著者
塩濱 愛子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

前年度、本研究の結果として典型的な欠失領域の両端であるLCR22-2とLCR22-4周辺及び欠失領域から、多型が見込まれる20塩基対程度のマイクロサテライト領域を36箇所抽出し、これらのPCR産物を蛍光標識・多型同定する高速ジェノタイピング解析法を確立した。その結果、多型が認められる24箇所のマーカーを選別した。本年度は、患者由来の培養細胞を用いて本解析法の妥当性を確認した。22q11.2微小欠失が確認されているDGS患者より樹立された細胞株(GMO7939B、GMO5876、GM13325、GM10382A、GMO3479、GMO7215)からゲノムDNAを抽出し、この設計されたプライマー群を用いて微小欠失領域に対するジェノタイピング解析を行った。また、実際に欠失領域を検出する際に問題となるのは、ゲノムDNAの精製法である。現在はFISH法による診断法のため血液採取が必要となるが、本方法では少量のゲノムDNAのみで解析可能である。そこで口腔粘膜からのゲノムDNA採取法を検討し、歯間ブラシで軽く10回こする程度で、本解析に必要とする十分量のDNAを採取できることを確認した。
著者
垣花 京子
出版者
筑波学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

数学教育の中でIT活用が始まり20年以上になる.最近は誰でもどこでも,同じような環境でITの活用ができ,研究者の間では,数学教育で利用することで動機付けになり,その学習効果が示されている.しかし,あまり多くの人々に利用されていない.一方,関数に対して苦手意識が強い人も多く,関数と聞いただけで敬遠し,関数を利用して現象を表現したり,判断したりする機会に直面したとき,考えようともしない.この原因として,中学,高校では,1次関数,2次関数とばらばらに教えられ,面白さがなく,式操作中心になりがちで,難しいという印象だけが残っていることが考えられる(Steen, 1990, p.4).本研究では,このような原因を克服するために,人々が比較的使い慣れている表計算ソフトとソフト本体がなくても動的に図形の操作ができる環境を使い,いろいろな関数を動的に見たり,数値を操作したりしながら,グラフや図,式,数値を道具として使いこなし,関数に関する探求,問題解決ができるようにし,"関数センス"を育てるための統合的なアプローチを構築した.今までの学校教育とは,違った方向で,ITの活用により拡張できるところは拡張するよう試みた.成果物としてCD-Rに焼いた電子テキストとWebサイト(http://www.tsukuba-g.ac.jp/t/kakihana/kansu/)がある.これらは,それぞれの場面で,表計算ソフトExcelと無料でPlug inするだけで動的環境を実現できる図形学習ソフトCabri GeometryとCabri 3Dを使って関数の探求ができる.本研究で扱った教材は,ケーススタディやワークショップでの実施を繰り返しながら,改良を加えた.できるだけいろいろな形の関数に接することができるような場面を作り,数値を操作し,視覚的に変化を観察しながら関数の特性をつかみ,問題解決できる.
著者
税所 真前 伊瀬 敏史 辻 毅一郎
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. B, 電力・エネルギー部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. B, A publication of Power and Energy Society (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.123, no.8, pp.964-973, 2003-08-01
被引用文献数
19 14

In the large-scale factories like ironworks, many power electronic inverter loads exist, and these inverter loads are connected into ac systems by using rectifiers. On the other hand, DGs (Distributed Generators) such as photovoltaic generators and fuel cells, or ESSs (Energy Storage Systems) such as secondary batteries and SMESs (Superconducting Magnetic Energy Strages), which are dc power sources will be introduced to distribution systems more and more. These are connected into ac systems by using inverters. Therefore, it is expected that some countermeasures to achieve a dc distribution system which can reduce power losses due to rectifiers and inverters, should be developed.<BR>In this paper, a dc loop type distribution system is proposed as one of the new dc distribution system configurations. The calculation results of power losses for the dc loop type distribution system are compared with those for an ac distribution system. Moreover, this paper shows configurations and simulation results of the inverter, bi-directional rectifier and PFC (Power Factor Corrector) used in this system.
著者
菊谷 昌浩
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

自由行動血圧測定での、拡張期血圧と収縮期血圧の回帰係数が、その個体の動脈硬化を反映するとされAASIと呼ばれる。以下の3点を明らかにした。(1)血圧データ数が35個以上であれば、脳心血管死亡の予後予測能には影響を与えないこと。(2)家庭血圧によって導出されたAASIは脳梗塞発症を予測すること。(3)家庭血圧によって導出されたAASIは頸動脈中膜内膜複合体厚と弱い関連があること。
著者
藤田 正一
出版者
公益事業学会
雑誌
公益事業研究 (ISSN:03873099)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.5-13, 1999-03

