著者
三浦 直希
出版者
東京都立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

昨年度に引き続き、フランスの思想家エマニュエル・レヴィナスの経済倫理思想の研究を行った。レヴィナスの経済倫理は、彼自身がユダヤ人であることから、タルムードをはじめとするユダヤ教・ユダヤ思想と密接な関係を有している。この点を際立たせるために、新約聖書に依拠するカトリックの作家ポール・クローデルとの対立に注目することで、レヴィナスにおけるユダヤ的経済倫理を重点的に分析した。その結果、レヴィナスはキリスト教の愛・無償性すなわち贈与に基づく他者との関係を批判し、公正・平等性すなわち交換に基づく関係を重視していることが判明した。レヴィナスの経済倫理は、その意味では、厳正な<正義>の実現を目指すものであると言ってよい。とはいえ、彼の思想には、後年に大きな変化が生じている。かつて批判された愛や無償性が重要性を持つ概念として再登場し、その経済倫理思想全体が交換ではなくまず贈与に基づく<善>のエコノミーとして再構築される。それとともに、強い批判を受けていたはずのクローデルの経済倫理思想が再評価される。レヴィナスは、初期の反発にも関わらず、最終的にはクローデルの主張にほぼ一致する形で倫理のエコノミーについて語っている。ただし両者の経済倫理は、単に愛や贈与の無償性のみに依拠したユートピア的な思想ではなく、これを根本としつつも、交換の正義の実現をももくろむ現実的かつ実践的な思想である。以上の点を学会にて発表し、学会誌に論文を掲載した。
著者
村上 明
出版者
近畿大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

マクロファージなどの白血球によるNOの過剰産生が発がんの危険因子であるとの考えのもとに、食用植物抽出物のNO産生抑制活性スクリーニングを行った。総計48種(60試料)のメタノール抽出物を試験した結果、200μg/mLの濃度において、アボカド、コマツナ、バジルなど17種(全体の28%)に70%以上の高いNO産生抑制活性が認められた。これらの抑制活性は、NO消去ではなく、iNOS誘導系の阻害と示唆された。ついで、タイ国産のコブミカン(Citrus hystrix DC)の果実より活性物質を検索し、クマリン関連物質のbergamottinが単離できた。bergamottinはRAW264.7細胞において高いNO産生抑制活性(IC_<50>=14μM)を示し、この活性は合成iNOS阻害剤のL-NIO(IC_<50>=7.9μM)に匹敵するものであった。さらにクマリン関連物質のNO産生抑制活性に関する構造活性相関を、23種のクマリン類を用いて検討した結果、これらの活性発現には、プレニル基、あるいはゲラゲラニル基といったテルペン系側鎖が必要であり、さらにこの側鎖に水酸基などによる修飾が入ると活性は消失するという興味深い研究結果を得た。そこで、細胞内への取り込み効率を検討した結果、不活性なクマリン類はほとんど細胞内へ取り込まれず、側鎖への水溶性の賦与が活性の低減化をもたらすことが示唆された。
著者
正木 喜勝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、大正期の関西における新劇運動の実態を、「上演」および「東京との比較」という点に注目しながら調査・研究することを主眼とした。具体的には、文芸協会や築地小劇場の関西公演のほか、関西新劇の嚆矢とされる『幻影の海』の上演分析を行った。その結果、関西新劇の誕生に「宝塚」という場所が果たした大きな役割を明らかにすることができた。詳細は拙稿「宝塚と新劇(1) 宝塚のパラダイスと関西新劇の誕生」のとおりである。
著者
厳島 行雄
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

耳撃証(ear-witness)の記憶の正確さを検討するために、情動的覚醒が伴う事件等を考慮して、感情的には中立の刺激提示中における耳撃と恐怖の感情を喚起するような刺激干渉中の耳撃の正確さを比較検討した。相手の声を一週間後に6名のラインナップ(犯人が存在する)から識別するということを行った結果、恐怖という情動を喚起する操作を行った条件では、行わない条件に比較して半分以下の正識別であった。
著者
