著者
川戸 和英 横山 勝彦 伊吹 勇亮 芝田 正夫 小野 豊和 石井 智 朝原 宣治 大八木 淳史
出版者
大同大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、企業や組織の社会的責任(CSR)を実践する媒体としてスポーツが有効であるとの仮説について、以下の研究成果を得た。第1は、CSRの基礎理論と成果指標開発に関して、CSRからソーシャル・キャピタル(SC)、そしてグローバル・コンパクト(GC)までの概念展開ができたこと。第2は日本各地や中国、韓国の調査で知見が得られたこと、第3に、成果発表として書籍出版の展望と4つの学会発表を行えたことである。
著者
鈴木 泰
出版者
明治書院
雑誌
日本語学 (ISSN:02880822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.212-214, 2000-04
著者
小柳 公代 武田 裕紀 内田 正夫 永瀬 春男 野呂 康 デコット ドミニック ジュスラン オリヴィエ
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

パスカルの自然学を、我々がこれまでの研究によって位置づけた科学史的な評価に加えて、彼が探求成果を論文としてまとめるさいに投入したさまざまな技巧という観点から検討し、実験の実行者というよりも、レトリックを駆使する論証の天才としてのパスカル像を提示することに成功した。またこの過程で、パスカル研究の完璧な底本として流通しているメナール版のテクスト・見解にもいくつかの変更を迫ることができた。
著者
山川 裕樹
出版者
成安造形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、バウム技法の主観的体験様式を、可能な限り言語化していこうとする試みである。描画過程は、そのプロセスが内的なものであるため、それを言語に落とすことが非常に困難である。そのプロセスを問うても「なんとなくそう思って」としか表現できない、無意識的な領分に属する体験となる。本研究は、その体験を、戸惑いや迷いが生じる際の"ゆらぎ"体験を通して明確にしようとする研究であった。研究を進めるにつれて、"ゆらぎ"体験の言語化はあまりたやすいものではない事が明らかになった。そこで、バウム技法の体験様式を明らかにするために、描出されたバウム画をイメージで把握しその言語化を求めるという方法に着目し、描かれたバウム画に絵で返答を返すという「バウム返答法」の創案に至った。それが描き手の体験とパラレルであるかは今後の研究を待たねばなるまいが、バウム画の解釈を外在する基準に求めがちな原稿のバウム画解釈法に、別の視点からのアプローチがありえることを示唆するものであると思われる。この「バウム返答法」は、精神分析で云われる逆転移の活用にも似た、生身の人間の出会いであるからこそ必然的に引き起こされるわれわれのイメージの共揺れを俎上に乗せる、心理臨床の現場感覚に根ざした方法論の可能性を示すものであるだろう。
著者
真貝 恒平
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

今年度の研究は、前年度までの研であった「ドイツ文筆家保護連盟」(Schutzverband Deutscher Schriftsteller:以下SDS)の設立から解体までの組織変遷を、近代以降のドイツの文筆業をめぐる諸問題と、世紀転換期からワイマール共和国期における全般的な社会運動との関連を再度ふまえながら概観し、組織解体直前の動向と、1933年以降、フランスへの亡命を果たしたSDSの活動について重点的に調査した。SDSは、ナチス権力掌握前夜、つまり、1920年代後半から30年代にかけて度重なる内部崩壊の危機にさらされ、それまで超党派的組織としてドイツ文筆業界に君臨してきた組織力に翳りが見え始め、組織の斜陽化の一途をたどることとなる。SDSは、組織内に生まれた政治イデオロギーにより、文筆業の代表機関としての本来の機能を失ってしまう。1933年6月9日に設立されたナチス国家直属の文筆業による情報プロパガンダ機関である「ドイツ文筆家帝国連盟」(Reichsverband Deutscher Schriftsteller:以下RDS)は、それまでドイツで活動展開していた文筆家団体を次々とその傘下に入れ、SDSもついに同年7月31日、RDSへ吸収合併され、SDSは、1909年から続いたドイツでの活動に幕を下ろしたのであった。SDSが組織の終焉を迎えた後、フランスへ亡命を果たした一部のSDS会員により、組織解体から僅か三カ月後の1933年10月31日、パリで「亡命におけるSDS」(SDS im Exil)が結成される。この組織は、1935年6月21日〜25日までの五日間、パリで開催された反戦・反ファシズムと新しい文化創造を目指し、世界38カ国から約250名の作家、知識人が参加した「第一回パリ国際作家大会」に参加し、大会四日目にドイツ亡命作家団体代表として共同声明を発表している。このように、SDS亡き後、その理念を継承した「亡命におけるSDS」は、ドイツの反ファシズム亡命文学者、知識人の一大拠点として、戦後まで持続的な活動をパリで展開したのであった。今後の研究の展望として、パリ亡命期のSDSの活動を追っていくとともに、SDSが組織解体へと至るプロセスをより詳細に追っていき、ナチス政権による文筆業の統合と、亡命作家の活動を比較しながら1933年以降の国内外の文筆業を包括的に考察していきたい。
著者
井上 和男
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

