著者
小林 繁
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、障害児・者の学習文化活動を保障していくための課題と方向性を探っていくことを意図して、全国の先進事例や先行研究の調査とともに、全国の市町村自治体での取り組み状況についてのアンケート調査を実施した。そこでは、この間の生涯学習施策の進展に伴って、障害をもつ人の学習・文化保障の取り組みがどの程度進んでいるかを具体的に把握、分析する課題意識のもとに考察を行った。まず先進事例としては、東京を中心に行われている障害者青年学級(教室)、障害をもつ人を対象とした講座および届けるという発想にもとついたアウトリーチサービスの取り組み、大学で行われているオープンカレッジ、社会教育施設での対応、などについての調査見学を行った。また、全国調査の結果からは、まず学校週5日制対応の事業については、圧倒的に多くの市町村ではその対応がなされていない状況が明らかとなり、障害をもつ児童が地域で生き生きと学習文化事業に参加していく取り組みが求められていることを提起した。また、障害をもつ人が参加できるような配慮をしている事業を実施している自治体が回答した自治体総数の30%であり、依然として課題が大きいことがあらためて確認された。その意味で、教育を受ける権利を保障する責務を負う教育行政、とりわけ社会教育行政の役割と課題が浮き彫りにされたと同時に、とりわけスタッフやボランティアといった人的な面とプログラムなどのソフトの面からの学習支援のあり方を先進事例の取り組みから学んでいく必要性を強調した。そうした点をふまえ、最後にまとめとして、以下の視点の重要性を提起した。(1)学習権保障の視点(2)ノーマライゼーションとポジティブアクションの視点(3)社会教育施設・機関の役割
著者
北村 直人 川崎 順治 加藤 恭子 飯島 泰蔵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.324, pp.7-12, 2003-09-18

人間は,1画素ごとには白黒の2値画像を見ても全体を眺めると,擬似濃淡画像として認識できる経験をしている.我々は今までに,外界・網膜・脳を通して階層的に行われ擬似濃淡画像として認識する視覚モデルとその等価近似法を構築し,各種変調画像の画質評価法を提案した.本論文の目的は,従来の等価近似法において,窓のサイズが変調方式によって異なる不便さを解決する.更に窓のサイズを見つけることが困難な変調方式の場合でも評価できるように,固定型等価近似法を提案することである.窓のサイズと最良近似項数を固定しパルス密度4分割法,組織的ディザ法,平均誤差最小法,単純2値化法,ランダムディザ法の主観的な優劣が近似度で評価でき,固定型等価近似法の有効性が示された.更に,固定型等価近似法による評価が視覚モデルによる方法や等価近似法と比較して,ほぼ同精度ではるかに短時間に高速計算ができることにより,画像や変調方式の数が増えても作業時間的により簡便な方法であることが明らかになった.
著者
矢野 初美
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

