著者
蔭山 洋介 新居 康彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.306, pp.49-54, 2005-09-19

他者の笑顔を観察しているだけで観察者が笑顔になり楽しい気分になることがある.このように情動が伝染することは知られているが, 快感情を伴う自然な笑いと快感情を伴わない作り笑いにおいて情動の伝染にどのような違いが見られるかについての研究は今のところ見当たらない.本研究では, 被験者に面白い映像を視聴させたときの自然な笑いと, 指示によって強制的に表出させた作り笑いを被験者に提示し, 被験者のfacial EMG(顔面筋電図)を記録した.同時に各笑いについての印象を内省報告させた.結果, 自然な笑いか作り笑いかという表出の種別よりも笑いの自然さが情動の伝染において重要であることがわかった.
著者
壇 和弘 大和 陽一 今田 成雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.323-328, 2005-09-15
被引用文献数
4 7

光強度および赤色光(R)/遠赤色光(FR)比を変えた光環境がコマツナ(Brassica campestris品種'はるみ小松菜', '楽天')の硝酸イオン濃度および硝酸還元酵素(NR)活性に及ぼす影響について調査した.コマツナは, 異なる光強度(PPFD 165, 290, 350, 510μmol・m^<-2>・sec^<-1>)あるいは異なるR/FR比(1.01: 対照区, 0.66: R抑制区, 1.50: FR抑制区)の光環境下で1/2単位および1単位の培養液を用いて養液栽培した.異なる光強度でコマツナを生育させたところ, 'はるみ小松菜'の硝酸イオン濃度は光強度の増加とともに低下し, 非リン酸化NR活性は光強度の増加とともに高まった.'楽天'では, 1/2単位の培養液を用いた試験区において, 光強度の増加とともに硝酸シオン濃度は低下し, 非リン酸化NR活性は高まったが, 1単位の培養液を用いた試験区では, 光強度が増加しても硝酸イオン濃度はほとんど低下せず, 非リン酸化NR活性も変化しなかった.R/FR比を変えてコマツナを生育させたところ, 1/2単位の培養液を用いたR抑制区でのみ硝酸イオン濃度の低下が認められた.
著者
笠師 久美子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.2, pp.65-67, 2011 (Released:2011-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本来,スポーツは健全な心身のもとに競技が行われるべきであるが,薬物等の誤用や濫用による「ドーピング」が社会問題にまで発展している.これは一部の作為的な行為によるものばかりではなく,医薬品やドーピングに関する知識不足による使用も多く含み,結果的に同様の制裁を受けるのが現状となっている.2007年にドーピング防止ガイドラインが文部科学省により策定され,薬剤師も積極的にドーピング防止活動に努めることが明記された.ドーピング撲滅のために薬剤師が介入できる事項としては,薬に関する教育や相談応需,医薬品情報の提供,禁止物質の治療目的使用に係る除外措置(TUE)に関する支援などがあげられる.薬剤師の職務である適正な薬物療法と安全性の担保は,スポーツにおいても求められるところである.そのためには,従来薬剤師が医薬品として理解している「薬物」に加え,ドーピング効果を期待する「薬物」としての情報が求められる.
著者
笠師 久美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.1475-1481, 2009 (Released:2009-12-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 5

In recent years, appropriate medication and guarantees of safety are being sought not only by medical circles but also by the world of sport. Under normal circumstances, sport should be wholesome in both mind and body, but “doping” by the misuse and abuse of drugs and such is developing into a social issue. This is not just a result of the deliberate behavior of a certain number of people; many cases include use due to a lack of knowledge of drugs and doping, although eventually the sanctions received are the same. Doping tends to be perceived as the problem of just a section of elite athletes, but since the introduction of doping control at the National Athletic Meet 2003, anti-doping measures continue to be a problem close at hand. In 2004, the World Anti-Doping Code came into effect and subsequently not just the world of sport but various national governments became deeply involved with anti-doping. Anti-doping guidelines in Japan were formulated by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology in 2007, stipulating that doctors and pharmacists should be proactive in anti-doping activities. With the aim of eradicating doping, it was deemed that pharmacists can intervene by providing support regarding such issues as drug enlightenment, consultation; the supply of drug information; database production; and therapeutic use exemption. It can be considered that pharmacists can sufficiently use their knowledge and experience gained in these fields, and that such knowledge could lead to more appropriate drug use in sport.
著者
佐藤 寛之 森本 信也
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.29-36, 2004-09-17
被引用文献数
1

Head,J.O.,Sutton,C.R.は,「科学概念におけるメタファー表現は,個人の認知・情意・レトリックが融合したものである。」としている。つまり丿情意的なこだわりを持ち,類推することで新しい概念の構築がなされていることを示している。子どもにおける自然事象の概念を表現する能力を養うため,理科授業においてはこうした視点に立つ類推のような論理の構築方法を学ぶ学習場面が必要である。同時に このことは情意と認知が融合した「温かい認知(warm cognition)」の有用性を示すものであり,理科の授業デザインにおける必須条件と考える。
著者
窪野 高徳 秋庭 満輝 市原 優
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

