著者
伊吹山 知義 藤原 彰夫 宇野 勝博 作間 誠 小磯 憲史
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

1.本年度は、対称行列のなすJordan algebra内のconeのゼータ関数として、重さk(整数)の次数nのSiegel Eisenstein級数 E^n_k(Z)に付随するKoecher Maassのディリクレ級数L(s,E^n_k(Z))(E^n_k(Z)のMellin変換で得られるゼータ関数)を取り上げた。今年度のこの研究における主定理として、任意のnに対して、L(s,E_n^κの完全に具体的な公式を得た。このゼータ関数の具体型はn=1は古典的によく知られている。また、n=2はフーリエ係数のMaassによる公式から、Boechererが導いている。しかし、一般の公式は予想等もこめても、全くなにも知られていなかった。結論は、多くの専門家の思いこみに反して、いたって単純な形に記述される。すなわち、nが奇数ならリーマンゼータ関数の平行移動の積の2つの線形結合になり、またnが偶数なら、重さ半整数の2つの1変数Eisenstein級数のMellin変換のconvolution productとリーマンゼータの平行移動の積、およびリーマンゼータの平行移動の積の2つのディリクレ級数の和になる。(以上桂田英典氏との共同研究による。)以上の結果の要約は数理解析研究所講究録に掲載予定。また、英文論文は準備中。保型形式の次元公式のために使用する、概均質ベクトル空間のゼータ関数と跡公式の核関数の間の関数等式、および次元公式の寄与への関係についての研究者の成果を数理解析研究所講究録に公表した。
著者
水口 雅 高梨 潤一 齋藤 真木子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

急性壊死性脳症(ANE)やけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)に代表される急性脳症の病態の解明を目的とし、神経、免疫、代謝のクロストークに関する遺伝子解析と機能解析を行った。ANEについては、日本人の孤発性ANEの遺伝的背景としてサイトカイン多型とHLA型を同定し、欧米人の家族性ANEの原因遺伝子であるRANBP2の機能を解析した。AESDについては、自然免疫抑制因子であるCTLA4の多型がAESD発症に関連することを示した。また複数の症候群におけるナトリウムチャネルの変異の関与、また急性脳症全般におけるミトコンドリア酵素CPT2の熱感受性多型の関与を明らかにした。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

公共選択理論やゲーム理論に基づいて政治に関する仮説をたてる場合、人間は経済的利益を追求する利己的な動物との前提条件を付するのが一般的である。しかし、複数の人間の自己利益と公共利益が並存するような「社会的ジレンマ」等の研究で分かってきたことは、人間は必ずしも自己の利益を追求するばかりではなく、自己を犠牲にしてまでも協力関係を築く可能性があるというということである。研究者の間では、このような人間は例外的としてとらえられてきた経緯がある。しかしながら、本研究では、このような協力的な人間が存在するという至近メカニズム(proximate mechanism)における事実を進化過程にまでさかのぼった根源的メカニズム(ultimate mechanism)からしたところ、条件が整えば、むしろ人間の進化過程では、遺伝子に組み込まれた資質として存在することができることを、数学的手法とシミュレーションを用いて検証した。その条件とは、(1)囚人のジレンマでは、通常の二択ではなく、ゲームに参加しないという選択を持つこと、(2)うそをつく能力を持つこと、(3)うそを見抜く能力を持つこと、(4)できれば、タカ派ハト派ゲームやゼロサムゲームといった別のゲームの選択肢が存在すること、であり、このような条件のもとに2万世代でどのように進化してきたのかについてコンピューターシミュレーションを行って検証したところ、うそをつく能力とうそを見抜く能力は拮抗しつつも、協力関係を促す遺伝子は確実に増殖することを発見した。この二年間に著者の関心は、政治脳へのシミュレーションアプローチから、紛争における自己犠牲の可能性、政治知識と政治脳の関係、男女間の配偶者選択における政治脳の可能性と広がった。特に現在の世界情勢を見るとき、紛争地域における自爆テロは頻繁に発生しており、おそらく遺伝子レベルにおいて戦争状態における自己犠牲の傾向がみられる点における関心が強くなってきている。
著者
萩原 慎太郎
出版者
福山市立動物園
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

