著者
小山 誠次
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.371-376, 1994-10-20

下部直腸sm癌に低位前方切除術を施行した。入院中から退院後仕事再開までは特に下着汚染等の訴えは全くなかったが,鈑金業に復職後から粘液による下着汚染をみるようになった。手術はEEA器械吻合によるS状結腸直腸端々吻合術であったが,その際ドーナツリングに一部不確実な箇所があり,そのため手縫いによる全層縫合を3針迫加し,横行結腸に一時的人工肛門を造設した。術後2週間IVH管理としたため特に明瞭な縫合不全等は認めなかったが,粘液による下着汚染は吻合部に何らかの炎症が遷延していると考え,漢方的には大腸湿熱と診断し,黄連解毒湯で清熱化湿を図った。結果的には黄連解毒湯がよく奏効した。しかし下着汚染が激減しても,なお肛門括約筋は緊張低下のままだったので,補中益気湯で升提して括約筋緊張の回復を図った。文献上,低位前方切除術後の粘液による下着汚染に漢方薬治療した症例は見出し得ないので,今回報告した。
著者
榎谷 高宏 大野 範夫 千賀 浩太郎 飯島 伸介 鎌田 久美子 菊地 和美 迫力 太郎 長谷川 絵里 藤井 杏美 水元 紗矢
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.151, 2017

<p>【はじめに】</p><p>脳卒中を取り巻く医療状況の大きな発展にも関わらず,脳卒中後の復職率は20 年前と比べて大きな違いはない.今回早期からの仕事再開と,入院中のIT 環境が復職に有効と考えられた症例を担当したので報告する.なお発表に際し事例より同意を得た.</p><p>【症例紹介】</p><p>50 歳代前半男性.職業システムエンジニア・管理職.平成28 年X 日右被殻出血発症,X +15 日定位血種吸引除去術施行.X +24 日当院回復期病棟転院.X+208 日自宅退院.</p><p>【入院時評価】</p><p>GCS:E4V5M6.B.R.S.:上肢I 手指I下肢II.感覚:左上下肢重度鈍麻.高次脳機能障害:左USN,注意障害,Pusher 症候群あり.ADL: 全介助.FIM: 運動15 点,認知11 点.SIAS:23 点.MMSE:26 点.BBS:0 点.</p><p>【経過】</p><p>入院当日から職場の方が来院し引き継ぎを行う.X +58 日個室に移動.入院中は電話やIT 環境を整え仕事をした.疲労や姿勢保持を含め注意を促し,徐々に仕事の量(時間)と質(業務・責任度)を増やしていった.</p><p>【退院時評価】</p><p>B.R.S.: 上肢II手指II下肢III.感覚: 変化なし.高次脳機能障害: 左USN,注意障害残存.ADL: 車椅子院内自立.FIM:運動82 点,認知29 点.SIAS:38 点.MMSE:30 点.BBS:40 点.自宅内はタマラック継手AFO で伝い歩き,入院中同様に仕事を行い,通勤に向けて障害者支援施設にて通所リハを継続.</p><p>【考察】</p><p>今回は会社・本人の強い意向から早期に就業開始を余儀なくされたが,IT 活用をし,入院当初から会社との関係性が途切れなかったことは,復職に有効であったと考えられる.また,早期からの仕事再開が本人の精神的安定,覚醒の向上,身体機能の向上に有効であったと考えられる.今後,定年延長などにより復職に対するするニーズはさらに高まってくると考えられ,本症例のようなケースも増加すると考える.</p>
著者
盛岡 通
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.111-118, 1983

