著者
神岡 太郎 土屋 孝文 安西 祐一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.457-466, 1989-04-15
被引用文献数
2

本論文では 日本語文において構文的にも意味的二も中心的役割を果たす述語複合体の知識を計算機上でどのように表現すべきかという方法について述べ さらにこの表現方法を用いて述語複合体を計算機によって生成するアルゴリズムについて説明する.述語複合体とは 戸田が膠着言語である.日本語の文法として不自然のないように 日本語文における従来の述部という考え方を再構成したもので これまでの述部に対する日本語文法に 比べて用言における複雑な活用を廃止した等の点で計算機処理に適した考え方となっている.本論文ではこの述語複合体に関する知識を (1)それを構成する語の出現優先順位に関するルール (2)語の意味属性や接続属性等からなる辞書 (3)音便変化や音の崩れ(例えば「食べてしまった」が「食べちゃった「となるような現象)変化に対応したメタルール の3つに分けることにより これを計算機上で素直に表現できることを示す.述語複合体生成システムは 述語複合体生成用のインタプリタと 上で述べた知識表現形式をインタプリタが解釈できる形式(実行形式)に変換するトランスレータから構成されており パス表現によって示される意味格表現に対応する述語複合体をすべて生成する.本論文ではこの述語複合体生成システムを用いることによって 実際に日本語文に用いられるかなり複雑な述語複合体をも生成することができることを実行例を用いて示す.
著者
菊地 弘明
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.97, pp.42-47, 1964-04

