- 著者
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対馬 栄輝
尾田 敦
- 出版者
- 日本理学療法士学会
- 雑誌
- 理学療法学 (ISSN:02893770)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.4, pp.218-225, 1996-05-31 (Released:2018-09-25)
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
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5
変形性股関節症患者にみられる跛行の原因の一つとして歩行時股関節外転筋の反応が遅延,すなわち立脚期踵接地時における下肢筋の活動開始時期が遅延していると考えた。本稿の目的は変形性股関節症患者における歩行時下肢筋の活動開始時期を計測して,健常者と比較検討することである。変形性股関節症患者10名と健常者10名を対象として,自由歩行時の中殿筋と大腿直筋のEMG,並びにフットスイッチから信号を記録し,踵接地に対して股関節外転筋と膝伸展筋の活動が開始する時期を測定した。その結果,患者群は各筋における活動開始時期の間に有意な相関関係は認められず,各筋の活動開始時期に変調が起こっていると考えられた。また健常群と比較して各筋活動開始時期は有意に遅延しており,動作の予測制御(pre-activity)の遅延が生じていると考えられた。この結果から運動の協調性の改善を目的とした閉鎖運動連鎖での訓練を頻繁に取り入れていく必要性が予想された。