著者
Ryabko Boris 鈴木 譲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.241, pp.13-18, 2000-07-21

KiefferらのMPM(multilevel pattern matching)とLZ(Lempel-ZivLZ)77の漸近的な性能の比較を試みた。定常エルゴード情報源を仮定すると、MPMは冗長度も小さいし、実データに対しての実験でも、CTWやLZと比較してかなり効率がよいことが示されている。本研究では、情報源の仮定を一切排除し、実際にどれだけ多くの系列に対してよく圧縮できているかを評価してみた。
著者
西田 芳正
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.38-53, 2010-10-01

格差,貧困が深刻さの度合いを増すなかで,非行,犯罪の増加が懸念されている.雇用の喪失が希望の喪失につながり問題行動が増加するという議論が典型例だが,従来から非行との関連が高かった貧困・生活不安定層の若者に焦点を当てたものではない.本論文は,03年,09年に行ったインタビュー調査をもとに,貧困・生活不安定層の子どもから大人への移行過程の特徴とその変容を検討する.早期の学校からの離脱,非行を含む遊び中心の生活,不安定で困難な大人の生活への早期の移行が本人にとって身近な世界への「自然な移り行き」として進行していること.そして,近年,そうした移行を可能にしていた「受け皿としての第2部労働市場」が経済変動により縮小,不安定化しつつあることが明らかとなった.非行,犯罪の増加をもたらす主な要因の一つが「自然な移り行き」の困難化であり,対策,支援策はここに焦点化したものである必要がある.安定した雇用の減少が「希望の喪失」と非行,犯罪の増加につながるとする議論とそれにもとづく対策だけでは,貧困・生活不安定層が直面する困難に対処することは不可能であり,若者の多様な存在形態を踏まえた支援策が求められる.
著者
本多 康子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. 文学研究篇 (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.297-318, 2017-03

源頼光とその家来である四天王が土蜘蛛を退治する説話は、様々な文芸作品として享受され展開していった。土蜘蛛は、古くは記紀神話において朝廷に服属しない一地方勢力としてその存在が語られていたが、中世になり、お伽草子の武家物というジャンルの中で新たに妖怪退治譚として再構築された。この中世における物語文脈の転換を契機として、妖怪としての土蜘蛛退治の「語り」は、テクストの枠を超えて絵画や芸能へと裾野を広げて展開したのである。本稿では、特に中近世にかけての土蜘蛛退治譚の変遷と、それを題材に制作された絵画作品がどのように受容されたかを考察する。清和源氏を出自とする源頼光とその家来である四天王らの妖怪退治譚が、軍記物語に付随する伝承として生成されやがて独立した物語として発展した背景には、中近世にかけて軍記物語の古典化と周辺説話の再編成がなされたことが密接に関連する。とりわけそれらの最たる受容者であった「武家の棟梁」将軍家周辺による「語り」の管理と継承が及ぼした影響について着目し、「武家による妖怪退治譚」に仮託された政治性を読み解きたい。The tale of how Minamoto no Yorimitsu (948-1021) and his four faithful vassals vanquished the tsuchigumo, a proud band of warriors unwilling to submit to central authority, has been adapted into various genres of both art and literature. The Kojiki (Records of ancient matters, 712) and the Nihon shoki (Chronicles of Japan, 720) preserve tales of these recalcitrant warriors, describing them as dwelling on the periphery and spurning the authority of a growing court. During the medieval period, these accounts were adopted into a new genre of warrior tales (buke mono), where the tsuchigumo warriors took on the appearance of demonic rebels. Having once entered the realm of demonic villains, these same recalcitrant warriors became, as it were, too large for the confines of mere text. These fantastic tsuchigumo were promptly appropriated into the visual and performative arts, where they took on a number of interesting guises. This paper explores some ways in which tales of the tsuchigumo warriors were transformed throughout the early modern period, and how illustrated works based on these same tales were received in contemporary literature and art. While Minamoto no Yorimitsu's subjugation of the tsuchigumo began as but one short episode within a larger military tale, it was later elevated to the status of an independent narrative in its own right. This elevation was motivated by the canonization of military fiction, as well as the re-adaptation of related tales, which took place during the early modern period. The control and transmission of these tales was dominated, of course, by the shogunal family, the very people who most enjoyed these tales. This paper aims at probing the political significance of such tales insofar as they were simultaneously produced and consumed by the warrior class.
著者
平松 隆円
出版者
佛教大学教育学部学会
雑誌
佛教大学教育学部学会紀要 (ISSN:13474782)
巻号頁・発行日
no.7, pp.211-223, 2008

社会学,心理学,文化史学など,女装(この場合,広義で男性が女性物の衣服を着ること)に関する研究は,多い.しかし,ほとんどの場合,「服装倒錯」「変身願望」「女性化志向」「衣服における性差のあいまい化」などを,指摘するにとどまる.それは,女装をおこなう者の声をもとにしているのではなく,男らしい男性なら,男らしい衣服を着るということが前提として研究がすすめられているからである.一般的には,服装において形態上の男女差があらわれたのは,最もはやいヨーロッパでも中世以降とされている.それ以前は,男女とも基本的には筒状の衣服を着ていた.日本においても同様である.日本の衣服(着物)の場合,そこには男女差はない.着物の合わせは男女で同じ.むろん,柄による違いはあるが.服装における男女差が広がったのは,産業社会化がすすみ,社会的なレベルでの男女の役割分担が浸透することにより,男性はシンプルで地味な,女性は形も色も華やかという方向に向かっていったからだ,つまり,どのような服を着るかということは,社会や文化と無関係ではいられない.にもかかわらず,これまで社会や文化といった外的側面から,また個人の性格特性といった内的側面から総合的におこなわれた研究は,ほとんどない.本論では,現代における女装行動として,「ギャル男」をあつかう.彼らはなぜ,女の子たちと全く同じファッションをおこなったのか.「ギャル男」を報道したメディアや「ギャル男」の生の声を中心とする言説分析に加え,社会心理的研究の結果を加味することで,現代における女装行動の意味を文化心理的に考えてみたい.女装異性装若者フェミ男ギャル男ギャル渋谷文化心
著者
飯野 智子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
no.31, pp.59-75, 2010-03

