著者
岸田 あゆみ 霍 明 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P2065, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 日常生活動作は、二つ以上の動作を同時に遂行している場面が多くある.心理学領域では、同時に複数の動作を行う場合、人間の注意需要には限界があり、それぞれの動作に対して必要な注意の容量が配分されると考えられている.必要な注意の容量は、動作の習熟度や複雑性、個人の動作レベルにより異なる.これを評価する指標として反応時間がある.ある連続した活動(主課題)遂行中に、単純反応時間課題(第二課題)をそこに加えた時の第二課題に対する反応時間のことをプローブ反応時間(Probe Reaction Time, P-RT)といい、歩行中のP-RTは歩行安定性の評価に有用であると報告されている.これら反応時間測定の多くは、10回の平均値を用いて検討しているものが多い.しかし、動作と与えられる刺激のタイミングには関連性があると考えられ、10回という回数を採用する客観的な理由は明らかではない.そこで、速さの規定が容易で比較的自動化されやすいといわれる手タッピングを主課題としたP-RTを測定し、その測定回数の絶対信頼性について検討した.【方法】 対象は、健常成人14名(男性11名、女性3名)で、平均年齢は19.9±2.1歳であった.測定は、椅子座位にて安静座位時、1・2・3・4・5Hzの速さに合わせたタッピング施行時について行った.タッピングは非利き手とし、各速さの施行順序はくじにてランダムに決定した.被検者の課題は「ようい」の後の電子音(音刺激)に対して、できるだけ早く「Pa」と発声することとした.タッピングによる疲労を考慮し、各速さの測定終了後に休憩を入れ、各速さにつき10回測定した.反応時間測定機器は,刺激装置はPCでサウンド処理ソフトを用いて音刺激信号を作成し,デジタルオーディオプレーヤ(Rio製)にデータを転送し携帯式スピーカに接続した.集音装置はデジタルIDレコーダを使用した.データをPCに取り込み,DIGIONSOUND5サウンド処理ソフトで分析を行った.得られたデータは、速さごとに測定回数までの平均値を算出し、10回の平均値と比較した.10回の平均値を基準にして、それに対する測定回数までの平均値の信頼性についてBland-Altman分析を用いて検討した.なお研究に際し、被験者に研究の目的について十分説明し、参加の同意を得た.【結果】 1Hzでのタッピング以外は、7回目までの平均値で系統誤差が消失した.1Hzでは9回目までの平均値において系統誤差を有していた.【考察】 反応時間の測定において高い信頼性のある結果を得るためには、少なくとも10回は測定値を得る必要があると考えられる.ただし、1Hzの測定結果からは10回の測定でも信頼性の高い結果とはいえない可能性が示唆された.
著者
宮崎 あゆみ
出版者
東京大学教育学部
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.169-177, 1993-03-30

This research examines student subcultures with a gender perspective, using the ethnographic approach on a girls' high school. In this paper I call subcultures studied with gender frameworks in mind "gendered subcultures". In the first part, I briefly review traditional subculture studies and school organization studies which have overlooked such aspects as gender roles and femininity and masculinity. I also review the debate about single sex education v. s. co-education. This debate focuses on sexism within schools and subcultures related to girls' academic achievement. In contrast, this research focuses on femininity and gender roles as aspects of gendered subcultures. In the second part, the research, focusing on femininity of girls, shows that, within a girls' high school, there are gendered subcultures free from femininity, peculiar to a single sex school, but that they both accommodate and resist femininity out of school. It is confirmed that femininity is not fixed but changing.
著者
寺井 仁 三輪 和久 田嶋 あゆみ
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-49, 2014-08-31 (Released:2014-10-07)
参考文献数
27

本研究では,マジックのトリックを解決する課題を対象に,(a)予期しない現象の原因同定に加齢が及ぼす影響,および(b)高齢者同士の協同が原因同定に与える効果について実験的な検討を行った.実験の結果,高齢者の原因同定のパフォーマンスは若齢者に比して低下することが示され,トリックが存在する箇所および存在しない箇所の弁別が困難であることが示された.一方,すでに得られた情報を起点として原因を探るという問題解決方略は高齢者においても保持されていることが示された.また,高齢者が協同して助け合うことにより,原因同定のパフォーマンスの向上が認められ,そのプロセスにおいて,得られた情報を起点とした原因の推測がより改善され,トリックが存在する箇所への疑いがより強められることが明らかとなった.しかしながら,トリックが存在しない箇所に対する疑義の棄却に関しては協同による助け合いの効果は認められなかった.
著者
細羽 竜也 金子 努 越智 あゆみ
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,若年層の精神科医療へのアクセスの実態を明らかにし,支援プログラムを作成することであった.大学生の精神科医療への態度を検討したところ,そのイメージは否定的であり,専門性の高さには期待が高いが,家族や友人にくらべると利用には回避的であった.また,相談支援の場で共感性が低い対応を受けると開示意欲が低下することもわかった.最後に支援プログラムを評価させたところ,支援についての自己決定が尊重れることが精神科医療へのアクセスを高めるために重要であることが示唆された.
著者
狩谷 あゆみ
出版者
広島修道大学
雑誌
広島修大論集. 人文編 (ISSN:03875873)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.197-217, 2000-09-30

