著者
増田 千利 吉田 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特性の優れたカーボンナノチューブ(CNT)などカーボン(CF)系短繊維強化アルミ基複合材料を放電焼結法で製造し、強度特性、熱伝導特性、界面組織を検討した。CNTとAl液滴との接触角は174°でほとんど、濡れることがなかった。CNT表面にAl, Mg金属をコーティングすることに成功した。またAL, Mg金属粉末にCNTを成長させることに成功した。これにより凝集したCNTを金属粉と均一に分散させる困難さを克服できる可能性を見出すことができたといえる。
著者
緒方 一喜 原田 節子 中村 光子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衞生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.100-110, 1954-12-30
被引用文献数
3

1. S. aokiiは本州, 九州に広く分布し, 平地から山脚地帯にかけての小流に発生する極く普通の種類である.屡々山間の溪流にもみられる.又, S. venustumと共に本邦に於て激しく人を襲う代表的な種類である.2.著者の観察によれば, 産卵は夕刻に多く, 水中の植物, 岸の上から垂れた草の葉或はコンクリート壁を問わず産卵場所は水表上の常に水沫で濡れる状態の場所であつた. 1〜数10匹で集団的に或限られた小面積の好適な場所に短時間に行われた.そして1〜数10個の卵塊は集合的にうみつけられた.1匹の雌による1回の産卵数は150〜300と考えられた.3月の室温で約10日で孵化を始めた.3.幼虫は川幅約1〜0.3m, 流速10〜30m/分, 水質は水底が見える程度の清流に最も多数みられた.4.幼虫が水中で吸着している基物は, 基物自体に対する選択よりも, 寧ろ基物のおかれている環境条件によつて選択される.自然界では水面下約10cm以内の植物に大部分吸着している.特に細長い葉面の裏面先端部に多い.5.幼虫は水中で, 好条件下では数日間同一場所に固着しているが, 又或程度尺取虫状匐匍運動或は分泌した糸に懸垂して移動を行つている.6.蛹の発生水域から1, 000mの距離迄100mおきに実験者が位置し, 刺咬する成虫を採集して活動範囲調査を行つた.発生水域附近が最も刺咬数は多く, 1, 000mの地点でも若干採集された.7.成虫の刺咬活動は周年みられるが, 特に3月から7月にかけて最盛活動を示した.8.雌成虫は最も人を好んで吸血するものと考えられた.牛, 馬及び山羊を用いて襲来成虫を採集したが, 馬で9匹, 牛で1匹採集されたに過ぎなかつた.
著者
副島 哲朗
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,これまでマクロなレベルでのみ認識されていた散逸構造という物理現象による自己集合現象が,ナノ・分子レベルといった極微の世界でも存在していることを証明した.また,単一のナノ結晶の構造形成において,結晶成長とエッチングを同時に適用することによって,それぞれの手法を単独で適用したときには得られない,ユニークな形状を有するナノ結晶が得られた.
著者
黒柳 あずみ
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

近年,二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋の酸性化,また地球温暖化による成層化強化に伴う貧酸素化が懸念されている.その一方で,過去にもこれらと同様の地球環境があったことが推測される.例えば、白亜紀には,海洋無酸素事変という海水中の溶存酸素量が低下する海洋イベントが数回起こり,この期間,浮遊性有孔虫は高い種分化速度・絶滅率を示す.しかし,溶存酸素と浮遊性有孔虫との関係は技術的問題からこれまで検証されていない.本研究では,pH及び溶存酸素量を制御した浮遊性有孔虫の飼育実験を行い,白亜紀から今世紀末を通じて考えられる変動範囲において,浮遊性有孔虫の生物的・化学的反応について明らかにし,過去の海洋環境を解析するとともに,将来の環境変遷を予測することを目的とする.平成22年度は,溶存酸素量を制御した浮遊性有孔虫2種(Orbulina universa ;共生藻あり,及び,Globigerina bulloides ;共生藻なし)の飼育実験を行った.飼育溶存酸素濃度は,5%-100%超の範囲で6段階設定し,飼育個体の生存日数・配偶子放出個体の割合・殻形態及び殻形態の異常率・殻表面の孔密度・Orbulina universa 種においては,Adult chamberであるspherechamber形成の有無などについて,一部の測定を終了した.これは,溶存酸素濃度に対する浮遊性有孔虫の生物的反応としては,世界で初めての報告例であり,さらにその結果,浮遊性有孔虫が,これまで予想されていたよりもはるかに高い溶存酸素耐性を持つ可能性が示唆された.
著者
伊藤 寿 市ノ木山 浩道
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.329-333, 2005-09-15
被引用文献数
5 8

