著者
横田 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, pp.512-513, 1997-03-06

人間は, 古来, 分業的に問題空間に対処して生きて来た。そこで, 基礎として生物的に生き, そしてより本質的には, 情動的に生きている。今回は, 一般化された伝送工学系である伝子工学の立場から, 情動的生に主眼を置いて, 複雑系としての問題空間への対応の為の, 基礎系について考える。人間は, 有形無形の道具を開発, 進化させることによって, 意識空間の規模を拡大して来た。近時, 生物・化学的系統を加味した, 電気的(線路・回路)システムが, それに関する言語的系統と併せて, 進化し, これが, ほとんどの全分業分野に, ほぼ必須的に関わりを持つようになった。今回は, 伝子工学の背景にある, 数物理哲学(生物・化学的科学系をも含む)的系統と, 特に, これと相補する, 情動的生の哲学的系続について考えることにする。絵画的あるいは, 音楽的パタン系のような, 呈味系に対する, 情報的感性対応のシステム等を考える際, その複雑系としてのシステムの背景にも, それにかかわる人間の人格的特性が重要であることを, 実感する。カントやウイトゲンシュタインの, 天才的業績も, それにもまして, 尊敬惜くあたわざる人格的生, 言動があったれぱこその感がする。今回は, 複雑系としてのシステム対応系として, 将来吟味したい, 奈良平安時代に確立したと思われる, 中観系(縄文以来の神観, 儒教・仏教的系)的対応に対する, 相補的な系としての西教的(聖書的約束的系)を背景とした, 西欧哲学系統に立ち入る。特に, 感性哲学系を中心に, 以前からの, 伝子工学的立場でのプラトンやウイトゲンシュタインとの結びつきの吟味を背景に, デカルトの「方法序説」的な複雑系対応と, そしてとくに, 西欧哲学の中核としてのカントの三論(三個の批判哲学)的対応を考える。
著者
左田野 渉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.218-221, 2000-04-01

出版大手取次である日販は積年に渡って書籍注文品の流通改善に, 流通面から取り組んできた。しかし, 商品寿命の短サイクル化による「品切」の増大だけは, 卸機能の中では改善にも限界があった。このような中, デジタル印刷機の登場により, 小ロットの重版が経済的・技術的に可能となった。一冊からでも, 受注生産を可能とするオンデマンド出版である。日販は有志出版社29社と, 昨秋, (株)ブッキングを設立して, オンデマンド出版による書籍の流通改革に第一歩を踏み出した。一方で, WEBに存在するコンテンツや, 可変印刷の技術などを, オンデマンド出版のニューウェイブとして育くむことを新しい可能性として見出している。
著者
樽野 博幸
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.258-264, 1999-07-25
被引用文献数
4

日本列島の中・下部更新統と鮮新統から産出する長鼻類化石の産出層準を,広域対比された火山灰層序に基づいて整理した.シンシュウゾウの出現は鮮新世の初期にさかのぽり,上限はガウス・クロンの下部におよぶ.標本数が少ないため,その産出層準は,地域によりずれているようにみえる.またこの層準では,火山灰層による地層の対比も不十分である.アケボノゾウ類似種はガウス・クロンの上部から松山クロンの下部の層準で産出している.アケボノゾウの産出層準は古琵琶湖層群産の1例をのぞいて,大阪層群の三ツ松火山灰層直下の層準からイエロー火山灰層層準で代表させることができる.ムカシマンモスの産出層準は,大阪層群のイエロー火山灰層層準からMa5海成粘土層層準で代表させることができるが,関東の上総層群では,より上位の層準からも産出している.しかし,この層準のものは誘導化石の疑いがある.トウヨウゾウの産出層準は,大阪層群のMa6海成粘土層直下からMa7海成粘土層の層準で代表される.
著者
曽根 淳史 古川 洋二 中塚 繁治 田中 啓幹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.902-906, 1989-06-20
被引用文献数
1