企業の吸収合併における従業員の心的・身体的健康度の変化を、実際の事例において吸収合併前後で調査した。合併後の従業員の減少は被吸収事業所の女性に多かった。勤務継続した従業員については、合併により被吸収側事業所男性よりむしろ、合併側事業所の男性従業員の生活への満足度が直後に低下していた。今回の事例では、同一市町村内であり僻遠地への異動を伴っていない。そのような場合は男性、特に管理業務を求められる合併側事業所の男性従業員にむしろ影響が出た可能性が示唆された。
著者
小林 好宏
出版者
山口大学東亜経済学会
雑誌
東亞経濟研究 (ISSN:09116303)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.19-50, 1963-10-31

一、市場価格は、市場の競争形態によって異なる。二、日本においてはアメリカに較ベて、競争的市場、寡占的競争市場などが、いわゆる独占的市場と同時に広範に存在しており、したがって価格体系も一層複雑である。三、日本においては大企業とならんで弱小企業が広範に存在しており、その生起と淘汰のプロセスを通じて大企業の拡張がなされる。これは市場が大企業のみから成る場合に比し、大企業それ自身の拡張を強める。四、日本においては、特に新製品生産部門、あるいは成長産業と言われる分野で、マーケットシェアー獲得の競争が行なわれ、量産によるコストダウンと相俟って、少数企業によって、市場が支配されているにも拘わらず、価格が低下している。五、日本とアメリカの価格動向を比較すると、日本では卸し売り物価は短期的に変動するが長期的には安定しているのに対し、消費者物価は長期的に上昇している。アメリカでは、全体として価格は下方硬直的であり、長期的に上昇傾向にある。六、日本とアメリカの価格動向で最も特徴的なのは、資本財物価と消費財物価の相対的関係であり、日本では両者の相対価格は安定、乃至消費財価格の上昇で特徴づけられるのに対し、アメリカでは、資本財価格の相対的騰貴がいちぢるしい、これは一九二九年以来特に明瞭にあらわれている。更に近年は財政支出に関わる物価の騰貴率が激しい。七、日本の価格変動を需要要因とコスト要因からのみみると、需要要因に大きく支配されており、賃金及び原料によるコストプッシュはあまりみられない。八、アメリカにおいては、鉄鋼、電力、燃料等の主要原料がきわめて高価格であり、これが原料のコストプッシュをもたらす主要因となっている。九、主要原料の高価格は、これら部門における管理価格による高価格決定に原因がある。十、物価の動きに関しては、需給面のみならず、通貨供給と生産の関係が重要な役割を演じている。日本において、通貨の増大率と生産の増大率とを比較すると、通貨の増大率の方がより大である。このことから、これまで日本ではオーヴァーローンによって生産を剌戟して来、それがインフレ傾向をもたらして来た面があると言いうる。十一、日本とアメリカの価格体系が、それぞれ資本蓄積にどのように作用しているかをみると、アメリカでは、資本財部門の相対価格の騰貴が、資本財部門を含む全産業のコスト高をもたらしている。これに対して日本では、公的部門の価格が資本蓄積を促進するように作用しており、一部産業における独占的高価格にも拘わらず、原料のコストプッシュの影響はアメリカのように強ぐない。十二、日本においては、国家が企業の資本蓄積を促進させ、生産を拡大させるように働らくのに対し、アメリカでは、むしろ国家が財政支出を通じ、高価格で買入れることにより、市場を創出するように作用する。十三、アメリカにおける資本財価格の相対的騰貴は、実質消費を高め、貯蓄を抑える。これはケインズ的な立場からすれば、不況の防止になるようにみえる。けれどもここから高蓄積をもととする経済の高成長はもたらされない。日本は全体的傾向としては丁度これと逆であり、高貯蓄、高蓄積であった。問題はその貯蓄を吸収するに充分な投資があるかどうかであり、日本においては強い投資意欲に支えられ、高貯蓄率にもとづく高成長が実現されて来た。十四、資本財価格に関して重要なことは、それが他産業における費用にはねかえってくるこ上である。資本財価格の騰貴は、一部は資本財部門内部の循環的関係を通じ、また一部は消費財部門との取引を通じて、全体としてコストの圧迫をもたらす要因となる。資本財価格の騰貴は、マクロ的には、好況の指標のように見做されて来たが、ミクロ的に個別企業の立場でみると、コストの圧迫として作用する。この問題は、プライスの側面だけではなく、コストの側面からも、すなわち費用-価格関係として把握されねばならない。
著者
神原 廣二 上村 春樹 柳 哲雄
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

