著者
有馬 大輔 梅木 昭秀 山本 哲史
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-76, 2019-01-15 (Released:2019-02-02)
参考文献数
5

心肺蘇生の際の胸骨圧迫に伴うさまざまな合併症が報告されている.大動脈解離術後に心肺停止に陥り胸骨圧迫による偽腔破裂を呈したと考えらえた症例を経験した.症例は79歳の女性.上行大動脈にentryを呈した急性大動脈解離(Stanford A型,DeBakey I型)の診断で,緊急手術を施行した.術後は特に問題なく経過し,POD 5にICUを退室するも,POD 6に痰詰まりから心肺停止となり,胸骨圧迫が施行された.蘇生したが,左胸腔ドレーンから血性排液が増加したため,施行した造影CT検査で下行大動脈偽腔から左胸腔に造影剤の流出を認めた.硬膜外血腫も同時に呈しており,保存的加療と低体温療法を施行した.幸い輸血と止血剤の投与で血管外漏出が停止した.開心術症例の胸骨圧迫後には,造影CTなどで出血の確認をするべきで,大動脈解離術後の胸骨圧迫では,稀ではあるが偽腔破裂が生じ得る可能性が示唆された.
著者
村上 敬一
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はいわゆる「コホート系列法」によって四国や九州の若年層方言の動態を解明し,日本人の言語形成期最終盤から終了直後における,言語変化モデルの構築を目的とするものである。進学や就職などによって言語をとりまく環境が大きく変動する,この世代特有の活発な言語変化のプロセスとメカニズムを「コホート系列法」を用いた言語調査によって継続的に追究し,データによって実証された言語変化のモデル化を目指す。2017年度は,前年度に引き続き徳島県西部の吉野川市立山川中学校,美馬市立岩倉中学校,三好市立井川中学校,および徳島県立脇町高校,同池田高校の生徒を対象として,アンケートと面接,談話収録による言語調査を実施した。また、徳島県西部と類似の言語環境にあると思われる、熊本県天草下島の県立天草高校でも同様の調査を実施し,簡便な報告書を作成することができた。調査結果については、村上の担当する「日本言語演習」や、卒業論文のデータとして活用したほか,5月の「日本方言研究会(ブース発表)」,11月の「第1回実践方言研究会」,台湾(2017年5月)と韓国(2018年3月)の国際学会で研究発表することができた。「コホート系列法」調査によって,中学から高校,高校から大学といった進学などに伴う活発な言語変化が観察される,若年層の言語動態が明らかにできることが少しずつ実証できている。語彙や文法における方言使用,標準語使用および使い分けの実態や,言語生活の実態を明らかにすることで,若年層における言語変化の普遍的なモデルの構築を引き続き目指していきたい。
著者
一宮 昌司 中村 育雄
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.78, no.788, pp.794-810, 2012 (Released:2012-04-25)
参考文献数
62
被引用文献数
4 4

Investigations on the definition and randomness of turbulence was reviewed at first. Then, the Kolmogorov complexity which measures the randomness were introduced. Numerical and graphic data in the mixing layer which was formed downstream of two-dimensional nozzle exit were compressed with the aid of a compression program. Approximated Kolmogorov complexity, AK, and normalized compression distance, NCD, were obtained. The AK indicated the regularity of the laminar flow and the randomness of the turbulent flow quantitatively. The NCD of the numerical value varied with data length. Between the same data, it approached zero, yet, on the other hand, between different data, it approached unity as the data length increased. The NCD of the numerical value in the natural transition process in the mixing layer increased monotonically downstream. Thus the NCD appears to be the measure of the transition process. In the natural transition process in the mixing layer, the AK of the numerical value and the NCD of the graphic data did not change monotonously in the downstream direction. Thus they contain some uncertainty for the measure of the transition process.
著者
渡辺 登喜子 渡辺 真治 河岡 義裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2705-2713, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
11

H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス(以後,“H5N1ウイルス”と呼ぶ)が,世界各地に拡大している.それに伴い,ヒトにおける感染例も増えてきており,これまでに600人ほどの感染が確認され,60%近い致死率が報告されている.確認されている感染例が限られていることから,ヒトには比較的感染しづらく,感染したとしてもヒトからヒトへの伝播が起こりにくいと考えられている.しかし,ウイルス遺伝子の交雑やウイルス蛋白質のアミノ酸変異により,ひとたびH5N1ウイルスが,これまでよりヒトへ感染しやすくなり,さらにヒトからヒトへと効率よく伝播する能力を獲得すれば,致死率の高いH5N1ウイルスが世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性がある.本稿では,最近の研究から得られた知見を元に,H5N1ウイルスがパンデミックを起こす可能性について議論したい.

