著者
杉村 朋子 鯵坂 和彦 大田 大樹 田中 潤一 喜多村 泰輔 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.213-218, 2011-05-15 (Released:2011-07-23)
参考文献数
11

症例は43歳の女性。30歳時に神経性食思不振症と診断され,精神科への入退院を繰り返していた。今回,自宅にて意識レベルが低下したため,救急車で近医へ搬送された。脱水と低栄養状態であり,低血圧,低血糖に対して高カロリー輸液による水分栄養補給が開始された。しかし,多臓器不全を呈したため,第13病日に当センターへ転院となった。臨床経過から,本患者は慢性の半飢餓状態の代謝に適合しており,低リン血症を補正しないまま糖負荷を行ったことによるrefeeding syndromeと診断した。血清リン濃度(IP)0.5mg/dlと著明な低リン血症を呈していたため,直ちにリンの補充を行い,輸液は低カロリーから開始した。低リン血症改善後,ショックから離脱し多臓器不全も改善傾向を示した。しかし,第27病日に敗血症性ショックを合併し呼吸不全の増悪から,第60病日に死亡退院となった。近年,救急・集中治療の領域においても栄養管理の重要性が認識されているものの,依然としてrefeeding syndromeの存在は広く認知されているとは言い難い。神経性食思不振症患者の栄養管理に際しては,refeeding syndromeを念頭に置き,微量元素を含めた低カロリーから開始する栄養補給により臓器不全を回避しなければならない。
著者
ルソー 著
出版者
河出書房
巻号頁・発行日
vol.第1, 1949
著者
綿谷雪 著
出版者
秋田書店
巻号頁・発行日
vol.続, 1972
著者
角田 鉄人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.414-415, 2009-09-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

光延反応は,リン原子の持つ高い酸素親和性を巧みに利用し,活性水素を持つ広い意味での酸性化合物(HA)とアルコールとを脱水的に縮合させる反応である。利用できるHAとしてカルボン酸,フェノールなどの酸素求核剤,イミドを代表とする窒素求核剤,さらにはイオウ求核剤や炭素求核剤もあげられる。光延反応は,反応の一般性,信頼性,応用性の広さ故,今日の有機合成化学を支える重要な素反応となり,多くの有機化学者がその恩恵に浴している。
著者
日本集中治療医学会看護師将来計画委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.477-486, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
9

要約:安全で質の高い医療を提供するプロセスに,認定看護師や専門看護師,特定行為研修修了者の活動が寄与していると考えるが,具体的な活動内容は明らかでない。そこで,集中治療部門に勤務する認定看護師,専門看護師の活動内容,特定行為研修修了者の取得行為についてweb調査を実施した。分析対象は265名であった。認定看護師,専門看護師の役割発揮においては「過大侵襲を受け重篤な状態にある患者の回復促進のための包括的ケア」の実践,「対応が困難な重症患者の家族ケアに関する相談」,「重篤な患者の回復に向けたケアに関する多職種間の調整」,「患者の意思確認が困難な状況での家族の代理意思決定における倫理調整」などの活動が明らかになった。特定行為研修修了者は35名で,呼吸器関連3区分と「循環動態に係る薬剤投与関連」,栄養・水分管理に係る2区分の取得が多かった。203名が,呼吸ケアサポートチーム,院内迅速対応システムなどの多職種チーム活動へ参画していた。
著者
村上 孝作 吉藤 元 小林 志緒 川端 大介 田中 真生 臼井 崇 藤井 隆夫 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第33回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-10-18)

【目的】 抗Ku抗体は日本人の強皮症(SSc)+多発性筋炎(PM)の重複症候群に見出される自己抗体として報告された.しかし,米国ではSLEに最も多く検出されると報告され,人種ごとの遺伝的背景の違いによると考察されてきた.そこで我々は抗Ku抗体陽性の自験例について臨床的特徴を検討した.【方法】 2001年から2004年までに当院で診療した膠原病とその疑い例1185例の保存血清についてRNA免疫沈降法を施行し,高分子核酸スメアを沈降した血清をさらに35S‐メチオニン標識HeLa細胞を用いた蛋白免疫沈降法を行って抗Ku抗体を同定した.【結果】 70kDa / 80kDa蛋白へテロ2量体を免疫沈降する抗Ku抗体は6例(0.51%)に陽性であり,SLEとPMの重複例2例,SLE 2例(1例はCK値上昇あり),PM 1例,未分類膠原病(レイノー現象・手指硬化症・クリオグロブリン血症・CK値上昇)1例であった.抗Ku抗体陽性6例中,PMないし筋病変は5例に,SLEないしSLE様症状は4例に,両者の重複は3例に認められた.また,多発関節炎が5例に,レイノー現象が4例に,手指硬化などの強皮症様症状が2例に認められた.【結語】 少数例の解析ではあるが,抗Ku抗体は筋炎重複症候群と関連し,特徴的な臨床像を示す可能性が示唆された.
著者
長野 峻也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.129-132, 2005 (Released:2007-10-19)
被引用文献数
1