ブラジルにおける (日系入の最初) の計画開拓地であるジストロのまちづくりには、通史的に見てエポックがある。蜜ず、開発会社海興による植民管理的、状況対応主義的なまちづくりがなされた。つぎに、1930年頃には植民自治団鉢郷を主体としてむら社会の秩序をともなったまちづくりがなされた。むらびとのほかにも、街の商人、海興の勤め入や青年達のつきあいが広がり、市街地解放とともにさらに商店も増加し, 社会施設も整備された。<BR>このブラジル社会のまちびとは戦後のまちづくりにも活躍した。それはRBBCというソシエダーデを核として、まち隨一の会路やスポーツ・センターをつくり、農村電化事業などをも推進したことである。現在は行政によるまちづくりが主であるが、それも日系人のまちづくりの履歴に影響されているところが少なくない。<BR>伊系、独系移民都市と比較すると、日系移民都市では学校、自治組織の寄合所、産業組合などが街の中核施設となり、つきあいも多重的階層型であったのが特徴である。また、つきあいの社会化とそれにともなう都市施設の建設はどの都市でも共通するが、日系移民者肺においてはむら組織とその影響がまだ残るソシエダーデを通じて関与してきたことが見落せない。
著者
河野 哲也 永田 茂 小島 清嗣 北野 哲司 河合 亜紀
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.129-132, 1999

名古屋周辺では, 都市ガスの供給における地震時緊急対応を目的として約100台の地震計 (SIセンサー) が高密度に設置され, 地震動分布や被害評価に活用されている.本報告では, <I>Kriging</I> 法を用いた地震動分布推定への適用を前提として, 高密度地震観測網で観測された愛知県東部地震, 岐阜県美濃中西部地震の最大加速度とSI値の観測記録を基に, これらの距離相関特性について検討を行った.さらに, 評価された距離相関モデルをもとに<I>Kriging</I>法により地震動分布予測を行い, 他の機関によって観測された最大加速度やSI値との比較から推定精度に関する検討を行った.
著者
五島 史行 堤 知子 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1208-1213, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

耳鼻咽喉科を受診するめまい患者のうち, 心因性めまいの占める割合は10~30%程度といわれている. これらの患者には適切な治療が行われていないことが多い. chronic subjective dizziness (CSD) はStaabとRuckensteinによって報告されためまい疾患である. 過去1年間に日野市立病院を受診しためまい患者のうち, 心因性めまいは40例 (14%) であった. そのうちCSDの診断基準を満たした7例について治療や予後などを検討した. 治療はセロトニン再取り込み阻害薬 (SSRIs) を投与し, 全例で自覚症状の改善が認められた. CSDは自覚的めまいを主訴とし耳鼻咽喉科を受診する. そのため, 耳鼻咽喉科医が薬物治療を行って治療することができる疾患として重要である. SSRIsは本来抗うつ薬であり, 実際のSSRIsの投与に当たっては嘔気, アクティベーション症候群などSSRIsの持つ副作用を熟知した上で行う必要がある.
著者
磯部 孝
出版者
日本トライボロジ-学会
雑誌
トライボロジスト (ISSN:09151168)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.763-770, 1999-10-15
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
堀 翔平 齋藤 潤也 花田 恵介 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.535-542, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
12

要旨:右上肢麻痺を呈した脳卒中者に対して,エビデンスの高い手法を組み合わせた多角的なアプローチに加えて,装具装着下で実生活における麻痺手の使用を促す介入を実施したので報告する.介入は,装具・電気刺激・ロボット療法を併用したCI療法を1日1~2時間実施した.さらに,筋緊張の抑制・実生活での麻痺手の使用といった異なる目的の装具を作成し,実生活での装着を促した.結果は複数の上肢機能評価において,臨床上意味のある最小変化量を超える改善が見られ,麻痺手使用の機会が増大した.手指の伸展が十分でない脳卒中者に対しても,装具着用下での実生活の麻痺手の使用は麻痺手の使用場面の拡大の一助となる可能性が考えられた.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.992, pp.66-68, 2019-06-13

「ラブライブは我々が頂いた!」。2019年4月5日、人気アニメシリーズ「ラブライブ!」の公式サイトを訪れたファンの目に挑発的なメッセージが飛び込んできた。公式サイトのURL「lovelive-anime.jp」にアクセスすると、冒頭のメッセージが表示された後に別のゲームのW…
著者
松山 周一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

