.さらに集合住宅では,集住のメリットを活かしたモノの管理に関わる共用,循環のシステムも含めた収納様式の構築を提唱した。
著者
船越 孝太郎 徳永 健伸 田中穂積
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.104, pp.35-41, 2002-11-12
被引用文献数
1

話し言葉に頻繁に現れる助詞落ち,倒置,自己修復などの不適格性は,音声対話を困難にする大きな要因の1つである.筆者らは,日本語におけるこれらの不適格性が複合して現れることを指摘し,解決法を示した.本論文では提案手法を実装し,新たに収集した音声発話データに対して評価を行なう.発話データの収集に際しては,小量の採集でも不適格性を多く含むように工夫を行なった.実際に音声認識結果に対して構文解析を行なった結果,対話システムが正しく解析できる発話が171発話から322発話に改善されることを確認した.Ill-formedness in speech, such as postposition omission, inversion, and self-correction, is a major obstacle which makes speech dialog difficult. We proposed a method to handle these sources of Japanese ill-formedness in our previous paper. In this paper, we implement the proposed method and evaluate it by using newly collected speech data. We designed the experiment to obtain ill-formedness data effectively. Among 532 utterances in the corpus, introducing the proposed method increased the number of correct analysis from 171 to 322.
著者
田本 真詞 川端 豪
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.74, pp.13-18, 1996-07-26
被引用文献数
4

音声対話システムと人間との快適なコミュニケーションを実現させるには、音声対話システムに対話を協調的に進めるための機構が必要と考えられる。そこで人間同士の対話記録の分析から対話の協調的機構に関わる知識を獲得し、対話システムへ応用することが検討されている。本研究では、実際の音声対話における間投詞、終助詞などの発話の開始・終了符号、あいづち・復唱などの応答などの対話の調整やそのふるまいなどを観察し、対話の協調的機構のための知識の獲得を検討する。特に、対話の調整の観察のためのタスクとして目的指向型協調作業に着目し、タスクと同時発話や言い差し、間投詞的応答など発話権の移動に関わる対話の調整との関連を分析する。This report describes some feature of dialogue coordination that convey intentional and operational information of utterances. For constructing an effortless speech conversation system, it is necessary to implement the coordination mechanism in spoken dialogues. To analyze the dialogue coordination, we collect two kinds of task-oriented cooperative speech dialogues named Client-Manipulator task and Client-Advisor task. We analyze the relations of turn-taking behaviors to the dialogue coordination in various tasks and dialogue conditions.
著者
馬上 美知
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.420-430, 2006-12-29

本稿ではロールズ的な分配論とは異なる視点から格差問題にアプローチしているM.C.ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチに着目する。そして「ケイパビリティ」概念を明らかにすることを通してこのアプローチを検討した結果、その可能性と課題が見出された。人間らしい機能への条件が整っている状態としての「ケイパビリティ」は、どのような「財」がどの程度必要とされているのかを明らかにすることができる。その際教育は機能を充足させることで「内的ケイパビリティ」を発達させ、かつ自己教育をすることによって当人をエンパワーメントし、「善き生」を保障する上で重要なものであった。ケイパビリティ・アプローチはロールズ的な分配論以上に実質的な「機会の平等」を保障しえる。しかしどの程度「ケイパビリティ」を保障するのか、その決定方法や子どもの時分に満たされるべき「機能」についてさらなる検討が必要とされる。