著者
布施 将夫
出版者
学校法人 京都外国語大学国際言語文化学会
雑誌
国際言語文化学会日本学研究 (ISSN:2424046X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.17-32, 2023 (Released:2023-04-17)

This article tries to examine global weapons trade between the United States and Japan in the late 1860s. The first half of it, Chapter 1, introduces Japanese recent studies and explains the kinds and numbers of western style rifles brought into Japan in the Meiji Restoration. The second half, Chapter 2, considers a German recent Japanology (Japanologie), “The Global Weapons Trade and the Meiji Restoration: Dispersion of Means of Violence in a World of Emerging Nation-States” written by Harald Fuess. As a result of it, Chap. 2 unravels a part of the flow of western arms within Japan at that time. The remaining subject is to unravel the whole picture of global arms transfer flows and to bridge the gap between global history and national histories.
著者
木本 幸憲
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.35-50, 2021-03-31 (Released:2021-05-29)
参考文献数
50

言語学では1990年代から消滅の危機に瀕する言語についての研究が精力的に行われ,言語ドキュメンテーションや言語復興運動など関連する取り組みも盛んに行われている.本論文ではこれに対し,本来多面的で複雑な事象であるはずの危機言語の問題が過度な単純化を持って取り扱われてきたことを明らかにする.ここでは事例研究として,フィリピンにおいて,10人の母語話者によってしか話されていないアルタ語を取り上げ,その社会言語学的活性度と消滅のプロセスを詳述する.具体的には,アルタを取り巻く多言語社会では,国語,公用語ではなく,相対的に大きな言語コミュニティの言語へのシフトが起こっていること,その言語シフトには,同じ狩猟採集民であるという文化的アイデンティティが関与していることを明らかにする.さらにアルタにとっての言語シフトは,周辺のマジョリティに柔軟に対処するために戦略的に選択されていることを論じ,危機言語を悲観的に評価する従来の態度は相対化されるべきであることを指摘する.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 金内 誠 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.849-852, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

青ヶ島の芋焼酎製造に用いられる粉状麹の諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹過程中の水分含量の変化は, 引込み時に45.0%であったものが, 7日目の出麹時は, 32.0%まで減少した。これは, 一般的な散麹の値より10%程度高かった。(2) 粉状麹の製麹中の酸度は, 出麹まで増加し続け, 4.0meに達した。これは, 一般的な焼酎用麹の酸度よりわずかに低いものであった。(3) 粉状麹の出麹時の各種酵素力価は, AAは1, 100U/g・麹, GAは260U/g・麹であり, 白麹菌を用いて製麹した焼酎用麦麹と比べて, AAで約12倍, GAで約1.4倍高かった。APは11,900U/g・麹で, 焼酎用麦麹と同等であり, ACPは9, 800U/g・麹で, 約3倍高い値を示した。また, 耐酸性α-アミラーゼは530U/g・麹だった。(4) 粉状麹の製麹過程中の細菌酸度は, 製麹開始後, 4日目に3.1meに達したが, その後減少し, 出麹時は2.4meだった。これは, 一般的な散麹の値より高い値だった。以上の結果より, 青ヶ島の芋焼酎製造に用いられている粉状麹は, 酸度が高いことや各種の酵素力価より, 焼酎用麹として十分な品質を有していることが明らかとなった。
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.674-681, 1999-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Kona-koji was prepared without the addition of a koji starter (Tanc-koji) for the production of Imo-shochu. The spores of molds carried in the air affected growth during the preparation of koji. So, we isolated the spores of molds from the vicinity of the places used for the preparation of koji and production of shochu.As shown by the results, a 103 order of colonies per gram·koji of A. oryzae were isolated from kojimuro solids, shochu distillery solids and from the leaves of N. antiqua that are used to wrap the koji A. oryzae spores were also isolated from the air of the koji-muro and shochu distillery. In addition spores of A. niger and other molds were also isolated.We measured the enzyme activity of these strains and investigated their physiological characteristics. Their acidity was higher than that of the standard strains. The characteristics of these strains agreed with those of strains isolated from kona-koji. Therefore, we found that spores of Aspergillus sp. were mixed with the raw material for koji from the leaves of N. antiqua or airborne spores, and these spores grew during the preparation of koji.Further more, spores of other mold contaminating koji were isolated from the leaves of N. antiqua, but they were not detected in the koji. We found that their mold were selected against as the temperature of koji rose to 40C during its preparation.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.150-157, 1999-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

