著者
髙橋 徹也 近江 晃樹 豊島 拓 齋藤 博樹 桐林 伸幸 金子 一善 菅原 重生 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.734-740, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
8

患者は30歳代女性. 神経性食思不振症に伴うるい痩のため, 当院精神科に栄養管理目的に入院中であった. 入院後, 血圧の低下と肺野のうっ血を認めたため当科紹介となった. BNP値が3045pg/mLと上昇し, 低リン血症をはじめとした高度な電解質異常を認めた. 心電図では陰性T波が出現し, 心エコーではたこつぼ心筋症様の左室壁運動異常を認めた. うっ血性心不全として少量のカテコラミンおよび利尿薬を投与し, 致死性不整脈に注意しながら全身管理に努めた. また, 電解質を補正しながら緩徐に投与カロリーの増量を行った. その後, 電解質は補正され, 左室壁運動および心不全の改善を認めた. 低栄養状態にある患者の精神的ストレスや低血糖・疼痛による身体的ストレス, 低リン血症などの電解質異常が, たこつぼ心筋症とRefeeding症候群に伴う心不全の発症に関与している可能性が示唆された.
著者
浅野 敏之 高橋 忍 甲斐 信治
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.S07, pp.45-56, 2020 (Released:2021-06-30)
参考文献数
22

港湾が災害により機能不全を生じても,緊急物資等の最低限の輸送を確保し,許容される期間内に重要な港湾機能を逐次再開させるための港湾BCPが,重要港湾を中心として策定されている。しかし自然外力としては主に地震・津波を対象としており,火山噴火災害についての港湾BCPはほとんど検討されていない。本研究は,将来想定される桜島大規模噴火災害時に,鹿児島湾域に降下する火砕物の堆積量と質量換算値を風向・風速を条件として定量的に評価し,発災後の航路啓開に必要な揚収量と啓開作業期間を試算することによって,火山災害時の港湾BCP 策定に資する知見を得ることを目的としたものである。
著者
福島 悠介 山崎 俊彦 相澤 清晴
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.J255-J261, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿では,テレビドラマを対象とし,放送局や時間帯といった基本的な情報に加え,出演する役者や関わったスタッフ,そして役者の話題性を用いた視聴率の予測を行う.ドラマの映像や音声は用いず,放送前に得られる情報のみから視聴率を予測すること,そして視聴率に影響を与える要因を明らかにすることが目的である.我々の作成した678本のドラマからなるデータセットに対して,サポートベクター回帰とランダムフォレストの二つのモデルを適用し,初回視聴率の予測を行った.実際の視聴率と予測した視聴率との相関はr=0.843と高い値,平均絶対誤差は1.93%と小さいことを確認した.また,ドラマに関わる各要素のうち,特に視聴率に強く影響する要因とその影響の度合いを明らかにすると共に,本手法がうまく働く場合と働かない場合に関して具体的なドラマ名を挙げた考察を行った.
著者
五十嵐 保 中村 元
出版者
日本流体力学会
雑誌
ながれ : 日本流体力学会誌 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.195-203, 2005-04-25
被引用文献数
3

清涼飲料水等の缶は適量の飲料水があれば傾き角46°&acd;53°で斜めに立つ.缶底部の外周に深い絞りがあり, 2点支持となりバランスする.なお, 缶が満タンでも空でも缶は倒れる.本報告では, この缶が斜めに立つ安定解析を行った.缶の形状は複雑なので, 簡単な形状の有限長円筒にモデル化した.缶の直径d, 高さhと重さmおよび缶の重心高さh_Gと傾斜角Φを与えた.缶が斜めに立つための条件式と飲料水の最小容積V_<min>および最大容積V_<max>を解析より求め, 上述の変数で記述した.各種缶の解析結果は実験値とよく致した.
著者
海老田 大五朗
出版者
新潟青陵学会
雑誌
新潟青陵学会誌 (ISSN:1883759X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.11-21, 2021-09

本研究の目的は、「認知症鉄道事故裁判」についての論文や資料を分析することで、この裁判における社会福祉的含意を引き出すこと、および本裁判で問題になったいくつかの記述を検討することである。本研究では、被告支援ネットワークの形成、「リスクの社会化」をめぐる議論、司法と行政の関係、認知症患者が起こした事故を「加害」と記述することへの違和感を考察した。被告支援ネットワークの形成には高齢者福祉や精神保健福祉行政の理念が深く関係していた。また、最高裁判決後、「リスクの社会化」についての議論が盛んになされた。最後に、本裁判と強く関係する「加害」や「徘徊」という記述の不適切性を指摘した。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.35-52, 2006

