著者
樹下 芳久
出版者
群馬経済研究所
雑誌
ぐんま経済 (ISSN:13489496)
巻号頁・発行日
no.406, pp.28-33, 2017-04
著者
泉川 晴紀 花野 博司 石川 雄一 岡田 宏 小野 智弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.401, pp.59-64, 2015-01-22

筆者らは,スマートフォン上におけるクーポン配信と,プッシュメディアとしての移動体デジタルサイネージを組み合わせたO2O(Online-to-offline)サービスを検討している.具体的には,ユーザに対し,バス・電車等に設置した移動体デジタルサイネージによりクーポンの存在を告知してスマートフォン上のクーポン取得へと誘導し,広告配信元店舗へ送客するサービスである.この際,コンバージョンとなる,どの程度のユーザが期待した行動,つまり購買行動を行ったかを把握することがサービスの効果を定量的に評価する上で必要となる.そこで,本稿では,ユーザの購買行動の実施を,セルラ情報を用いて推定する手法を報告する.本手法は,クーポンの利用-スマートフォン画面上でのクーポンの表示やクーポンの電子的なモギリなど-の場所毎の割合が,誤利用を考慮しても対象店舗の場所で多くなるという仮説に基づき,クーポン利用時に収集した,場所毎に特徴を有するセルラ情報(基地局識別子や電波強度等)をクラスタリングし,クラスタサイズが大きいクラスタに分類されたセルラ情報を有するクーポン利用をコンバージョンと推定するものである.なお,本手法では,事前に対象店舗でのセルラ情報を収集する必要がない.初期評価の結果,誤利用場所が店舗より500m以上離れていれば,正しくコンバージョンを推定できることが分かった.
著者
山﨑 真理子
出版者
静岡県立大学経営情報学部
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部研究紀要 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-19, 2016-12

大学祭の模擬店で、 消費者行動のフィールド実験を実施した。 出店時にイメージ型 POP 広告を掲示し、 それが非計画購買者の購買行動を促進するかを検証した。 なお、 店頭にはメニュー表を掲げて、 4種類のメニューを用意してあることを示した。 そのうちの一部メニューでは自作の POP 広告を掲示し、 残りのメニューの POP 広告は掲示しなかった。 2日間にわたって食品を販売し、 その売り上げ本数を比較したところ、 イメージ型 POP 広告を掲示したメニューの方が、 掲示しなかったメニューよりも売り上げが多いことが示された。
著者
奥野 拓也 中村 和幸
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.61-74, 2016-12-14

セールスプロモーションは顧客の購買行動へ直接的に働きかけるため,多用されているマーケティング施策である.しかし,セールスプロモーションの効果に関しては他の要因から複雑な影響を受けているため純粋な計測が難しいが,要請は強い.本研究はそういったニーズに鑑み,市場反応が動的であると仮定し,プロモーション活動が来店・購買に与える影響を推定する.そのために,来店と購買の生起行動を確率モデルで構築する.構築した確率モデルを状態空間モデルで記述し,個人ごとに提供するプロモーションが与える影響の時間変化を推定する.スーパーマーケットのID付きPOSデータから価格帯の異なる2商品を用いた結果,長期的なプロモーションの購買へ与える影響が異なることが示唆された.両商品において継続的なプロモーション効果があるが,高価格帯で割引率の高い商品は低価格帯で割引率の低い商品よりも長期的にはプロモーション効果が弱くなることが確認された.In the marketing field, sales promotion is used extensively because it can directly work on consumer buying behavior. The measurement of the effect of the sales promotion is required though it is difficult because the effect is complexly affected from other factors. In this research, we estimate the effect of sales promotion on a shopping trip and purchase behavior by assuming dynamic market response. Probability model of the occurrence of the shopping trip and purchase behavior is constructed. This model is transformed to state space model and we estimate the time course of the effect of the individual promotion. We have targeted two items in analysis using ID-POS data of a supermarket. The result implies that the effect of long-term promotion is different between two items. More specifically, the effect of the promotion of the item that is high price and high discount becomes weaker than the one that is low price and low discount in long-term period though it is continued for both items in analyzed period.
著者
田中 佑典 倉島 健 藤原 靖宏 岩田 具治 澤田 宏
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.580-593, 2017-02-15

