著者
田辺 繁治 田辺 繁治
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.391-442, 2019

Since the 1990s, 'animism' has become a refreshing focal point amonganthropologists working in North and South America and, to a certainextent, South East Asia, focusing on its ontological bases of humans andnon-humans. In these ontological and 'perspectivist' studies, animism isoften illustrated by the capacity of metamorphosis attributed to human andnon-human beings who have a similar interiority despite having differentbodies. What we have often detected in South East Asia, especially inNorthern Thailand, are that such unique metamorphic relations are extendedbetween humans and non-humans of various kinds including spirits, souls,cannibal ogres, and aborigines.This study analyses the complicated processes involved in the propitiationof the ancestor spirits of the aboriginal Lawa through sacrificing abuffalo, cooking, communal eating, and spirit possession by mediums in thePu Sae Ña Sae spirit cult held annually in the forest of Chiang Mai. In theritual process of this grandiose cult, it is quite evident that the NorthernThai princes, now the government officials, as the ritual sponsors whoembody Buddhist moral superiority could successfully propitiate Pu Sae ÑaSae, the aboriginal spirits. However, for the participating villagers in thecult, the external and potentially dangerous power of the spirits is manipulatedin the expectation of deriving practical results, such as well-being,health, and timely rain.This paper thus illustrates the way in which the sacrificial cult is constructedon the basis of the interactions within the animic regime to attaincertain purposes, simultaneously and intrinsically involving the reproductionof the conventional social order and legitimate authority. The animicregime is here subjugated under the domination of a political power. 1990 年代以降,「アニミズム」は,南北アメリカはもとより,さらに東南アジアで研究する人類学者たちの間でも新たに注目されるようになり,人間および非人間の存在論的基盤に焦点が当てられるようになった。そうした存在論的,あるいは「遠近法主義的」な研究では,しばしばアニミズムは変態する能力の実例と見なされる。この能力は,異なる身体を備えるが,類似する内面性を持つとされる人間および非人間の双方に備わるものと考えられるのである。われわれが東南アジア,特に北タイにおいてしばしば見出してきたものは,精霊,魂,人食い鬼,原住民などを含む多様な人間および非人間の間に広がる特有な変態の諸関係である。 この論文は,チェンマイの森の中で毎年開催されるプーセ・ニャーセ精霊祭祀に焦点を当てながら,水牛供犠,調理,共食,霊媒の精霊憑依などを通して実践される先住民ラワ(Lawa) の祖霊に関わる祭祀の複雑な過程を分析する。この巨大な祭祀の儀礼過程では,北タイの君主たち,あるいは今日では政府の役人たちは儀礼のスポンサーとして仏教道徳の崇高性を体現し,先住民の精霊プーセ・ニャーセを鎮めることになる。しかしそれとは逆に,この祭祀に参加する多くの村人たちは,外在的で潜在的には危険な力である精霊が,幸福,健康,および恵みの雨など実利的な結果をもたらしてくれることを期待するのである。 そこでこの論文では,供犠がアニミズム秩序の中の相互作用を基盤としながら特定の目的を実現するために構築されてきたと考える。しかし同時に,それが本質的に,伝統的な社会秩序と正統的な権威の再生産に関わるものであることを明らかにする。そこではアニミズム秩序は,政治的権力の支配のもとに従属してしまうのである。
著者
馮 明珠 武田 安恵
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1745, pp.143-145, 2014-06-16

故宮トップが展覧会を語る梅雨の長雨は人間にはうっとうしくても、植物にとっては「恵みの雨」。この時期、雨に濡れたようなあの"白菜"の名品が初来日する。今週は注目の「台北 故宮博物院」展の話題から。ART. 秘宝『翠玉白菜』が初来日 緑と白。
著者
新井 イスマイル 川口 誠敬 藤川 和利 砂原 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.2319-2327, 2007-07-15
被引用文献数
1

近年,口コミ情報サイトを例とする,ユーザの行動を基にした店舗・施設の検索サイトが注目されている.これらの検索サイトでは,位置に基づいた検索が可能であることと,店舗・施設に対して複数のユーザからの第3 者の評価情報が取得できることが求められている.しかし,商用の検索サイトには広告収入や検閲の影響により,被評価店舗にとって不都合な情報が現れにくく第3 者の評価情報の提供に問題がある.また,従来の情報取得手法ではWWW 上の情報をすべて収集し,複雑な自然言語処理によって位置に基づいた評価情報を抽出する作業が必要となり,サービス構築コストが膨大となるという問題がある.そこで本研究では従来の全文型検索エンジンを活用し,目的の分野を示すキーワードと商用検索サイトを除外するキーワードを組み合わせることによって目的の第3 者の評価情報を収集する手法と,単純な形態素解析と文字列のパターンマッチングを用いた文字列処理によって住所を抽出する手法を提案する.この手法に基づいてWeb インデクサを評価した結果,一度の収集のうち44%が目的とする個人サイトであり,位置情報の取得再現率が59%という結果が得られた.A user expects that he/she can search stores and facilities from Web information space based on his/her behavior (Ex. Word-of-mouth communication sites). For this purpose, an appropriate information must be retrieved based on user's location. In addition, a user expect that he/she can retrieve actual impressions of other users against stores and facilities to decide his/her behavior. However, there are two major problems to achieve the above requirements. One is that the actual impression of other users are often omitted on the commercial web sites by the sponsor's claims. The other is that the cost for the information retrieval may become large because the existing search engines have to crawl most of Web sites and the complicated natural language processing have to be used. In this paper, we propose a new method which can obtain appropriate Web contents from Web search engines by inputting keywords that include user's objective information and black list information. In addition, the proposed method can extract the geographical information from the obtained Web contents by a morphological analysis and a simple pattern matching. As a result of evaluating the Web indexer based on the proposed method, 44% in all obtained Web contents conforms to user's objective. Also, the recall ratio of the extract of the geographical information is 59%.
著者
関根 慶太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, pp.539-540, 1996-03-11