Young Korean residents in Japan are forced to feel identity crisis at various scenes in Japanese society. Their identity could be jeopardised not only by the relationship between the Japanese people and them but by the relationship between other Korean residents and them. I prepare the following four pillars to make clear how young Korean residents face their identity problem. The first point I discuss is what meanings young Korean residents find in choosing their names and nationality. Secondly, their way of maintaining identity will be mentioned, because there can be much possiblity for them to feel identity crisis as Koreans in a daily life. Thirdly, their cultural insecurity will be referred. It makes no difference for them whether they feel inclined to be assimiliated into Japanese sociey or try to cling to their racial identity, and they cannot avoid being thrown into conditions of cultural insecurity, particulary at important stages in their life career. Fourthly and finally, I take a look at how they try to get out of conditions of cultural insecurity. Throughout this paper, I am sure, an aspect of minority problems in Japan is clearly featured.
著者
橋本 あゆみ
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

前年度を引き継いで、戦後の主要な戦争文学との比較を通じ、大西巨人『神聖喜劇』の文学的特徴を検討した。まず前年に口頭発表した野間宏との比較論を基に、論文「大西巨人『神聖喜劇』における兵士の加害/被害―野間宏『真空地帯』との比較から―」を『文藝と批評』に発表した。小説発表当時の社会情況を踏まえつつ、『神聖喜劇』が早くに応召兵士の加害性を問題化した点や、物語の進行とともに暴力否定のモチーフが深まりを見せた点をテクストの検討から指摘した。また、同じく『真空地帯』を主な比較対象に、両作における「法」や「規定」の捉え方が、軍隊と社会の関係や知識人の描き方の違いに関わることを指摘した論文「軍隊を描く/法をとらえる―大西巨人『神聖喜劇』・野間宏『真空地帯』比較―」を『昭和文学研究』に発表した。第二の軸として研究を進めていた大岡昇平『野火』『俘虜記』等との比較は、所属機関内で構想発表を行ったものの有効な焦点を導き出すに至らず、別の比較対象を立てることも視野に入れて再検討中である。2014年3月12日の大西巨人死去を承けた追悼出版物『大西巨人 抒情と革命』(河出書房新社)には、「「別の長い物語り」のための覚書―『精神の氷点』から『神聖喜劇』へ―」を寄稿し、小説第一作と『神聖喜劇』の間での問題意識の継承と発展の見取り図を示した。夏からは二松學舍大学・山口直孝教授を中心とする大西巨人旧蔵書の整理に研究協力者として参画し、リスト作成やワークショップの開催(第1回は2015年2月)を行っている。9月の日本社会文学会拡大例会では、依頼により集英社『コレクション戦争×文学』の『日中戦争』『9.11 変容する戦争』収録作を論じる口頭発表を行い、内容を機関誌『社会文学』に掲載した。『二松學舍大学人文論叢』には、前年から続いて、大西とも交流のあった編集者・玉井五一氏への聞き書きの最終回を掲載した。
著者
一柳 あゆみ 中島 幹雄 香月 武
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.312-317, 2006-09-30 (Released:2014-07-01)
参考文献数
15