本稿では,シングルソースデータを入力としてユーザの購買行動を引き起こした要因を推定する手法を提案する.シングルソースデータとは,各ユーザに対して収集された購買履歴およびメディア広告の閲覧履歴である.提案モデルでは,ユーザの購買行動が(a)個人の嗜好,(b)他ユーザからの社会的影響,(c)メディア広告の影響の3つの要因を考慮した確率過程に従って生成されると仮定する.ユーザ間および企業とユーザ間の潜在的な影響関係を推定し,それらをモデルに組み込むことによってユーザの購買要因を特定する.実データを用いた評価実験では,ユーザの購買予測精度を比較することにより提案モデルの妥当性を示した.さらに,実データを用いて人気商品や影響力のあるユーザおよび企業の抽出,購買を引き起こした要因の分析,および,推定された購買要因に基づくユーザセグメントを行った結果について述べる.This paper proposes a method for inferring the factors that trigger purchases from single-source data. Single-source data are the histories of item purchases and media advertisement views for each individual. We assume a sequence of purchase events to be a stochastic process incorporating the following three factors: (a) user preference, (b) social effects received from other users, and (c) media advertising effects. As our model incorporates the latent relationships between users and advertisers, it can identify the purchase triggers. Experiments using real-world single-source data sets show that our model can achieve high prediction accuracy for purchases. We also show that our model can discover the key information, i.e., popular items, influential users, and influential advertisers, and estimate the relative impact of the three factors on purchases. Furthermore, our model can find user segments based on the estimated purchase triggers.
著者
田村一樹 吉川大弘 古橋武
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.19, pp.1-6, 2013-09-19

近年,電子商取引 (Electronic Commerce: EC) 市場の規模は拡大を続けている.EC サイトには,膨大な量のアイテムの情報に加え,アイテムに対するユーザの評価・口コミ (ユーザレビュー) などの情報が掲載されている.また,各ユーザの閲覧行動などのログも,大量に蓄積されている場合が多い.EC サイトは,それらの情報を用いて,各ユーザの嗜好を適切に抽出し,能動的にアイテムを推薦することにより,ユーザの購買活動を促進することを試みている.嗜好の抽出手法には,ユーザが直接的に与えた評点などの情報を用いる明示的手法と,アイテムへのアクセス履歴やその時間などを用いる暗黙的手法が存在するが,それらを同時に用いる研究については,これまであまり報告されていない.本稿では,アイテムの内容に関する評価情報であるユーザレビュー履歴に加え,明示的な情報であるアイテム評価履歴と,暗黙的な情報であるアイテム閲覧履歴の情報を用い,ユーザの購買行動を階層ベイズモデルによってモデル化することを試みる.また,オフラインのアイテム評価予測実験を行い,提案モデルの性能について検討を行う.The market of Electronic Commerce (EC) has been drastically growing in recent years. EC sites contain various types of evaluation information on items such as ratings and reviews by users in addition to the numerous information on items themselves. In addition, browsing history of each user is usually recorded. Recently, a lot of EC sites try to recommend items actively to each user to encourage him/her to purchase more items by abstracting his/her preference based on above information. To abstract preferences, there are the explicit method and the implicit method. The explicit method uses the information such as ratings directly given by users, and the implicit method uses the information such as access histories to items and browsing time. However, the study to combine the explicit information and implicit one is not found. This paper tries to construct a hierarchical Bayesian model to analyze purchasing behavior of a user based on reviews as the information of contents, rating histories as the explicit information, and browsing histories as the implicit information. An off-line experiment predicting the ratings of items is carried out and the performance of the proposed model is discussed.
著者
Forsythe Sandra M. Shi Bo 佐藤 志乃
出版者
早稲田大学
雑誌
産研シリーズ
巻号頁・発行日
vol.36, pp.33-46, 2005-05-31

ネット・ショッピングはインターネットの用途のなかでもっとも急速に成長してきた分野である。しかしネット利用者のほとんどは、オンラインで集めた情報をもとにして実際の購入はオフラインで行っている。消費者がオンラインで購入したがらない理由として障壁の存在を挙げる研究者は少なくない。しかし、これまでそういった障壁について理論的に検討されることはなかった。本研究はネット・ショッピングから連想される知覚リスクの特徴とともに、ネット・ショッピングの際に知覚されるリスクの類型とネット愛顧行動との関係を、知覚リスクの理論的なフレームワークに基づいて検討する。具体的には、ネットで購買する入や購買せずに検索のみ行う人に影響するような4つのタイプの知覚リスク-金銭面、製品のパフォーマンス面、心理面、そして時間や利便性を失うといったリスク-とその人の人口統計学的特徴との関係、そしてネット愛顧行動に対して知覚リスクが及ぼす影響、これらについて検討した。その結果、知覚リスクはネット・ショッピングに対する障壁を説明する要因として有効であるという知見が得られた。こうした知覚リスクのフレームワークからネット愛顧行動を検証するモデルを提案すると同時に、経営上のインプリケーションや今後の研究についての指針も示している。
著者
堂山 宗一郎
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2011

