著者
藤田 育嗣 寺井 伸浩 奈良 忠央
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,(1)整数係数の方程式で定義された楕円曲線の有理点群の生成元や整数点を調べる(2)ディオファンタスの2組の5組への拡張可能性を調べる の2つの目的を遂行した.(1)について,楕円曲線C_m:x^3+y^3=m(mは3乗因子をもたない)に対しC_mの有理点群の階数が1,2の各場合に生成元および整数点を決定した.また楕円曲線E^N:y^2=x^3-N^2x について,E^Nの有理点群の階数が2や3の場合に生成元を具体的に調べた.(2)について,a<b<a+4*sqrt{a}やb<3aを満たすディオファンタスの2組{a,b}はディオファンタスの5組に拡張できないことを示した.
著者
井戸 伸彦
出版者
岐阜経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

漢字検定相当の試験の自動採点を行うシステムを実際の大学教育で運用し、教育成果を上げることを目標に、報告者は研究とシステム開発とを進めてきた。技術的には、正解となる標準字形と受験者による入力字形との間の照合方法、画数を間違えた入力字形に対応する画数フリー化、入力字形の瑕疵への減点の合算方法を開発した。システム開発としては、文化庁文書「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」のすべての記載内容を採点結果に反映するシステムを、実際の授業で運用した。産業分野では、今後商用化への検討を進めていくパートナーとして(株)日立社会情報サービス様(旧日立公共システム様)に支援を頂いている。
著者
小野原 彩香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は言語変化の微細な動態を明らかにするために、地域性、社会構造の異なる複数の小規模な地域を対象として、言語形式と言語外的要因との関係を定量的に明らかにし、言語動態を把握することを目的としている。以上の目的を達成するために最終年度(2016年4月1日~2016年9月30日)には、次のような調査・研究を行った。前年度に、はびろネット(滋賀県米原市柏原の市民グループ)と共同で行った米原市及び岐阜県関ヶ原町の語彙と文法に関するアンケート調査では行わなかったアクセント調査を行った。これは、当初予定していた通り、網羅的にデータを収集し、各側面の変化や伝播の違いを明らかにするためである。この調査では、昨年度行ったアンケート調査の地域と同一地域において、調査を行い、現在も継続中である。被調査者も前回のアンケート調査で対象とした祖父母世代、親世代、中学生世代の各世代を対象とし、調査内容は、名詞、形容詞、動詞、付属語アクセントである。また、前述の米原市及び岐阜県関ヶ原町の語彙と文法に関するアンケート調査のデータを用いて、言語変化と変化の要因についての定量的な分析を行った。このアンケート調査では、中学生、親世代、祖父母世代の3世代の言語使用状況について調査を行ったが、そのうち、祖父母世代から中学生世代への各質問項目の使用率の増減を言語変化率として利用した。この言語変化率と関連する要素として、先行研究で取り扱われてきた人口に関する要素、面積、年齢構成(高齢化率、15歳未満率)と、新たに土地の利用割合を選択し、言語変化率を目的変数、各言語外的要因を説明変数として、一般化線形混合モデルへの当てはめを行った。
著者
八木 克正 井上 亜依 磯辺 ゆかり
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、学習英文法の内容を根本的に見直し、科学的根拠を与えることにあった。好ましくない有害な英語教育の内容を洗い出すこと、変化する英語をphraseologyの立場から実態調査と分析を行い、あらたな事実を記述・説明すること、今の英語の実態を反映していない中学校や高等学校の学習内容、受験参考書や英和辞典の内容を、科学的な実態調査をもとに修正を求めるための研究活動を行い、いずれの点についても講演、論文、研究発表、著書の形で成果を公表した。
著者
榎戸 輝揚 北口 貴雄
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