インドネシアは群島国であり,島によって住む民族が異なるようにマラリア流行様式も島によって異なるだけでなく,1つの島の中でも地域によって異なる。この多様性を生み出しているのは媒介蚊の種を決定する自然環境であり,人間側の生活習慣,貧困であった。しかし現在の社会経済の発達は流行地図,様式を大きく変動させている。都市化はこの地域でのマラリアを撲滅へと導いている。この典型がジャワ島やバリ島であり,私達が調査を行なったロンボク・スンバワ島においても,これまで重要な流行をもたらしていた沿岸マラリアは,経済発達のためロンボク島では一部の未開発地域を残して減少,消滅へと向かっている。ところが人口増加,社会経済活動の変化は,海岸のすぐ背後に控える森林丘陵地帯へと人々の生活圏を拡大させた。ロンボク調査地では今やマラリア流行は森林部でこれらの人々の間で起きていることが判明した。同じようなことがスンバワ島南部の新しい入植地で起きていた。どのような条件が入植地でのマラリア流行を引き起こしたのかは現在調査中であるが,旧村落から遠く離れた三つの入植地で高いマラリア流行が起きていることが発見された。すべてに共通して言えることは,マラリア流行地は医療の手の及ばないところに発生することである。興味あることは,これまでマラリア免疫は高度流行地での繰り返し感染によってのみ獲得されるという教科書的考えがここではあてはまらないことである。ロンボク森林丘陵部のマラリア流行は中等度であるにかかわらず,10才を超えるとマラリアに抵抗できる免疫を獲得すること,新しい入植地でも入植後7〜8年を経た村では15才以上の成人には抗マラリア免疫があることが明らかになってきた。いずれの地域でも熱帯熱マラリア原虫のクロロキン耐性関連遺伝子のひとつpfcrtは100%の耐性変異,もうひとつのpfmdr-1は50%を越す耐性変異を示した。
著者
會田 茂樹 長井 英生 永幡 幸生 桑江 一洋 日野 正訓 廣島 文生 KOHATSU-HIGA Arturo 日野 正訓 桑江 一洋 廣島 文生 吉田 伸生 数見 哲也 長井 英生 KOHATSU-HIGA Arturo 永幡 幸生
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究成果としては(1)ウィーナー空間内の領域で定義されたホッジ・小平型作用素の研究(2)無限次元空間上のシュレーディンガー作用素の最小固有値の準古典極限の研究の二つがある。(1)ではウィーナー空間内のある非凸領域でのポアンカレの補題の証明のため、凸領域で定義されたホッジ・小平型作用素のアダマール変分を用いるアイデアを提起した。(2)では、コンパクトリーマン多様体のパス空間上のシュレーディンガー作用素と場の量子論に現れるP(φ)型のハミルトニアンの最小固有値の準古典極限を決定した。
著者
西浦 廉政 柳田 達雄 飯間 誠 栄 伸一郎 上田 肇一 寺本 敬 上山 大信
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