セクシュアリティ表現と商品化の場においては、長らく女性が商品であり男性が消費者であったが、女性のためのセクシュアリティ文化も近年広がりを見せている。ボーイズラブコミックやレディスコミック、バトラーズカフェ等のポップカルチャーや、キャバクラ、ホストクラブといった性が商品化される場において、男女のセクシュアリティ表現にどのようなジェンダー差、非対称性が表れるのか。仮構の世界に求められる恋愛と性の検証を通して、セクシュアリティ文化におけるジェンダー構造を分析する。
著者
石丸 径一郎
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.283-290, 2002-02-25
被引用文献数
1

Studies on identity and adjustment of minority group members exist independently in each minority group. The author tries to integrate studies on various minority groups in the viewpoint of identity development. An integrated model of minority group identity development is proposed on the basis of studies from three fields (ethnic minority, sexual minority, visual impairment). From this integrated viewpoint, many minority group members can benefit from preceding studies of other fields.
著者
加藤 悠二
出版者
国際基督教大学
雑誌
ジェンダー&セクシュアリティ (ISSN:18804764)
巻号頁・発行日
no.4, pp.61-72, 2009

This study is based on interviews with heterosexual women who have closefriendships with gay men. In the Japanese media's "Gay Boom" phenomenon that arosein the 1990s, gay men were represented as being the ideal partners for heterosexualwomen. While this has stimulated research and incurred various criticisms from gay andlesbian academics and activists, there has been no qualitative research of heterosexualwomen.This study is based on interviews of 14 heterosexual women who have closefriendships with gay men. The interviews were of one hour in length and consisted ofquestions such as "Where did you meet your gay friend and what kind of relationshipdo you have with them?," "What kind of relationships do you have with heterosexualwomen and men?," and "Do you have lesbian friends?" Various patterns were discoveredin the way heterosexual women got to know gay men and in the kinds of relationshipsthey formed. It also became apparent that even if the initial motivation for meeting had been out of mere curiosity, the relationships eventually developed into close friendships.
著者
金城 克哉 Kinjo Katsuya
出版者
沖縄外国文学会
雑誌
Southern review : studies in foreign language & literature (ISSN:09136754)
巻号頁・発行日
no.24, pp.85-89, 2010-02

今回、MSMの男性が利用する出会い系掲示板の投稿文の分析調査を行った。調査ではさまざまな特徴的な言葉が見られたが、本稿では文末表現(助動詞)「です」の代替表現「す」「っす」に議論を絞る。
著者
小針 誠
出版者
同志社女子大学
雑誌
同志社女子大學學術研究年報 (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.119-127, 2005-12-25

論文 (Article)

21 0 0 0 IR 檜原村の狼信仰

著者
西村 敏也
出版者
武蔵大学総合研究所
雑誌
武蔵大学総合研究所紀要 (ISSN:09181849)
巻号頁・発行日
no.22, pp.176-163, 2012
著者
安梅 勅江 呉 栽喜
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.7-18, 2000

本研究は、夜間を含む保育サービスを利用している子どもの発達や適応に対する、保育形態(昼間・夜間)、育児環境、保護者の状況の複合的な影響を明らかにし、今後の課題を検討することを目的とした。全国の認可夜間保育所(全41個所)のうち22ヵ所の保育所にて保護者及び園児の担当保育専門職を対象に質問紙調査を実施した。有効回答は保護者1,949名(回収率73.0%)、園児(保育専門職による回答) 2,905名(回収率74.6%)であった。本研究の結果を要約すると以下の通りである。(1)子どもの発達状態には、「保育の形態や時間帯」ではなく、「家庭における育児環境」及び「保護者の育児への自信やサポートの有無」などの要因が強く関連していた。(2)したがって、特に夜間保育園においては、家庭的な環境をいかに充実するかが重要な課題となる。物理的な環境、人的な環境、保育プログラムを含め、子どもの育ちに適合した家庭的な環境をさらに整備する必要がある。(3)さらに、保育園の役割として、育児に関する相談相手となり、保護者の育児への自信の回復を促すなど、保護者に対する「子育てを支える」ための地域に開かれたサービスの充実が期待される。(4)現実として、深夜保育には通常保育より発達にやや遅れのみられる子どもの在籍している割合が高いことから、通常保育よりさらに専門性の高い保育スタッフの配置が必須である。(5)夜間保育の子どもに対する影響を本当の意味で明らかにするためには、今後さらに経年的な研究を継続する必要がある。
著者
生駒 忍 Shinobu Ikoma
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The journal of Kyoei University (ISSN:1880859X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.263-273, 2015

教員採用試験の教職教養を構成する分野のひとつに、教育心理がある。この教育心理は、今日の学術的な教育心理学と類似してはいるが、同一ではない。本稿はそこに含まれる、心理学の中では長い歴史を持つ分野である記憶について、近年の出題動向を検討した。平成23 年から25 年の3 年間における、教育心理分野の記憶に関する出題を収集した。これを出題年ごとに並べ、それぞれに指摘を加えた。出題内容としては、Ebbinghaus,H. およびその忘却曲線と、レミニッセンスとが多いことが明らかになった。これは、教育心理が「古典」となっていることを表している。また、表現上の不備等も多く見られた。このような傾向は、記憶に限ったことではないとも考えられ、今後検討を広げることが求められる。