大きく分けて2つの研究を行った。まず、野外実験として、東京都西東京市にある東京大学附属田無試験地に自然生育している個体から、異なるハプロタイプ(B1、Ja)を持つアオキ個体を選択し、相互授粉実験を行い、交雑可能性を検証した。その結果、B1、Ja両ハプロタイプともに相互に授粉実験は成功し、異なるハプロタイプ間での結実が確認された。このことから、造園用材料として、他の地域由来の個体を導入し、それが野外へと逸出・定着し、繁殖する際に、元から地域に自生するアオキ個体と交雑している可能性が高いと考えられ、この研究成果を学術論文として発表した。2つ目として、昨年度までに収集していた関東地方対象区域の衛星画像データ、採取したアオキ個体のハプロタイプデータを用い、都市地域・農村地域における自生型(Ja)・非自生型(B1)ハプロタイプ個体の生育割合と自然環境要因、人為的要因との関連性を解明した。具体的には、目的変数を各樹林パッチにおけるB1タイプの出現割合、説明変数をランドスケープレベル、樹林パッチレベルにおいて抽出しか項目(例えば、地形、樹林パッチの面積・形状等)として、一般化線形混合モデルを構築し、stepAIC関数によるモデル選択を行った。その結果、周辺森林面積率、地形、過去に当該樹林パッチの林相に変化があったか、という項目について非自生型B1タイプ個体の出現割合が顕著に影響を受けていることが明らかになった。このことにより、植栽からある程度年月が経過した導入樹木の逸出・定着状況が野外の広範囲地域で提示された。
著者
新村 聡
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代自然法学の国家論の中心をなす社会契約説は、市民政府の起源と忠誠義務の根拠を、契約・合意・同意などから説明した。この社会契約説を批判したのが、デヴィッド・ヒュームとアダム・スミスである。本研究は、ヒュームが、市民政府の起源について原始契約の存在を認めた上で、忠誠義務の根拠を契約に求める見解を批判して利害と慣習から説明したことを示した。さらにスミスが、ヒューム理論を継承発展させた「権威の原理」と「功利の原理」の理論によって市民政府の起源と服従の根拠を説明し、社会契約説への理論的批判を完結させたことを明らかにした。日本では、近年自然法思想およびヒューム、スミスらの思想はしばしば「市民社会論」と呼ばれてきた。本研究は、日本における市民社会論の歴史についても考察した。近代自然法学および重商主義の経済理論を特徴づけるのは、貨幣数量説である。ヒューは、貨幣数量説を国際的金移動の理論と結合して、重商主義の貿易規制策を批判する一方、連続影響説より貨幣数量が産出量水準にも影響を及ぼすことを認めた。本研究は、アダム・スミスが、『法学講義』で貨幣数量説と異なる銀価決定論を述べており、『国富論』では、銀価の変動を歴史的に考察する一方で、ステュアートの理論的影響のもとに流通必要量説を主張し、貨幣数量説と異なる見解を展開したことなどを明らかにした。
著者
タン ミッシェル 松本 恒雄 丸山 千賀子 丸山 千賀子
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、英米法系の消費者法システムにおけるソフトローの実態を調査し、最近日本においても消費者政策として推進されているソフトローのあり方を比較法政策的観点から研究するものである。欧米諸国を中心に比較調査をして、ソフトローを推進するための消費者法システムの理論およびフレームワークを明らかにした。欧米諸国で活用されているソフトローの手法の特徴、実践例を分析した上で、日本における活用方法について、論文及び内外のシンポなどで提言を行った。
著者
木村 成伸 五十嵐 淑郎 生城 真一 千田 俊哉
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803にAcidovorax sp. KKS102株ビフェニル分解酵素系遺伝子やラット肝臓シトクロムP4501A1遺伝子を導入することにより,ビフェニルやダイオキシンを貧栄養環境下で水酸化できる新規シアノバクテリア株を作製した。芳香族環境汚染物質のバイオレメディエーションにおけるシアノバクテリアの有用性が確認できた。
著者
高瀬 淳
出版者
藤女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,「学校の自律的な管理運営を保律する制度とは如何なるものか」という問題意識の下,ロシア連邦における学校の管理運営体制に関する現行法制を教育改革の動向や教育行政制度の全体像を踏まえて総合的に分析するその構造と実態を明らかにすることを目的としている。本研究では,ロシア連邦の管理運営体制が,学校の自律性の確保に向けた3つの段階を経て成立したことが明らかとなった。まず,ペレストロイカ政策期の学校では,国家・行政機関からの自律性を確保することが意図された。これは,学校裁量権の拡大に伴い,学校が自らの意思を決定できるようにするための措置であり,それぞれ同数の教職員,生徒及び保護者・地域住民から構成される学校代表者会議や学校会議が,学校の管理運営に責任をもつ体制が形づくられた。つまり,学校の管理運営は,国家・行政機関ではなく,保護者・地域住民など「社会」の代表者が参加して行われることが基本方針とされたと指摘できる。次に,ソ連邦崩壊から1996年かけては,こうしたマルクス主義的なイデオロギーからの自律性を獲得することが目指された。具体的には,学校裁量権の拡大が再確認されると同時に,学校から共産党粗織を排除する措置が講じられた。これにより,学校の管理運営は,学校自身の手に委ねられることとなり。西欧的な民主主義社会の形成という新たな国家理念の中で,学校ごとに特色ある教育を提供するための条件整備が図られた。さらに,1996年以降には。学校会議が,学校の自主管理の一形態として。保護者会話,学校総会,教職員会議などと同列に例示されるに留まるなど,学校の管理運営体制の自由化が図られた。その結果,今日のロシア連邦では,学校の管理運営における「責任の明確化」と「効率化」が,実質的に校長の権限と責任の拡大を方策として進められ,校長の強力なリーダーシップの発揮を通じて,個人や社会の多様なニーズに対応した学校教育を実現していくことが期待されている。
著者
岩井 善郎
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