三重県で栽培されているニホンナシ'幸水'の生育相および果実糖度の年次変化と気象要因との関係を解析した.データを解析した1981年から2004年までの24年間で, 年平均気温は1年間に約0.07℃の割合で上昇していた.気温の上昇は, 9月から2月の間で大きかった.自発休眠覚醒期の推定値は, 1年間に0.49日の割合で遅くなった.満開期は年々早くなっており, その程度は1年間で0.37日であった.満開期は, 2月上旬から4月中旬の旬平均気温と負の相関を示し, これらの旬平均気温の中には年次と正の相関を示すものがあった.収穫最盛期は, 満開期と正の相関を示し, また, 1年間に0.32日の割合で早くなった.果実生育期間の長さの年次変動には傾向は認められなかった.これらのことより, '幸水'の生育相は, 地球温暖化の影響を受けていると推察された.一方, 果実糖度は, 7月中旬から8月中旬の旬平均気温および日射量と正の相関を示し, 7月下旬から8月上旬の降水量と負の相関を示した.しかし, 果実糖度と年次との間には相関が認められなかった.
著者
小川 正廣
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、個人および共同体・社会階層・文明としての人間とその社会のあり方を、空間的・時間的にそれらの内外に存在する「他者」とのかかわりという観点からとらえ、その諸相を古代ギリシア・ローマの古典文学やその伝統を継承した西洋文学の中に探った。具体的には、主に次の点に研究成果を要約することができる。1.ギリシア・ローマ文明が他者との関係を軸として固有の人間観・社会観を発展させたプロセスを、他の古代文明の場合との比較にもとづいて概観した。2.他民族との関係を戦争と平和という両極の状況としてとらえた場合、ホメロスのギリシア叙事詩では戦争と平和の間に乗り越えがたい溝が存在し、他方ウェルギリウスのローマ叙事詩では、戦争の価値は平和の確立という明確な目的によって相対化されたことが明らかになった。3.奴隷と女性という社会の内側の他者に対する見方の変容過程を、ギリシア古典期の通念と両者の地位に顕著な変化をもたらしたヘレニズム・ローマの人間観との比較によって、および、そうした社会的・思想的変化を背景として創作されたローマの劇文学と恋愛詩の分析によって浮かびあがらせた。4.国家の君主がとるべき他者に対する寛容な態度や、人間が他者に恩恵を与えるときの精神的なあり方について、ローマのストア哲学者セネカの論説を中心に検討した。5.異教文化と古典文学の伝統を代表するローマ詩人ウェルギリウスが、キリスト教化した西洋中世を代表するダンテの叙事詩において他者としてどのように扱われ、またどのように評価されたかを検証し、西洋文化固有の他者概念にもとづくヨーロッパ文明の特質について考察した。
著者
吉藤 元
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