散逸系におけるパルスやスポットなどの動的な空間局在パターン(以下、粒子解)はTuring不安定性による空間周期構造と共に、パターン形成理論における最も基本的な秩序解のクラスを成している。近年、化学反応系、ガス放電系、液晶系、形態形成系を始めとする様々な系において粒子解が実験的・数値的に発見されている。これらの間の強い相互作用,とくに衝突や不均一媒質での振る舞いに対して従来の摂動的手法の適用は困難であった.これはパルスやスポットが激しく衝突する場合を想像してもわかるように、一般に解の大変形を伴うのがその一因であり,全くの未踏領域であった。しかし動的局在パターンのダイナミクスを考える際には、衝突・散乱は避けて通ることはできない。実際、1次元では常に正面衝突は不可避であり、高次元においても系のダイナミクスの定性的変化は衝突の際に生じる。本研究課題の研究成果から、例えば衝突過程では、分水嶺解(scatter)という不安定なサドルが様々な秩序解が相空間で成すネットワークの中で軌道の交通整理をしていることが明らかになった。さらに粒子解のドリフト・分裂・崩壊等の不安定性を組み合わせることにより,衝突過程で生じるほとんどすべてのダイナミクスを余次元2あるいは3の特異点の近くで再現することが可能となり,同時に有限次元系に帰着することも可能となった.これにより散逸系という無限次元力学系における複雑な時空パターンの骨格構造がなかり解明された。さらに粒子解を乗せて運ぶ媒質が一様でない場合の波の振る舞いについても,不安定解ネットワークからの視点が極めて有用であることが判明した.これは不均一性に由来する不安定解(ディフェクト)が存在し,粒子解の不均一媒質での運動は粒子解とこのディフェクトの衝突過程とみなすことができることに由来する.この場合も粒子解の運動は有限次元系に帰着させることが可能であり,これにより,不均一性の勾配,高さ,幅,曲率等の幾何的状況に運動がどのように依存するか調べることが可能となった.
著者
北川 和博
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-76, 1993-03-17

昭和48年,帯広市に通級制情緒障害学級が開設され,平成4年度で20年を迎えることとなった。本研究では,帯広市の情緒学級のあゆみを様々な角度から調査・検証し,その歴史的,地域的意義をまとめ,今後の展望を図ろうとするものである。調査の結果,20年の通級児童の数が174名をかぞえ,子どもの実態は自閉的傾向児,登校拒否傾向児をはじめとした集団内で適応しづらい子どもたちであるが,情緒学級は子どもの実態にかかわらず,普通学級および特殊学級から受け入れてきた。その変遷過程をたどると,自閉的傾向児主体からいわゆる「集団不適応」へと移り,その背景には,就学指導休載の変化,登校拒否傾向児の増加,乳幼児期の地域療育システムの充実等,時代の変動と,地域の実情に影響されていることが分かる。実践研究は,事例研究を重視しながら,疎通性を育て高めるための指導,個々の子どもに合った指導目標の確立,情緒障害児の効果的な諸検査と指導方法,コミュニケーションとしての言語指導へと積み上げられてきている。帯広の情緒障害教育が20年を経過した現在,自閉的傾向児主体の治療教育的役割から,普通学級の援助学級的役割を求められる時代となっているが,これはこの学級が歩み出そうとした開級当初の地域ニーズにもどった観がある。
著者
山下 仁
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、観察調査に基づく、日独の買い物表現の分析を目的とする。この経験調査では、実際のインタラクションで使用された言語学的表現ばかりではなく、そのインタラクションを観察した母語話者である研究助手の意見も考察の対象としている。その結果、ドイツ語では、個人的なアドヴァイスを含めた比較的長い会話が丁寧であると感じられているのに対して、日本語では、手短で簡潔な会話が好まれることなどが明らかになった。