著者
村田 俊明
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-76, 2007-01

わが国では、いま道徳意識の低下や社会規範の崩壊が問題になっている。これらの諸現象は必ずしも学校・教師だけの責任ではなく、家庭・地域社会の教育力低下、より広く大人社会や社会的な風潮、あるいは教育政策などの反映である場合が少なくないかもしれない。けれども、学校で道徳教育に携わる教師の責任が全く問われずにすむものでもない。こうした状況に鑑み、将来「道徳」の授業を担当する受講生が、どのような基礎的指導力を身につけておかなければならいかは、教職科目「道徳教育の研究」の課題でもある。本稿では教員をめざす受講学生を対象にした筆者の「道徳教育の研究」の実践を報告する。教職科目の「道徳教育の研究」では、『授業計画』に示すとおり、教職志望をもつ学生が、教員免許法に基づいて修得すべき教職教養として、道徳教育の歴史や子どもの道徳性の発達、さらには『学習指導要領』の内容等について総合的に計画している。受講生は、これらの内容を半期間で習得するのであるが、筆者はより実践的な「学習指導案づくり」を中心とした授業を行う必要を感じ、「道徳」の学習指導案が書けることを「道徳教育の研究」の主要な目標の一つと考えている。なぜなら、学習を構想できなければ、授業はできないからである。特に「道徳」の学習指導案づくりで重要なことは、指導する側の「ねらい」、すなわち「中学生に気づいてほしい、あるいは考えてほしい」ことは何であるかを明らかにし、中学生が「自分とむき合う」道徳の指導とは、どうあればよいかを考えてほしいという点である。
著者
大堀 研
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.143-158, 2010

地域再生の文脈で使用される「ローカル・アイデンティティ」という用語は, これまで複数の意味・水準で使われてきた. 明確な概念規定抜きで使用すると, 現場に混乱をもたらしかねない. これまでの使用例は, 個人レベル(個人の地域に対する帰属意識)と, 集合レベル(地域関係者の多くに共有されている地域内の要素), の二通りに大別できる. 現場では, 語義を明示して使用する必要があり, コミュニケーション・コストは高い. だが「アイデンティティ」という語は「自己認識」の意識を喚起する利点がある. ただし正負の両側面の複合的な自己認識が求められる. また「アイデンティティ」の語が誘発する本質化の危険性を避けるために, 「ローカル・アイデンティティ」を, 変化し得るものと把握することが必要である. 一方で「アイデンティティ」と言う以上, 保持すべき要素の弁別も欠かせない. ここでも複合的な認識が求められる. 地域の複合性を捉えるツールとすることに, 「ローカル・アイデンティティ」の語を用いる意義を見出すことができる.The term "local identity" is used to mean a number of different things. Its meanings can be classified into two broad categories: the individual level (an individual's sense of belonging to a community) and the collective level (elements within a community that are shared by many people within it). At the community level, there is a need to clarify this definition, and it is a complicated process. Here, the word "identity" is advantageous in that it triggers an awareness of the "recognition of the self." However, both positive and negative aspects should be recognized in a composite way. Also, in order to avoid the risk of falling into essentialism, "local identity" should be understood as changeable, and should be understood in a complex way, along with the elements that ought to be preserved.
著者
中村 敏夫
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.95-103, 1983

"Industrial policy" is a general term for policies that enable the government to intervene in the activities of individual industries or enterprises. However, its concept, content and forms differ in every country. On this regard, it is AM13generally accepted that US industrial policy is no less interventionist than that of other countries. This paper, therfore, examines the scope, characteristics and effectiveness of US industrial policy in the historical perspectives. Since both political parties have the industrial policy as their main issue for the forthcoming presidential campaign, the emphasis of my research is made on the analysis of positive relationship between an industrial policy and a presidential election.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1412, pp.128-130, 2007-10-15

HDD(ハードディスク駆動装置)レコーダーに録画したハイビジョンのテレビ番組。1階のリビングにある薄型テレビで見たいのだが、今、そのテレビでゲームを楽しんでいる子供を押しのけるのも忍びない。無線LAN(構内情報通信網)で映像を送って2階にあるパソコンで見ることにするか——。 近い将来、そんな光景が当たり前になるかもしれない。
著者
村上 昇 高橋 清久 黒田 治門 江藤 禎一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-34, 1986
被引用文献数
1