本穣において、私は、本学会大会の統一議題名の選定背景や統一論聴名と公誕事業研究の関係について考察し、それらが今後の公益事業研究の方向性や環化のためになんらかの参考になることを期して論究した。そこで、特筆されたことは、1980.J:手托以降の統一論題名がそれ以前の統一論題名と大きく異なってきたことからも理解されるように、80年代以降、日本においても公益事業研究が大きく転換してきたということである。しかし、その転換は、時流に流容れて転換したのではない。社会経満環境の大ぎな変化によって生じた課題を議案に提え、それらの課題受信統的公議事業論に縛られることなく解明したよで、動態的効率性と公共の季五益が適正に鞍備されることを基軸に据えて薬事査に公益事業譲を理議化してきた結果が、わが、鑓の公議事業研究の転換となったのである。かくして、近年、税護議的な公議事業摂認が少なくなってきているのであるが、よ記の公益事業罰究転換後の研究姿勢を基本としながら、伝統的公議事業識に縛られない鰯車議釣鵠露からの公議事業顎究も遵守していかなければならない。
著者
西田 保
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、体育における学習意欲を多面的・総合的に診断するシステムの開発であった。具体的には、(1)「体育における学習意欲」「学習意欲の支持要因」「学習行動の選好」を測定する尺度の信頼性および妥当性を、4府県下(愛知県、滋賀県、大阪府、熊本県)の公立小学校5年生および6年生の男女計1,562名を対象に検討すること、(2)体育における学習意欲の類型化をクラスター分析によって特定すること、(3)体育授業以外への興味・関心(他教科の興味、諸活動の興味と体育の楽しさ)も含めて診断システムとすること、(4)各尺度の評価基準、診断プロフィールを作成することを通して、体育における学習意欲診断システムを完成させることであった。種々検討の結果、本診断システムは、体育における学習意欲(短縮版AMPET)、学習意欲の類型(パターン)、学習意欲の支持要因、学習行動の選好、他教科や諸活動の興味、現在行われている体育授業の楽しさを測定できることが明らかとなった。また、各尺度は5段階評価によって診断プロフィールの形で示すことが可能となり、本診断システムを実際に利用した5人の体育担当教師に対して感想を求めたところ、いずれも肯定的な内容であった。以上のことから総合的に判断して、「体育における学習意欲診断システム」は、教育の実践場面において十分有効利用できるものであることが認められた。本診断システムによって提供された情報をどのようにして実際の指導に結びつけていくのかという具体的な学習指導への橋渡しが今後の課題である。

1 0 0 0 OA 月見草(思潮)

著者
風味
出版者
京都府立医科大学
雑誌
校友会雑誌
巻号頁・発行日
vol.56, 1911-07-01
著者
池上 純一
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ヨーロッパの芸術史・思想史において「モデルネ」(近代の最先端から近代の桎梏を乗り越えようとする思潮)への道を切り開いたドイツの音楽家リヒャルト・ワーグナー(1813-83)の活動とその意義を、音楽作品のみならず著作・論文等に即して美学的、哲学的な見地から解明するとともに、ナショナリズム、ユダヤ人問題、ナチズムなどの歴史的な背景に照らして現代にまで及ぶその影響を功罪を含めて明らかにした。
著者
菊本 智之
出版者
浜松大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、近世武芸や社会、武芸界に影響を与えたのは、武芸の達人・名人といった個人ではなく、政治を主導した時の権力者の武芸思想であるという立場から、為政者の武芸実践とそこで培われた思想、武芸政策について研究を進めた。特に8代将軍・徳川吉宗以降、改革期の老中には吉宗と定信の血統が名を連ねている。定信の養子先・久松松平家で実践された起倒流柔道を中心にその思想が受け継がれ、武士階級はじめ武芸界に様々な形で影響を与えていったことを明らかにした。
著者
高橋 康夫
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

固相接合過程は接合圧力や接合温度だけでなく接合表面凹凸(表面あらさ)に大きく影響される。接合面同士を押しあてると、表面凹凸に起因して接合界面に空隙ができ、即座には完全な密着が出来ない。本研究では、この空隙が消失していく過程を数値計算により解析し、広範な条件に対して、予測できるアルゴリズムを試作している。すなわち、拡散によるボイド収縮過程のシミュレ-ションを行い、さらに、表面あらさのばらつきの接合過程への影響を考慮して、接合条件設定アルゴリズムを試作している。得られた主な成果及び概要を以下に示す。1)空隙収縮過程は、圧力・温度に影響される。その活性化エネルギ-はln(T/tv)-(1/T)プロットによって得ることができる。ここで、Tは絶対温度、tvはあるボイド収縮量Vsを達成させるに必要な時間である。2)拡散機構支配であると、時間tvに対する応力指数n(tvαP^n)は-1又は、-1〜-0.3となる。ここで、Pは接合圧力である。3)空隙収縮過程は、空隙の配列間隔に大きく影響される。4)細かい凹凸の表面を導入すると接合道程は促進される。5)表面凹凸のばらつきによる接合中のボイド間隔は、表面凹凸形状のかさね合せの手法によって正確に推定できる。6)推定した接合中のボイド間隔を考慮して、接合予測をすると、接合終了時をかなり正確に推定予測しうる。7)本研究で試作した接合条件設定ウルゴリズムは、接合条件を最適化させる上で、大きな力となることがわかった。8)実験によりこのアルゴリズムの適用範囲を確認している。
著者
千木良 尚志 真鍋 厚史 伊藤 和雄 和久本 貞雄 早川 徹
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.194-199, 286, 1989-12-25
被引用文献数
34 33