スギ雄花に寄生する菌類(スギ黒点病菌; Leptosphaerulina japonica)を用いて、人為的にスギ花粉の飛散を抑える散布処理液の開発を検討した。その結果、スギ雄花の生育ステージ(生育段階)に沿って、「スギ黒点病菌糸体懸濁液に市販の大豆油を10%添加した散布処理液」を接種したところ、約35~65%の頻度で雄花を枯死させることに成功し、小規模な試験ながら、人為的に花粉の飛散を抑止させる方法を完成させた。
著者
角谷 千恵子 荻野 敏 嶽 良博 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.669-675, 2004
被引用文献数
5

大阪・和歌山において,2003年のスギ花粉飛散のピークと想定された2月24日から3月8日の期間に,16施設の耳鼻咽喉科外来を受診したスギ花粉症患者に対し,初期療法に関するアンケート調査を行った.そのうち,初期療法を受けていた501名のデータから,服薬状況が初期療法の有効性に与える影響を検討した.前年の症状と比べた2003年度の全般的な患者の評価を4段階で判定したところ,服薬率が高い患者群ほど,昨年より症状が軽いとする症例が有意に多かった.また,鼻汁および鼻閉の重症度も軽症化する傾向にあった.服薬率が初期療法の効果に大きく影響することが確認されたことから,服薬率を50%以上,50%未満の2値に分類し,その寄与因子を多変量ロジスティック回帰にて検討した.その結果,学生であること,目薬などのOTC薬の使用者および初期療法が短期間の例では服薬率が50%未満となるリスクが高くなることが判明した.なお,単変量ロジスティック回帰では薬剤費の上昇が高服薬率の要因であった.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1919年06月10日, 1919-06-10
著者
本條 晴一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

聴覚系は外界の空気振動に反応する受動的なシステムではなく、状況に応じて反応の仕方を変える能動的なシステムである。前年度は、状況に応じて聴覚系がどのように反応の仕方を変化させるかを、聴覚末梢の有毛細胞をモデル化することによって調べた。そこで見出されたのは、ノイズなどで外界の状況が異なると聴覚系が作り出す音が、空気の振動周波数とは別に変化してしまうことであった。本年度は、状況に依存して知覚の形式が変わるということはどういうことか、外界の状況だけでなく学習の履歴によって知覚の形式はどのように変わるのかに注目して研究を進めた。置かれた状況=コンテキストに注目して学習について検討したG・ベイトソンの理論と、情動的身体反応が何かを決断する際にバイアスとして働いていると主張しているA・ダマシオの理論を見なおし、両者の理論を修正し一般化した。その結果、受け取ったメッセージがどのような意味を持つのかを判断する基準になるコンテキスト・マーカーはベイトソンの言うようなコンテキストレベルのメッセージではなく情動反応を通じて創発するものであること、情動反応はダマシオの言うようなバイアスとしてではなくコンテキストを捉えるものであることを見出し、学習の理論の基礎付けをすることができた。合わせて統合失調症の理由を解き明かしたベイトソンのダブルバインド理論を修正して一般化を行い、様々な精神疾患の原因ともなるハラスメントの理論に到達した。複雑系研究において創発現象についての関心は高い。ところが創発自体と創発を前提とする学習を停止させる機構についての研究は行われてこなかった。本研究ではハラスメントが学習の停止を導くものであるという見地から理論化を行った。このことにより、創発を伴う生命現象への研究が進展することが期待できる上、様々な日常的/社会的現象に対して科学的なアプローチをすることが可能となった。
著者
松木 洋一
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 = Animal-husbandry (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.139-150, 2012-01 (Released:2012-12-03)
著者
増田 博幸 角田 利晴 林 義次 西尾 四良 水井 悠 堀内 俊助 中山 恭彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.135-142, 2000-12-01
被引用文献数
22

藻食性魚類による採食活動は、天然藻場の衰退に大きく関与し、藻場造成や海藻養殖の制限要因となっていることが指摘されている。宮崎県日向灘北部の熊野江、門川町地先では、アイゴの食害によりクロメ群落の葉状部が消失し、長崎県下ではアラメ類の葉状部欠損現象が観察され、その原因がブダイによる食害と推察されている。大野らは、海域に移植したカジメ類の成体が、ブダイに食害され葉状部が消失したことを報告している。伊豆半島先端部のカジメ群落では、標識カジメ個体の葉状部がアイゴとブダイに採食され消失する過程が追跡されているが、このような追跡例は少なく、藻食性魚類の採食活動がアラメ属、カジメ属海藻に与える影響については不明な点が多い。静岡県榛原郡相良町地先から御前崎町地先の沿岸には、かつてサガラメ、カジメの大群落が形成されていたが、昭和60年頃から衰退し、御前崎の岬先端の浅所にわずかに生育するサガラメ群落を除いて、現在まで磯焼け状態が持続している。