動物の学習能力を、その行動から評価する方法の1つとして、迷路を用いた実験が多く行なわれている。供試動物は、現在までそのほとんどが、実験動物として確立されたラットとマウスであり、それ以外では、中・大型の家畜を中心にいくつかの研究が報告されているに過ぎない。さらに、中・大型の野生哺乳類では、迷路を用いた研究は世界的にほとんど行なわれていない。野生哺乳類において迷路実験を行なうことは、学習能力に関する新たな知見を得られる可能性がある。また、家畜における学習能力に関する知見が、飼育管理等に関する問題の解決に貢献しており、野生哺乳類における知見も、彼らが関わる問題の解決に繋がる糸口になることも考えられる。 そこで本研究では、イノシシにおける迷路実験の手法を検討することおよび学習能力に関する基礎的知見を得るために、様々な迷路により学習実験を行なった。 第1章では、イノシシを迷路実験に供試するための馴致、訓練方法の確立および実験を行なうための適切な実験施設の設計、構築を行なった。野生哺乳類における迷路学習実験が、これまでにほとんど行われていないため、家畜における研究を参考に迷路実験場を設計した。実験場は、屋外に構築し、面積は121m^2(11m×11m)であり、周囲を高さ2mの障壁で囲った。警戒心が強く、扱いにくいイノシシを供試動物とするため、人および実験施設に対する馴致を長期間行なった。供試イノシシは生後約1ヵ月の野生個体を捕獲し迷路実験場に近接する飼育施設に導入した。導入後、実験者が毎日接することによって人に対しての警戒心が低くなるまでに7~10ヵ月を要した。次いで、実験施設までの移動に使用する檻への導入訓練を供試個体が自発的に檻に入るようになるまで行なった。この訓練には2~6週間を要した。移動檻への導入訓練終了後、迷路実験場への移動訓練および実験場に対する馴致を行なった。移動中および実験場において、移動檻内で供試個体が警戒行動や驚愕反応を示さなくなるまで馴致を続けた。この馴致には4~6週間の期間を要した。イノシシは、実験施設に導入するまでに家畜や実験動物よりも長期間の馴致や訓練を必要とするものの、これらの期間を十分に設けることにより、イノシシを実験に供試できる状態にすることが可能であった。以上の結果、実験施設と訓練および馴致法が確立でき、第2章以降の実験を実施した。 第2章では、迷路実験を開始する前に、新奇環境や迷路のような障壁で囲まれた実験装置にイノシシを導入した場合の行動変化をオープンフィールド(OF)実験により調査した。3m×3mのOFを作成し、その中に供試個体を導入した。OFの中央には飼料を置き、1日5分間、3日連続で観察を行なった。実験1日目にはOF内を歩き回る移動が多くみられたが、2日目には減少した(P<0.01)。それとは逆に、摂食は、実験2日目以降に1日目と比較して増加した(P<0.01)。家畜における実験では、OF内での移動の減少が新奇環境に対する慣れの指標とされているが、イノシシも同様に実験装置に対して慣れたため移動が減少し、それと対応して摂食が増加したと考えられた。警戒行動の発現回数には個体差が見られ(P<0.01)、多く発現した個体は、実験装置から脱出を試みる行動も発現した。新奇環境に対する警戒や実験装置へ閉じ込められることに対する恐怖には個体により違いがあり、OFでの警戒行動が、迷路実験における訓練期間や供試個体としての適正を判断する指標になる可能性が示唆された。 第3章では、T字迷路を2つ組み合わせた複合迷路により、イノシシの学習能力を調査した。迷路内の一部を利用した馴致および訓練の後、本試験を行なった。本試験はゴール地点に報酬を置き、6試行/セッション、1セッション/日とし、連続4日間行なった。ゴールに到達するまでの時間は、セッション1と比較してセッション3、4において短縮した(P<0.05)。エラー回数もセッション1と比較してセッション2、3において減少し(P<0.01)、セッション4ではエラーが無くなった。これらの結果を家畜における迷路実験と比較すると、イノシシが家畜と同等もしくはそれ以上の学習能力を持つことが示された。そして、イノシシにおいても到達時間とエラー回数が、警歯類の迷路実験と同様に学習能力を評価する指標として有用であることも示唆された。スタート方向への逆走回数は、セッション1と比較してセッション2、3、4において減少した(P<0.01)。供試個体の2頭が、迷路の壁を飛び越えようとする等、迷路装置に慣れなかったため、実験から除外した。この2頭はOF実験において警戒行動を多く発現した個体であり、このような警戒心が特別強い個体は、実験装置に対して慣れづらく、迷路実験の供試個体として適切でないことが示唆されたことから、前章のOF実験の有用性が示された。 