田口 晴邦 黒田 貴子 塚田 吉昭 宝谷 英貴 原口 富博 沢田 博史
出版者
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Wave Groupも含めた任意波中における船舶の挙動を推定するために必要な船体運動時系列計算コードを開発し、模型船を用いた水槽実験結果と比較した。その結果、開発した船体運動計算コードで、定傾斜が付いた状態の運動特性や減揺装置の効果等を精度よく推定できることが確認された。また、開発した船体運動時系列計算コードを用いて、Wave Groupを含む実際の波浪中を航行する船舶の危険性を実用的な観点から評価する手法を検討した。
著者
城内 文吾
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

リンパ脂質輸送とリンパ系の炎症状態に及ぼす食品成分の影響を調べ、脂質輸送と炎症反応との関係解析を試みた。その結果、酸化コレステロール摂取がリンパ液中の炎症性サイトカイン濃度を上昇させること、プテロスチルベン摂取がリンパ液中の炎症性サイトカイン濃度を低下させることを見出した。ホスファチジルコリン(PC)摂取も炎症性サイトカイン濃度を低下させ、この低下にはリンパ脂質輸送変動及びCD3-CD4+細胞の減少が関与していることが示唆された。
著者
高橋 賢
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ISDB-Tディジタルテレビ放送局は、地震や津波の緊急時に特別な信号を送信することにより、そのテレビ受信機の電源を自動的にオンにできることになっている。しかし、この機能には受信機でのビット誤りによる頻繁な警報(誤警報)を発する課題があった。本研究課題では、この自動起動信号をより確実にキャッチするための技術的方法を扱った。誤り訂正のためのパリティを自動起動信号の高信頼受信のためのみに用いる提案法は、従来法と比較して誤警報を1/1000以下にできることを明らかにした。
著者
高島 尚美 村田 洋章 北 素子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本邦におけるICU入室患者のストレス経験を明らかにすることを目的とし、12時間以上人工呼吸器管理を受けICU入室患者にICU退室前に34項目のICU Stressful Experiences Questionnaire日本語版(ICU-SEQJ)を作成し調査をした。96名のストレス経験は、8割近くが口渇を、7割近くが動きの制限、会話困難、気管チューブによる苦痛、痛みや緊張を経験していた。関連要因は、挿管時間、鎮痛鎮静剤投与量、抜管前のCRP値、痛みの訴え、および既往歴のなさ、緊急入室であった。入室患者の多くが苦痛を体験していることを看護師は推測しながら関わりニーズを充足する必要がある。
著者
廣井 孝弘 小島 秀康 海田 博司 佐々木 晶 中村 智樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国立極地研究所が南極から回収してきた隕石試料片を、そのまま非破壊の状態で可視から赤外領域の反射光の分光をすることで、それらの鉱物組成を推定する試みをした。貴重な火星や月からの隕石、そして大部分が小惑星ベスタから来ていると考えられるHED隕石、そして水や有機物を含む炭素質コンドライト隕石の合計130個余りの試料について、反射スペクトルの測定を各試料片に1点以上行った。それらのスペクトルに線形外挿・修正ガウス関数分解・主成分解析などを施すことにより、各隕石の岩石種や鉱物・化学組成などを理解することができ、はやぶさ2などの探査ミッションへの応用方法も提案できた。
著者
高橋 弘充