中性子星のX線観測を主要目的とした Neutron star Interior Composition ExploreR (NICER) は、2017年6月3日にケネディ宇宙飛行センターから SpaceX 社の Falcon9 ロケットにより無事に打ち上げられ、国際宇宙ステーションで観測を開始した。NICERは小型のX線集光系とその焦点面に設置されたシリコンドリフト検出器を組み合わせた1モジュールを56個合わせ、中性子星の星表面からの熱放射に特化した 1.5 keV で過去最高の有効面積を誇っている。NICER は、中性子星の内部の高密度状態方程式の観測的確定を目指した観測ターゲットだけでなく、突発増光した中性子星やブラックホールも含め、複数の天体をすでに観測し、検出器のキャリブレーションを行っているところである。定常重力波の発生源かつ検出可能な候補の筆頭である「さそり座 X-1」 は非常に明るく、検出器の調整が必要のため、年度末に調整を行っている段階である。可視光との同時観測が可能であるかも検討を進めている。一方で、超小型衛星に向けた検討も進めており、高レート観測に適するシリコンドリフト検出器を選択し、実際に購入して、読み出し部分の実験室モデル作成を進めている。本プロジェクトとは別の雷雲や雷からの放射線測定のために開発された読み出し用の電子回路ボードを現在は使っているが、本小型衛星のプロジェクトに特化した専用のボード開発の議論も進めている。また、X線集光系については、NASA ゴダード宇宙飛行センターにおいて研究打ち合わせを行った。
著者
池島 信江
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

疲労状態を客観的に定量化することは未だに確立されていない。ラット疲労モデル動物において疲労負荷により下垂体での形態異常が見られることから、疲労負荷を与えたラットの末梢血中における下垂体ホルモン変化を調べたところ、α-Melanocyte stimulating hormone(α-MSH)の上昇が認められた。この結果をさらにヒトへと発展させ、著しい疲労感を呈する慢性疲労症候群(Chromatic Fatigue syndrome ; CFS)についてα-MSHの血漿中濃度を調べたところ、CFS群は健常者群より有意にα-MSHの値が高いことが示された。α-MSHは過労のバイオマーカーの一つになることが明らかにされた。
著者
田中 幹子 黒川 大輔 村上 安則
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、古代魚の鰭が四肢へと進化したプロセスを解明することを目的として研究を行った。その結果、鰭から四肢への過程において、前側領域と後側領域のバランスが大きくシフトして「後側化」すること、この過程には前後軸パターンを制御する Gli3 の発現制御領域の機能の変化が関連することを明らかにした。さらに、サメの鰭を人為的に「後側化」すると、鰭の3本の基骨が 1本になることを実証した。神経パターンについては、神経ガイダンス因子のSema3A の発現様式の変化が四肢神経の多様性を生み出すことが示された。筋肉パターンについては、従来報告されていた形式とは異なる形式で、鰭の筋肉が進化したことが示された。
著者
中村 和正
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

天然物由来および人工物由来の原料より、環境負荷を考慮して、新規浄化材料に適用可能な磁性多孔質カーボンナノファイバーおよび磁性多孔質バルク体炭素材料を作製した。それらの材料は、原料段階にて磁性流体を用い、磁性微粒子を添加することにより、高保磁力を有した。磁性多孔質カーボンナノファイバーは、原料へのヨウ素処理の有無で、細孔制御の可能性が示唆された。また、磁性多孔質バルク体炭素は、より粒子径の小さい熱可塑性ビーズを添加することにより、表面および断面ともに多数の気孔を生成させることが可能となった。
著者
宮村 泰直
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

昨年度までに、独自に開発した重合闘始剤を利用した「ジエンモノマーのシンジオタクティック選択的立体規則性重合」によって、剛直な主鎖に対して側鎖が上下方向に交互に突き出した「くさび型ポリマー」を得ることに成功している。また、その特異な分子構造によって側鎖が分子間で互いに噛み合い、ナノファイバーを形成することで溶液をゲル化するなどの興味深い性質を有していることが明らかになっている。上述のように、シンジオタクティックな立体配置を有するくさび型ポリマーは側鎖を一次元的に突き出した構造をもつため、側鎖に導入した官能墓を対面的に固定することが可能である。当該年度は、このくさび型ポリマーにπ共役系の機能団を導入し、これらの側鎖官能基群が対面型に配置されることを利用したエキシマー発光材料の開拓に取り組んだ。最も単純なπ共役ユニットとしてフェニル基を選択し、これを側鎖に導入したくさび型ポリマーの合成を行った。得られたポリマーの溶液・固体状態ともに、紫外光(320nm)照射によってほぼ白色に発光することが明らかになった。単体では紫外領域にのみ発光性を示すフェニル基が可視光領域に及ぶ広い発光スペクトルを示すようになったことから、エキシマー発光を与えるポリマーを得られたことがわかる。対象実験として、立体規則性の異なるイソタクティックポリマーの側鎖にフェニル基を導入して同様の実験を行ったところ、発光強度・量子収率が低い水準に留まった。イソタクティックポリマーはらせん型構造をとることがしられており、以上の検討からフェニル基が対面型に配置されるくさび型構造がエキシマー発光に重要であることが示された。本研究で開拓した単一の発光種から白色発光をあたえる分子デザインは、今後の有機白色LEDの開発に新たな指針を与えるものである。
著者
竹下 文雄 村井 実
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ハクセンシオマネキのオスにおける複数の求愛シグナルの適応的意義について研究を実施した。メスは時間あたりの求愛音の発音回数が多いオスを好んだ。餌の利用可能性が高いオスではattraction waveの頻度および血漿ラクトース濃度が増加した。近隣オスの妨害行動によりペア形成率は低下した。物理的な障害物によりメスの配偶者選択に要する時間は増加した。オスの甲と大鉗脚における色の変化パターンは異なった。これらの結果より、オスの各シグナルはメスの配偶者選択の基準として用いられる可能性が高いが、その機能は異なり、それぞれの個体が置かれた社会的・物理的環境下で各シグナルの有効性は異なる可能性が示唆された。
著者
北田 亮
出版者
生理学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

