著者
齋藤 武馬 茂田 良光 上田 恵介
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.45-61, 2014 (Released:2015-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

メボソムシクイPhylloscopus borealis (Blasius 1858) は,これまで多くの研究者によって複数の亜種を含む多形種とされてきたが,近年分類が見直され,3つの独立種に分割された.すなわち,コムシクイPhylloscoups borealis,オオムシクイ P. examinandus,メボソムシクイ P. xanthodryasである.この3種は,DNAの配列と音声形質には明瞭な違いがあるが,形態形質についてはその差異が僅かなため,野外においてはしばしば種の識別が困難な場合が多い.これまで,繁殖雄については著者らによって開発された判別分析を用いた判別法があったが,雌を含めた種の判別方法は確立されていなかった.本論文では計測値を用いて,メボソムシクイ上種3種を雌雄にかかわらず識別する方法を解説する.この識別方法が,野外,特に標識調査においてメボソムシクイ上種の識別マニュアルとして役に立つことを願う.
著者
木村 成竹 泉 聡志 酒井 信介
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.734, pp.1105-1110, 2007-10-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

A spring washer is widely used as a method for preventing loosening. However, experimental results presented by Sakai and Yamamoto et al., show that the performance of a spring washer as a loosening prevention mechanism is at best equal to that of a washer-less joint, if not worse. In this paper we analyzed loosening under shear loading and as a result were able to explain the mechanism that accelerates loosening in the framework of the three-dimensional finite element method (FEM). A spring washer causes non-uniformity of contact pressure at the washer interfaces, because of its asymmetric shape. When a bolted joint with a spring washer is subjected to shear loading, sticking area on the contact surfaces of the spring washer is limited to two corner points before the bearing surface undergoes gross slip. One of these points is on the upper surface of the spring washer and the other is on the lower surface. In this situation the nut rotation around these sticking points results in drastic loosening. We also conducted comparative simulation with Sakai's experimental results. Compared with experimental results, the bolted joint with the spring washer is easy to loosen according to the simulation results. It is believed that the difference comes from the spring washer's edge cutting into the contact surface of the nut, something not included in this simulation.
著者
松本 健佑
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.106, 2022 (Released:2022-03-28)

本研究の目的は,地方選挙が同時に行われると国政選挙の投票率が上がるのかを検討することである.2004~2013年の参議院選挙が地方選挙と同時に行われた際にどの程度投票率が上昇したのか,差の差法によって分析した.分析の結果は以下の3点にまとめられる.第1に,地方選挙が同じ日に行われると平均で6.65ポイント参議院選挙の投票率が上がる.第2に,都道府県レベルの選挙よりも市区町村レベルの選挙が同時に行われたときの方が参議院選挙の投票率が大きく上がる.第3に,市区町村レベルの選挙については,首長選挙よりも議会選挙が同時に行われたときの方が参議院選挙の投票率が大きく上がる.また,同日選挙の効果は地域によって異なるのかについても分析した.その結果,市区町村レベルの選挙が同時に行われる場合は,農村的な地域であるほど参議院選挙の投票率が上がることがわかった.
著者
鈴木 幹雄
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.p40-48, 1986-01
著者
篠宮 紗和子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.193-214, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本研究は,LD(学習障害)の文部省定義(1999年)の作成過程において「中枢神経系の機能障害」という生物学的原因論がどのように採用されたのかについて,文部省定義に関する行政資料と回顧文書から明らかにした。 本研究の社会学的関心は,病の原因論が選択される過程で,生物医学モデルとその他のモデルがどのように並存するのかというものである。先行研究では,LDは医療化(=生物医学モデルの浸透)の事例として研究されてきた。しかし,当時の医学研究ではLDの生物医学的原因の有無を確認できたのはLD児の3割であったほか,治療法も未確立であった。また,LDは当時教育概念と言われており,医学からはある程度独立した概念であった。LDが必ずしも生物医学モデルによって把握できなかったという事実を踏まえてLDという現象を説明するには,単に生物医学モデルの浸透の事例としてではなく,病を捉えるモデルが多様化するなかでその概念や原因論が争われた事例として分析を行う必要がある。 分析の結果,文部省の議論では生物学的原因論を明記するアメリカ案と障害の社会モデルに基づいたイギリス案が検討されたが,①LDが通常の教育では指導できない存在であることを強調でき,②新たに増加する障害児の数が比較的少なく現場の混乱が少ないという利点から,アメリカ案が選択されたことがわかった。当時の社会・制度的状況が考慮された結果,イギリス案は適切ではないと判断されたのである。
著者
牧野 良成
出版者
日本女性学研究会
雑誌
女性学年報 (ISSN:03895203)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.41-62, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
57