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、日本のX線観測衛星「すざく」と、本年度に米国から打ち上げに成功したガンマ線観測衛星Fermi(旧名GLAST)を用いて、超新星残骸(SNR)を共同観測し、世界で初めてSNRからπ^0起因のガンマ線の有無を直接的に検証することである。「すざく」衛星についてこれまでに、我々が開発した硬X線検出器(HXD)の2つの検出器(シリコンPIN半導体とGSOシンチレータ)のバックグラウンドモデルの再現精度を定量的に評価することで、SNR(RXJ1713.7-394,SN1006)のデータ解析において、SNRからの微弱なシンクロトロン放射をこれまでにない精度で測定することに貢献してきた。また今年度も従来どおりに衛星の運用に携わり、検出器の性能向上に努めた。Fermi衛星について2008年6月の打ち上げ前から、衛星の運用が行われる米国・スタンフォード線形加速器センター(SLAC)に滞在し、衛星の模擬運用に参加した。この経験を活かし、打ち上げ後もSLACで実際の運用に携わり、さらに帰国後は日本から運用に参加するだけでなく、日本メンバーに運用のノウハウを伝え、検出器チーム全体で日米欧3局24時間体制での衛星運用を維持することに尽力した。初期観測データの解析においては、LAT検出器の較正を行いながらいち早く結果を出すため、銀河系内でもっとも明るいガンマ線天体であるパルサーを扱っている。とくにFermi最初の観測論文(CTA1パルサー)においては、Fermiのデータを解析するだけでなく、私のこれまでのX線観測の経験を活かし、「あすか」やXMM-NewtonなどのX線衛星のデータ解析も行った。これにより、ガンマ線で発見されたパルス周期がX線で検出されていないことを確認することができた。SNRはパルサーよりも暗いため、現在は日々のサーベイ観測によって得られたデータを蓄積している段階である。
著者
宮崎 康行
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,薄膜やケーブルなどのゴサマー構造と,それを支持する宇宙機本体等から成るゴサマー多体構造物の変形と運動について,その特徴を理論・数値シミュレーション・地上実験により明らかにした.そして,その理論・数値解析手法をJAXAの小型実証機IKAROSの設計・開発へ適用し,IKAROSの軌道上データとの比較により,その妥当性を宇宙実証した.最後に,ゴサマー構造物の実用化に向けた新しい解析手法を提案した.
著者
押川 文子 日下部 達哉 佐々木 宏 牛尾 直行 伊藤 高弘 南出 和余 村山 真弓 黒崎 卓 柳澤 悠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年南アジア諸国では、多様な供給主体による教育の普及がみられる。本プロジェクトでは現地調査と統計分析に基づき、多様な教育供給が広範な人々の教育への期待を活性化させているものの、教育格差はむしろ再生産される傾向があり、雇用市場の制約のもとでとくに中等教育~非エリート高等教育のモビリティ拡大機能は限定的であること、教育改革では市場原理の導入とともに格差是正や子どもの権利が重要課題となっていること、を明らかにした。
著者
家田 仁 MALEE Uabharadorn
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は,特にタイを対象とし,日本側受入研究者と協力しながら,タイの社会的,経済的,文化的背景ならびに交通に関するデータを把握・分析し,日本との比較を通じて,持続的発展に向けた有効的かつ現実的な交通システムならびに交通政策の提案を目的としたものである.研究の実施に当たっては,日本の交通整備状況ならびにその問題点を把握するための調査を実施するとともに,タイの交通システムに関するデータ収集,交通システム上の問題整理を行った.その結果,以下の点が明らかとなった.・タイは,日本と非常に類似した交通インフラ整備をこれまで行ってきているとともに,交通機関選択の状況等でも日本とかなり類似する点が見られること・タイでは,これまで長期にわたって,総合的な交通政策を目指していたにもかかわらず結局部分的な交通施策の実施に終始してきたこと・今後,タイでは,より実質的な総合交通政策を実施するための方策を検討する必要があること・総合的な交通政策実施のためには,以下の点が重要であること.(1)交通システムの安全性向上,(2)交通から発生する環境負荷軽減,(3)インターモーダルを意識した交通効率性の向上,(4)交通システムにおける競争原理の導入,(5)地域および国土レベルの視点からみた広域交通インフラの整備,(6)旅客,貨物双方を意識した先端的な交通技術の導入,(7)交通行政の効率化,(8)交通サービスの料金システムの改善,(9)タイがアジア圏の中心的な存在となるための国際的なネットワーク整備,(10)効果的な土地利用の誘導に資する交通政策.
