著者
高橋 亨輔 井面 仁志 白木 渡 磯打 千雅子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1124-1137, 2017-05-15

本研究の目的は,災害時の危機的な状況下で,いかに適切な状況判断ができるか,その判断をもとにいかに適切な意思決定を行い行動に移せるか,これら一連の訓練を通して災害時の対応能力を養成するシステムの開発である.2011年東日本大震災では,広範囲の揺れや巨大な津波により,多くの教員や児童が被災した.従来,学校現場で実施される防災訓練は,マニュアルに記載された基本的な行動手順を確認することを目的としているが,現実の災害では,教員にとって想定を超える事態が発生する可能性もあり,教員自らが適切に状況判断し,素早い意思決定のもとに行動することが求められる.そこで,本研究では,災害時の実践的な対応能力の養成を目的とした災害状況再現・対応能力訓練システムを開発する.提案システムは,まず,大型スクリーンに投影されるバーチャルリアリティ(Virtual Reality:VR)映像と,教室の机や教科書などの現実の物を組み合わせて,バーチャルとリアルを融合して訓練体験者が災害時の臨場感を体感できる環境を構築する.次に,この環境下で対応行動をとる訓練ができるように,訓練体験者の行動に応じて災害状況が切り替わる訓練シナリオを開発する.最終的には,小学校教員を対象とした地震発生時の初期対応訓練シナリオを開発し,学校教員を対象とした訓練の実践事例と訓練システムの運用を通じて,開発したシステムの有用性や効果を検証する.This study aimed to develop a disaster risk reduction training system for school teachers to develop their practicable disaster response capabilities. Education for disaster risk reduction is important in protecting lives. However, conventional disaster reduction education in school in Japan has been delivered in accordance with procedures from the disaster reduction education manual. Although this conventional education material is effective to learn fundamental action steps, it does not provide guideline for the development of practicable response capabilities during disasters. In this study, an attempt is made to develop a simulation system for reproduction of disaster situations. First, an environment is developed to experience disaster situations by using virtual reality image projected on a large screen and real props. Feature of the proposed system is to reproduce disaster situations through a mix of real and virtual space. Next, in order to train response capabilities in this environment, a dynamically changing training scenario is developed. This scenario can switch scenes in response to the trainee's behavior. Finally, the proposed system is applied to practicable initial response training for school teachers in earthquake disaster. A training example for school teachers is presented to demonstrate the usefulness of the proposed system.
著者
岡田 一馬 中田 衛樹 山崎 裕司 山下 望 青木 早紀 山崎 倫 大森 貴允 冨岡 真光
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-22, 2017-03-31

高次脳機能障害を合併した高齢の重症片麻痺患者のベッドへの移乗動作練習に応用行動分析学的技法を取り入れた. ベースライン期(第93病日から106病日)には,総課題提示法による移乗動作練習を実施した.移乗動作手順の忘れや立ち上がり,ベッドへのピボッドターンに介助を要し,移乗動作能力得点は停滞していた.介入では,車椅子のブレーキ操作,フットレスト操作についてベットサイドに文字教示を行った.立ち上がり,ピボットターンの練習では,段階的な難易度設定を実施した.介入開始後,動作能力得点は上昇しはじめ, 16セッション目で満点の45点に到達した.発症から3か月以上を経過した本症例がわずか16日間の介入によって監視下の移乗動作が自立したことから,今回の介入は移乗動作能力を向上させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
中野 良哉
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.7-10, 2017

理学療法士を目指す学生の仮想的有能感は学年が上がることにより経時的に変化するのかを明らかにすることを目的とした.学生62名を対象とした.質問紙法にて他者軽視傾向と自尊感情を評価し,同一の対象者の3年間にわたる回答結果が学年を経るごとに異なるかについて分析した.その結果,他者軽視傾向,自尊感情ともに学年による有意差は認められなかった.仮想的有能感4タイプについて学年ごとに分類した結果,分類が変化した学生は全体の72.6%, 3年間変化が認められなかった学生は27.4%であった.タイプ変化のうち,最も頻度が高かったのは全能型から自尊型への変化であった.学年別にみると2年時よりも3年時においてタイプ分類が変化する割合が低く,タイプ別にみると仮想型は学年が上がるにつれて他のタイプに変化する割合が低下することが示された.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.952, pp.59-62, 1998-08-03