他者に理解しやす顔表情の表出は円滑なコミュニケーションに重要な役割を果たす。しかし視覚障害者が表出した顔表情は、晴眼者の表情に比べて認識することが難しいとされている。晴眼者は顔を触るだけで個人や表情を識別できるので、触覚を用いた顔表情の学習によって、より認識しやすい顔表情の表出ができる可能性がある。しかし触覚による顔の認識を支える神経基盤についてはよく分かっていない。例えば視覚による顔の認識には、後頭葉・側頭葉の特異的なシステムの役割が重要であるが、このシステムが多感覚的な顔認識に関わるかどうかはよく分かっていない。さらに視覚障害者で顔認識に関わるこのシステムが発達し、維持されているかどうかも不明である。本研究は顔認知に関わる神経基盤の多感覚性と可塑性について明らかにしようとするものである。平成21年度は顔認知に関する神経基盤の多感覚性を明らかにした(Kitada, et al., 2010 NeuroImage)。そこで平成22年度は顔認知に関わる神経基盤の可塑性について検討した。視覚障害者を対象に心理物理学実験を行い、視覚障害者でも識別できることを明らかにした。さらに機能的磁場共鳴法(fMRI)を用いて、顔表情の識別に関わる脳活動を先天的な視覚障害者(先天盲)と晴眼者で比較した。その結果、晴眼者の視覚と触覚による顔表情の識別に関わる大脳皮質領域(紡錘状回・中側頭回・下側前頭前野)は、先天盲による顔表情の識別でも活動することを明らかにした。この結果は視覚経験に依存せず、顔表情の認識に関わる神経基盤が発達および維持されることを示している。
著者
信夫 隆司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、当初、在京米大使館のインテリジェンス活動とアメリカの対日政策決定への影響を分析することが構想されていた。ただ、実際に史料収集にあたってみると、在京日大使館のインテリジェンス活動とは、外務省関係者からの情報収集、あるいは、東京にある他の在外公館からの情報収集が中心であった。そこで、事例を絞り、日米安保条約にもとづく事前協議制度、在日米軍の刑事裁判権、沖縄の施政権移行期に交わされた密約、奄美返還、ジラード事件を中心に、在京米大使館の活動と政策決定の影響を分析した。
著者
山本 長紀
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題である「高専における語彙学習を促進するタスクベースカリキュラムの開発」を目的とし、平成29年度は「タスクの理論的枠組の提唱」を目標に文献研究や国内外の調査を行った。語彙学習に関しては、瀬川・山本・岩崎・荒木・小澤(2018)などの実証研究を行った。タスクの理論的枠組みに関しては、藤田(2017)や杉浦(2009)のように高専におけるニーズ分析を行う必要性を本研究に組み込むことを確認し、次年度実施するよう計画している。当初計画に加えて研究推進のための手法が増えたものの、本研究は概ね順調に進行している。
著者
R・TINOCO Antonio
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本プロジェクトの目的はスペイン語の変異言語学的な研究で、そのアプローチとしてインターネット上のソーシアルメディア(主にツイッター)のデータをStreaming APIを利用し、 自動的に収集し、大規模なコーパスを作成することにより、広大なスペイン語圏のスペイン語の語彙と文法の地理的な分析をすることである。利用するデータベースに関してはSQL系(MySQL)とNoSQL系(Elastic Stack)を両方テストした。地理的な情報(経度、緯度)が含まれるデータはMySQLのデータベースに蓄積し、他の言語も含まれるデータはNoSQL系のデータベースに蓄積し、目的により使い分けることにしている。例えば、米国のスペイン語と英語の接触、あるいはスペインのスペイン語とカタルーニャ語の言語接触の現象を研究するために、可能な範囲で他の言語もNoSQL系のデータベースで蓄積した。Elastic StackのようなNoSQL系のデータベースは、ツイッターのJSONフォーマットをそのまま処理できるので、Kibanaなどで基本的な可視化もできる。しかし、言語地図の作成はGIS専用のQGISで行う。このような方法で集めたデータによってスペイン語の具体的な語彙と文法のバリエーションの共時的な研究が可能になった。例えば、語彙のバリエーションとしてはメキシコのcobija、apapacharなど、ベネズエラのpiche、arrecheraなど、またはアルゼンチンではgauchar、mina、またはa mi lado es un porotoのような独特な言い回しを、地理的な分布および用法についても調べることが可能になった。また、hicisteとhicistesのように過去形の二人称で見られるバリエーション現象も量的な分析と、その分布を示す言語地図を作成することも可能である。
著者
田中 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヴァルター・ベンヤミンやアビ・ヴァールブルクといった思想家たちが草稿などにおいて用いた、学術的言語表現と図像との中間的存在であるダイアグラムについて比較研究を行ない、徴候的知の表われとしてのダイアグラムが共通して有する規則性やその文化的背景を分析した。また、W・G・ゼーバルトの小説に数多く挿入されている写真を一種のダイアグラムとして考察し、それらが徴候的知としての歴史的記憶を喚起していることを明らかにした。
著者
板倉 史明
出版者
独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