Glyceryl methacrylate水溶液の,dentin primerとしての効果を象牙質円柱窩洞内での,可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップの計測と象牙質平面に対する引っ張り接着強さの計測によって評価した。被着象牙質面は,pH7.4に調整された0.5M濃度のEDTAによって歯面清掃を行った後,5%から45%までのGlyceryl methacrylate水溶液を塗布し,その後市販のリン酸エステル系ボンディング材を併用して市販の光重合型コンポジットレジンを填塞または接着させた。また,コントロールとして35%HEMA水溶液と5%glutaraldehydeを含む35%HEMA水溶液をprimerとして用い,同様の計測を行った。 その結果,25%と35%の濃度のGlyceryl methacrylate水溶液をdentin primerとして用いた場合に,全試片でギャップが全く認められず,完全な窩洞適合性が得られた。また,24時間後には,25%および35%水溶液で,それぞれ平均19.6および18.7MPaの平均接着力が得られた。
著者
梶浦 欣二郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

本学会名誉会員増澤譲太郎博士は2000年8月29日に享年77歳で亡くなられました。博士は東京帝国大学地理学科を卒業後,1946年に中央気象台(現気象庁)に就職,諏訪湖の研究に着手されました。その後,気象定点観測船による黒潮観測資料の解析に従事され,1954年以降,凌風丸による東北海区の黒潮続流の観測を指揮して,黒潮の実体解明に貢献されました。1962年から2年間,米国に留学してモンゴメリ教授の指導を受け,帰国後,亜熱帯モード水の研究を発表。黒潮協同観測(CSK)では,137°E定線観測計画を策定されました。1976年に日本海洋学会賞を受賞。1980年から3年間は気象庁長官,定年退官後は東海大学海洋学部教授,1987年から2年間は日本海洋学会長を務められました。謹んで哀悼の意を表します。
著者
吉川 正俊 馬 強 浅野 泰仁 清水 敏之 岩井原 瑞穂 鈴木 優
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Webサーバにおいて高品質な情報を管理するために,情報の注釈データの管理手法を開発すると共に,構造化文書の照応解析技術を開発した.知識資源を表現するRDFデータの格納及び検索システムを構築すると共に,検索エンジンと利用者生成型知識資源Wikipediaの統合利用システムを開発した.また,複数ニュースソースデータの統合利用手法として整合性提示機能提供システムおよび因果関係ネットワーク漸増構築法を開発した.
著者
黒木 伸明
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。
著者
中畑 則道 守屋 孝洋 小原 祐太郎 斎藤 将樹
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

脂質ラフトはスフィンゴ脂質、コレステロールやスフィンゴ糖脂質などに富む細胞膜マイクロドメインであるが、受容体を介するシグナル伝達が効率的に行われる場としても重要であることが近年示唆されている。P2Y_2受容体はG_<q/11>と共役することが知られているが、本研究ではNG108-15細胞を用いて、P2Y_2受容体を介するシグナル伝達と細胞の遊走反応における脂質ラフトの役割について検討を加えた。NG108-15細胞を蔗糖密度勾配遠心法を用いてトリトンX-100に不溶性の画分を分離すると、そこの画分には脂質ラフトマーカーであるコレステロールやフロティリン-1、ガングリオシドが局在した。G_<q/11>およびP2Y_2受容体は部分的にこの画分に存在した。さらに、メチル-β-シクロデキストリン(CD)処理は、脂質ラフトマーカーのみでなく、G_<q/11>およびP2Y_2受容体もその画分から消失させるとともに、P2Y_2受容体を介するホスファチジルイノシトール水解反応や細胞内Ca^<2+>濃度上昇作用のシグナル伝達、さらにP2Y_2受容体を介する細胞遊走反応も抑制した。これらのP2Y_2受容体を介する反応は、G_<q/11>特異的阻害薬のYM254890によっても強く抑制された。一方、CDあるいはYM254890処理は、P2Y_2受容体を介するRhoの活性化を強く抑制した。Rhoの下流と考えられるストレスファイバーの形成やコフィリンのリン酸化反応もCDあるいはYM254890処理によって強く抑制された。しかし、G_<12/13>のドミナントネガティブを発現させてもP2Y_2受容体を介するRhoの活性化シグナルは抑制されず、本細胞においてはP2Y_2受容体刺激によってG_<q/11>を介してRhoの活性化が引き起こされ、それは脂質ラフトにおいて起こっている事象であると考えられた。すなわち、脂質ラフトはP2Y_2受容体を介するシグナル伝達において重要な役割を有することが本研究によって明らかになった。