伊豆諸島の青ヶ島で芋焼酎の製造に用いられている粉状麹の製麹法について現地調査を行うとともに, 粉状麹の製麹過程中の麹の状貌変化や主要糸状菌の検索とその諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹法の特徴は, 原料大麦を妙こう処理してから粉状にして用い, 種麹などのスターターを使わずに自然種付によって行うことから製麹に約1週間を費やすことにあった。また, 製麹時に, タニワタリの葉が用いられていた。(2) 青ヶ島には7カ所の製麹場があり, そのうち一醸造場の製麹過程中の糸状菌の動態を調査した。引込みから24時問目にはピンク色の胞子と黄色の胞子が混在していたが, 41日目までに黄色の胞子を持った菌株が急激に増殖し, その後も穏やかな増殖が続き, 出麹まで7目間を要した。出麹時の麹は黄色の胞子が2.7×1011個/g・麹, 黒色の胞子は3.1×1010個/g・麹で, 黄色の菌株がセ体の粉状麹であった。(3) 製麹過程中の培養物および出麹時の麹より分離した菌株の同定を行った結果, 粉状麹に優勢して着生する糸状菌はA. oryzae groupに属する菌種であり, 他にA. niger groupがわずかに混在する菌相であった。(4) A. oryzae groupの生理学的牲質を調べた結果, 生酸性においては, 多酸性の株が多く, 麹酸は, 全ての株で高い生産性が認められた。また, 酵素力価は, α-アミラーゼと中性プロテアーゼ活性において菌株間に大きな違いがみられ, さまざまな性質の菌が混在していた。(5) A. niger groupの生理学的性質を調べた結果, 生酸性は, A. oryzae groupより高く, 酵素力価は, α-アミラーゼ, 中性プロテアーとも低かった。本研究を行うにあたりご協力いただきました青ヶ島酒造合資会社奥山喜久一氏ならびに青ヶ島役場の方々に深謝いたします。
著者
山村 明子 田中 淑江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.524-538, 2023 (Released:2023-10-06)
参考文献数
73

主婦が社会化され始めていた1960年代を中心に, 主婦に提案されていた家庭着を検討することで, 変わりゆく生活の中で求められていた主婦の在り方を論じる. 主な一次史料として, 朝日新聞および読売新聞に掲載された家庭洋裁の指南記事を使用する. さらに, 家庭婦人の装いと生活の関連や他者からの視線等を同時期の婦人雑誌『主婦と生活』から調査する. 提案された家庭着からは家事労働に従事する姿, くつろぐ姿, そして他者に対して体面を保つ姿が見いだされた. 主婦の家庭着とは, 家庭を明るく, 楽しいものに, または穏やかなくつろぎを演出する役割も担っていた. それは主婦本人のみならず, 家族をも気持ちよく過ごさせるためのデザインであった. 同時期のマイホーム主義の風潮ともあいまって, 主婦は家庭という空間で家族のためだけの親密な存在であることを家庭着によって演出し, 生活の彩り, 家族の団らんを創出した.
著者
田中 周 武藤 友和 吉田 真一 鈴川 活水
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.757-761, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
21
被引用文献数
3

〔目的〕長下肢装具(KAFO)完成から短下肢装具(AFO)へのカットダウン移行期間(カットダウン移行期間)に関連する入院時因子および影響度について検討すること.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院し,KAFOが処方された後AFOへのカットダウンを行った脳卒中片麻痺患者43人を対象とした.カットダウン移行期間に影響を及ぼす関連因子の抽出として,カットダウン移行期間と年齢,病型,半側空間無視(USN)の種類,下肢Brunnstrom Recovery Stage(下肢BRS),USN重症度,motor FIM(mFIM),cognitive FIM(cFIM)について相関分析を行った.さらに,カットダウン移行期間に関連があった項目は各因子の独立した影響度を検討するため二項ロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕カットダウン移行期間と関連を認めた項目は,USN重症度,下肢BRS,mFIM,cFIMであった.また,二項ロジスティック回帰分析の結果,USN重症度がカットダウン移行期間の独立した規定因子として抽出された.〔結語〕カットダウン移行期間の長期化に最も影響を及ぼす入院時因子は,USN重症度であることが示唆された.
著者
小林 由佳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.345-351, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