著者
岩瀬 忠行
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

哺乳類の腸内における窒素固定細菌の役割を純粋な形で検討するため、まず、窒素固定細菌を有するマウスモデルを構築した。また、国内メーカーと共同で、15Nガス曝露実験用インキュベーターを設計・開発を行った。本インキュベータにて3日間飼育した窒素固定細菌を保有するマウスと保有しないマウスの臓器(腸内容物、腸管、肝臓、体毛)を回収し、元素分析/同位体比質量分析計を用いて、窒素同位体比を測定した。その結果、腸内容物、腸管、そして肝臓において統計学的に有意な窒素同位体比の上昇が認められた。一方、体毛においてはそのような上昇は認められなかった。
著者
山本 晴彦 荊木 康臣 高山 成 吉越 恆
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

① 人工衛星データと現地踏査等による参詣道の被害解明では、参詣道の被害解明を実施した。② 気象観測モニタリングポイントの設置・運用によるリアルタイム気象解析では、リアルタイム気象解析を行い、多雨地域における降水特性を明らかにした。③ 長期間・高密度データセットの作成による豪雨解析では、雨量観測データの入力を行い、1929年からの雨量データセットを完成させ、紀伊山地で発生した豪雨の解析を試みた。④ 林床画像や分光測定による世界遺産「参詣道」の劣化、被害回復の調査・解析では、現地踏査による参詣道の遺産劣化調査・解析に基づき、和歌山県を中心に現地踏査による遺産被害回復の調査を実施した。
著者
愛甲 正 小櫃 邦夫 宮嶋 公夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

実Finsler幾何学は多様体の点でパラメータ付けされたHesse多様体の族の微分幾何学であり,複素Finsler幾何学は多様体の点でパラメータ付けされたKahler多様体の滑らかな族の微分幾何学であり,本研究では,特に各ファイバー上で計量と接続を積分して得られる底空間の計量と接続の役割が大きい.本研究では,実Finsler幾何学では共形的理論を研究し,特に,共形的平坦性の新しい特徴付けを得た.また,複素Finsler幾何学の場合,Rizza-negativityの概念を導入し,正則ベクトル束のnegaivityやamplenessをRizza計量の曲率を用いて議論した.
著者
久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高齢者の睡眠環境に関するアンケート.調査を行い、高齢者が日常的におかれている睡眠環境・寝室の空調等と睡眠の実態を把握し、比較対照として、青年・中年群との年代的な比較考察を行った。調査内容は、(1)日常生活行動(2)睡眠状況、(3)寝室実態、(4)寝具状況とし、回収率は84%、有効回収率は83%で、20歳代から80歳代までの男女の冬期627票、夏期1447票の有効回答を得た。その結果、年齢により全体に朝型の者が増加するが、中途覚醒の増加などの睡眠様態も変化していることがわかった。また高齢であるほど、女性の方が寝床内暖房を使用し、寝室を暖房しなくても寝床内が暖かいと評価しており、満足感も高かった。しかし、中途覚醒等への影響は明らかでなく、必ずしも暖めていることが、睡眠に好影響を与えているとは言えなかった。中年群の方が、仕事や家事育児により睡眠の充足感が得られておらず、余裕のない生活が睡眠にまで影響を及ぼしていることが伺われた。実際の住宅での温熱環境および睡眠時の寝床気候の実測調査を行い、アンケート調査や人工気候室実験や実測調査の結果と比較検討し、睡眠度を推定した。その結果、寝床内温度は、足部皮膚温の上昇にともない上昇し、睡眠中は33℃〜36℃程度である。電気毛布を使用している者は、体動や心拍数より寝付きは速いと判断されるが、睡眠中に寝床内温度が36℃を越え、体動が増えて腕等を布団から出して寝床内温度を調節しているのが観察された。また、靴下を着用している被験者も、足部の皮膚温が他の部位より高い状況が観察された。
著者
谷口 晴香