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1919年06月26日, 1919-06-26
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.19-33, 2021-02-28

同志社大学所蔵「源氏物語色紙」を翻刻して、現代語訳と解説を付けた。資料(Material)
著者
鈴木 竜太
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.16-27, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本論文は,個人の2つの学習行動をもたらす職場の要因について明らかにすることが目的である.具体的には,職場における情報の開放性と凝集性が自分自身の能力や知識を高める個人学習行動と自分の持っている知識や情報を職場の同僚と共有する組織学習行動への影響と,個人学習行動の組織学習行動への効果への影響について実証研究によって明らかにする. 実証研究の結果からは職場の2 つの要因は直接的に2つの学習行動に影響を与えないが,個人学習行動を行う人がより組織 学習行動を行うようになることを促す効果があることが示された.
著者
石井 照久 保坂 学 佐藤 宏紀 三浦 益子
出版者
秋田大学教育文化学部附属教育実践研究支援センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.34, pp.145-156, 2012-05

中学校理科の生物分野と高校生物において,教師が指導上難しさを感じることのある単元や箇所を抽出し,指導を困難にしている原因を明らかにするととともに改善策を検討した.抽出された事項は,(1)教科書の記載に関するもの,(2)色に関するもの,(3)実験の技術に関するもの,(4)教授法に関するもの,に大別された.そのうち(1)には,教師の指導を困難にしているだけでなく,生徒の理解を混乱させるものも含まれていた.それぞれの改善策を検討した結果,教師側の教材研究・実験技術の向上,などにより改善できる場合もあったが,教科書出版会社に改善を依頼したほうがいい場合もあった.また,容易には解決できない事項もあった.本報告は,秋田大学大学院教育学研究科の教科教育専攻理科教育専修の授業科目「生物学研究II」において,平成23年度前期の授業で展開された成果報告でもある.
著者
Yuma Hamanaka Yohei Sotomi Akio Hirata Tomoaki Kobayashi Yasuhiro Ichibori Nobuhiko Makino Takaharu Hayashi Yasushi Sakata Atsushi Hirayama Yoshiharu Higuchi
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-19-1006, (Released:2020-02-11)
参考文献数
21
被引用文献数
8 17

Background:This study investigated the impact of systemic inflammation on bleeding risk in non-valvular atrial fibrillation (NVAF) patients treated with direct oral anticoagulants (DOAC).Methods and Results:We conducted a single-center prospective registry of 2,216 NVAF patients treated with DOAC: the DIRECT registry (UMIN000033283). High-sensitivity C-reactive protein (hsCRP) was measured ≤3 months before (pre-DOAC hsCRP) and 6±3 months after initiation of DOAC (post-DOAC hsCRP). Multivariate logistic regression model was used to assess the influence of systemic inflammation and conventional bleeding risk factors on major bleeding according to International Society on Thrombosis and Haemostasis criteria. Based on the findings, we created a new bleeding risk assessment score: the ORBIT-i score, which included post-DOAC hsCRP >0.100 mg/dL and all components of the ORBIT score. A total of 1,848 patients had both pre- and post-DOAC hsCRP data (follow-up duration, 460±388 days). Post-DOAC hsCRP was associated with major bleeding (OR, 2.770; 95% CI: 1.687–4.548, P<0.001). Patients with post-DOAC hsCRP >0.100 mg/dL more frequently had major bleeding than those without (log-rank test, P<0.001). ORBIT-i score had the highest C-index of 0.711 (95% CI, 0.654–0.769) compared with the ORBIT and HAS-BLED scores.Conclusions:Persistent systemic inflammation was associated with major bleeding risk. ORBIT-i score had a higher discriminative performance compared with the conventional bleeding risk scores.
著者
上野 顕子 鈴木 敏子
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-106, 1994-10-31
被引用文献数
1

本調査で,「家庭生活」領域を履修することになっている中学1年生の親とのコミュニケーションの実態と背景を探ったところ次のような結果が得られた。1.6割以上の生徒は,親を理解者としている。そして,父親よりも,母親を理解者としてとらえている。一方,約4割の生徒は,親を理解者ととらえていない。2.約半数の生徒は親と毎日コミュニケーションをとることを望ましいと考えているが,約4割の生徒は日常の親子のコミュニケーションに対して消極的である。3.実際のコミュニケーションについて,挨拶,共有行動,話し合いからみてみると,父親よりも,母親とコミュニケーションをよくとっていることが明らかになった。4.コミュニケーションのとり方には,性別,家族構成,きょうだいの人数,父の帰宅時間,母の職業の有無,子どもが週に習い事・塾へ通う日数,コミュニケーションに対する意識などが影響していることがわかった。以上の結果から,「家庭生活」領域における「家族関係」の扱い方を考えると,次の2つのポイントがあると思われる。第1は,第二次性徴期にいる中学生に,家族の題材を積極的に取り上げてみてはどうかということである。というのは,約4割の生徒は親を理解者としてとらえていない,また,約4割が親子のコミュニケーションは気が向いたときとればよい,特に必要ない,と考えているという結果が得られたが,それは,第二次性徴期に入った中学生が,親に反抗しつつ自立していこうとする姿のあらわれではないかと考えられる。だからといって,この段階の生徒に親子関係についての学習をさせることは難しいので題材設定をしないというのではなく,むしろ積極的に取り上げて,生徒自身に自分が第二次性徴期にいることを自覚させるとともに,そのような自分と親との関係が客観的にとらえられることこそ大人への第一歩であるということを考えさせてみてはどうだろうか。第2は,コミュニケーションのあり方は,現代社会に生きる家族員それぞれの生活や意識が一つの重要な要因となっていることが明らかになったことから,生徒が中学生という自分の発達段階や現代の家族の抱える問題を客観的にとらえられるようになることが必要であると考えられる。特に父子関係が母子関係より希薄になる要因に焦点を当てることによって,社会的な問題をとらえることができるだろう。それらを通して,自分にとって家族とは何か,家族と自分にとってのよりよい家族関係とは,ということを主体的に考える学習過程にしていけるのではないかと思われる。