何故ニワトリの足は4本なのか?先日友人同士集まって雑談をしていたところ、最近の小学生にニワトリの絵を描かせると、足を4本持ったニワトリを描くものがかなりいるそうだ、という話になった。それを受けて別の友人が、でもそんなのはまだ良いよ、私の知人の家では、高いお金を払ってデパートで大きなカブトムシを子どもに買ってやったところ、しばらくして子どもが、「電池を買って頂戴」といってきた。理由を聞いたら、カブトムシが動かなくなったから「電池切れ」だという。子どもの話だと思って笑っていたら、ある有名大学の電気工学の実験の時間に、学生が「指導書の通りに配線してもモータが動かない。この指導書は間違いではないか」と真顔で抗議にやってきた。行ってみたら、確かに配線は正しいが、なんとビニール線の被覆を剥いていなかった、という極め付きの話題まで飛び出してきて、一同口アングリとなってしまった。しかし、ビニール線を剥かない、というのは話題性があるが、OPアンプやロジックICの電源回路を配線していない、というのは全国の大学(しかも電気、電子工学科)の学生実験室では、ごくありふれた光景であろう。なぜ、昔なら考えられなかったような珍妙なことが起こるのであろうか?もうおわかりのように、一口で言えば、実物を見たり、触ったり(できれば遊んだり)した体験がないからである。とくに、最近の指導要領の変革で、低学年から、高校に至るまでの過程で、「実験時間に、その実験が行われるのを見たこともない(自分でやってみる、等と言うことは論外である)」という学生が大多数を占めてきているのが現状である。また、むかしなら、電気を学ぼうと志願する学生の多数派の理由は「電気が好きだから」、「電気がやりたいから」であった。従ってラジオとまではいかなくても、電気工作くらいは自分でやった経験を持っており、ビニール線は被覆を剥かなければ電流は流れない、ということくらい「常識」であって、学ぶべき「対象」ではあり得なかった。と、昔を懐かしんでいるだけでは「年寄りの愚痴」であって、「このような体験不足」の学生に技術者、研究者としての基本的な体験を与える」というのが現在の学生実験に課せられた使命といえよう。
著者
浅井 直樹 鈴木 智高 菅原 憲一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.793-800, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
19

〔目的〕難度の異なる同種の運動課題を反復練習した前後におけるH反射の変化と運動学習の程度を検討した.〔対象と方法〕健常成人21例を運動課題に用いる不安定板の底部の形状によって高難度群と低難度群に分け,それぞれ不安定板上での平衡運動課題の練習を行った.練習前後に運動課題遂行時の目標との誤差とヒラメ筋H反射,表面筋電図を計測した.〔結果〕H反射と前脛骨筋の活動が高難度群で練習後に有意に低下した.運動課題の誤差は低難度群で練習後に有意に減少した.〔結語〕運動課題の難度が高い場合では運動学習に伴って脊髄運動神経の興奮性や筋活動が変動し,難度が低い場合これらは変動しないが運動学習の効果はより高い可能性が示唆された.

3 0 0 0 OA 日本経済叢書

著者
滝本誠一 編
出版者
日本経済叢書刊行会
巻号頁・発行日
vol.巻20, 1917
著者
中邑幾太著
出版者
中文館書店
巻号頁・発行日
1934
著者
和田 光俊 久保田 壮一 尾身 朝子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.63-68, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3 4

JSTが提供している科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)は,日本の学協会が発行する学術論文誌等を公開するための電子ジャーナルサイトである。2006年2月末現在,269誌のジャーナルと90種の予稿集が公開され,登載論文数は約17.6万件である。総ページアクセス数は月間100万件を超え,毎月30万件以上の論文がダウンロードされている。J-STAGEへのアクセスの約7割は海外からであり,国別では120か国に及んでいる。また,論文へのアクセスの約6割は他サイトからのリンク経由であり,そのほとんどはPubMed等の文献データベースから論文本文へのリンクによるものである。過去に発行された論文へのニーズも高く,2005年度からは,主要なジャーナルを創刊号にまで遡(さかのぼ)って電子化して公開する電子アーカイブ事業が開始されている。
著者
鈴木 紗弥子 馬場 章
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.25-31, 2016 (Released:2019-10-01)