本稿ではウェルビーイングをメンタルヘルスの観点から解説する。メンタルヘルスに影響するワークエンゲージメントと仕事の資源との関係を説明するモデルとして近年注目されている「仕事の要求度-資源モデル」について解説し,ワークエンゲージメントを高める循環をつくりだすジョブクラフティングを例示やチェックリストとともに紹介する。また,コロナ禍における就業環境の変化によるメンタルヘルスへの影響や,ストレスチェック制度の最近の動向,職場単位での仕事の資源の高め方について,事例を交えて考察する。最後に,ストレス反応を増大させる循環に陥るのを防ぐためのセルフケアについても触れる。
著者
齋藤 敦子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.338-344, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

働く人にとって職場環境は重要だが,昨今,テレワークが常態化し働く場所は多様化し,マネジメントにも刷新が求められる。一方,知的生産性と身体の関係は深く,物理空間が無くなるわけではない。本稿では物理的なオフィス環境と人間関係や知識創造などのソフトが関係していることに着目し,職場環境の重要なキーワードである「ウェルビーイング」とワークプレイスについて解説する。そして,具体的な企業の事例からウェルビーイング・オフィスを俯瞰し,そのポイントを述べる。また,今後の働き方の変化を踏まえて,働く人と企業経営にとって望ましいワークプレイスとはどのようなものかを展望する。
著者
奥村 彰久
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.159-161, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
2

小児急性脳症診療ガイドラインは, エビデンスに基づいて策定された. 冒頭に診療フローチャートが提示されており, 実際の臨床の流れに沿ってガイドラインを参照できるように工夫されている. 小児急性脳症におけるエビデンスが確立している項目は多くなく, 高い推奨度を持つ項目は限られている. 特に現時点でエビデンスが確立した治療法は少ない. ガイドラインは改訂を行うことが求められるが, ガイドラインをより良いものにするには小児の急性脳症に対する研究が進展し, 学術論文として報告されることが必要である.
著者
河合 直樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.586-593, 2000-03-15

木目模様は最も代表的なテクスチャの1つであり,コンピュータグラフィクスによるソリッドテクスチャ生成技法も種々報告されている.従来の技法では木目の年輪模様の再現に注力されてきたが,年輪以外の微細組織の表現や繊維の流れに関する研究は少なく,得られる質感は十分ではなかった.本論文では樹木の内部構造に着目し,木理と呼ばれる樹木内部の繊維配向性をモデル化する.代表的な木理のパターンと一般的な木理の記述手法を示した後,レンダリング時に必要な局所的な座標変換に基づいたモデルを示す.次に微細組織の例として道管と呼ばれる鉛直な組織について,代表的なパターンのモデリング技法を示し,呈示した座標変換を作用させて表示することで,木理のモデルの妥当性を検証する.続いて微細組織の簡易的な表現として提案されている明度シフト法を,年輪構造と微細繊維組織を一元的に記述する手法として一般化し,木理による座標変換を作用させることにより,樹木構造の合理的な記述手法を提案する.最後に繊維の勾配に依存する鏡面反射モデルを導入し,木理の影響で材面に現れる光源と視点に依存する反射現象をシミュレーションする.これらの手法を導入することで,従来法よりもリアルな質感表現が可能になり,CG映像や産業デザインにおいて有用な品質高いソリッドテクスチャを生成することが可能な技法を示すことができた.
著者
市嶋 典子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.134-144, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
5

本稿では,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)によって,学習者の相互自己評価活動に対する認識を調査・分析した。分析からは,学習者らが,学習者同士が互いに行うという相互自己評価活動に対して心理的負担を抱きながらも,これらの葛藤と向き合い,評価を再解釈していくプロセスを生み出していったこと,自身の価値観が変化したことに意義を見出し,この変化を将来の日本語学習への動機付けとして位置づけるようになったことが明らかになった。一方で,このように相互自己評価活動に対して意義を感じつつも,不満も抱いていることが明らかになった。以上の分析結果を踏まえ,相互自己評価活動の意義と課題を考察した。