本論は,基本的に「武術文化に対して全般的に認識している専門家は皆無に等しい」という認識から出発し,更に武術に関して何の予備知識もない読者を対象に論じるに当たり,「武術に対して巷間に広まった誤った情報」を正し,「武術が現代武道へ統合再編される中で失われたもの」を論じ,「日本古武術の失われた理合(交叉法)」を紹介し,「武術の要である歩法」を論じています.本来,武術は身体訓練を通して意味を理解していかなければ本質的な理解は不可能であり,文章のみで身体操作のコツを書き並べても誤解されるのがオチと考え,参考として,全くの素人が身体操作のコツを知れば極意の技も容易に再現できることを実証すべく写真も添えました.
著者
森 恵莉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.557-562, 2020-07-20 (Released:2020-08-06)
参考文献数
47

多様なにおい分子を受容する嗅覚受容の仕組みが, 徐々に解明されてきている. 嗅覚障害の臨床研究においても, 着実に広がりと進歩を見せている. ヒトが “におい” として感知できる物質は, 濃度や組み合わせ, 温度や湿度などの環境によってもにおい方が全く異なる. 約400種類の嗅覚受容体により, におい物質の交通整理がなされ, 嗅球に情報が送られるシステムは, まだ未解明な部分も多くある. においを感じることができなくなる嗅覚障害は, その先の豊かな生活や人生の選択肢を奪ってしまう. 嗅覚障害の主な原因疾患として慢性副鼻腔炎が挙げられるが, 感冒に伴う嗅覚障害や, 原因が特定できない特発性嗅覚障害も比較的多い. 神経変性疾患との関連も最近は注目されている. 難病指定された好酸球性副鼻腔炎は特に嗅覚障害が重度であるが, ほかの嗅覚障害に比して治療による効果が最も明瞭であり, 治療成績の向上が期待できる. 感冒に伴う嗅覚障害の多くは自然軽快する. 回復が長期に渡る場合は, 嗅覚刺激療法や漢方薬による治療効果も今後は期待されている. 原因が特定できない高度嗅覚障害については, 脳腫瘍を含めた中枢性疾患が存在していることもあり, 頭蓋内病変鑑別のため, 頭部 MRI や神経内科依頼も念頭に置くべきであると考える. また, 職業歴や趣向などから有機溶媒や化学薬品などの使用歴有無の聴取は, 重要な問診事項であると考える.
著者
北台 紀夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.91-105, 2019-09-25 (Released:2019-09-25)
参考文献数
116

How and where did life on Earth originate? Did the life’s origin happen from a combination of a huge number of geological events that were specially and temporally separated from each other, or did it occur within a local environment through a series of chemical processes that were compatible with the conditions prevailing within the setting? One of the key sites to resolve these questions is deep-sea hydrothermal systems, where the emergence of protometabolism through sulfides-promoted abiotic CO2 fixation has long been suggested to be the most plausible initial process toward the origin of life. However, geochemical mechanisms to harness the reductive power provided by hydrothermal systems remain to be elucidated. Here, this review introduces “geoelectrochemistry” as a general potent means to realize protometabolism at the vent–seawater interface in early ocean hydrothermal systems. Based on the relevant field, laboratory, and theoretical investigations of these systems, together with the latest astronomical observations of extraterrestrial planets/satellites, the fundamental nature of driver for life are discussed as a base to consider the ubiquity and similarity of life in Universe.
著者
吉屋 一美 佐藤 友彦 大森 聡一 丸山 茂徳
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.4, pp.625-647, 2019-08-25 (Released:2019-09-20)
参考文献数
77
被引用文献数
4 4