昨年度、アジアゾウ1頭の行動の左右対称性を調査し、肢の動かし方、および鼻を巻く方向に左右差がみられたが、鼻では飼料の提示方法等によってその方向に一貫性がないことがわかった。供試個体は形状や提示方法を認知し、鼻の巻き方向を変えていることが考えられた。供試個体が1頭だったことから、本研究では行動の左右差を種レベルで確認するため、国内ゾウ飼育施設を対象にアンケート調査、および複数頭において鼻を使う行動の左右対称性を調査した。また、昨年度の供試個体に異なる飼料提示方法を用いて、鼻を使う行動の左右対称性をさらに調査した。1)国内ゾウ飼育施設36施設、81頭を対象にアンケート調査を実施し、回答率は83%であった。回答した施設の80%がゾウの行動の左右差を知っており、72%の個体で行動の左右差がみられるとの回答を得た。2)落花生を透明円筒内中央に入れて50回提示し、4施設8頭(雄2頭、雌6頭)を供試し、鼻の巻き方向を調査した。左巻きで獲得した個体は5頭(雄1頭、雌4頭)、右巻きで獲得した個体は3頭(雄1頭、雌2頭)で、供試個体全てで鼻の巻方向に左右差がみられたが、その方向に種としての一貫性はなかった。3)雌1頭を供試し、棒状のサトウキビを異なる高さ(4mと0m)で提示した時と、落花生を太さの異なる透明円筒(鼻で直接獲得できる太さ直径11.5cmと獲得できない太さ直径6cm)の中央に入れて提示した時における、鼻の巻き方向を調査した。サトウキビ給餌では高さ4m、0mともに右巻きで獲得し、落花生給餌では直径11.5cm、6cmともに左巻きで獲得した。以上より、国内のアジアゾウにおいて行動の左右差がみられたが、その方向に種レベルでの一貫性はなかった。飼料提示時の高さや太さを変化させ、鼻でつかむ、吸うなどの使用方法を変えた場合でも獲得方向に違いがみられなかった。飼料そのものの違いにより鼻の動かし方を変えている可能性もあり、さらなる検討が必要であると考えられた。
著者
兼子 忠延
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

網膜中心動脈塞栓症、脳梗塞など脳循環障害の基づく疾患に対して、障害部位への血流改善と酸素供給のために交感神経節ブロック(星状神経節ブロック:SGB)や高圧酸素治療、炭酸ガス併用酸素吸入などが治療法として用いられるが、これらの治療が脳血流に対してどの程度の効果を及ぼすかについては議論が多いところである。そこで本研究では脳における血流両と酸素供給の面から、脳の血流障害時の治療法として何かが効果的であるかを解明することを目的とした。平成2年度には犬でのSGBの実験法を確立し、SGBと酸素、炭素ガス吸入の併用効果については検討し、その結果、脳血流量(レーザードップラー血流計を用い脳表部で測定)は、SGBによってやや減少すること、脳への酸素供給の面からはSGBよりも酸素と炭素ガスとの併用吸入が有用と思われた。平成3-4年度はSGBとプロシタグランジンEI(PGEI)との併用効果について椎骨動脈血流量(VBF)への影響も含めて検討した。PGEIの投与量は、血圧に影響せず総頚動脈血流量(Ca-BF)の増加が得られる200ng/kg/分とした。PGEI投与によって、心拍出量は約5%、Ca-BFは約10%それぞれ増加した。左SGBによって、ブロック側のCa-BFは約35%増加し、対側では約10%減少した。SGB後にPGEIを併用すると、ブロック側のCa-BFはSGBによる増加量のさらに約10%が上乗せされ、また内頚動脈系の血流量を示すCBFは影響されなかったことから、SGBとPGEIによるCa-BFの増加作用は外頚動脈系での血管拡張効果と思われた。VBFはSGBによって増加し、またPGEIに対する反応は、SGB前は約10%程度の増加であったの対し、SGB後はブラック側で30-50%と増加率が大きくなった。このように、SGB側の外頚動脈系と椎骨動脈系ではPGEIの血流増加作用が増強されることから、SGBとPGEI持続静注の併用療法は頭部血流障害に対して有用と思われた。
著者
堀田 義太郎
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