Lee(1977)は恋愛の色彩理論を提唱し, 松井ら(1990)はそれに基づいた恋愛傾向測定尺度の日本語版を作成しているが, 本研究では, より簡便で回答しやすい尺度の作成を試み, その妥当性および信頼性を検討するとともに, 他の特性などとの関連性や, 男女や恋人の有無によって, どのような恋愛傾向の違いがみられるかを調べることを目的とした。大学生および専門学校生466名(男子247名, 女子217名, 不明2名)を対象に, この尺度を含む質問紙調査を実施し, 分析を行ったところ, 尺度には充分な妥当性や信頼性は認められなかったが, さまざまな恋愛傾向を測定しうるものであることが確認された。また, ストルゲを除く尺度は協調的なパーソナリティ特性との問に有意な相関関係がみられた。さらに, 恋愛傾向の男女差や恋人の有無による差を調べたところ, 男子はアガペ(献身的な愛)やエロス(耽美的な愛)が高いのに対し, 女子はプラグマ(実利的な愛)が高く, また, 恋人がいる群はストルゲ(友愛的な愛)が低く, 恋人がいない群ではマニアとエロスが低く, 片想い群ではアガペが高いなどの結果が得られた。
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.35, pp.55-80, 2009-02-27

劇中に登場する独武者の素性を解明する作業を通して、能《大江山》が酒呑童子諸本の中でも香取本「大江山絵詞」に拠って作られていることを確認し、その独武者が能《土蜘蛛》にも登場することから、能の世界で頼光物として連作されたことを考証した。さらに、「大江山絵訶」絵巻は室町将軍のもとで作成され、その周辺に伺候していた観世座の者によって《大江山》が作劇された可能性について考察した。By clarifying Hitorimusha's identity who appears in the Noh “Oeyama”, this paper proves that this Noh was created by Katoribon of “Oeyama-ekotoba” among various kinds of Shutendoji-monogatari's manuscripts. Since this Hitorimusha also appears in the Noh “Tsuchigumo”, I examine that these Nohs were written as series of Raiko-mono in the world of Noh. Then I consider that the picture scroll of “Oeyama-ekotoba” was made under the patronage of Ashikaga shogun, and there is a possibility that a certain person of Kanze school who was around Shogun composed the Noh “Oeyama”.
著者
増田 真也 坂上 貴之 森井 真広
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.463-472, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
40
被引用文献数
22

Certain participants are insincere when responding to questionnaires. Two current approaches for detecting unmotivated or dishonest respondents, the instructional manipulation check (IMC), and the seriousness check, were examined. We also attempted to improve the quality of survey responses by asking respondents to take an oath that they would be serious before they started answering the questionnaire (TO). The respondents in two Web surveys were randomly assigned to one of four versions of the questionnaire. The main results indicated that (a) response quality tended to improve when respondents who did not follow instructions were excluded from the sample; and (b) respondents that who took an oath to answer seriously chose fewer “don’t know” options, straight line responses, and midpoint responses than the control group, suggesting that respondents behaved consistently with their initial commitment. The results indicate that although IMC is superior for improving data quality, techniques for deterring less serious responses including TO were desirable in that they did not reduce the sample size.
著者
後藤 一樹
出版者
慶應義塾大学大学院社会学研究科
雑誌
慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学・心理学・教育学 : 人間と社会の探究 (ISSN:0912456X)
巻号頁・発行日
no.78, pp.109-137, 2014

This study examines amateur film, filmmaking, and equipment from the 1920s to the 1930s in Japan, focusing on the spread of Pathé Baby film system and 16mm film. In addition, the study analyses the social practices of amateurs from the perspectives of private life and publicness.論文
著者
岡田 浩 鈴木 渉太
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.93-99, 2020-12-10 (Released:2020-12-30)
参考文献数
11

During the COVID-19 pandemic, community pharmacies provided reliable information to the public as well as masks, disinfectants and drug supplies. This review article first describes the information and support provided to pharmacists and pharmacies by the U.S. CDC, FIP, and Pharmaceutical associations in USA, UK, Canada, and Australia. Lastly, the activities of Kyoto University SPH, which provided information on infection control to community pharmacies in Japan during the COVID-19 pandemic.