フェミニズムの歴史が語られるとき、〈波wave〉という概念に頼った区分の方法がしばしば用いられる。典型的には、1960年代なかばから70年代初頭にかけて運動が高まりをみせた時期が、19世紀なかばから20世紀初頭にかけての〈第一波〉に次ぐ〈第二波second wave〉と捉えられる。遅くとも1960年代アメリカにさかのぼるこうした用法については、〈第三波〉なる自称が現われた90年代以降の英語圏では、批判的な検討が始まっている。同時代の運動の昂揚とともに運動史への関心もまた高まる現在、日本語圏においても〈波〉概念が帯びる文脈性を踏まえたうえで歴史記述の方向性を探る必要は増していると思われる。そこで本稿では、1970年代以降のフェミニズムの歴史が語られるとき、日本語圏では〈波〉という区分がいかにして用いられてきたかを検証する。注目すべきは、70年代にはアメリカなど諸外国の動向を紹介する文脈で用いられていた〈波〉概念が、80年代なかばには日本語圏の動向をも指し示すものへと転じたことである。ここからは、女性学‐フェミニズムの観点を打ち立てるべく奮闘した者たちが、地域や争点を異にする同時代の運動や先行する運動をにらみながら選び取った、自己呈示と戦略とでも言うべきものが読み取れる。
著者
伊藤 裕子 相良 順子 池田 政子 川浦 康至
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.276-281, 2003-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
27
被引用文献数
32 22

In this study, a subjective well-being scale was developed, and its reliability and validity evaluated. The Subjective Well-Being Scale (SWBS) had twelve items which covered four domains. It was administered to 1005 adults and 520 college students. Results indicated that for the students, college life satisfaction and self-esteem had positive correlations with SWBS score. For the adults, marital satisfaction, workplace satisfaction, and household income satisfaction had positive correlations with the score. These findings showed considerable constructive validity for SWBS. In addition, internal consistency was sufficiently high, indicating the measure's high reliability. SWBS may be a simple but reliable and valid measure, and it is useful for examining subjective well-being of both adults and college students.
著者
山本 康友
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.49-53, 2014-06-25 (Released:2017-01-23)
参考文献数
10
著者
崔 銀姫
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.93-108, 2012-12-31 (Released:2017-02-04)

本稿では,1950年代の日本における「観光アイヌ」の誕生をめぐって全国的な流行と社会的なブームに至るまでの歴史を,近代後半からおよそ60年間(1899年の「北海道旧土人保護法の制定」〜1959年の『コタンの人たち』)の時代における「観光アイヌとは何か」の問題を中心に,単なる「差別」と「同化」の問題に帰結させるのではなく,20世紀初期から半ばのメディアの空間の成立と変容をメディア文化論の視点から鳥瞰的に検討することで,「覧(み)せる/観(み)られる」といった身体を媒体にした経験のなかに隠れていた歴史社会的意味とその変容を考える。考察の結果,第1期の時代(1899年〜1926年)において,アイヌにとってはそうした博覧会の主催者たちの欲望への理解には至らず,「観られる」アイヌの身体の方向性は異なったものであった。その後,第2期の時代(1927年〜1945年)になるとアイヌの大きな変化としては,「民族意識の高揚」とアイヌ自らが各種の著作物を出版したことであった。その後の第3期(1946年〜1959年)の戦争が終わってから1959年までの特徴は,「観光の介入」による変化があった。「観光アイヌ」とは,さまざまなファクターが相まった60年間のなかで「観られる」アイヌとして風景化されていたといえる。