差別概念の哲学的な分析論の主要な議論を検討した。①被差別者に与える害や不利益に注目する帰結主義的な立場としての不利益説、②差別者の動機や悪意に注目する悪意説、③帰結にも意図にも還元できない「意味」があるという意味説を検討した。現在の議論では不利益説が主流である。不利益説は差別がもたらす害悪の大きさに関する直観にも適合しており一定の説得力がある。本研究では、しかしこの立場では十分に差別の悪質さを分析することはできないことを明らかにし、意味説に一定の利点があることを確認した。差別の悪質さを評価するための規範的な根拠の解明が今後の課題である。
著者
白尾 恒吉 木村 勇 仲根 孝 井上 政久 岩堀 信子 本間 龍雄
出版者
青山学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

数学の各分野において近年国際的発展のはなはだしい研究を見る組合せ論的な扱いを主として、我が数学教室においては、代表者白尾は、マルコフ過程の從来の解析的思考を組合せ論的な立場から見直すべく出来るだけ夛くの知識と概念を導入して来年度への研究の活力とした。分担者岩堀は、組合せ論properな未解決問題をプログラムし、計算実験をくりかえし、いくつかの部分的な成果および予想を得た。分担者本間,井上は或る種の非代数的曲面の変形の研究から新しい非代数的低次元複素夛様体を構成することを試みた。分担者小池は、昨年夏の日米合同セミナー"可換群と組合せ論"(バークレイ)において、Littlewood's公式に基き、(対称な有理関数のShier関数への展開公式)偶数次の対称群とワイル群の間の既約表現に関連する分解公式を得た。以上、いくつかの方面からの研究をひろく行ったが、いづれもコンピューターによる補助計算、実験計算等に夛くの時間をかけているので、結果を得られたものもあるが、未だその途上に研究をつづけているものが夛数あるのでこれらを来年度の課題としたい。
著者
柴崎 貢志
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまで報告されてきたTRPV4の機能(皮膚における外界の温度受容体としての機能)とは全く異なり、海馬TRPV4は神経活動調節因子として機能している可能性が高いと考えられた。この可能性を検証するために、野生型とTRPV4欠損マウスの海馬より培養神経細胞を調整し、静止膜電位および発火特性を調べた。その結果、海馬神経細胞において、TRPV4は体温により活性化されており、その活性化を介して静止膜電位を脱分極させ、神経細胞が興奮しやすい土台環境を産み出していることが示唆された。さらに、個体レベルでのTRPV4の学習・記憶に果たす役割を調べ、TRPV4が脳内温度で恒常的に活性化されていることを証明した。
著者
香取 秀俊
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

