著者
増田 忠信
出版者
桃山学院大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:21889031)
巻号頁・発行日
no.1, pp.97-125, 2014-11-28

The purpose of this paper is to investigate the starting point of Japanese people's morality.Moral standards, which are historically constructed, provide us with a measure of which behavioural patterns are acceptable and which are not.The transition from tsuwamono (soldiers) to bushi (warriors) created a peculiar value standard for Japanese people, leading to the so-called Bushido.Reflecting on the pre-Bushido period in Japan can help to understand themselves better. The framework of this paper is as follows : First, I consider what was regarded as evil in the Heian era by examining Vol. 29 of the Konjaku Monogatari.Second, I investigate the word tsuwamono in the Konjaku Monogatari and Shomonki.The way that this word is employed in those two texts suggests that people in the Heian era regarded Tsuwamono ambivalently, as newcomers. Third, comparing the Konjaku Monogatari Vol.25 with the Shomonki, I examine Taira no Masakado's Rebellion (939-940), which is a typical example of the transition from tsuwamono to bushi.I conclude that tsuwamono, originally related to the common people through land or locality, became a newly-influential power by their ability to pacify rebellions. Their transformation into bushi was the result. In the world of Heian aristocrats, the common people were not held to have the same moral sense that noble-born members of the Imperial Court enjoyed. Accordingly, they would be willing to join a rebellion if the time and circumstances were right. Since the gap between tsuwamono and bushi and the common people in their attitudes to work, rebellion, religion and other matters was so small, it became possible for them to hold a similar moral sense. As a result, from the second half of the Heian era onward Japanese people began to make their moral decisions based on a similar set of attitudes to those found in the tsuwamono no michi and, later, the Way of the Samurai.
著者
佐々木 中
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.47-68, 2007

さまざまな宗教現象において、「享楽」と呼ぶべき何かがあると考えうる時点は少なくない。宗教の享楽とは何か。この問いに答えるための予備考察として、ジャック・ラカンの晩年に見られる「享楽の類型学」と呼びうる部分を簡潔に整理し、享楽の定義から始めて「絶対的享楽」「二つのファルス的享楽」および「対象aの剰余享楽」という、いくつかの享楽の類型を提示する。そして、それらの概念が明らかに「宗教的」なものと関係があり、宗教現象分析のための概念として使用可能であることを指摘する。また、彼が最後に提出した「大他者の享楽=女性の享楽」が、他の享楽を「超過する」ものであるばかりか、神秘家の伝統に関わるものとして、精神分析自体の「歴史的限界」を露わにすることを呈示する。
著者
須田 亮子
出版者
京都女子大学・京都女子大学短期大学部
雑誌
女子大国文 (ISSN:02859823)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.107-132, 2005-06-30
著者
内田 良
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.201-221[含 英語文要旨], 2010

本稿の目的は,「リスク」の理論と分析手法を用いて,学校管理下における各種事故の「実在」,とくに事故の発生確率を比較することから,学校安全に関する今日的な「認知」のあり方を批判的に検討し,エビデンスにもとづいた学校安全施策を提唱することである。今日,学校安全の名のもと不審者対策に多くの資源が投入されている。いっぽう,学校における多種多様な事故を広く見渡して,事故の発生件数や確率を調べようとする試みは少ない。そこで本稿では多義的なリスク概念を手がかりに,次のように分析を進めた。まず社会学のリスク論から,リスクは社会的に構築されるという視点を得た。事故は「認知」に左右される。次に自然科学の方法から,事故の「実在」に注目して各種死亡事故の発生確率を算出した。その結果不審者犯罪よりも発生確率が高い事故が多くあることが明らかとなった。学校事故の特殊性は,管理するという「決定」に,多くの主体(国,自治体学校,保護者,地域住民)が容易に関与できる点である。このとき,「決定」はリスクをめぐるコミュニケーションを活性化させ,リスクに対する人びとの認知を敏感にさせていく。本稿が提唱したいのは,危機感が増幅し始めた早い段階においてエビデンスが参照されることである。事故を管理しようとする意志が多くの主体に増幅していく前に,「決定」の大きな権力を有する教育行政が,エビデンスにもとづいた「決定」をなすべきである。
著者
近藤 光博
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.101-123, 1999-06
著者
住吉 智子 佐野 富子 田邊 義浩 野田 忠
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.680-688, 2004-12-25
被引用文献数
4

本研究の目的は,歯科治療の音である切削音と小児の歯科恐怖の関係を明らかにすることである。方法は,新潟大学医歯学総合病院小児歯科診療室に定期診査のために受診した4-15歳の男児52名,女児52名,計104名(平均年齢8歳5か月)の小児患者に対し,切削音の印象をFaces Pain Rating Scaleを用いて評価し,その後CFSS-DSの質問紙に回答した。結果をもとに検討し,以下の結論を得た。<BR>1.低年齢群,高年齢群の平均値を比較するとコントロール音は2群ともほぼ同様の値であったことに対し,雷雨の音,切削音は2群ともに高い値であり,切削音は小児にとって不快な音であることが示唆された。<BR>2.因子分析の結果,低年齢群では切削音は雷雨の音と関連を認めた。一方高年齢群では,切削音はCFSSDSの歯科受診に関する恐怖と関連を認めた。<BR>3.低年齢群では切削音を自然界の不快な音と同様に「音」の恐怖と捉えており,歯科経験を重ね高年齢となると,切削音を歯科に関係する恐怖として認識するようになると推察された。<BR>4.従来の報告と同様,女児は男児よりも音刺激により概念的歯科恐怖を持つ傾向が示唆された。
著者
辰巳 直也 森勢 将雅 片寄 晴弘
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.17, pp.1-6, 2010-03-05
参考文献数
8