2007年初頭に全米日系人博物館から東京国立近代美術館フィルムセンターへ移送された124本の映画フィルム(伴武の遺品である「バン・コレクション」の一部)の調査を実施し、2007年12月に正式にそれらのフィルムの寄贈手続きが完了した(1本のみ可燃性フィルムであった)。調査の結果、入江たか子主演の無声映画『月よりの使者』(1934年)や、時代劇映画の巨匠・伊藤大輔監督の『薩摩飛脚』(1938年)をはじめとして、これまで日本では失われていたと思われていた1930年代の日本映画のフィルムが10本以上ふくまれていることが判明した。第二次世界大戦以前の日本映画はきわめて残存率が低いため、これらのフィルムは日本映画史の欠落を埋める大きな「発見」である。また、『GeishaGirl』(1933年)という日米合作映画には、1910年代にハリウッドで俳優として活躍していた青山雪雄が脚本家として参加しているが、この作品はこれまでその存在さえ知られていなかった珍しいものである。寄贈された「バン・コレクション」のフィルムは、現在フィルムセンターのフィルム保存庫において安全かつ恒久的に保存されている。ただし、ほとんどのフィルムは製作されてから70年以上の年月が経過しているためにひどく劣化しており、そのまま上映ることができない状態にある。そのため一部のフィルムを35mmフィルムに複製して恒久的な映像の保存をおこなうとともに、上映用プリントを作成して一般に公開できるようにし、2008年4月から開催予定の「発掘された映画たち2008」で上映る予定である。復元したフィルムの冒頭に、「このフィルムは、2007年に全米日系人博物館から東京国立近代美術館フィルムセンターへ寄贈され、その元素材より復元した「伴武コレクション」の一部である。」という字幕を作成し、挿入する予定である。
著者
母利 美和 秋元 せき 岩城 卓二 梅田 千尋 笹部 昌利
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近世中後期の上方地域支配において、譜代藩である淀稲葉家が果たした役割について、基礎的研究を進めるため、旧藩士家に伝存する古文書を中心に史料調査・収集をおこなった。そのため、淀藩稲葉家および旧藩士家に関する史料の全体像把握をおこなうとともに、新たに旧淀藩士の上月家文書2180点、高野瀬家文書257点、竹林家文書257点の調査と全史料の目録化をおこなった。これらの成果により、藩政機構の基礎構造、家臣団の軍制・家格・職制の関係分析をおこない、淀藩の負担する京都火消・京都警衛などの幕府軍役の実態などを明らかにした。
著者
海妻 矩彦 高畑 義人
出版者
岩手大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ダイズ種子タンパク質の栄養価向上のためには、タンパク質中の含硫アミノ酸含量を高めることが必要である。そのためにはダイズ種子貯蔵タンパク質の2つの主要成分のうち、7Sグロブリンの生成量を減少させればよく、7Sグロブリンのサブユニット(α',αおよびβ)の欠失をもたらす変異遺伝子を見出す必要がある。このうち、α'サブユニットの欠失遺伝子はダイズの既存品種の中に既に見出されているので、残る2つのサブユニットの欠失遺伝子をガンマ-線照射による突然変異誘発により見出すことを本研究の目的とした。品種ワセスズナリの種子にガンマ-線40KRを照射した後代の種子をSDS電気泳動法で調査したところ、M_4の種子からαおよびβの2つのサブユニットが同時に欠失した突然変異を選抜することに成功した。この変異遺伝子はホモ接合型になると、幼植物段階でクロロシスを起して致死すること、しかしながらヘテロ接合型では生存上異常は生じないので、この変異遺伝子の維持増殖は可能であること、ヘテロ接合型植物に着生する種子には正常:αおよびβサブユニット量半減:両サブユニットの欠失が3:4:1の比で分離していることが明らかにされた。これと同じ時期に品種ワセスズナリにガンマ-線40KRを照射した後代M_3種子の中に、11Sグロブリンの酸性サブユニットタンパク質の一部を成すグル-プIサブユニット(A_1,A_2,A_3)が欠失しているものが誘発されていることを見出した。この変異遺伝子は1遺伝子座の劣性遺伝子として働らき、正常:グル-プIサブユニット半減:同サブユニット欠失が1:2:1の比で分離を生じることが明らかにされた。この変異遺伝子はホモ接合型植物でも生育には何ら異常は示さなかった。
著者
内田 啓司
出版者
昭和大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