偽妊娠ラットにおいて, 制限給餌のプロラクチンサージおよびコルチコステロンリズムに及ぼす効果を検討した。成熟雌ラットを, 14L:10D (グループ1: 5時点灯19時消灯, グループ2: 19時点灯7時消灯)の条件下で飼育し, それぞれのグループに自由給餌群と, 毎日9-11時のみ2時間の制限給餌群を設け, 23日後の発情前期に子宮頸部刺激で偽妊娠を誘起した。自由給餌群では, ノクターナルサージおよびダイアーナルサージは, グループ1ではそれぞれ3時および18時に, グループ2では15時および6時に認められ, プロラクチンサージがそれぞれの光条件に同調していることがわかった。一方, 制限給餌群では, 両グループともにノクターナルサージは影響を受けなかったが, ダイアーナルサージは消失した。血中コルチコステロンリズムは両グループともに, 制限給餌直前にピークを示した。以上の結果から, 偽妊娠ラットのプロラクチンサージでノクターナルサージとダイアーナルサージの成立には別の機構が存在する可能性が示唆された。
著者
村上 昇 高橋 清久 黒田 治門 江藤 禎一
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-34, 1986
被引用文献数
1

偽妊娠ラットにおいて, 制限給餌のプロラクチンサージおよびコルチコステロンリズムに及ぼす効果を検討した。成熟雌ラットを, 14L:10D (グループ1: 5時点灯19時消灯, グループ2: 19時点灯7時消灯)の条件下で飼育し, それぞれのグループに自由給餌群と, 毎日9-11時のみ2時間の制限給餌群を設け, 23日後の発情前期に子宮頸部刺激で偽妊娠を誘起した。自由給餌群では, ノクターナルサージおよびダイアーナルサージは, グループ1ではそれぞれ3時および18時に, グループ2では15時および6時に認められ, プロラクチンサージがそれぞれの光条件に同調していることがわかった。一方, 制限給餌群では, 両グループともにノクターナルサージは影響を受けなかったが, ダイアーナルサージは消失した。血中コルチコステロンリズムは両グループともに, 制限給餌直前にピークを示した。以上の結果から, 偽妊娠ラットのプロラクチンサージでノクターナルサージとダイアーナルサージの成立には別の機構が存在する可能性が示唆された。
著者
石原 義啓 大川 清 兵藤 宏
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.141-147, 1991
被引用文献数
3 5

スイートピー (Lathyrus odoratus L.) は切り花の花持ちが悪く, 花弁が軟弱で損傷しやすいため, 長時間の輸送が困難であることが大きな問題となっているが,切り花の花持ちや花弁の損傷による品質の劣化は, 出荷前にエチレンの作用阻害剤であるチオ硫酸銀 (silver thiosulfate, STS) を処理することにより著しく改善されることが報告されている (8,9). このことから, スイートピーの切り花の老化におけるエチレンの関与が考えられ, Morら (8) によって, その関与の概要が明らかにされた.<BR>そこで, スイートピーの切り花の老化におけるエチレンの関与をより詳細に明らかにする目的で, 自家採種した冬咲き系スイートピーの品種'ダイアナ'の切り花の老化に伴うエチレン生成と呼吸, 小花の各器官のエチレン生成と1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid (ACC), N- (malonyl) ACC (MACC) の含量を測定した. また, 1司時に切り花のエチレン生成, 呼吸,花持ちに及ぼす気温およびSTSの影響も調査した.
著者
西村 紀三郎
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學經済學部研究紀要 (ISSN:03899861)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.67-93, 1983-03

本稿でははじめから明確な結論を期してはいない。また論述すべき条件を残している。各地方の活動水準については単に住民一人当りの額で見るに止めずに,県民所得や県内純生産との対比による状況把握も必要と思われる。しかしこれまでの概括的把握によっても金融活動の地域的性格の一端は明らかにされたものと考える。各金融組織のそれぞれの活動条件に即した努力の結果が各地域の特性を形成し,それを東西に分けて把握したとき,財政活動に示される西高東低型の構造を裏付けあるいは反映する状況を看取することができる。そしてそれは対象の時点において状況展開の方向に即して示されていると見ることが許されよう。すなわち,52年3月末の状況に示される経済力の東の優位はその後の5年間における財政活動によっても変ることなく,さらに東の優位の強化となって展開された。その典型は貸出残高の関東の高位上昇と近畿の高位の保持不安に示され,預金残高としても関東は優位を保ち近畿は高位からの低落に歯止めをかけることができるかを問題にすべき状況にある。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.920, pp.34-37, 1997-12-15