第4章では、実験動物やウシ等の大型家畜において学習能力評価に用いられているT字迷路より複雑なHebb-Williams迷路によりイノシシの迷路学習能力を調査した。6m四方のHebb-Williams迷路を作成し、そこに対する10日間の馴致終了後に訓練課題(6課題)を行なった。訓練課題の学習基準に達した4頭の供試個体で、引き続き12課題ある試験課題を行なった。試験課題は1日1課題、8試行/課題を行なった。供試個体の移動経路から、超過侵入スコア(TEES)、学習速度スコア(%R)、視覚能力スコア(%P)を算出し解析した。課題12のTEESが他の課題よりも有意に高かった(P<0.05)。TEESが高いほど難易度が高いため、課題12が最も難しく、続いて課題8が難しいという結果となった。課題8および12の難易度が高いことは、ウシとウマにおける実験でも同様の結果が示されており両課題が中・大型の哺乳類に共通して難しい課題であることが考えられた。%Rは78.7となり、イノシシが各課題の試行の早い段階でゴールまでの経路を学習したことが示された。また、この結果は他の動物種と比較しても最も高い値となり、イノシシの学習速度が非常に速いことも明らかとなった。%Pは24.2となり、イノシシが迷路の形状を認識するために視覚的情報を重要としていることが示唆された。 第5章では、迷路内の手掛かりによりゴール位置が変化する条件に対するイノシシの学習能力をT字迷路により調査した。迷路のアーム始点には、迷路内刺激として白および黒のパネルをランダムな位置に配置した。4頭の供試個体の内、2頭は正刺激を白、もう2頭は正刺激を黒と設定し、正刺激を選択した場合は報酬を得ることができた。実験は、16試行/セッション、1セッション/日として12セッション行なった。16試行中14試行以上の正選択が連続3セッション確認できた場合を学習基準とした。その結果、2個体が9セッションおよび12セッションで学習基準に達した。これにより、イノシシが迷路内刺激を手掛かりとして報酬と刺激の関連を学習できることが明らかとなった。本結果を家畜における研究と比較すると、イノシシが同程度の迷路内手掛かり学習能力を有していることが示唆された。 第6章では、齧歯類において広く用いられているものの、それ以外の哺乳類を対象とした研究が極めて少ない水迷路により、イノシシの学習能力を評価することができるかを調査した。実験装置として7.2m四方、深さ0.7mのプールを作成した。供試個体として、2頭を選抜し、実験装置および水に対する馴致の後、本試験を行なった。本試験は、プールにゴールとなる台を水面下に設置し、3試行/日、連続4日間行なった。その結果、1頭は、実験期間を通してゴール台に到達することよりも、スタート付近の壁際もしくは迷路の壁に沿って泳ぐことを優先した。しかし、もう1頭は、実験2日目にゴール台へ初めて到達し、それ以降はゴールまでの到達時間が短縮し、スタートからゴールまで直線的に泳いで到達した。さらに、この個体においてゴール台の位置を変更した追加試験を行なったところ、変更前の位置の付近を泳ぎ続け、ゴール台に到達するまでに時間を要した。これらの結果は、ラットやマウスにおける実験結果と類似しており、イノシシにおいても水面下にありそこまでの経路が決められていないゴールを泳いで見つけ出し、その位置を学習できることが示された。さらに、プール内でイノシシが、迷路外刺激を主な標識としてゴールの位置を学習していることも示唆された。 本研究において、イノシシは場所学習課題や手掛かり学習課題の遂行が可能であり、齧歯類や家畜と比較して同等もしくはそれ以上の学習能力を持つことを初めて明らかにした。そして、警戒心が非常に強いイノシシにおいても、管理・馴致・訓練を適切な方法で行なうことにより、迷路実験に供試することが可能となることを明らかにした。また、イノシシがこのような高い学習能力を持っていることは、彼らの生態的特性に由来している可能性があり、自然環境下でマーキング等を行なわず、特定の縄張りを持たないイノシシが、位置情報を入手するために視覚的情報が重要と考えられ、このような高い学習能力を有したと考えられた。 これらの成果は、科学的基礎知見に留まらず、人と野生動物の軋轢問題への応用、特に農地や集落と食物の関連性や侵入経路等を学習能力の観点から新たに解明することを可能にすると考えられる。さらに、本研究は、大型野生哺乳類において迷路学習実験を行なった初の研究であり、野生哺乳類における学習能力に関する心理学的研究のみならず、行動学的研究の発展に大きく貢献するものと期待される。
著者
庄司 香
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.93-103, 2012