現在の時間標準であるセシウム原子のマイクロ波遷移を基準とした光周波数のコヒーレント計測技術が確立した結果,時計遷移周波数が5桁高く,より高い安定度が期待できる光領域の時間標準の実現や,それらの原子時計の時間揺らぎの評価が,現実的な意義をもつようになった。本研究は,従来の単一イオントラップ光周波数標準と中性原子光周波数標準の特長を同時に実現可能な「光格子時計」のアイディアを提案・実証することを目的とした。光格子中にトラップされた中性原子を用いる「光格子時計」手法では,単一イオントラップ光周波数標準の特徴である(1)ラム・ディッケ束縛によるドップラーシフトの除去,(2)原子間衝突の除去,を(3)光シフトを相殺した光格子にトラップした約100万個の中性原子によって実現する。これによって,イオントラップ周波数標準のもつ高い周波数確度を維持しつつ,およそ3桁の安定度向上を狙う。この提案の鍵を握る「光シフト相殺手法」の検証のため,ストロンチウム原子のフェルミ同位体^<87>Srの^1S_0-^3P_0禁制遷移(遷移周波数698nm、線幅1mHz)を用いた理論計算を行ない,1秒で10^<-18>の安定度・確度を達成可能なことを,明らかにした。「光格子時計」の実証のため,レーザー冷却を施した^<87>Srを1次元光格子に捕獲し,時計遷移励起光に対してラム・ディッケ束縛条件を満たした上で,これに対する分光実験を行った。この結果,光格子レーザー波長を813.5nmとすることで光シフトの相殺が可能となることを示し,このとき励起レーザー線幅で制限される(ドップラーフリーな)500Hzの時計遷移の観測に成功した。
著者
栗山 進一 菅原 詩緒理 相場 節也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究においては、主として以下の3つの事業を遂行する。①三世代コホートのアドオンコホートの実施、②オミックス解析と疾患クラスタリング、③クラスタリング結果に基づき、アドオンコホートデータとオミックス解析データのシェアリング及び統合解析によるアトピー性皮膚炎と自閉スペクトラム症のリスク予測式構築及び病態解明。①のアドオンコホートについては、これを実施できる期間が限られている。三世代コホートの児が4歳~5歳となり、センター型調査を受けるのは2021年3月31日ですべての児について完了する。本研究課題の遂行は喫緊の課題であり、この時期に実施しなければ二度とこのような調査は実施できない。
著者
太田 嗣人
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肥満による炎症とインスリン抵抗性の誘導にMCP-1-CCR2非依存性の未知のケモカインシグナルが関与している可能性がある。肥満モデルの脂肪組織では野生型マウス(WT)に比し、CCR5とそのリガンドの発現が増加していた。高脂肪食を摂取したCCR5欠損マウスは、耐糖能異常と肝脂肪蓄積に抵抗性を示した。肥満モデルの脂肪組織におけるCCR5+マクロファージ(ATM)細胞数は著明に増加していた。一方、肥満のCCR5欠損マウスははWTに比しATMの総数は減少し、M1からM2優位へとATM表現型の転換を認めた。肥満により脂肪組織ではCCR5+ATMの浸潤・集積が増加する。また、CCR5欠損によるインスリン抵抗性の減弱にATMの量の低下のみならず質的変化、つまりM1からM2へとダイナミックなATMの表現型シフトが寄与しうる。
著者
馬路 智仁
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、近代イギリスの政治思想(19世紀前半から20世紀初頭)において半ば忘却されてきた、きわめて独特な知的系譜、すなわち殖民主義からグレーター・ブリテン構想、そしてブリティッシュ・コモンウェルス構想へ至る帝国的系譜を描き出そうとする点にある。その最大の目的は、ポスト・ブレグジット時代を睨む今日のイギリスにおける「コモンウェルスへの回帰」言説を歴史的文脈の中に位置づけ、相対化するパースペクティヴを提供することである。
著者
赤澤 健太郎
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳温度をMagnetic resonance imagingで非侵襲的に測定する方法のひとつとして、拡散強調画像から得られる側脳室内の脳脊髄液の拡散係数を利用する方法が近年提案されている。本研究では、この手法の安定性や、撮像条件・体温の違いによる影響を明らかにするために計画されたものである。健常成人の検討によって、この手法は安定的に脳室温度を計測することが可能であった。また撮像条件のうち、スライス厚は算出される温度に影響を与え、より薄いスライス厚のほうが望ましいという知見が得られた。また脳室温度は体温の影響を受けることも明らかとなった。
著者
守 健二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

マルクスの初公表の経済学研究の中には、分配の変化あるいは技術変化に起因する古い均衡から新しい均衡への収束・非収束という、『資本論』の既存の論理には解消されない中短期的な変動分析があり、それは新オーストリア学派のトラヴァース分析に接続可能な豊富な内容を有していた。本申請は、『新マルクス・エンゲルス全集(MEGA)』に基づいて、未検討の経済学草稿を網羅してマルクスのトラヴァース分析の全体像を再構成し、さらにその理論的意義と限界を、新オーストリア学派のトラヴァース分析と比較検討することによって解明する。
著者
川崎 了
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,海岸域の自然材料(微生物,海水,海砂,貝殻片など)を用いてCaCO3の析出により固化した人工ビーチロックを作製し,港湾岸壁のコンクリートの一軸圧縮強さ20~30 MPa程度を1カ月程度で達成する基本技術を新たに開発し,その有効性を確認することである。国内の海岸域においてウレアーゼ活性が高い尿素分解菌を探索した結果,沖縄県や北海道などの土質試料よりCaCO3析出に適した菌株が発見された。また,砂供試体の室内加速固化試験を実施した結果,試験開始から3週間後に針貫入試験による推定一軸圧縮強さ約20 MPaが得られた。結論として,新たに開発された技術の有効性が確認された。
著者
内海 英雄 橋本 博 賀川 義之
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