主力のプリンターが市場拡大の波に乗り、1980年代は売上高が年平均で18%も伸びるなど破竹の勢いに乗っていたスター精密は、91年2月期に連結売上高822億円、経常利益103億円という過去最高の決算を記録した。 だが、その後の4年間、坂道を転げ落ちるように業績は下降線をたどる。プリンターの販売不振から、94年2月期に赤字転落。
著者
今関 一飛 保井 俊之 前野 隆司
出版者
Japan Society for Design Engineering
雑誌
設計工学 (ISSN:09192948)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.51-66, 2015

Wants Chain Analysis (WCA) is a method that analyses relationships between stakeholders. WCA is an intuitive and useful method, however it have not a way to evaluate quantitatively. Therefore it is difficult to use WCA for a decision-making. The proposed method provides a quantitative method for WCA and it can be used for a decision-making. In this method, at first, usual WCA is performed for as-is and to-be system. Next, "overall satisfaction of wants (OSW)" is calculated for all stakeholders and each system. To calculate the OSW, concept of Analytic Hierarchy Process is applied. If the difference of OSW between to-be and as-is system is positive in all stakeholders, the to-be system is valuable. Therefore, by using the proposed method, we can decide whether the system is effective or not. To validate this proposed method, we tried to apply this method to example of real business-model. Through this analysis, effectiveness of proposed method is confirmed.
著者
秋山 卓見 泉 直子 萩原 茂樹 米崎 直樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.21, pp.71-78, 2007-03-05
参考文献数
6

近年の分子生物学の進展の中において,遺伝子ノックダウン実験による遺伝子調節ネットワークの解明が進んでいる.本研究では,それらを計算論的モデルを用いて捉えなおし,形式手法を反映したかたちで解析したすなわち,化学反応の活性/抑制関係を表現した,資源の取り合いを基本概念とする意味論を持つ形式オントロジーの公理を満たす,遺伝子調節量を表す数値間の演算の代数的制約と,そのインスタンスとなる関数を提案した.また,遺伝子調節ネットワークを解析した実験結果に適用し,ダブルノックダウン実験による遺伝子調節値を推定する計算式を提案した.The gene regulatory network obtained from the gene knockdown experiment is clarified in the progress of the molecular biology. In this paper, we capture those results by using the computational model, and analyze by a formal method, i.e. we proposed a numeric model of gene regulation reflecting our formal ontology that conceptualized promoting/inhibiting relation of the chemical reactions. Moreover, we formally defined requirements for gene regulation and functions which satisfy this requirements. Finally, we estimated the numerical value of the gene regulation by the double-knockdown experiment with this model.
著者
岡 益巳 安藤 佐和子
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-16, 2013-12

留学生支援ボランティア・WAWA は1994年に設立され、2002年には留学生センターの公認団体となり、2009年には念願の独立した活動拠点を手に入れた。WAWA 設立20年の節目に当たって、これまでのWAWA の活動の歴史を振り返ってみたい。(1)新入留学生の受入れ支援、(2)チュートリアル・サービス、(3)留学生家族のための日本語教室、(4)異文化交流イベントがWAWA の活動の4本柱であるが、学内外の環境変化の影響を受けて(1)は中止に、(2)は大幅縮小という状況に陥っている。また、ボランティア学生の気質の変化の影響により(3)も縮小せざるを得ず、(4)に関しては企画・運営力の低下が懸念される。こうした現状を踏まえ、設立21年目を迎えようとするWAWA のあり方について提言したい。
著者
青木 芳夫
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.19, pp.p59-77, 1991-03