テレビゲームは技術の進歩に伴って、CGアニメーションによるカットシーン(イベントムービー ) が用いられるようになっている。その後、カットシーン中の画面上にボタン押下指示を表示させる QTE (Quick Time Event)と呼ばれる表現手法が作られた。本研究ではこのQTEを模したプログラムを 用いて実験を行い、ボタン押下の速度、映像内容に関する理解度を調査した。その結果、ゲーム初心者 にとってはボタン押下指示の間隔が大きく開くと、反応に遅れが生じることが分かった他、全体的に映 像内容の理解度に疑問が発生することも示唆された。
著者
佐藤 智美
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-4, 2004 (Released:2010-08-12)
参考文献数
13
被引用文献数
14 12

宮城県沖の7 つのスラブ内地震と4 つのプレート境界地震の加速度震源スペクトルの短周期レベルを推定した。その結果、スラブ内地震である2003 年宮城県沖地震 (MJ7.0) は、プレート境界地震である1978 年宮城県沖地震 (MJ7.4) より地震モーメントは小さいが、短周期レベルは大きかったことがわかった。また、平均的には宮城県沖のスラブ内地震の短周期レベルは内陸地震に対する既往の回帰式の約4~6 倍、宮城県沖のプレート境界地震の短周期レベルの約3~4 倍であり、この特徴は福島県沖の地震と同様であることがわかった。
著者
佐藤 裕二 北川 昇 七田 俊晴 畑中 幸子 内田 淑喜
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.230-232, 2020-12-31 (Released:2021-01-28)
参考文献数
4

目的:2020年6月に,2019年6月(医療保険導入後1年2カ月)の社会医療診療行為別統計が公表されたので,これを前報の2018年6月の実施状況と比較することで,最新の口腔機能低下症の検査・管理の実態を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:2019年6月および2020年6月に発表された社会医療診療行為別統計により,2018年6月(医療保険導入後2カ月)および2019年6月(医療保険導入後1年2カ月)の口腔機能低下症の検査・管理の実施状況を調査した。 結果:医療保険導入1年2カ月後には,咀嚼能力検査は前年の統計に比較して約5倍,舌圧検査は約2倍,口腔機能管理加算は約4倍となったが,咬合圧検査はほとんど変化がなかった。 考察:普及したとはいえ,初診患者の1%以下の検査実施率であり,これは,まだまだ普及の途上であるといえる。 結論:検査・管理は普及してきているものの,さらに普及させる必要性が示唆された。
著者
喜多村 尚 小原 郁夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.291-296, 2009-12-10
参考文献数
24
被引用文献数
2

基本4味に対する味覚感度の月経周期における変動については明らかにはなっていない。本研究は, ヒトの月経周期による基本4味 (甘味, 酸味, 苦味, 塩味) に対する味覚感度の変動について検討した。卵胞期と黄体期が明らかである基礎体温パターンを示した11名の健常女子大生を, 被験者とした。味覚感度の測定部位は, 舌の前2/3の茸状乳頭が散在し, 鼓索神経支配を受けている舌の7カ所とした。ついで, 舌の先端部中央における4基本味に対する味覚感度の測定を行った。甘味の味覚感度は, 卵胞期および黄体期が月経期および排卵期より上昇し, 酸味の味覚感度は, 黄体期が排卵期より低下した。しかし, 塩味および苦味の味覚感度は, 月経周期による変動は観察されなかった。これらのことから, 甘味は, 代謝リズムが急激に変わる月経および排卵期に味覚感度が低下するが, 基本4味すべてにおいて卵胞期と黄体期の間で変動がないことが示唆された。
著者
杉浦 芳夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.566-587, 2006-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
83
被引用文献数
1 3

本稿では,オランダのアイセル湖ポルダ-における集落配置計画と中心地理論との関係を,文献研究を通して考察した.四つの干拓地のうち,当初の集落配置プランに中心地理論がヒントを与えた可能性があるのは北東ポルダーであり,その場合,形態論的側面にだけ限定すれば, Howard(1898)の田園都市論を媒介にしている可能性がある.東フレーフォラントと南フレーフォラントについては,上位ランクの集落配置は,考え方の点で,明らかに中心地理論の影響を受けているTakes(1948)の研究『本土と干拓地の人ロ中心』に基づいてなされた.東フレーフォラントの下位ランクの集落配置については,都市的生活を指向し,車社会に移行しつつあった当時のオランダ農村事情に通じていた社会地理学者らめ意見に基づき,中心地理論が厳密に応用されることなく行われた.ポルダー関連事業で活躍したこれらオランダの社会地耀学者の調査研究成果は,中心地理論研究史の中でも評価されて然るべき内容のものである.