We performed dental implant treatment following autogenous bone graft from the iliac bone to the sinus floor for a 68-year-old male patient with severe atrophy of the posterior maxilla. After bone grafting, the sinus floor was lifted up 10 mm to 15 mm. On the 14th day after the operation, fracture of the iliac crest occurred accidentally. An avulsion fracture of the anterior superior iliac spin at the lower part of the donor site was diagnosed. We treated the fracture conservatively, and after four weeks, the patient recovered to be able to go up and down the stairs. Four months later, four implants were inserted in the bone grafted area. For patients with severe atrophy of the posterior maxilla, sinus elevation with iliac bone harvesting is considered to be an effective method. However, there are possible complications associated with iliac bone grafting, such as in this case. Therefore, careful management after such an operation is necessary.
著者
竹元 仁美 山本 八千代 泉澤 真紀 笹尾 あゆみ 前田 尚美
出版者
東京純心大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成26年度から平成29年度に実施した3つの調査研究から、我々は日本型と言える特徴を備えた性暴力被害者への看護ケアの重要項目を明らかにした。それに加え、文献検討で整理したWHO暴力対応ガイドラインやなど北米のSexual Assault Nurse Examinerプログラムを基にして、性暴力被害者看護ケアの基本プロトコルを創り、看護職に対する教育プログラムの組み立てを行った。これによって、病院拠点型ワンストップ支援センターに展開されるべき性暴力被害者看護ケアを、機関を問わず提供することに資する。今後の展開として、看護基礎教育に組み込み、効果の検証をしていくことを目指す。
著者
堀越 あゆみ 堀越 勝
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.192-199, 2008
被引用文献数
3

目的:ハーディネスは,ストレスが精神的健康に及ぼす影響の緩衝要因として海外で数多く研究されているが,日本での研究は少なく,日本語版の尺度の信頼性と妥当性は検証が不十分である.本研究では,中高年と大学生を対象に,日本において最も有用と考えられる多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度の構造,および精神的健康との関連を検討する.対象:関東圏に住む中高年向け会員制雑誌の50歳以上の購読者とその知人の合計750名と,関東圏の大学に在籍する大学生164名であった.方法:多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度により調査対象者のハーディネス特性を,日本語版GHQ短縮版(GHQ12)により精神的健康を測定した.結果:因子分析の結果,全ての世代および性別で,おおむね同様の3因子構造が確認された.重回帰分析の結果,GHQ12に対してコントロールとコミットメントは負の影響を,チャレンジは正の影響を与えていた.考察:本調査で使用した15項目版ハーディネス尺度の信頼性と妥当性が確認された.コントロールとコミットメントは精神的健康を高め,チャレンジは阻害するという結果が示された.
著者
松田 裕子 中野 孝祐 金山 正範 佐藤 知春 松尾 美里 平良 由紀子 稲嶺 紀子 上村 晶子 梅田 博子 梅野 淳子 江口 みちる 大塚 涼子 梶原 ゆかり 金田 佳代 菅野 朋和 具志堅 三恵 古閑 夏樹 佐藤 有佳里 下村 真介 城間 唯子 平良 美穂 滝本 和子 田口 幸子 蔦谷 美奈子 渡嘉敷 典子 長野 愛 福田 寿子 帆足 羽衣子 松岡 陽子 満崎 裕子 宮里 桂子 安村 由美 若松 奈津美 渡辺 真理 安藤 かおり 井上 かおる 上田 友美 上野 由紀子 甲斐 直美 後藤 綾 後藤 里佳 後藤 さや加 西水 友絵 安部 雄司 益永 美紀 宇都宮 大地 河野 育恵 吉岡 幸子 井村 慎 下森 弘之 後藤 智美 秋吉 真由子 小川 智美 奥 望 蒲原 和也 栗本 俊希 黒木 稔子 合田 奈加 後藤 恵美 佐野 明香 財満 あき 竹内 あゆみ 田村 絵梨 津野 美和 富永 久美子 中島 義及 中村 智久 戸次 つゆ子 松本 一世 松本 千尋 村上 美帆 山田 輝明 山中 由香理 三ヶ尻 克也 高木 恵理 安藤 佳香 内山 智恵 岡 恵美 国広 千恵 栗井 幸恵 後藤 恵 清 真由美 村上 智美 西府 隆行 高橋 啓子 屋良 亮子 大槗 亜理紗 紙屋 喜子 本浦 由希子 森上 奈美 吉田 知子 吉留 紅蘭
出版者
別府大学・別府大学短期大学部司書課程
雑誌
司書課程年報 (ISSN:1343974X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.20-74, 1999-03 (Released:2011-02-28)
著者
緒方 あゆみ
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.283-296, 2003-03