1989年11月20日、第44回国連総会は、無投票、全会一致で「子供の権利に関する条約」(略称、子供の権利条約)を採択した。1959年の国連「子供の権利宣言」が、ここに権利条約へと発展を遂げたのである。そして、1990年8月末までに、31ヵ国が批准したことにより、権利条約は9月2日に発効した。さらに105ヵ国が、「署名」によって将来批准する意思のあることを示している。日本は、ニューヨークの国連本部における「子供のための世界サミット」の開幕を直前に控えた9月22日、ようやく署名した。本稿では、これを機会に、筆者が専門としているラテンアメリカ地域、とくにペルーの子供について若干検討することにしたい。なお、筆者は、妻アンヘリカ・パロミーノとともに、1986年以来、「児童画の国際交流をすすめる画塾協会」(The Private Art School Society to Encourage Intemational Exchange of Children's Art 略称、The PASS )の交流事業を支援する機会を得た。そして、この交流相手のひとつとして、筆者自身が1985年に受講したケチュア語の集中講座を主催しているカトリック教会系の「解放の神学」の実践機関であるアンデス司牧研究所(Instituto de Pastoral Andina )を通じて紹介されたのが、やはりカトリック教会系の「子供を支援する会」(Asociacion Ayuda a la Ninez )であり、同機関が支援するストリート・チルドレン」のグループ「フチュイ・ルナ」(Huch' uy Runa )であった。この交流における筆者の体験等を通じて、ペルー・クスコの子供について、また日本のわれわれとの関わりについて、最近流行の用語を使うならば「国際化」はどうあるべきかについて、考えることにする。
著者
河内 朗
出版者
愛知学泉大学
雑誌
経営研究 (ISSN:09149392)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.67-86, 1992-09

小論は国際連合本部財務局において筆者が発案,実際に施行された一会計サブルーチンの改変を扱うもので次の構成をとる。1.基金と基金問決済:用語「基金」の実用上の意味,慣用例,複数基金間の関係の説明。2.国連における基金問会計の旧方式:基金間の清算はどのように行われ,それは何を論拠としたかの叙述。3.新マネジメント手法の導入による影響:予算編成方式をPPBSへと変えることによって発生した諸困難。4.一般会計原則に対するチェック:案出された解決法が適合するか,会計原則ごとに個別吟味。5.採用された情報システムの再構築:既往手続きと新方式との差異ならびに効果を捨象モデルを用いて論述。国連で採用されているシステムは政府会計に準じ,政府会計は多数の基金の存在を特徴とする。会計用語は日本語圏と英語圏とでは完全に照応しない例がままある。小論における語用法はアメリカ社会での実務慣行にもとつくが,この留保のもとでファンドを基金と置くと,基金は部外者が運営を委託すると共にその目的ならびに運用法を指定する点において勘定とは一線を画すと考えられよう。すなわち勘定とは異なって基金の場合,会計システムは受託者となる。したがって特別の注意義務が発生し,基金間の資金流用は絶対に許されない。そしてこの独立性という制約が情報システムを硬直させる。一方で組織管理の上では現実的課題として効率が重要となる。これについては論をまたないが効率性を高めるために手続きを簡素化する,言い換えるとシステムを柔軟にすれば前記制限に抵触しかねない。この相反する要求を満たすものとして国連本部では一定の基金間決済手続きが採用されていた。これは海外技術援助あるいは外国間勘定清算に近似するもので,その四対極記入ともいうべきシステムはよく稼働していたが,予算編成に関わる新手法が導入されるに伴い,そのままでは際限なく膨張するという根本的な問題が生じた。新手法はプログラム・プロジェクト予算構築法,略称PPBSである。これは伝統的な部署別経費の積み上げでは目的達成度が分からないから業務別に予算を編成し,その予算消化度をもってプロジェクトを統制するという概念ともいえよう。PPBSの導入は,各国外交官代表から成る委員会により政治的に決定された。本部全組織への影響は甚大であった。会計データは唯一の客観的計測値である。これは国連事務局においても変わりがない。しかも予算編成方式の変更は既存会計システムの根本をくつがえす。そこでPPBS導入への対応は,全部署による対会計部門への要求となってあらわれた。プログラムもプロジェクトも基金より単位が小さい。一つの基金は何種類ものプログラムを同時に進行させる。一プログラムは何種類ものプロジェクトをも含む。細分するとこれらは基金と等しく独立性を帯び,四極記入による照応相殺勘定(表1,2と図2)の数を,本文の数式で計算されるとおり,幾何級数的に増加させる。業務量増加は,通常,人員とコンピュータ容量を増強して対処する。けれども主任会計士であった筆者は諸要件を本文で述べたように熟慮,原始記録をおこなう時点で相殺記入の仕訳けを廃止した。結果は図3に止揚される。関連担当者会議では不安と反対の声が上がった。主なものは:a.現状報告書に不均衡残高が残る。b.銀行口座をもつ特定の基金に従属するかのような格好になる。不満aに対してはそれが本来の各基金の姿である,脱落するのは第二次データであってこれは包括性原則に反してないと説得し,抗議bに対しては完全な基金の独立は固有の銀行口座が開かれてのち初めて可能なのだが国連としてはすでに世界各地に百もの通貨・用途別口座をもつ,また資金と現金とは同じではないのだと解説した。処理データの統制を日計帳の照合に依存する上記改変は,結局,会計部門主導のもとに強制された。そしてその後も無修正のまま円滑に運用されている。実現された経費増の未然防止とシステム効率化の効用は,はかりしれない。
著者
岡田 允
出版者
福山市立大学
雑誌
福山市立女子短期大学紀要 (ISSN:02866595)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.3-8, 2008

