著者
渋谷 望
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.33, pp.5-20, 2015-09-05 (Released:2016-10-09)
参考文献数
21

Gentrification is said to be the return of the middle class to the city. Neil Smith suggests, however, that gentrification is not to be seen simply as a “return” but also as a form of “class struggle.” This paper examines the process of gentrification and the antigentrification movement in the Lower East Side of New York City. It maintains that this struggle should be seen as a struggle over the urban commons and therefore as a contemporary manifestation of primitive accumulation. Considering (anti-)gentrification as a “class struggle” or as a value struggle in the context of the global city, it shows that gentrification is a necessarily unsettling and unstable process.
著者
石辺 岳男 西山 昭仁 佐竹 健治 島崎 邦彦
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.149-182, 2009

The Earthquake Research Committee of the Headquarters of Earthquake Research and Promotion estimated the probability of an earthquake of magnitude around 7.0 occurring during the next 30 years as 70%. This is based on five earthquakes that occurred in the southern Kanto region (i.e., the 1894 Meiji-Tokyo earthquake, the 1921 and 1922 Ibaraki-ken Nanbu earthquakes, the 1922 Uraga-channel earthquake and the 1987 Chiba-ken Toho-Oki earthquake). However, it has been revealed that the Kanto region is situated on complicated tectonic conditions due to subduction of the Philippine Sea Plate and the Pacific Plate beneath the continental plate, and that various types of earthquake occur. Therefore, it is necessary to classify these earthquakes into interplate and slab earthquakes, and to estimate their recurrence intervals. In this paper, at the outset of such studies, we review previous studies on two earthquakes (the 1894 Meiji-Tokyo and 1895 Ibaraki-ken Nanbu earthquakes) that occurred in the Meiji era and collect the data.
著者
小長谷 有紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会 E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.34-42, 2007
被引用文献数
4 2

モンゴル牧畜システムは移動性が高いという特徴に加えて,多くのオスを維持し,多種の家畜を多角的に利用するという特徴を有しており,自然環境のみならず,社会環境にも適応的であった.それは単なる生存経済ではなく,軍事産業であり情報産業でもあった.20世紀になると社会主義的近代化のもとで脱軍事化すなわち畜産業化が進行した.市場経済へ移行してからは,牧畜に従事する人々すなわち遊牧民の間で地域格差と世帯格差が拡大している.今日,遊牧民たちは必ずしも自然環境だけではなく,むしろ社会環境に対して積極的に適応して移動している.
著者
河合 真梨子 福和 伸夫 護 雅史 飛田 潤
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.74, no.636, pp.409-416, 2009-02-28 (Released:2009-11-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3

This paper proposes a new place-name classification table considering geographical features and soil characteristics, which helps interpretation of seismic hazard maps. This table is classified into two soil groups (stiff soil and soft soil) based on the origin of their Chinese characters. We select bus-stop name from many kinds of place-name. This reason is the following two points. Distribution density of bus-stop is almost evenly in the city, bus-stop name mostly remain past place-name. The validity of the new place-name classification table and bus-stop name is clarified through case studies on the three major metropolitan areas of Japan.
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学経済・政治研究所
雑誌
価値変容と社会経済システム
巻号頁・発行日
pp.185-211, 1999-03

チェチェンの分離独立運動への武力介入に動員され、苛烈な戦闘を経験して帰還したロシア軍兵士の間に、「チェチェン症候群」と呼ばれる精神的混乱が広がっている。アフガンとは違って、「相手は同じ言葉を話し、同じ国に属する人々だった」ことが要因の一つだという(1997年2月19日付朝日新聞)。旧ユーゴスラビアの内戦においても、おそらく同じような「症候群」は存在しただろう。同じ言語(セルボ=クロアチア語)を話す、同じ「国民nation」だった人々が、異なる「民族ethnic group」として敵対する。ここ数年にわたって私たちが目撃してきたのは、国際的な階級的連帯を大義としたはずの「社会主義」の幕が下りた後、一つの国家がいくつもの「民族」に解体し、「国民的アイデンティティ」がより小さな規模で新たに再構築されていく姿である。ひとをかつての同胞殺しへと駆り立てる「民族」あるいは「国民」とは、いったい何なのだろうか。「民族/国民」や「ナショナリズム」をどのように理解すべきかという問題は、19世紀と20世紀を通していまなお最大の思想的課題であり続けている。欧米では、「nation, nationality, ethnicity」や「nationalism」に関する研究の蓄積を経て、近年では、「国民nation」を資本主義世界システム内部で形成された「想像の共同体」あるいは「虚構のエスニシティ」ととらえる画期的な研究が現れている。本論文は、近代における「国民的アイデンティティ」の形成を、「想像の共同体/虚構のエスニシティ」の形成という問題視角から検討し、そのうえで、「国民」間の価値序列意識と「国民的アイデンティティ」とがどのように接合しているかを明らかにしようとするものである。そのために、まず最初に、「国民」と「国民的アイデンティティ」をめぐる様々な理論的アプローチを整理し、方法的概念を明確にすることにしたい。これらの研究は、とりわけ1980年代以降には、「人種主義」や「エスニシティ」に関する研究とも重なり合う形で活況を呈しているので、後者に関する理論的アプローチの検討も不可欠になる。第二に、こうして獲得された方法的概念を用いて、「国民」間の価値序列意識と「国民的アイデンティティ」との接合を、近代日本の事例に即して具体的に明らかにしたい。この場合、「国民」意識の形成と「西洋」認識との関連が問題となるはずである。最後に、「国民的アイデンティティ」の中核をなす「ナショナリティ」意識の変容の可能性について、「ナショナリティの脱構築」を掲げる最近の研究を手がかりとして考えてみることにしたい。
著者
劉 敬淑 全 〓蘭
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-114, 2005
参考文献数
24