The Hadean surface was mainly covered by three kinds of rock: komatiite, KREEP basalt, and anorthosite, which were remarkably different from those on the modern Earth. Water–rock interactions between these rocks and water provided a highly reducing environment and formed secondary minerals on the rock surface that are important for producing metallo-enzymes for the emergence of primordial life. Previous studies suggest a correlation with active sites of metallo-enzymes and sulfide minerals based on an affinity with their structure, but they do not discuss the origins of metallic elements contained in these minerals, which are critical to understand where primordial life was born. Secondary minerals formed through water–rock interactions of komatiite in a nuclear geyser system are investigated, followed by a discussion of the relationship between active sites of metallo-enzymes and secondary minerals. Instead of komatiite, we used serpentinite collected from Hakuba Happo area, Nagano Prefecture in central-north Japan, which is thought to be one of the Hadean modern analogues for the birthplace of life. Several minor minerals were found, including magnetite, chromite, pyrite, and pentlandite, in addition to the major serpentine minerals. Pentlandite is not been mentioned in previous studies as a candidate for supplying important metallic elements to form metallo-enzymes in previous studies. It also acts as a catalyst for hydrogen generation, because it closely resembles the structural features of an active site of hydrogenases. Nickel-iron sulfide, pentlandite, is considered to be one of the important minerals for the origin of life. In addition, what kinds of minor mineral would be obtained from water–rock interactions of these rocks is estimated using a thermo-dynamic calculation. KREEP basalt contains large amounts of iron, and it could be useful for producing metallo-enzymes, especially for ferredoxins, an electron transfer enzymes associated with the emergence of primordial life.
著者
小野 明日香 石田 安理紗 上原 誉志夫
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.402-411, 2019 (Released:2019-12-03)
著者
吉田 省子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.109-124, 2021-05-20 (Released:2022-05-21)
参考文献数
51

中島貴子は2004 年に,食品安全委員会のBSEリスクコミュニケーションを検討し,行政や専門家と消費者との間にディスコミュニケーションが存在すると指摘し,その要因を論じた.本稿の目的は二つある.一つは,2004 年と2013 年のBSEリスクコミュニケーションを検討し,別の要因を指摘することである(3 ~4 章).それは,食品安全委員会と憂慮する市民―消費者との間に存在する,リスクコミュニケーションへの期待あるいは解釈の差異である(3 章).その差異は,日本の枠組みでは明示的ではない2 つの概念の不在に関連づけられる.IRGCのリスクガバナンスの枠組みが含む「懸念評価」とコーデックスの「その他の正当な要因(OLFs)」である(4 章). この状況下で消費者団体がリスクコミュニケーションの問題に直面する時,消費者団体は,あたかも自粛するかのように口を閉じてしまう可能性がある.この沈黙という状態を“scienceplanation”という概念を用いて示すのが,第二の目的である(5 章).6 章では,打開策として,ボトムアップでの物語作りの可能性が述べられる.
著者
杉原 桂太 伊藤 俊
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.127-141, 2021-05-20 (Released:2022-05-21)
参考文献数
16

本稿は,日本における自動運転車の社会実装を議論するために行われたワークショップを提示することを目的とする.このワークショップでは,最新技術である自動運転車の社会実装について広い視点を参加者に提示するために,構築的テクノロジー・アセスメントが用いられた. 第一に,上記の目的を明確にし,本研究のフレームワークを明らかにする.第二に,米国と欧州,日本における自動運転車を取り巻く社会状況を提示する.ここでは,これらの地域におけるこの技術についての社会受容に注目する.その上で,社会実装を議論する場の必要性を指摘する.第三に,自動運転車の社会的な実装を議論するアプローチとして構築的テクノロジー・アセスメントを提示する.そのオランダにおける起源と特徴に着目する.第四に,ワークショップの詳細を示す.ワークショップでは三件の基調講演が行われている.さらに,日本における自動運転車の実装についての議論を促進するために三つのケース・スタディが用いられた.第五に,ワークショップの成果について議論する.最後に,全体をまとめ,今後の研究の必要性について指摘する.
著者
八巻 知香子 高山 智子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.128-136, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

国立がん研究センターがん対策情報センターは「がん対策推進アクションプラン2005」を受けて設立された組織である.2008 年より「患者・市民パネル」を運営し,患者・市民の視点を取り入れた情報提供活動に努めてきた.2018 年度に初めて,日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)との共催により,臨床研究への患者・市民参画のあり方について検討する場を持った.情報発信機関への患者・市民参画については,患者・市民パネルの活動として一定の形を形成してきた.一方で,研究の立案から評価に至る全プロセスへの患者・市民の参画のあり方については検討の途上にあり,今後の医療や研究で求められる役割を考慮しながら,基本理念である「正しい情報に基づいて,国民のためのがん対策推進を支援する」ことを堅持しながら,がん対策情報センターとしての運営方針を確立していく必要があると考えられる.