アニメやマンガなどに登場した実在の場所を巡る,いわゆる「聖地巡礼」と呼ばれる現象が登場して久しく,地域とのかかわりという観点からこれまでの間に多くの研究がなされてきた.これらの研究を整理すると,「聖地巡礼」の登場と発展の中において,次第に「聖地巡礼」を誘発させる表象が作中で意識的に施されるようになっていったということがうかがえる.<br> 本研究では,「聖地巡礼」が活発に行われている作品の表象とその特性から,「聖地巡礼」など地域に何らかの事象を発生させる場所の表象について明らかにすることを目的とする.研究方法としては,「聖地巡礼」が活発に行われている作品を検討し,作品内における場所の表象と位置づけなどから,「聖地巡礼」など場所を主体とした展開がなされると考えられる要因について明らかにしていく.研究対象としては2015年に発表され,現在も作品の展開が続いており,「聖地巡礼」が活発に行われている作品である『ラブライブ!サンシャイン!!』とした.<br> 『ラブライブ!サンシャイン!!』では,企画開始当初から内浦や沼津といった地名を用いて場所を言及するなど,「聖地」となる場所を全面的に押し出して作品の展開を実施している.そして,これらに基づくようにして,作中において1)写実的な背景,2)強調された背景,3)パスを意識した演出という3点を特徴とした場所の表象がなされていることがわかった.また「聖地巡礼」の場所や観光名所などがまとめられたガイドブックである『ラブライブ!サンシャイン!!Walker』などのように「聖地巡礼」のための観光ガイドブックも制作者が直接出版するなど,「聖地巡礼」をより実施しやすくするための商品展開がなされていることもわかった.<br> さらに,作中においてほんの少しでも登場した場所を所有している,あるいは作中で登場した商品を実際に販売している個人ないし団体は,スタッフロールの中において「協力」という形でクレジットがなされた.「協力」としてクレジットされた個人ないし団体はテレビアニメ第1期,第2期だけで50件近くにもおよび,それらはアニメに関連するグッズなどを扱う企業から,作中で登場した地域の旅館,ホテル,あるいは特産物を扱う企業,小規模な個人商店,さらには静岡県や沼津市といった地方自治体に至るまで幅広いジャンルのものが並んでいる.<br> 以上の点から,作中において地域をできる限り現実に近づける形で描き,さらに地域の様々な団体や企業を作中において「協力」として名前などを明らかにさせるなどによって「聖地巡礼」を誘発させているということがうかがえる.また,専用のガイドブックも並行して出版させるなど,制作者が「聖地巡礼」を意図的に,また戦略的に行っているということもうかがえる.
著者
長谷 博子 光田 恵
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 = Journal of human and living environment (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-43, 2012-05-01

本研究では,室内の温湿度がにおいに対する嗅覚閾値,臭気強度と快・不快度に及ぼす影響を官能評価により検討することを目的とした.パネルは,若年者の男性7名を対象とした.におい物質は,スカトール,イソ吉草酸,β-フェニルエチルアルコールを用いた.測定項目は,嗅覚閾値,臭気強度と快・不快度とした.嗅覚閾値は,におい物質間や温湿度条件間において,有意な差は認められなかった.スカトールは,嗅覚閾値の平均が最も低く,標準偏差も小さかった.臭気強度と快・不快度は同様の頃向を示し,快適条件(25℃, 50%)が他の3条件に比べて,におい物質ごとに感じ方が異なることが明らかとなった.冬季条件(22℃,20%)は,におい物質が異なっても感じ方への影響が少ないことが示された.イソ吉草酸は他の2物質よりも温湿度条件の影響を受けることが示された.β-フェニルエチルアルコールとスカトールは温湿度条件の影響を受けにくいことが明らかとなった.
著者
山極 寿一
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.76-81, 2014

人類学は,現在私たちが生きている社会や,それを維持するために必要な人間の特性が何に由来するのかを教えてくれる重要な学問である。人間の形態的特徴と同じく,社会の特徴も,人類の進化史の中に正しく位置づけないと,現在の人間の行動特性を誤って解釈することになる。たとえば,集団間の戦いは定住生活と農耕が登場してから発達したもので,人間の本性とは言えない。人間の高い共感能力は,捕食圧の高い環境で多産と共同保育によって鍛えられ,家族と共同体の形成を促した。その進化史を人間に近縁な類人猿と比較してみるとよく理解できる。最近の自然人類学の成果をぜひ高校教育に生かしてほしい。