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では落葉樹林帯に属し冬季に積雪がある青森県下北半島(以下、下北)と照葉樹林帯に属す鹿児島県屋久島低地(以下、屋久島)に生息するニホンザルを比較し、環境に呼応した離乳の様式が存在するかを明らかにすることを目的とした。採用2年目は、以下①②③を行った。①夏季に下北において個体数調査およびニホンザルの食物の硬度計測を行った。②下北と屋久島において、食物の物理的性質(大きさ、操作数、高さ、かたさ)が母子の食物利用の差に与える影響を、一般化線形混合モデルを用い総合的に分析した。その結果、母親と比較しアカンポウは、1口で食べられる食物、抽作を伴わない食物、低い位置にある食物に採食時間を費やしていた。両地城ともに2000J/㎡以上. のかたさの品目に関しては、アカンボウは母親と比較しあまり採食しない傾向にあった。環境条件が異なっていても身体能力が未熟なアカンボウは、共通し利用しやすい食物に採食時間を費やす傾向にあった。③母子の別れに関して分析を行った。下北では採食場面での母子の別れが多く観察され、アカンボウの母離れのきっかけとして、「食物」が大きく関与していた。一方で、屋久島では、採食が母子の別れのきっかけになることもあったが、他のアカンボウとの合流をきっかけに母親と別れるという社会的な要因も影響していた。屋久島は、冬季を通し、アカンボウ同士の交流が多くみられ、また採食場面においても母親より食物利用が類似している他のアカンボウと共食することが多かった。この違いは、おそらく屋久島のアカンボウが下北より栄養や体温維持の面で母親に依存する必要が少ないためと考えられる。生息環境により離乳の様式は異なっていた。分析②と③の一部を、ニホンザル研究セミナー、および第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会において発表を行った。また、②の内容の一部を、国際学術雑誌に現在投稿中である。
著者
金谷 健一 菅谷 保之
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

画像データからの高精度な幾何学的な推定(直線や楕円の当てはめ,複数画像間の対応の関係式の計算)には従来から最尤推定が用いられていたが,それより精度が高い「超精度くりこみ法」を導出し,さまざまな実際的な問題に応用した.同時に最尤推定解を補正する「超精度補正」の精密化を行い,同程度の精度が達成できることを実証した.また未知数間に拘束条件がある場合にも最適な推定ができる「拡張 FNS 法」の新しい定式化を示し,東日本大地震の GPS による地盤変形データの解析に適用した
著者
酒井 浩
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、ラフ集合理論の概念に基づくデータ解析処理ツールを構築し、アンケートデータ解析への応用を進めた。数値表データに対する多変量解析、特に回帰分析では回帰式により今後の動向を予測する。そして、平均や分散を定義できない数値以外の離散値表データでは回帰式に代わる手法が望まれる。我々は、興味深い含意式(一般にはルールとよばれることが多い)によって離散値表データから今後の動向を予測できると考え、実際の処理ツールの実現を進めた。実際の支援ツールはC言語とProlog言語を利用して記述しており、(A)集合の定義可能性判定ツール、(B)可能同値関係抽出ツール、(C)属性間における依存性判定ツール、(D)被覆度や正確度計算ツール、(E)ルール抽出ツールなどから出発し、種々のプログラムを実現した。また、授業評価アンケートからの興味深い含意式の取り出しも行った。学生による授業の5段階評価では含意式:『教員に好感をもてた⇒5段階評価値は高い』の傾向が認められた。授業における教員の印象は授業の5段階評価に強く影響すると考えられる。本研究の成果は、ラフ集合の概念に基づいて計算機上で処理を実現するための種々のアルゴリズムを提案したこと、さらに提案したアルゴリズムによるプログラム群を作成し、データ解析処理ツールを構築したことである。回帰式と含意式を相互に利用する新たな表データ解析法は今後重要な研究分野になると考えている。