急速な転帰をとった膀胱原発絨毛癌の一剖検例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は70歳男性,1986年6月10日,肉眼的全血尿を主訴に来院した.膀胱鏡で後壁に母指頭大の乳頭状腫瘍と左側壁に米粒大の非乳頭状腫瘍を認め,生検の結果,未分化癌であったため強く入院を勧めたが拒否し放置していた.1987年1月30日に全身倦怠感,呼吸困難および体重減少を主訴に再来した.入院時,左女性化乳房を認め,血中hCG-βは101ng/mlと異常高値を認めた.腫瘍はすでにほぼ膀胱全体を占める程度に増大していた.入院後17日目,肺水腫及び心不全のために死亡した.剖検では膀胱腫瘍の大きさは10×10×3cmで,病理組織学的にsyncytiotrophoblastを認め,さらにhCG-βの免疫組織学的染色により同細胞内にhCG-β陽性顆粒が認められた.本症例は本邦第8例目と考えられた.
著者
楊 中〓 菅原 和夫 伊藤 厳 丸山 純孝 福永 和男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.102-108, 1987-07-31

待機利用条件下におけるオーチャードグラスの種子登熟歩合と自然落下率の変化および春の刈取りが種子生産に及ぼす影響を検討するため,帯広と川渡において実験を行った.主要な結果は以下のとおりである.1)出穂開始の約70日後に約50%の種子が自然落下し,この時点ではすでに種子の大部分が発芽能力を有していた.したがって,利用の待機期間をこの時期までとしれば,確実に自然落下種子量を確保することができるものと考えられる.2)5月28日から6月10日(出穂開始日)までに帯広で行った刈取り実験では,早い時期の低刈りおよびやや遅い時期の高刈り処理によって,出穂茎の形成がある程度促進され,出穂1週間前までの刈取り処理のほとんどが種子の生産に大きな影響を及ぼさないことが認められた.しかし,出穂の3日前以降の刈取り処理におけるオーチャードグラスの出穂率,種子の千粒重および発芽率は著しく低下した.3)オーチャードグラスの春の刈取りによる地上部除去量と幼穂の被害率との間にS字曲線を示す関係が認められた.地上部除去量が40cm以上になると,幼穂の被害率が急激に増加した.したがって,春の利用量がこれ以下であれば,種子生産に及ぼす影響がほとんどないものと考えられる.4)帯広と川渡のいずれにおいても出穂の10日前までの刈取り処理では,オーチャードグラスの出穂に及ぼす被害はほとんど認められなかった.以上の結果から,オーチャードグラスの春における利用は,適切であれば,種子生産に及ぼす影響がほとんどないことが明らかになった.自然下種による植生回復を効率よく行うための種子量を確保するためには,出穂の10日前から70日後までの休牧期間が必要である.
著者
奥西 元一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.288-298, 2008 (Released:2008-08-01)
参考文献数
78

房総半島北部の下総地方で, 近世から昭和戦前期までみられた湿田農法について検討した. 江戸期の下総地方の湿田では, 唐籾とよばれたインド型赤米が広範に摘田(つみた)という湛水直播法により栽培された. 栽培された水田は, たいとう土とよばれた黒泥・泥炭土壌の強湿田であった. この強湿田で日本型水稲を移植栽培すると, 夏・秋落ちして生育が著しく抑制された. 湛水直播栽培は, わずかに広がる土壌表層の酸化的条件を利用した栽培法であり, これに唐籾の草型特性が結びついた. これより湿田の程度がやや軽い下総地方の夏・秋落ち田では, 昭和戦前期まで小苗・密植栽培が行われた. 小苗・密植栽培は排水不良・生育制御が困難な湿田で穂数を確保するための栽培法であった. 土地改良の遅れた下総地方では戦前まで湿田農法が残った.
著者
吉井 美穂 八塚 美樹 安田 智美 木本 久子 亀谷 由美 田澤 賢次
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.103-107, 2004-09
被引用文献数
4