i)日常の諸施設利用にみられる地域的拡がりは,それぞれの施設によって異なる。先ず利用圏域が最小の拡がりを示す例として理髪店・美容院・購入頻度週・月単位の調味料・魚・学用品などの購買関係施設および農業関係施設のほとんどが挙げられる。これらはいずれも施設までの所要時間20〜30分・3〜4kmを境にして利用率は50%以下を示す。その圏域は部落中心または副市街地的な単位で集落全体に均等に分布する。ii)更にその圏域がこれらを上廻る拡がりを示す例として病気の場合の通院,高校・和洋裁学校などへの通学,映画観賞の場合,購入頻度月1〜年5・6回程度の下着・本雑誌・履物・化粧品などの購買関係施設の利用が挙げられよう。いずれも施設の選択性がある程度重要視きれる性格のもので所要時間40〜50分程度を越えるとその利用率は50%以下を示す。その圏域は中心市街地的な単位のまとまりを示すが,地域中心都市への依存もみられる。一般に農村地域においては,日々の通学などにみられる地域的拡がりはまた映画観賞や通院の場合の施設利用の範囲であるともいえよう。iii)更に大きな地域的拡がりを示す例として病気の入院の場合,購入頻度年1回〜数年に1回程度の時計・晴着などの購買施設が挙げられる。いずれも利用の頻度は低く施設または品物の選択性が最も重要視きれる傾向のもので,地域中心都市への依存度が顕著で概ね所要時間1時間・30km程度を境にして利用率は50%以下を示すようになるが,2時間を越えても10〜20%程度の利用が認められる。その他これらと同じ傾向を示すものとして祭・盆・正月などの祝祭日に帯広に出かけるものの地域的拡がりが挙げられる。iv)全体的にみると現状での主要な交通方法がバスから汽車にとって代る30km・所要時間1時間前後を境にして地域中心都市に対する利用率は50%以下となり,町村の中心市街地または近くのより大規模な市街地により多く依存する傾向が知られる。また地域的にみて以上の諸施設の利用に共通して指摘される一般的傾向は,それらの利用圏域が同心円的なものではなく,より充実した施設をもった大規模な市街地の反対方向に大きく偏った拡がりを示すことである。v)通院・通学・映画観賞など数ケの日常の主要な行為で代表きれた諸施設の利用にみられる人の動きについて,とくに所要時間と利用率との関係から例えば農村地域においては,利用対象となる施設までの所要時間が30分以内であれば,病気の通院・入院の場合などでは80%以上の高い利用率を期待し得ることが知られる。また購入頻度月単位〜年数回程度の履物・薬・本雑誌などでは所要時間30分以内では50%以上の利用率,1時間以内であれば購入頻度年1回〜数年に1回程度の時計・晴着でも50%以上の利用率を期待し得ることが知られよう。逆に例えばこれらの品目について80%以上の高い用利率を期待するためには,これらの関係施設が少なくとも所要時間20分程度の範囲内に立地しなければならないことが推定きれよう。vi)次に施設までの所要時間を尺度として利用者側からの主観的な感じ方をみる。先ず医療関係では助産婦の利用および出産入院の場合に妊婦が通ったり,出産時に急を要する点などを反映してか施設までの所要時間の増大と共に不便を感ずる傾向が大きくあらわれ,所要時間30分を越えると利用者の50%以上が不便を感じている。次いで通院の場合が挙げられる。これは小中学校への通学の場合と類似した傾向を示し,いずれも所要時間30〜35分を越えると50%以上が不便または遠いと感じている。このように所要時間別にみて利用者の50%以上が不便を感ずる限界は例えば散髪・パーマおよび入院の場合では40分,農業関係の施設では40〜45分,郵便局の利用および映画観賞の場合などでは50分〜1時間となっている。vii)集落内において対地別に身近かに立地が要望される施設についての調査結果をみると,一般に部落中心に対しては日常生活に密接した施設への要求が大きく現われている。すなわち,医院・診療所に対する希望が最も多く,次いで公衆電話・保育所・季節保育所・助産婦・小中学校などが挙げられている。全体的にみると部落中心的な単位で少なくとも診療所もしくは医師の定期出張診療のみられる健康相談所的な施設・季節保育所などの設置が望まれよう。副市街地に対しては,部落で顕著にみられた医院・診療所・公衆電話への要望は比較的少なくこれに代って病院と共に歯科医院に対する希望が大きくみられる。現在,医院・診療所の立地傾向に較べ歯科医院の立地は比較的少なく,連たん300戸以上にならなければ平均1程度の立地がみられないが,利用する側からは少なくとも副市街地単位で,この施設に対する要望が大きく現われている。その他役場出張所・映画館に対する希望が顕著である。中心市街地に対しては部落などにみられた施設への要望は比較的少なく,施設の充実に伴って図書館・公民館・高校などに対する希望も多く,幼稚園などへの要求もみられる。viii)以上の諸行為にみられる一般的傾向は農村地域における日常諸施設の配置に際して,その段階的構成を示唆するものであろう。更に日常の主要な施設個々についてある割合以上の高い利用率を期待するためには少なくとも施設よりの最大の拡がりをどの程度にすべきか,施設または所要時間と共に低減する一般的傾向の中にこれからの施設配置計画上の一つの基準を見出し得るであろう。また主要な日常の諸行為について所要時間別にみた主観的な感じ方などから例えば利用者の5割以上が不便を感じていない限界を利周者側からみた計画上の1指標としてとり挙げることもできよう。一般に時間を尺度としてみるとき農村地域の日常生活においては,施設に密接なつながりをもち近親感を示す限界が30分,更に購買に限らず通勤・通学・医療・慰楽などの目的の場合でも生理的な因子をも含めて充分な余裕をもった日帰り行程の限界は1時間と見做される。現在では徒歩・自転車利用30分で到達し得る範囲は3km程度であるが,交通手段め発達と共に利用機関の頻度的制約が解消され,自家用車・バスなどが徒歩・自転車に代るようになれば,同じ所要時間でも利用者側からみた望ましい圏域は空間的により拡大されようし,これに伴って農村地域でも医療・購買などに限らず慰楽的な面でも望ましい圏内により充実した施設の立地が可能となろう。集落形態的な立場からは完全な散居型式よりも,少なくともある単位で段階的なまとまりをもって住居群が構成きれる場合に公共施設は経営上より効果的に配置きれ,利用者の立場からみて各戸より各施設へのつながりもより能率的にまとめることが可能となろう。おわりに本研究を進めるに当って絶えず御指導をいただいた横山尊雄教授に深く感謝すると共に,この研究は北海道科学研究費の補助を受けたものであり,北海道大学新制学位学論文の一部をなすものであしることを付記します。
著者
土田 誠 吉門 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.283-292, 1995-05-31
被引用文献数
3