Vocaloid 「初音ミク」 の発売以来,歌唱合成に対する注目が高まりつつある.Vocaloid では,メロディーと歌詞を入力することにより歌声を生成できる.また,表情パラメタを調整することにより様々な表情を付与することができる.しかし,より人間らしい歌声にするには,表情パラメタの調整を細かく設定することが必要なため,非常に煩雑で時間がかかる.本研究では,あらかじめ,特定の歌唱者 (GACKT) の歌い方にみられるビブラートやポルタメントといった音量,音高等の特徴を表情パラメタとして抽出しておき,それらを Vocaloid の出力に付加することで,より,当該の歌唱者らしい歌い方を実現するような GACKT レゾネータの開発を目指す.Since the release of Vocaloid "Hatsune Miku," voice synthesizing applications have been known to the public people. Vocaloid generates vocal melodies, from the given lyrics and melodies, and provides users with the interfaces for adjusting parameters for expression control. However, setting parameters for elaborating natural expressiveness requires complicated operations. This paper introduces a vocal resonator that makes the vocal melodies more natural by copying the characteristics of a professional singer's (GACKT) singing.
著者
白峰 旬
出版者
別府大学史学研究会
雑誌
史学論叢 (ISSN:03868923)
巻号頁・発行日
no.46, pp.151-163, 2016-03

これまで、関ヶ原の戦い(1)における徳川家康方、石田三成方双方の軍勢の布陣については、明治26年(1893)刊行の参謀本部編纂『日本戦史 関原役(附表・附図)』(2)収載の布陣図が近年まで踏襲されてきた。しかし、拙著『新解釈 関ヶ原合戦の真実』(3)でその信憑性に疑義を呈したほか、直近では高橋陽介『一次史料にみる関ヶ原の戦い』(4)、乃至政彦『戦国の陣形』(5)によって、石田三成の笹尾山布陣が明確に否定されるなど、根本的に再検討が必要になってきている。 また、桐野作人『関ヶ原 島津退き口』(6)では、前掲・参謀本部編纂『日本戦史 関原役(附表・附図)』(7)収載の布陣図について、石田三成方軍勢が横一戦に布陣しているように描かれている点に疑義を呈している(8)。 そもそも、「現在の関ヶ原合戦の陣跡地の場所は、神谷道一氏著による『関原合戦図志』(明治25(1892)年5月)を参考に、岐阜県の役人たちが参加し、現地事情を様々に考慮しながら決めたそうです。」(9)という指摘があることから、現在の関ヶ原の戦いにおける諸将の陣跡地比定が慶長5年(1600)当時の一次史料によるものではなく、その信憑性という点で大いに疑義があるため、今後、再検討の余地が大幅にあることは自明である。 こうした点を考慮すると、関ヶ原の戦いにおける徳川家康方、石田三成方双方の軍勢の布陣については、ゼロベースで考え直す必要が出てきたことになる。よって、本稿では、石田三成方軍勢の布陣について若干の考察を加えることにしたい。
著者
西 修
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學法學部研究紀要 (ISSN:03899896)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.27-65, 1996-03-10
著者
星 秋夫 稲葉 裕
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.85-92, 2002-02-01
参考文献数
24
被引用文献数
12 4

本研究では近年13年間 (1986~1998) における学校管理下での体育・スポーツ活動中における外因性死亡の発生状況について検討し, 以下のような結果を得た.<BR>1) 過去13年間における外因性死亡事故の発生は295件, 年平均22.7件であり, 全体の約52%が外傷によるものであった.いずれの外因においても女子より男子での死亡件数が多かった.<BR>2) 外傷, 熱中症はそれぞれ進学するにしたがって増加するが, 溺水は各学校で同様に発生した.高校において, 外傷と熱中症の発生は高学年時よりも低学年時で高い傾向にあった.<BR>3) 外傷, 熱中症においては大部分が運動部活動時に発生したが, 溺水では大部分が体育授業時に発生した.<BR>4) 外傷の発生は柔道が最も多く, 以下ラグビー, 野球等であった.溺水は水泳であり, 熱中症は野球, サッカー, 柔道等であった.また, 外傷による死因は約74%が頭部外傷による死亡であった.<BR>5) ICD-10による分類において, 外傷で最も多かったのは投げられ, 投げ出されまたは落下する物体による打撲 (W20) 54件であり, 以下スポーツ用具との衝突または打撲 (W21) 33件, 他人との衝突 (W51) 20件等であった.溺水では水泳プール内での溺死および溺水 (W67) 49件等, 熱中症は自然の過度の高温への暴露 (X30) 69件であった.<BR>6) 外傷による死因で最も多い柔道における外因の大部分はW20であった.また, ラグビー, アメリカンフットボールの大半はW51, 野球, サッカーの大半はW21であった.<BR>以上のことから, 発生事例の多い運動種目においては発生防止に対して十分に注意を払うとともに, 基礎練習の充実等, 予防策を講ずる必要がある.
著者
銭谷 真人
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2018

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