私たちは,了解の得られた看護学科4年次生60名を対象にSD法(形容詞23対)を用いて成人看護学(急性期)実習前後の手術に関するイメージ調査をおこなった.実習前の手術に関するイメージは,「清潔な」「特色のある」「激しい」「固い」「はりつめた感じ」「男性的な」「ちから強い」「変化に富んだ」「特色のある」「テンポの速い」「せわしない」「動的」「クールな」「不安定な」であった.実習前に比べて,「楽しみである-憂うつである」「好き-嫌い」「明るい-暗い」「親しみやすい-親しみにくい」「のどかな-緊迫した」「激しい-穏やかな」「はりつめた-ゆったりした」「生き生きした-生気のない」「和やかな-とげとげした」の9項目で差が見られた.イメージは,ある対象に対するその人の過去経験や感情の評価などの心的過程のはたらきの総体を反映し,否定的なイメージは,消極的や無気力な行動を生み,肯定的なイメージは,積極的行動を生み出すと考えられる.今回調査した結果,手術に関する肯定的なイメージへ変化しており,学生の実習態度の向上に少なからず効果的に作用するものと考えられた.
著者
長戸 一雄 江幡 守衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.59-66, 1965-09-14
被引用文献数
20

With the purpose of making clear the effects of temperature on the development and the quality of kernels, rice plants of seven varieties, representing a wide range in adaptability to high temperatures, were subjected to temperatures of 23° and 30℃. at various stages of ripening. (Table 1) The results are summarized as follows. 1) Effect on ripening period, High temperatures throughout the ripening period accelerate the starch accumulation into kernel and the kernel development during the early period of ripening, but depress them in the late period. As a result, the length of ripening period is remarkably shortened and the weight of matured kernel is somewhat reduced. (Fig. 1, 2) However, the extent of reduction in length of ripening period and kernel weight are varied with varieties and more in the varieties seemed to be less adaptable to high temprature. 2) Effect on the dorso-ventral ratio. The ventral radius which grows in the early period of ripening is lengthened and the dorsal radius which grows until the late period is shortened by high temperature, with the consequence that the ratio of the dorsal radius to the ventral radius (dorso-ventral ratio) is lessened. (Fig. 3) The variations of dorso-ventral ratios caused by high temperature are greater in the varieties assumed to be less adaptable to high temperature than in the more adaptable varieties. Accordingly, the rates of variations in dorso-ventral ratios will be able to indicate the varietal differences in adaptability to high temperature. (Table 2) 3) Effect on the occurence of white-ridge kernels. When the growth of cells and the starch accumulation in the dorsal region of kernel are depressed by high temperature, the accumulation of starch into the outermost layers of starch cells along the dorsal ridge becomes markedly insufficient and these layers remain as opaque with the result that the dorsal ridge of the kernel is white colour in external look. Therefore, occurence of white-ridge kernels is closely connected with the decrease of dorso-ventral ratio and is abundant in less adaptable varieties of which dorso-ventral ratios greatly decrease by high temperature. (Fig. 4) The results of measurement of Vickers hardness indicating the density of starch accumulation show that the white-ridge kernel is softer than the normal kernel, especially, on the outer part of basal and dorsal regions of kernel. (Fig. 6) Then, the milling-loss is markedly more in white-ridge kernels owing to the softness of the outer part of kernel as well as the increase of thickness of bran. (Table 4, 5) 4) Effect on the occurence of basal-white kernel. Under high temperature, in the inferior kernels on a panicle, starch becomes insufficient to fill up starch cells on the outermost part of basal region on account of depression of starch accumulation in the late period of ripening, and the basal part becomes opaque and white colour in appearance. Then, the basal-white kernels occur numerously in the inferior kernels of lees adaptable varities by high temperature. (Fig. 5, 9) Therefore, the basal-white kernel is soft on the outer part of basal region as shown in Fig. 6, then the milling-loss increases as compared with the normal kernel. (Table 5) 5) Effect on the occurence of milky white kernel. The milky white kernel is milky white in external appearance owing to the opaque part at the central or middle region on the cross-section of kernel and becomes "chalky rice" by milling. (Fig. 7) This kernel nccurs in such a case that the accumulation of starch into the kernel is transitorily checked for a few days during ripening. When ripening of kernel is hastened by high temperature, competition for absorption of nutrients occurs among the kernels on a panicle, then the superior kernels continuously absorb nutrients and become to normal kernels, whereas, the inferior kernels can scaresely absorb for a few days and some of them cease their growth and the others resume absorption according as the