主にアメダスデータを用いて,2年分の冬季6か月間の東京湾の海風の実態を調べた.海風は冬型気圧配置の変動の間隙をぬうように出現し,出現時間帯や持続時間はばらつきが大きい.東京の大都市域が接する北西岸では,海岸近傍の地点で海風風向E〜SSWが昼間に出現して3時間以上継続することを中心とする判定条件により,180日のうち41日が海風日として抽出された.海岸近傍の平均海風時間帯は13時まえから6.6時間,最大風速は15時に南東風向で2.9ms^&lt-1&gtであった.しかし,都心部より内陸側で湾岸から18kmの地点では,海風風向が2時間以上現れるのが23日と少なく風速も小さい.東岸の千葉では,海風風向をS〜Wとして同様の判定をすると海風日は32日となり,西岸より少ない.このような海風を発生させる温度場は次の二つの要因で形成される.(1)この季節の海水温は8〜10℃で陸上の日最高気温11℃前後と同レベルだが,夜間に湾上をおおう陸風が午前中海上気温を海水温より低温に保つ.(2)東京の大都市域がヒートアイランドとなって郊外より高温を維持し,海陸の気温差を強化している.都心部の内陸側における海風出現頻度の急減や,都市規模が小さい東岸で西岸より頻度が低いこともヒートアイランドによって説明できる.
著者
久津間 文隆
出版者
地学団体研究会
雑誌
地学教育と科学運動 (ISSN:03893766)
巻号頁・発行日
no.56, pp.22-28, 2007-12-06
被引用文献数
1
著者
本間 政雄
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.26, pp.35-45, 2003-10

京都大学の本間でございます。よろしくお願いいたします。今日は、国立大学法人化のインパクトということで、現在、着々と準備が進んでいる法人化の動きが大学の現場でどんなインパクトを与えているか、特に、課題と問題点という視点 ...
著者
ティック ヌーフエトゥー
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 : 大阪健康福祉短期大学紀要 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-38, 2007-03-30

生活様式の変化に伴って家族の関係性が希薄になり、多くの高齢者が孤独を感じていることが慈善活動を通じてわかってきた。現在ベトナム全国に存在する高齢者施設では、身寄りのない高齢者を支援しているが、家族がいても介護する人がいない高齢者は多く存在している。しかし、こうした社会のニーズには対応し切れておらず、新たな施設が必要とされている。複数の入居者が介護者とともに生活し、家族も訪問したり一緒に出かけることのできる、新しい形の施設を、社会と家族で作り、実践していきたいと考えている。
著者
藤崎 春代
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.221-231, 1998-12-15

本研究では, 1日および1週間単位での日課が異なる2園(幼稚園と保育園)に所属する4・5歳クラス児に対して, 園生活の流れについて個別面接調査を行い, 多様な出来事についてどのような一般的出来事表象(GER)を形成しているのかについて検討した。すべての子どもに, 「いつも園では何をするか?」と園生活全体の流れを聞く質問を行うとともに, 幼稚園の一部の子どもには「今日は何をしたのか?」, 残りの子どもには「*曜日は何をするか?」という質問を行った。分析の結果, まず, 行為を述べる際に主語無しで現在形表現をしており, 時間的順序も一定であるなど, 幼児が園生活GERを形成していろことが確認された。しかしながら, 幼椎園児の特徴として, 子どもが共通に述べる行為数は少なく, これは幼稚園生活において生活習憤的活動が少ないことによると思われた。多様性の表象の仕方については, GERとしてではなくエピソード的に記憶する, 多様性を園生活GERの変化項としてとらえる, 条件により園生活GERを形成し分ける, の3タイプが検討された。
著者
林 政彦
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.99-110, 1999