カルパインは,Ca依存性システインプロテイナーゼの1つだが,皮膚筋炎・多発性筋炎(PM/DM)の病変部位で過剰発現していることが知られ,筋炎病態への関与が示唆される.ミオシン誘発筋炎(MIM)は,マウス・ラットを異種動物ミオシンで免疫して筋炎を誘発する実験動物モデルで,病理学的検討からPM/DMの実験動物モデルと考えられている.昨年度,カルパイン阻害薬E-64-dによるMIMの治療を試み,E-64-d治療MIMマウス群で病理所見と小島分類による点数が対照群に比べ有意に改善したことを報告した.今年度は,MIM誘発マウスにおけるミオシン反応性Tリンパ球の分離・解析を試みた.ウサギミオシン0.2mgをCFAと懸濁乳化し,SJL/Jマウス(5週齢,雌)の尾根部に皮下注射し免疫した.9日後,マウス脾臓および鼠径リンパ節を採取し,MACSビーズ処理にてCD4陽性Tリンパ球のみを選別した.これらを刺激培養するため、ウサギミオシン15μg/mLを添加,別にマウス脾臓より得た放射線照射済みのAPCとともに培養した.培養32日後,それらTリンパ球を解析する目的で,0.0,0.63,1.3,2.5,5.0μg/mLのウサギミオシンとWST-8試薬を添加して,APCとともに培養した.WST-8添加8日後に吸光度を測定したところ,ミオシン濃度依存性にTリンパ球の増殖が促進された.ミオシン誘発筋炎におけるCD4陽性リンパ球の病態への関与が示唆された.カルパイン阻害によるマウス実験的筋炎モデルへの治療効果が示されており,カルパインがCD4陽性リンパ球によるサイトカイン産生などのヘルパー作用を阻害して薬理活性を発揮している可能性が考えられた.
著者
倉橋 惣三
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.55-57, 1940-07
著者
子吉 知恵美
出版者
石川県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

就学前における発達障害児(ADHD/注意欠陥多動性障害・LD/学習障害・高機能自閉症など)の子どもたちとその保護者に対する支援をつなげていくためのツールに関する研究である。乳幼児健診で子どもの発達障害を指摘された後、子どもが不適応を起こさないように、保育所・幼稚園、さらに小学校へと適切な関わりがなされるように、子どもの特性を関わる職種が理解し、援助をしていけるように、どのような支援ツールが有効であるのか検討した。
著者
原 勝己 田辺 昭 川下 辰広 角山 宏 鳥海 徹
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.55-61, 1976

1.産卵鶏にEMCを投与し,同時にpenicillamineあるいはsodium selenate (SS)を投与して,水銀の卵への移行に対するpenicillamineとSSの影響をみた. 2.penicillamine投与は水銀の卵への移行,全血中濃度に影響しなかった. 実験終了時(31日目)の組織中水銀濃度にもpenicillamineの影響はほとんど認められなかった. 3.penici11amineはEMCによる産卵率の低下をやや改善した. 4.SS投与によって卵への水銀移行量は1/2~1/5に減少した. また全血の水銀濃度は約1/2に低下した. 実験終了時(32日目)においてSS投与2群の肝の水銀量はそれぞれ対照群の15倍,28倍であった. 一方腎,脳組織では対照群の約2倍,浅胸筋では殆んど差がなかった. 血漿では逆にSS投与群は対照群の約1/2,血球ではそれぞれ1/3,1/5,羽毛では1/9,1/6であった. 5.SS投与は産卵を低下させ,またSS投与期間中はかなり激しい緑色下痢便が認められた。
著者
森田 正彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「外殻の形状情報と高精細でフォトリアリスティックなテクスチャ情報、および内部の構造情報を有した小型実物体の3次元コンピュータモデルを短時間に生成可能とする」ことが本研究の目的である。この目的を実現するために、X線CT装置と超広視野顕微鏡などの画像計測装置を利用した装置開発を行った。本研究成果を用いて作成したコンテンツは実際に多数のミュージアムで使用されており、本研究の有効性を示すことにも成功している。
著者
岡崎 睦 栗田 昌和
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

