著者
宮崎 あゆみ
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.58, pp.87-95, 2016-03

本稿の目的は,質的研究法の特徴を明確化し,質的研究法の重要な試みの一つであるポートレイチャー法を紹介することで,日本においてメインストリームとは言えない質的研究法のティーチングの発展に貢献することを目的とする。本稿では,まず,質的研究法の特質について整理し,質的研究法が,インタビューや観察等の質的なデータによって規定されるものではなく,人々の意味構築や実践のプロセスを問う「how」の枠組みに規定されることを明確化する。次に,「質的」枠組みの意味するところを考察する材料として,教育を初めとした広い領域で近年注目されているポートレイチャー法を紹介する。ポートレイチャー法とは,方法的トライアンギュレーションから得られた,文脈に即した厚い記述を基に,現実の複雑性,ダイナミズムや矛盾を捉える手法である。その手法は,社会科学の伝統的な表現方法に挑戦し,芸術と社会科学の境界を問う試みであり,「質的」の意味を考える上で示唆に富んでいる。In this article, I aim to contribute to the teaching of various types of qualitative research - which is still not viewed as a mainstream method in Japanese social sciences - through dissecting the features of qualitative research and introducing "portraiture methodology." First, I will explain that qualitative research is not determined solely by the quality of its data, but also by its framework and its "how" questions for exploring the processes of peoples' meaning constructions. I will then introduce "portraiture methodology," a widely respected methodology in many disciplines (including education), to think about what "qualitative" really means. Portraiture methodology combines various qualitative methods and pursues triangulations in various forms to obtain a thick, contextual documentation of complex, dynamic, and contested human experiences. It challenges the traditional ways in which social sciences represent reality, and incorporates artistic means to capture complex human experiences. This attempt to blur the boundaries of arts and sciences offers abundant suggestions about how to understand the meanings of "qualitative."
著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-85, 2007-03-01

親が子供の障害を受容して行く過程に関する文献的検討を行った結果,障害の診断を受けてから,親の心の軌跡に焦点を当てた段階説と慢性的悲哀説の2説が報告されている.段階説の概略は,親が子供の障害を受容して行く過程は長期に渡り紆余曲折があるが,いずれは必ず障害のある我が子を受容するに至るとする説である.一方慢性的悲哀説は,親の悲しみは子供が生きている限り永遠に続き,子供の成長に伴う転換期において繰り返し経験され続け,悲しみに終わりはないとする説である.さらにわが国においては,2説を包括する形の障害受容モデルもあり,研究者による分析方法や解釈の仕方に違いが見られる.障害を持つ子供の支援に携わる医療者は,主たる養育者である親が子供の障害を受容して行く過程を理解し,さらに2説の枠組みだけではなく親の養育体験全体を捉えることが必要であり,今後さらなる体系的研究が望まれる.
著者
亀井 邦裕 児玉 公信 細澤 あゆみ 成田 雅彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-7, 2013-09-05

ビジネスシステムにおいて代金計算に伴う消費税の計算は必須であるが,消費税率の段階的引き上げや特例の導入などが見込まれている中で,税制改定に追随し,適用時点に応じた税額計算を,合理的に行う必要があるここには,過去の取引データの遡及的な修正も含む.このための概念モデルのあるべき姿を,取引 (商流) データおよび代金 (金流) データのモデルを含めて提案する.Calculation of consumption tax accompanied with the price calculation is inevitable in the business information system. However, it will be more difficult to catch up the tax revision and calculate the tax reasonably in accordance with the applicable time, because of expected gradual increase in the tax rate and uncertain application of special exceptions. In addition, the calculation must include retrospective fix of transaction data in the past. In this paper, we propose the conceptual model for consumption tax calculation, which can be an ideal one, because it includes models of the transaction representing commercial distribution and billing as the example of money distribution, which are the organizational basic activities.
著者
皆川 信子 上原 麻理子 関 志織 新田 あゆみ 古河原 健人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.247-251, 2010 (Released:2010-02-01)
参考文献数
24
被引用文献数
2 4

Atovaquone, an analog of ubiquinone, binds tightly to the ubiquinol oxidation site (Qo site) of parasite cytochrome bc1 complex to inhibit electron transport at concentrations far lower than those at which the mammalian system is affected. The mode of action is thought similar to that of myxothiazol. To treat Pneumocystis jirovecii and Plasmodium falciparum infections, atovaquone has been used worldwide whereas it is unapproved in Japan. Since the pathogenic Candida species fungi seem resistant to atovaquone, this drug is not clinically available for candidosis, particularly deep mycosis. We examined the effects of atovaquone on cellular respiration and in vitro growth of C. albicans to explore a new therapeutic possibility for fungal infections. Atovaquone strongly inhibited glucose-dependent cellular respiration similarly to antimycin A, stigmatellin, and myxothiazol, specific bc1 complex inhibitors. However, atovaquone suppressed glucose-dependent cell growth to a much lesser extent versus the comparator agents. When added alone, lithium exerted slight growth inhibition. The combined addition of lithium with atovaquone showed a significant increase in inhibition of growth. Although the way lithium acts synergistically with atovaquone remains to be elucidated, our results suggest a new therapeutic possibility of this combination for the treatment of candidosis.
著者
大川 あゆみ 富原 一哉 オオカワ アユミ トミハラ カズヤ OKAWA Ayumi TOMIHARA Kazuya
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.12, pp.69-89, 2015-03