具体的な数字は公表していないが、同社の日本での預金残高は1996年末までの3年間で4倍に拡大、97年に入ってからの9カ月間でさらに3割増加したという。夏と冬には毎年、期間を限定して金利を上乗せするボーナスキャンペーンを展開するが、今夏は問い合わせと新規開設口座が急増し、100人からなる24時間対応の電話センターが通話不能のパンク状態に陥った。
著者
山本 哲彦 吐合 隆拡 中園 邦彦 金城 寛 玉城 史朗
出版者
日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.62, no.601, pp.108-113, 1996-09-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

Genetic algorithms (GAs) with rough evaluations can prompt the evolution of neural networks that are able to control unstable dynamic systems. The proposed control method exploits the advantage of GAs that time-varying evaluations can be easily incorporated. First an easy evaluation in GAs induces the appearance of neural networks with controllability. Second, an evaluation of settling time prompts the evolution of neural networks that show high performance. The method is applied to the stable control of a bicycle. Neurocontrol of the steering at direction change causes reverse response like that of a human cyclist.
著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.139-159, 2003-01-31

筆者たちは、1999年〜2000年に関西圏に在住の女性を対象に無作為抽出法による性的被害の実態調査を実施した。この調査データの統計分析によって有意であることが確認された諸変数間の関係は次のようであった。(1)性的被害と5つのデモグラフィック原因(回答者の現在の年齢、現在の配偶者との同居状況、現在の母親との同居状況、回答者が育った地域、回答者の現在の雇用形態)との関係。(2)性的被害と心理的損傷(=客観的トラウマ変数)との関係。(3)性的被害の頻度、加害者のタイプ、被害継続期間と主観的トラウマ変数との関係。(4)性的被害とPTSD症状(=客観的トラウマ変数)との関係。(5)心理的損傷とPTSD症状との関係。(6)性的被害経験と「否定的」生活経験(=客観的トラウマ変数)との関係。(7)心理的損傷と「否定的」生活経験との関係。(8)PTSD症状と「否定的」生活経験との関係。以上の諸関係から性的被害のもたらす影響の流れを抽出すると、その影響の流れのメイン・ルートは、性的被害→心理的損傷→PTSD症状→「否定的」生活経験、と定式化できる。この連関から、PTSDの発症や「否定的」生活の発生を防止するためには、より前の段階での専門家等による治療的・福祉的介入が必要であることが示唆された。
著者
石川 義之 Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-24, 2009-01-31

本稿は. r人間科学研究紀要Jl 7 号に掲載した小論の続編である。111 身体的虐待の危険因子」 では,個人の精神病理,親子関係,家族の環境,状況的・社会的な条件に関連した危険因子について 考察する。112. 身体的虐待への対応」では,子どもの保護,心理的な治療,地域による介入について 言及する。113. まとめ」では,展開された身体的虐待の基礎理論の骨子を要約する。前編を含め本論 文は,子ども虐待への対策は子ども虐待ついての確かな理論を踏まえて策定されなければ,実効ある 対策とはなり得ないという仮説の上に立って執筆されている。This paper is a sequel of my paper "the Basic Theory of Child Abuse: with special reference to Child Physical Abuse," The Humαn Science Reseαrch Bulletin 01 Osαhα Shoin Women 's University,7: 1-35. The section 11 "Risk Factors associated with Child Physical Abuse" treats of factors associated with individual pathology,factors associated with the parent-child relationship,factors associated with family environment,and factors associ­ ated with situational and societal conditions. The section 12 "Response to Child Physical Abuse" refers to protection of children at risk, psychological treatment for physical abusive adults and children with physical abuse histories, family interventions, and community interventions. The section 13 "Summary" describes the main points of thebasic theory developed of Child Physical Abuse. This paper which includes Part 1 is on the assumption that intervention and prevention strategies for child abuse cannot be effective without being based on certain theories of child abuse.