研究ノート平成5年に制定された「障害者基本法」の第2条が、「この法律において『障害者』とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と規定していることから、精神障害者も他の障害者と同等に扱われるようになった。次いで、平成 7年に制定された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)により、精神障害者にも医療と福祉の両方のサービスが提供されるようになった。しかし、現状は、しばしば指摘されるように、精神保健福祉の歴史の浅さに加え、長年の精神障害(者)への偏見や差別から、精神障害者の社会復帰支援に関する施策は他の障害者のそれに比べて遅れているといわれる。では、その実態はどうか。本稿では、精神障害者の自立生活支援及び就労支援施策を含めた社会復帰支援施策について、わが国および地方自治体レベルではどのような施策が現在展開されているのかの問題に焦点を合わせ、わが国の精神医療の歴史、現行の精神保健福祉法の内容、地方自治体(京都市)が現在行っている施策等を研究し、最後に、京都市内の精神障害者共同作業所への実態調査の集計結果から、精神障害者の社会復帰支援の現状と課題について考えていきたい。
著者
岡田 和隆 柏崎 晴彦 古名 丈人 松下 貴惠 山田 弘子 兼平 孝 更田 恵理子 中澤 誠多朗 村田 あゆみ 井上 農夫男
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-68, 2012-10-15 (Released:2012-10-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

サルコペニア(筋肉減少症)は 80 歳以上の高齢者の約半数にみられる加齢変化であり,顎口腔領域にも現れるといわれている。本研究ではサルコペニア予防プログラムに参加した自立高齢者を対象とし,介入前調査として栄養状態と口腔内状態および口腔機能との関連を明らかにすることを目的とした。自立高齢者 62 名(69〜92 歳,男性 27 名,女性 35 名)を対象者とした。口腔内状況と口腔機能に関する聞き取り調査は事前に質問票を配布して行い,口腔内診査と口腔機能評価は歯科医師が行った。聞き取り調査質問項目,口腔内診査項目,口腔機能評価項目と血清アルブミン値(Alb)との関連を検討した。Alb は 4.3±0.3 g/dl であり,対象者の栄養状態は良好であった。口腔機能に関する2つの質問項目,主観的口腔健康観,下顎義歯使用の有無において Alb に有意差が認められた。残根を除く現在歯数,現在歯による咬合支持数およびオーラルディアドコキネシス(ODK)の/ka/の音節交互反復運動において,Alb と有意な関連が認められたが弱い相関関係であった。義歯満足度,口腔清掃状態,上顎義歯使用の有無,口唇閉鎖力,RSST,ODK の/pa/および/ta/,口腔粘膜保湿度,唾液湿潤度では関連は認められなかった。自立高齢者では現在歯数,咬合支持,義歯の使用の有無,口腔の健康や機能に対する自己評価が良好な栄養状態と関連する可能性が示唆された。
著者
大島 あゆみ 宮中 めぐみ 泉 キヨ子 平松 知子 加藤 真由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.53-61, 2005-11-01
被引用文献数
2

本研究の目的は,老人性難聴をもちながら地域で生活している高齢者の体験の意味を明らかにすることとした.対象は耳鼻科医に老人性難聴の診断を受け,地域で生活している高齢者17名である.方法は半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,難聴高齢者は何とかして聞きたいと積極的に工夫して聞いていた.一方では,すべてを聞こうとは思わないと聞かなくてもよいと思えることを自ら選択していた.また,聞こえづらさにより趣味や仕事,人との関わりに影響を受けるだけでなく,身の危険も感じていた.補聴器は思いどおりにならないとしながらも,自分が補聴器に合わせて慣れなければならないと,開きたい場面で補聴器を利用していた.さらに,難聴高齢者は聞こえそのものや他人と比較し自分を捉え,今後も何とか死ぬまで聞こえを保持したいと思いながら,地域で生活していることが明らかになった.以上より,難聴高齢者がさまざまな思いをあわせもち地域で生活していることを理解し,「聞きたい」という強みを支える援助の必要性が示唆された.
著者
福永 航也 鈴木 あゆみ 志賀 俊紀 藤井 洋子 朝見 恭裕 石井 珠理 折戸 謙介
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.61-67, 2011-10-11 (Released:2011-12-16)
参考文献数
16

イヌの心疾患や腎疾患の治療において、心臓や腎臓の負荷を軽減するためタンパク質含有率の異なる食餌を摂取させることがある。ラットを用いた基礎研究やヒトの臨床研究において、食餌中のタンパク質含有率の違いが薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)に影響を与えることが報告されている。しかしイヌの臨床において、食餌中のタンパク質含有率の違いがCYP活性に影響を与える可能性については研究されていなかった。本研究では、ビーグル犬においてタンパク質含有率の異なる食餌の摂取時に、イヌのCYP2Dで代謝されるプロプラノロールを投与し、その血中濃度を測定することでCYP2D活性を評価した。その結果、低タンパク食摂取時に比べ、高タンパク食および中タンパク食摂取時のプロプラノロールの血中濃度-時間曲線下面積は減少し、クリアランスは上昇した。以上の結果より、タンパク質含有率の異なる食餌はCYP2D活性に影響を与えることが示唆された。