身体各部位由来の正常皮膚由来線維芽細胞を用いて、瘢痕形成、色素沈着にかかわるサイトカインの発現解析を行い、線維芽細胞の部位特異性を明らかにした。特に急性期創傷治癒過程において、真皮深層の線維芽細胞は、浅層の細胞に比較して創収縮、細胞外器質の産生に有利な性質を有しており、真皮内の線維芽細胞の部位特異性は、非常に合目的的であることを報告した。さらに、解剖学的な部位による真皮線維芽細胞の特異性を明らかにするため、同一個体由来の顔面真皮線維芽細胞および体幹真皮線維芽細胞について、増殖特性および、瘢痕形成、色素沈着に深くかかわると考えられる因子(サイトカイン、マーカー、細胞外器質)の発現解析を行った。結果として、同一個体由来の顔面、体幹線維芽細胞はほぼ一致した増殖特性を示すが、瘢痕形成にかかわる因子の発現は、顔面由来の線維芽細胞で低発現であることが明らかになった。一方、体幹由来の線維芽細胞は、色素沈着に関するメラニン刺激性サイトカインであるStem cell factorを高発現していた。これらの知見は、顔のきずは体のきずに比べて、肥厚しにくく、色素沈着をきたしにくい、という臨床的な印象とよく一致し、臨床的に経験される創傷治癒の部位特異性は、線維芽細胞の部位特異性に起因することが示唆された。
著者
丸山 俊明 森谷 菜穂子 高橋 加津美
出版者
山形大学
雑誌
山形大学高等教育研究年報 : 山形大学高等教育研究企画センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.20-33, 2009-03-31

はじめに 本学の附属博物館では,学芸員という国家資格を取得するための必修科目の一つである博物館実習を担当している。この実習は,博物館の教育運営に造詣が深い10人程の教員グループが講師を務めて,小白川3学部に共通する集中実施形式の授業として夏休みに開講している2単位の授業科目である。したがって,教育成果や学生からの授業評価は担当教員全員で共有すべきものであるが,小論では著者ら博物館事務執行部の視点で授業の概要をご説明し,実践事例の一つとして近況や課題をご報告する。ただし,すべての責は筆頭著者一人に限られ,他の授業担当教員や事務員の方にはまったく累を及ぼさないことをご承知置き願いたい。
著者
山形 辰史 Yamagata Tatsufumi
出版者
日本評論社
雑誌
経済セミナー
巻号頁・発行日
vol.595, pp.62-63, 2004-08

大学3年の夏休みに物乞いをした。岩手の地方都市に帰省しており、そこから電車で1時間ほどの盛岡に用事があった。用事を済ませたら古本屋があり、そこで鳥居泰彦著『経済発展論』を見つけた。以前から欲しかった本なので、それを買うと帰りの電車賃しか残らないことを知りつつ、買った。盛岡駅に着いたら、実は所持金が電車賃に数十円足りないことがわかり愕然とした。(以下略)
著者
黄瀬 浩一 岩村 雅一 馬場口 登
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

あたかも物体そのものにハイパーリンクが張られているように,カメラで物体を撮影(クリック)すると,その物体の関連情報が取得できたり,また撮影した画像を介してその物体の関連情報を登録できれば,高齢者や障害者にも優しい実世界指向インタフェースが実現できる.本研究では,100万枚の平面物体,55個の小型立体物,関東および関西の歴史的な建物,および2万ページの文書を対象として,大規模高速認識・検索技術を構築することにより,この目的を実現した.
著者
庄司 克宏
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

欧州連合(EU)は国際条約により設立されたが、欧州司法裁判所により実質的憲法化が行われた。それは、加盟国憲法との共存を前提とする「立憲的多元主義」という概念で説明することができる。EUの実質的憲法を成文化する試みであった欧州憲法条約の挫折を踏まえながら、リスボン条約という形で従来の形式が維持されつつも、実質的憲法の強化が行われつつある点の解明を行った。他方、域内市場における自由移動との関係で、法政策面における立憲的多元主義の限界もまた明らかとなった。