従来から使われている鑑別手段では判断が難しい宝石については,新しい分析技術の開発あるいは従来の方法の応用によって,その鑑別を可能にすることが必要である。そこで,今日は現在広く使われているEDS,軟X線による透過像,FT-IRなどの分析機器を用い,現在流通している宝石の鑑別に成功した例をいくつか紹介する。今後はこのようなハイテク機器が宝石の研究に貢献するであろう。
著者
尾立冬樹
雑誌
皮膚臨床
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1631-1634, 1992
被引用文献数
2

1 0 0 0 OA 薬学概論

著者
遠藤 浩良 石井 永 野口 衛 山崎 幹夫
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.14, no.9, pp.741-746, 1978-09-01

今日は薬学概論というかたい話題でお話をしていただきますけれども, ひとつ話の内容はざっくはらんに, 日頃お考えいただいていることを話していただいて, 薬学概論なるものをここである程度浮り彫りにできれば幸いと存じます.薬学概論に関する本は実は既に何冊か出版され, 石井先生が「薬学を論じた書物」として本誌(10巻7号)に紹介しておられます.そんなところからまず何か話題を…….
著者
吉水 守 木村 喬久 坂井 稔
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.863-873, 1976
被引用文献数
2 9

A total of 92 masu salmon (Oncorhynchus masou) which had developed silvering were divided into 4 groups. Three of these groups were transplanted from fresh water. The feeding conditions varied with the group. Viable counts were determined in the intestinal contents or slime of these salmon, in their ambient waters and in their diets. Over 1500 strains were isolated from the above samples. The composition of the microflora was determined according to the scheme of Shewan <i>et al</i>. (1960).<br> The results are summarized as follows:<br> 1) Microbial viable counts in the intestinal contents or slime of the fish which were transplanted under normal feeding conditions were nearly constant while those which were transplanted without being fed decreased rapidly. This decreasing tendency was found in both fresh and sea water reared non-feeding fish.<br> 2) The predominant genus in the intestinal microflora of the fresh water fish was <i>Aeromonas</i>, while in sea water fish it was <i>Vibrio</i>. Upon transplanting the fish from fresh water into sea water fish it was Vibrio. Upon transplanting the fish from fresh water into sea water, <i>Aeromonas</i> of the terrestrial type was gradually replaced by <i>Pseudomonas</i> as the proportion of sea water in the rearing water increased. This was followed by further replacement by <i>Vibrio</i> of the halophilic type which became predominant in the intestinal microflora.
著者
清家 暁 岡部 正也 佐伯 昭 海野 徹也 大竹 二雄 中川 平介
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.852-858, 2002-11-15
被引用文献数
4 5

高知県伊尾木川および物部川で捕獲されたアユの由来判別を耳石Sr/Ca比を用いて行った。両河川に放流された人工海産アユは発育初期の飼育水の塩分濃度が低く,かつ,淡水への馴致期間も天然魚に比べて短いことから耳石Sr/Ca比により天然,人工海産および湖産アユの判別が可能であった。1998年および1999年の伊尾木川の29個体,1999年度の物部川の56個体について耳石Sr/Ca比と標識痕による由来判別を行った結果,両者の結果が一致しなかったのは全体の12%,わずか10個体であった。この結果は耳石Sr/Ca比によるアユの由来判別が従来の標識方法と同等に有効であることを示唆するものである。
著者
戸田 郁夫 加藤 〓 田西 和伸 樋口 幸男 平中 良治 浅野 元広 坂上 竜資 川浪 雅光
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.1146-1152, 1989-12-28
被引用文献数
11

本研究の目的は,夜間睡眠中のbruxismの実態を解明するために,日常臨床に応用できる客観的なbruxismの診査・診断するシステムを開発することである。本システムは記録装置と再生分析装置とからなり,記録装置は,筋電計・加速度計・小型マイクを組み合わせ,左右の咬筋の筋活動・上下の歯の咬合接触・grinding音を同時に記録できるように設計した。被験者には25〜50歳の男性6名を選び,本装置の操作方法を指導し,自宅に装置を持ち帰り,各々5日間繰り返し測定を行った。その結果,このシステムにより,自宅で夜間睡眠中の筋活動・咬合接触・grinding音を同時記録できることが分かり,歯周病患者のbruxismの実態の解明や客観的診断に役立つと思われた。