目的多量の高分子抗原が,消化管に入ると,正常の消化管であれば,種しゅの酵素,IgA, pinocytotic, 粘着バリアーなどの働きにより,容易に抗原性の持たない物質に分解される.しかし,腸管アレルギーでは,腸管粘膜の波状をきたし,容易に高分子抗原物質を分解できず,体内に吸収されることが報告されている.1981年,ROBERT等は分子量45.000のオバアルブミンで感作されたRatを用い,その腸管にオバアルブミンでchallenge後1時間後に分子量18.000のβ-lactoloblinの吸収がオバアルブミンで感作されていない(コントロール)群に比べ血中に抗原性を持つ形で出現することを報告した.また,高分子蛋白の最高血中濃度は,負荷後2時間が最高血中濃度を呈すことが報告されている.方法分子量45.000のオバアルブミンで感作されたRatを用い,オバアルブミンで経口的にchallenge後,1時間後,3時間後,6時間後,12時間後,24時間後の5群に分け,高分子抗原の分子量18.000のβ-lactogloblinを経口的に投与し,最高血中濃度を呈す2時間値(吸収率)をELISAを用い,その値をそれぞれの群で比較検討し,それを腸管炎症マーカーとした.結果1時間群(n=9)では,55%(5/9)に,β-lactogloblinが血中に出現した.また,55%の平均血中β-lactogloblinは,189.3ng/ml, 3時間群(n=5)では(1/5),20%の陽性率であった.またその1例の血中濃度は1800ng/mlであった.6時間群(n=7)では,(4/7) 57%で陽性であった.平均血中β-lactogloblinは,900ng/ml, 12時間群は,negative dataであった.24時間群(n=10)では,40%の陽性率であった.また,平均血中β-lactogloblinは,97.6ng/mlであった.考察今回の検討から,challenge後1時間から6時間あたりまでβ-lactogloblinの腸管吸収が亢進しており,12時間後には,一時低下するものの,24時間後に再びβ-lactogloblinの腸管吸収の亢進が認められた.このように2相性に,しかも持続してβ-lactogloblinの腸管吸収が認められる機序に関してはIgEdependent mechanismの即時相だけでなく,連発相も関与して抗原吸収に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
著者
三橋 暁 生水 真紀夫 碓井 宏和
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

メトホルミンは、G1停止により子宮体癌細胞の増殖を抑制した。この作用機序として、AMPKの活性化によるmTOR抑制に加えて、MAPKの抑制が関与している可能性がある。また、培養細胞で確認されたAMPK活性化、mTOR抑制に加えて、MAPKの抑制も認められた。メトホルミンの臨床使用量での短期投与で、子宮体癌組織でki67 indexの低下を認めた In vivoでのメトホルミンの作用は間接作用の可能性も示唆される。若年性体癌・異型内膜増殖症に対するMPA療法にメトホルミンを併用することで、インスリン抵抗性を改善し、再発率も低下させた。子宮体癌患者に対するメトホルミン療法の有用性が示唆された。