耐摩耗設計における材料選択と摺動条件選定の指針を得るために、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件および摩耗率に及ぼす材料の含有成分と摺動環境の影響を研究した。1.成分含有量の異なる種々の銅合金についてピン・ディスク形式の摩耗試験を行った。その結果、Niの含有率が大きい銅合金では、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移がみられるが、Ni含有率が30%以下のCuーNiーZu合金(洋白)ではいずれの摩擦条件でもシビヤ摩耗を生じる。洋白材の耐摩耗性はNiとZnの含有率の増加にともなって向上する。その程度はNiのほうが著しいが、Znの含有率が増加するとNiの影響は小さくなる。このような成分含有率と摩耗量の関係を立体座標上にプロットして耐摩耗性を平面で表示することによって、最適な耐摩耗性材料の選択や創製の指針を提示できることが明らかになった。2.空中、イオン交換水中、食塩水中で炭素鋼どうしのすべり摩耗試験を行った。液の腐食性が増すとマイルド摩耗を生じる領域は高荷重側にシフトする。また液中のマイルド摩耗率は低荷重域では荷重によらずほぼ一定値を示すが、高荷重域では比例して増加するので、マイルド摩耗と荷重の関係は折れ線で示される。前者は表面の腐食疲労破壊による摩耗、後者は疑着摩耗に支配されているが、いずれも液の腐食性にともなって増加することが明らかになった。3.食塩水中の軟鋼の摩耗では、カソ-ド防食を施すと自然腐食下に比べてマイルド摩耗を生じる領域は低荷重側にシフトするが、マイルド摩耗率は小さくなることが明らかになった。4.前項の2、3の結果をから、腐食環境下の鋼の耐摩耗性はシビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件と摩耗率から評価すべきことの重要性が一層明らかになった。このような観点から、腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響を引続き研究する予定である。
著者
堀 雅敏 金 東石 大西 裕満 佐藤 嘉伸 陳 延偉 富山 憲幸 岡田 俊之 東浦 圭佑
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