Affective disorders are characterized by a significant dysfunction of controlling a person's emotional state ormood, inducing social maladjustment. Because women have approximately twice the risk for these disorders than men and the risk increases during peri-menstrual, pregnant, and menopausal periods, it is considered that gonadal hormones, such as estrogen and progesterone, are involved in women's vulnerability to the disorders. In this review, we focus on the risk factors of women's typical affective disorders and discuss the neuroendocrinological mechanisms regulating them. Many studies have provided evidence that the limbic system, including the amygdala and hippocampus, play an important role in regulating the emotional state, and that the GABAergic and monoaminergic neurotransmitter systems and Hypothalamic-Pituitary-Adrenal (HPA) axis are involved in the neurobiology of affective disorders. In addition, the brain areas involved in emotion are rich in estrogen receptors (ERs) and estrogens influence the functions of the neurotransmitter and neuroendocrine system. Especially, the distinct roles for two ER subtypes, ERα and ERβ, in HPA axis activity may be responsible for the development of women's vulnerability to affective disorders. Understanding this rucial mechanism will help provide a prophylactic and therapeutic preparation for women specific affective disorders.情動障害とは,情動機能がうまく働かず社会的な不適応が生じる障害であり,自殺との関連が高く,それらの疾患に対する施策やメカニズムの解明が求められている。また,その発症率は女性が男性の約2倍であり,月経関連症候群や産褥期精神障害など女性特有の情動関連障害も存在することから,女性は情動関連障害に対して脆弱性が高いと考えられている。そこで本論文では情動関連障害の発症要因とその神経内分泌メカニズムについて概観し,女性の情動関連障害への脆弱性に対するそれらの影響を考察することとした。 まず,女性の情動障害の発症要因としては,遺伝要因,女性特有のライフイベント,性腺ホルモンの関与などが考えられる。しかし,性腺ホルモンの影響は遺伝的要因の主要な発現経路の一つであり,女性特有のライフイベントも性腺ホルモンの変動時期と連動することから,エストロゲンやプロゲステロンといった性腺ホルモンを中心にしてこれらが相互作用していると考えることができる。 次に,女性の情動関連障害発症メカニズムを明らかにするために,性腺ホルモンと情動調節の神経解剖学的機構,神経化学的機構,ストレス反応の神経内分泌学的機構との関係を考察した。例えば,性腺ホルモンの投与は,扁桃体や海馬の構造や活性を変化させ,また,GABAやセロトニンなどの神経伝達物質の合成や受容体の発現を変化させることが示されている。さらに内分泌的ストレス反応を司る視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系にも性腺ホルモンは影響を与え,ストレスに対するこの系の反応性を変容させる。このように性腺ホルモンが情動を司る脳・神経機構と強く関係することについては多くの報告がなされているが,その機序についての解明は未だ十分とはいえない。今後,これらの疾患の予防・治療に有効な知見を得るためにも,さらに情動調節を媒介する各要因とそのメカニズムの解明に注力していく必要があると考えられる。
著者
亀井 邦裕 児玉 公信 細澤 あゆみ 成田 雅彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1351-1362, 2015-05-15

企業情報システムは変化する企業環境に対し,柔軟で機敏な対応を迫られている.そこで稼働するビジネス系アプリケーションは短期間での構築が可能で,なおかつ変化に強い構造を持っており,再利用開発が可能でなければならない.それは経験に裏打ちされた合理的な概念構造を持ち,変化する部分と固定部分が明確に分かれた実装構造となっているはずである.本論文は,そのようなアプリケーションを開発するための1つの取組みとして,概念モデルに基づく実装方法を試行し,消費税計算などの公開可能な題材を用いた概念モデル,実装モデルなどを成果として提示する.
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002-08-20
被引用文献数
27 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。<br>
著者
嘉数 朝子 井上 厚 田場 あゆみ Kakazu Tomoko Inoue Atushi Taba Ayumi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
no.55, pp.221-232, 1999-10

本研究の目的は、(1)生活習慣と学習習慣、ストレス反応、および体温との関連を検討すること、(2)被験者を低体温群と普通体温群の2群に分け、生活・学習習慣、ストレス反応の両群間の違いを検討すること、であった。主な結果は次の通りであった。生活習慣とその他の要因との間には関連があった。一方、学習習慣は、ストレス反応や体温との間には関連はみられなかった。このことから、小学生においては、学習習慣、ストレス反応、体温は生活習慣の影響を受けることが示唆された。また、生活習慣尺度の中の「遅刻」の項目に関して、学習習慣の3下位因子の全てと関連がみられたことから、「遅刻」は学習習慣の形成に最も影響を与えることが示唆された。また、低体温群と普通体温群の間で、生活・学習習慣とストレス反応には違いはみられなかった。
著者
小平 あゆみ 神野 健哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.478, pp.5-8, 2008-01-25

本研究では変形テントマップによるカオスを用いた自動作曲システムについて述べる。我々の目標はできるだけユーザーの好みに応えられる自動作曲システムを構築することである。この目標を達成するために、我々は「カオスを用いた自動作曲システム」を提案する。本システムは、マルコフ連鎖を利用し音楽の3要素であるメロディ・リズムを生成し、最後にメロディに合った和音を生成する。本研究では、状態遷移確率を変形テントマップによるカオスを用いる。和音は生成されたメロディに合うものを3コードから選択する。本自動作曲システムは既存の曲に依存せずユーザーの好みに合った曲が生成できるシステムの構築を試みた。