韓国10代の自尊心, 身体満足度と整形および服装行動との相互関連性を調査し, これらの因子の属性による差異と因果関係を解明しようとした.性別による心理要因との関係では, 男性の自尊心, 身体満足度はあらゆる身体の部位で女性のそれよりもより高かったが, 整形要求度と服装行動の面で見ると流行や個性に対する選好度は, 女性よりも男性の数値が低かった.自尊心と身体の顔部分の満足度では年齢による差は見られなかったが, 身体満足度の腰・尻部分, 身長・体型部分には差が見られた.学校類型による自尊心の差はなかった.身体満足度は全体的に高校生が中学生より低かったが, 整形要求度における顔の整形と脂肪吸引の要求度は高校生が中学生より高かった.服装行動での清楚さは, 学校類型による差はなかった.魅力と流行指向は中学生よりも高校生で高かったが, 個性指向は高校生が中学生よりも低く, 中学生より高校生がより個性を追求するとされる先行研究と差が見られた.小遣いによる, 自尊心や身体満足度との関係はなかったが整形要求度や服装行動との関係では, 小遣いが多いほど顔と脂肪吸引への整形要求度が高く, 魅力・流行・個性・清楚さの全体的な服装行動も高く示された.身体部位の整形要求の順位は男女ともにホクロ・傷跡除去を一番に望み, 次に男性では歯の矯正, 鼻, 下半身, 二重まぶたの順であり, 女性は下半身, 歯の矯正, 鼻の順で整形を望んでいた.韓国の10代に, 7個の属性と自尊心や身体満足度の因子が服装行動と整形要求度に及ぼす因果関係を調査するため段階的(stepwise)方法で多重回帰分析をした結果, 整形要求度では性別, 身体満足度, 年齢, 小遣いが有意的な影響を与え, この4因子の説明力はかなり高く, 男性よりも女性で, 身体満足度が低いほど, また年齢が高いほど, 小遣いが多いほど整形要求度が高かった.服装行動では, 魅力は自尊心, 年齢, 小遣い, 体型から影響を受け, やせ型で自尊心が高く小遣いが多いほど, 衣服の魅力性を追求する.身体満足度が高いほど自尊心が高く, 女性より男性で, やせ型で, 身長が高く, 社会階層が高いほど身体満足度が高かった.特に女性は男性より自己の外貌評価にあまり肯定的ではなく, 外貌を改善しようとする欲求が強いと思われる.
著者
飯野 智子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-99, 2013-03-19

本稿は、美容の分野におけるジェンダー問題を取り上げる。近代以降、男性は自己の美を追求し楽しむことをやめ、ひたすら機能的な身体とファッションを目指さざるを得なかった。しかし今日、美容の場において「男らしさ」の規範を逸脱するような美の追求という現象が見られ、男性が変わりつつあるように思われる。そこで、メンズエステ、男性のファッション、男性化粧品、美容外科、男性ファッション誌へのインタビューを通して、「男らしさ」の縛りから男性は自由になりつつあるのか否かを検証する。
著者
大井 信三 横山 芳春
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S103-S120, 2011-09-01 (Released:2013-02-20)
参考文献数
49
被引用文献数
2 2

茨城県中・南部の常陸台地を構成する下総層群は,これまで房総半島の模式層序との対比が確立されておらず,地域内でも研究者によって様々な見解があり,異論が多かった.そこで新たに見いだされたテフラを広域に追跡することでテフラ層序を組み立てて,それを基準として堆積相解析やシーケンス層序学的解析を行った.その結果,下総層群を藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層,常総層の6層を区分した.さらに,最終間氷期の堆積物である木下層に2つの堆積サイクルを認め,剣尺(けんじゃく)部層,行方(なめかた)部層を新たに設定した.本巡検では常陸台地における下総層群の各構成層について,案内者らの見解を紹介し,模式層序との対応を解説,議論する.さらに,テフラと堆積相の分布から推定される,木下層の堆積過程について概説する.特に堆積物供給量の違いを背景として,涸沼(ひぬま)を境界として南北で異なる堆積システムの時空変化について,常陸台地を縦断して比較を行う.