近年,世界で急速に予備選挙の実施事例が増え,それに伴い予備選挙研究も活性化してきているが,予備選挙の定義には混乱がみられ,比較分析のための枠組の精緻化もまだ進んでいない。本稿では,まず,予備選挙の類型とこれまでの研究の論点を,民主化という尺度を軸に整理し,予備選挙導入と政党の強さの関係について,オーストラリアを題材に考える。さらに,「参加」という尺度から逸脱していく台湾の事例や,政党候補者指名という行為そのものの否定へと行き着いたカリフォルニアの事例を通じて,予備選挙がもつ指名制度の「開放」というインペラティヴについて考察する。最後に,ナイジェリアとアルゼンチンの事例をもとに,それぞれ,政党候補者指名制度の法制化や予備選挙実施の全党義務化が示唆する,予備選挙研究の新しい視角を提示する。
著者
岩木 信喜/小坂 圭子/近藤 武夫/羽渕 由子 小坂 圭子 近藤 武夫
出版者
九州ルーテル学院大学
雑誌
紀要visio : research reports (ISSN:13432133)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2003-07-31

本研究では,互恵的利他行動の文脈における裏切り者の名前が,再発チェックのために効率的に検索されるのかどうかを検討した。16名の大学生が2セッションからなる実験に参加した。被験者には,第1セッションで互恵的利他行動が破綻する文章を読ませた。文章には,裏切り者と蔓切られる者,利害には無関係の中立者の3名が登場した(利害変数)。また,この文章読解では,被験者自身の名前が裏切られる者として登場するかどうかによって関与の有無を操作した(関与変数)。第2セッションでは,先の文章に登場した人物名かどうかを判断して選択的に反応する記憶探索課題を行った。もし裏切り者の検索過程が再発チェックのために効率化されるならば,その反応時間は少なくとも中立条件よりも短くなるはずであり,その程度は被験者自身に損害が及ぶと想定される場合の方が顕著であると予想された。実験の結果,関与有り条件では裏切り者に対する反応時間が中立条件よりも有意に短かったが,そのような差は関与無し条件では認められなかった。この結果は,先の予想を支持するものであった。
著者
山岸 常人
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
no.45, pp.p161-193, 1992-12