本法は、食育の実践として附属幼稚園児に対してパン作りを実践した事例研究である。結果を要約すると次のとおりである。1.パン作りにおける電子レンジ発酵法は、初心者の幼児を集団で指導し、幼児が作って食べるまでの全工程を比較的短時間内に終了することが可能であった。2.幼児が食事作りの一旦が担えるようになったり、もの作りに興味をいだく時期はその機会を多く与えることは大切なことである。今回のパンを作る体験を行った幼児は大変積極的で、かつ技術的にも有能であった。3.食育体験の評価では、全体的に、準備、熱意、レベル、楽しさ、新発見・学びの要素などにおいて、教員、学生、幼稚園の先生の評価は、いずれも好評で引き続き継続を望まれた。4.7種類のパンの諸性状は、基本パンの体積が最小で、他の色とりどりのパンは、いずれもよく膨らみ体積が大きなパンが出来上がった。栄養面は、ビタミン類やミネラルの多いパンや低エネルギーのパンなどさまざまなものを作ることができる。5.学生によるパンについての官能検査結果は、試料間及びパネル間で差がみられた。
著者
高畑 彩友美 冨田 圭子 饗庭 照美 大谷 貴美子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.287-299, 2006-05-15
被引用文献数
3 1

"子どもたちは家族と楽しい食事時間を過ごすことでコミュニケーション能力を育み,親子の相互理解を深めることで安定した人格を形成する.それには親の食生活や子育てに関する意識,生活充実感,過去の食経験が深く関わっている"という仮説を立て,母子の「コミュニケーション頻度」を被説明変数とし,母親の「過去の食経験」を外生変数とするパスモデルを構築し検証を行った.その結果,仮説は検証された.1)母とのコミュニケーションが少ない子どもは,食に対する興味や活気が低く,幼稚園の先生の評価においても友達の嫌がることをしがちであるなどの傾向がみられた.2)母親自身の過去の食経験が好ましいほど,母親の食事観を良くし,そのことは,子どもの食への興味を高め,母子間のコミュニケーション頻度を高めていた.また母親の過去の食経験が好ましいほど,現在の母親の生活充実感が高く,そのことは子どもへの積極的な養育態度や食との関わり方を介し,母子間の「コミュニケーション頻度」を高めていた.
著者
佐藤 進一
出版者
中央大学
雑誌
中央史学 (ISSN:03889440)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.166-172, 1987-03
著者
金子 智行
出版者
一般社団法人日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.312-314, 2001-11-01
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
合川 正幸 藤本 正行 加藤 幾芳
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.E123-E128, 1999-08-20

球状星団中で、他の星とは異なる組成を持つ星が観測されている。その中で、^<24>Mgが減少し、Alが増加しているが、MgとAlの和が一定の星がある。しかし、現在までのデータによる反応率や星のモデルを用いて行なわれた計算では、観測値を説明できず、何らかの補正が必要であることがわかっている。そこで、反応率、あるいは星の構造の修正によって、この問題が解決できるかどうかについて議論をおこなった。