3次元 CT 画像から、腹部臓器の形態的特徴を大局的に取り扱うコンピュータ手法を開発した。本手法では、統計的形状モデルとサポートベクタマシンを応用した。本法の応用として、慢性肝障害における肝線維化を CT 画像から評価するシステムを構築し、その性能を確認した。本研究は、統計アトラスを用いて大局的な臓器形状変化を定量化する技術が、体幹部領域のコンピュータ支援診断に応用できる可能性を示した。
著者
日下 隼人
出版者
メヂカルフレンド社
雑誌
看護展望 (ISSN:0385549X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.858-861, 2002-07
著者
塩崎 麻里子
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究では、乳がん患者が配偶者との日常生活において、配偶者が良かれと思って行っているであろうサポート態度が、患者にとってサポートとならない場合について着目している。先に行った乳がん患者に対する半構造化面接で得られた、患者にとって「ありがた迷惑」、「大きなお世話」といった配偶者からのネガティブサポート態度に関する15項目を用いて、手術前と手術後においてどのような変化が見られるかを縦断的に明らかにした。手術前と術後1ヶ月に質問紙調査を行ったところ、ネガティブサポート態度に関して欠損値がなかった乳がん患者63名(平均年齢:49.3±8.9歳)を分析対象とした。半構造化面接で得られた15項目は、比較的頻度の高いもの(早く元通りになるようにとあなたを励ます・あなたの病気や治療のことは、全て医師にまかせるものとして関与しない・自分のことよりも、常にあなたのことを優先する)、比較的頻度の低いもの(あなたと病気についての話をすることを避ける・あなたを病人として、はれものに触るように大事にする)が含まれていた。また、これら15項目は探索的因子分析と検証的因子分析を経て、3下位因子によって説明された。その3つの下位因子は、「過剰関与」、「問題回避」、「過小評価」と命名されている。術前と術後に変化が見られるかどうかを繰り返しのある分散分析で検討したところ、「過剰関与(F(1,62)=6.19,p<0.05)」と「問題回避(F(1,62)=10.35,p<0.01)」において有意な差がみられた。このことから、配偶者からのネガティブサポート態度は、術前・術後といった治療経過の中で出現頻度の認知に変化がみられるものであることが示唆された。今後、この変化が、実際に変化しているものなのか、患者のサポートニードが変化したものなのか、患者の個人的特性や状況などの変数を加えて詳細に検討していく必要がある。
著者
廣瀨 興
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.89-91, 1932-09
著者
西田 治文 植村 和彦 栗田 裕司 朝川 毅守 山田 敏弘 植村 和彦 栗田 裕司 朝川 毅守 山田 敏弘 寺田 和雄 矢部 淳 LUIS FELIPE HINOJOSA O. MIGUEL RANCUSI Herrera
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

チリ南部の南緯33度から54度までの地域で、白亜紀後期から中新世の植物化石の採集調査を行い、鉱化ゴミ化石群という新たな概念の化石群集を含む良質の化石植物群を発見した。産出時代決定に当該地域では初めて渦鞭毛藻類による生層序区分を試み、有望な成果を得た。化石の解析から、第三紀初期のフロラが温暖な要素を含み、同時代の南極との植物地理学的関連が確認された。鉱化ゴミ化石の高解像度X線CTという新手法も試みた。
著者
黒橋 禎夫 日笠 亘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.184-189, 2001
被引用文献数
2 1

本稿では京都大学附属図書館における自動レファレンス・サービスのプロトタイプシステムについて述べる。本システムは2つの知識ベースを利用している。1つは国立国会図書館分類法に対応する木構造データベースで,「~に関する本を探しています」などのレファレンス・サービスにおける典型的な質問に答えるためのものである。もう1つは自然言語で記述された知識ベースで,レファレンス・サービスによせられる広範な質問に柔軟に対応するためのものである。本システムは,従来の情報検索システムのように検索に対して答えを1回だけ返すというものではなく,ユーザとの対話を行う機能を備えている。
著者
小林 淳子 森鍵 祐子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 細谷 たき子 赤間 明子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

出産後の母親の喫煙予防に資する基礎資料を得るために,母子手帳交付に来所した妊婦をコホートとして母子手帳受領時,妊娠末期,出産後の3回縦断的に調査した。その結果母子手帳受領時,出産後ともに喫煙には出産経験有,身近な喫煙者有が関連し,母子手帳受領時にはさらに若年齢が関連した。妊娠を契機に禁煙した妊婦は79.2%,その内出産後の再喫煙率は15.8%であった。妊娠が判明しても喫煙を継続した妊婦5名中4名(80.0%)が出産後は禁煙した。また,妊娠初期の禁煙支援として「意識の高揚」,「自己の再評価」を活用する妥当性が示唆された。