本稿は、中世の寺院において本堂或はその他の仏堂の中に何らかの意図をもって納め置かれた文書―仏堂納置文書と呼ぶことにする―をとりあげ、その納置の状態・納置文書の種類や機能・蔵に納置された文書との関係等について、主として栄山寺・高野山・金剛寺等の納置の事例をたどりながら、寺院内部における文書の安定的な保管についての原理と現実について考察を加える。文書納置には様々な種類の仏堂が使われているが、中でも御影堂・本堂、とりわけ御影堂が特に史料的に豊富な情報を残しており、御影堂が多くの寺に共通して重用されていた。多数の文書が仏堂に納置された要因は、併存する複数の僧侶集団、さらには寺外の諸権門との間での様々な権利が対立する際、権利を保障する支証となる文書の所在とその確かな伝領を実現するためにふさわしい機能を仏堂がもっていた点にある。寺の開祖や宗祖を祀る御影堂が特に選ばれているのは、世俗の諸権力より上位の権力に文書の保管を委ねたと見ることができる。ただしこのシステムは架空の上位権力の存在を想定して成立している擬制とも言えるものであった。このことは笠松宏至氏の言う「仏物」誤用禁止の法理とも共通する理念であるが、その法理の裏では、高野山の御手印縁起等の奉納状や十聴衆評定で定められた出納手続、或は文書の書面上に御影堂納置文書である旨を示す文言を加筆すること等、実態を伴った管理制度の完備によって初めて保管の実効性が保証されていた。更には金堂には下書を、御影堂には正文を置くような危険を分散する方式も編み出されて、それを補完したはずである。即ち理念や擬制だけで現実の利害や権力に対抗しきれるものではなかった。なお仏堂に納置される文書は公験・荘園文書など寺家の権利に直接関わるものに主として限られ、法会文書などは納められず、また年貢なども別の収納施設に納められ、寺内の収納施設は目的により俊別されていた。仏堂に文書を納置することは正に中世寺院の組織構造を直接に反映した現象であった。This paper looks at documents stored with some intention in the main sanctuary or other sanctuaries of Buddhist temples in the Middle Ages …… hereafter called "documents stored in Buddhist temples". The author examines the principles and actual situation of the secure storage of documents in temples, by tracing examples of storage mainly in Eizanji, Kôyasan, and Kongôji temples, with regard to conditions of storage, types and functions of the stored documents, and their relation with documents stored in warehouses.Various types of Buddhist sanctuaries, such as the Mieidô and the main sanctuary, were used for the storage of documents. The Mieidô, in particular, contain an abundance of historical information, and commonly held an important position in many temples. The reason many documents were stored in Buddhist sanctuaries was that these buildings were appropriate for the storage and accurate transmission of documentary evidence regarding rights, in case of confrontation between opposing groups of Buddhist priests, or disputes with various influential powers outside the temple. It seems that the Mieidô, which is dedicated to the founder of the temple or the sect, was particularly chosen for the storage of documents because a higher power than secular powers was entrusted with the storage of documents. However, this system can be said to have been a false system, which was established on the assumption of the assistance of a fictional higher authority. This idea has something in common with the legal principles behind the prohibition of the misuse of "Buddhist objects" as stated by Mr. Kasamatsu Hiroshi. Behind this principle, the validity of the documents stored in the Buddhist sanctuaries was assured only when a control system in line with real conditions was perfected, that is, letters of dedication, such as the Goshuin-engi of Kôyasan, accounting procedures determined by a meeting of ten, the addition of a phrase indicating that the documents were stored in the Mieidô, etc. Furthermore, a method of spreading risk, such as storing a draft in the main hall in addition to the original document in the Mieidô, must have been devised for greater assurance. In other words, actual interests and powers cannot have been countered by only principles or a false system. It should be further noted that the documents stored in Buddhist sanctuaries were principally limited to official documents and manor documents, those are directly related to the temples' rights and interests, documents on Buddhist meetings were not stored there, and annual land tax was stored in other storehouses. In this way, storage facilities in temples were distinguished according to purpose.The storage of documents in Buddhist sanctuaries was really a phenomenon which directly reflected the organizational structure of the temples in the Middle Ages.
著者
三輪 哲 下瀬川 陽
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.193-208, 2016

The purpose of this article is to explore the relationship between dropout from higher education and social class origin. It focuses on the following three points; 1) to investigate the pattern of association between class origin and the risk of dropout; 2) to compare the impact of class origin on dropout among several educational transition stages; 3) to examine the trends in the effect of class origin on dropout from higher education.In order to conduct the empirical analysis, large-scale datasets which were merged from various Japanese national representative survey datasets, such as the Social Stratification and Mobility surveys (SSM), Japanese General Social Surveys (JGSS), and Japanese Life-course Panel Surveys (JLPS) are used. The risk of dropout is estimated using binary logit models, rare-event logit models, and transition models.Results show that the risk of dropout from higher education is affected by class origin. Non-manual and agricultural classes are less likely to drop out, while manual and self-employed classes are more likely to drop out from higher education. As for dropout from secondary education, the same pattern of inequality of the risk of dropout among classes is observed. The degree of impact of class origin on dropout is smaller than that on entering into next stage of education. There are no trends in the effects of class origin on dropout. This finding supports Maximum Maintained Inequality (MMI) hypothesis because educational expansion did not affect the pattern of educational inequality including dropping out stage.In conclusion, stable, huge inequality of dropout among social classes is found. Class origin is crucial factor for predicting the risk of dropout from higher education, also a long time ago even now.本研究は,科学研究費・特別推進研究(25000001)および基盤研究C(16K04029),2016年度参加者公募型共同研究(二次分析研究会テーマB)の成果の一部である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1907, pp.72-74, 2017-09-11

年のせいだから仕方ない──。毎朝、鏡を見て、薄くなっていく頭髪に嘆息する中高年男性は少なくないだろう。