種々の酸化ストレス疾患の発症・病態悪化に深くかかわるフリーラジカルをイメージングする臨床画像化装置の開発を目指して、動的核偏極を利用したDNP-MRI装置の高感度化に向けた基礎研究を行った。既に試作してあった装置の画像データを詳細に解析しDNP-MRI装置の特性を検証すると共に諸外国からの研究報告を含めて原理に遡って数理モデルで解析した。更に新たな基礎データを取得することで、合成体内診断薬を必要としないフリーラジカルイメージング法の開発に有用な基礎情報を得た。
著者
村松 真理子 池上 俊一 杉山 浩平 日向 太郎 芳賀 京子 松田 陽 奈良澤 由美 中川 亜希
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

南イタリア・ヴェスヴィオ山麓は紀元後1世紀の火山噴火で埋没したポンペイ等の古代都市が発見され、近代考古学・古代史研究の礎が築かれた「領域 (イタリア語 territorio)」である。本研究計画は(I)2002年以来東京大学が当地域で行うソンマ・ヴェスヴィアーナ古代ヴィラ遺跡調査を総括し、(II) 歴史学、美術史、パブリック・アーケオロジー、文献学、文化史の専門家である分担研究者が協働し、当該「領域」の「古代の記憶」に位置付ることで新たな知見を獲得し、(III)国際シンポジウム等を通して文化遺産の研究・保存活用をめぐる国際的議論において、広く統合的人文知の新たな展望と社会的役割を呈示する。
著者
齋藤 真木子 水口 雅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本人の急性壊死性脳症(ANE)の病態としてサイトカインストームが推定されているが、欧米の家族性反復性急性壊死性脳症(ANE1)のように単一遺伝子疾患であるかどうか、未だに不明である。ANE1原因遺伝子RANBP2の産物であるRANBP2の結合蛋白に着目し、ANE患者24例においてCOX遺伝子群の変異・多型解析を行った。COX11遺伝子の全エクソンに変異は認められなかったが、1例にCOX10exon3のヘテロ接合一塩基置換c.260C>T(T87I)があった。また、COX15にはMAF<0.01であるrs2231682のマイナーアリルを有する症例が3例あった。COX群はミトコンドリア電子伝達系に関わっており、エネルギ-産生に必要である。また、COX遺伝子群はANEと病態の類似するLeigh脳症の原因遺伝子として報告されている。ANE患者で認められたこれらの一塩基置換がミトコンドリアエネルギー産生に影響を及す可能性が示唆された。
著者
水口 雅 高梨 潤一 齋藤 真木子 廣瀬 伸一 山内 秀雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

急性脳症は急性壊死性脳症(ANE)、けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)、難治頻回部分発作重積型脳炎(AERRPS)などに分類される。これらの症候群には臨床的に多様性と共通性がある。その分子的背景を解明するための包括的な遺伝子解析を行った。ひとつの症候群に特異的なvariationとしてANEではHLA型、IL6、IL10(多型)が、AESDではADORA2A、IL1B多型が、AERRPSではSCN2A多型が同定された。複数の症候群に共通するvariationとしてCPT2、IL1RN多)、SCN1Aミスセンス変異が見いだされた。ほとんどが自然免疫と神経興奮に関わる因子であった。
著者
原 清治 山内 乾史 浅田 瞳
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

いじめはこれまでにも子どもたちや社会の様態にあわせてさまざまに深化してきた。今日では「匿名性」を特徴とするネットやケータイを利用したいじめが多く発生している。本研究ではネットいじめの発生要因にについて分析し、ネットいじめの新たな視点を提供することを目的とした。結果として、ネットいじめの要因として(1)ケータイの依存度の高さ(ケータイの使用時間、メールの送信回数)、(2)性別、といった従来の要因だけではなく、(3)学力移動によってネットいじめの被害に大きな差異が生じることが明らかとなった。また、(4)学校によってネットいじめの被害に大きな差異はみられず、学校文化による影響をネットいじめは受けにくいことも明らかとなった。