著者
三浦 康伸 武田 昭二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.253-264, 1995-03-25
被引用文献数
7

動的抽出法による細胞毒性試験を確立するため, 10種類の金属材料を用いて, 細胞生存率に対する抽出条件の検討を行った.抽出条件としては, 試料の重さ(1.5gと2.0g), 旋回速度(200rpmと240rpm), 抽出期間(1, 3および5日間)および旋回時に用いる加速抽出(アルミナ球あるいはジルコニア球上での抽出)の各条件であった.さらに, 得られた抽出液を0.22μmのメンブランフィルタにて濾過した濾液についても, L-929細胞に72時間作用後の細胞生存率に及ぼす影響ならびに溶出金属量の測定を行った.その結果, 細胞生存率に対する試料の重さの影響は少なかった.旋回速度および抽出期間については, それぞれ増加に伴って細胞生存率は低下した.また, 加速抽出条件に関しては, アルミナ球上での抽出のほうが, ジルコニア球上より細胞生存率の低下は顕著であった.以上の抽出条件の中で, 10種類の金属材料をアルミナ球上にて240rpmで旋回抽出した場合, それらが細胞生存率に及ぼす影響は異なっていた.その影響の程度からして4つのグループに分けられた.すなわち, チタンおよびチタン(Ti-6Al-4V)合金のグループ, コバルトクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼のグループ, タイプIV金合金および金銀パラジウム合金のグループとニッケルクロム合金, 銀インジウム合金および銀スズ合金のグループであった.また, 濾液の細胞生存率に及ぼす影響は抽出液より小さく, 濾過による細胞毒性の減弱化が認められた.一方, 溶出金属量については, アルミナ球上にて240rpmで5日間抽出した濾液中には, タイプIV金合金と金銀パラジウム合金では, 選択的な銅の溶出が認められた.銀インジウム合金と銀スズ合金では, 亜鉛の溶出が認められた.ニッケルクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼ではニッケルの溶出が, コバルトクロム合金ではコバルトの溶出が認められた.一方, チタンおよびチタン合金からの溶出は認められなかった.以上の結果から, 動的抽出による加速抽出の効果が得られる条件は, 試料の重さを1.5gとして, アルミナ球上にて240rpmで旋回抽出する方法であることが分かった.
著者
三浦 光
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.677-684, 1994-09-01
被引用文献数
8

3次元の空中定在波音場を形成するための超音波音源として、たわみ振動の節が格子状になるモードの方形振動板を考えた。振動板の設計方法を明らかにして、たわみ振動する超音波音源を製作した。このたわみ振動板は、振動の節線が板の端辺と45°の傾きを持つ格子状の振動モードを用いる。たわみ振動板の振動分布の計算結果は、振動分布の測定、及び板面近傍の音圧分布の測定によって確かめた。また、この振動板について板から十分遠方での指向性を、理論的、及び、実験的に検討したところ、両者の結果はよく一致した。振動板から放射される音波は板の四つの端辺に沿った方向で、板面に垂直な方向からたわみ振動の波長と空気中の音波の波長との比で決まる角度に四つの鋭い主極があることが分かった。
著者
室崎 将史 藤田 慎一 高橋 章 速水 洋 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.347-354, 2006-11-10
被引用文献数
5

静岡県と山梨県の県境に位置する富士山(標高3776m)を観測塔に見立て,高度の異なる20地点で2005年7月12日から7月20日までの9日間,パッシブサンプラーを用いてオゾン濃度の鉛直分布を測定した。山麓の都市部3地点(標高30m〜460m)と丹沢山頂(標高1540m)での自動計測器による測定データをもとに,オゾン濃度の時間変化についても解析を加えた。パッシブサンプラーによって観測期間に測定されたオゾンの平均濃度は,混合層内で約20ppbv,混合層より上層で約40ppbvであり,高度1500m付近を境にして大きな変化がみられた。濃度分布のパターンは,過去に報告された観測結果などと矛盾するものではなかった。自動計測器の観測結果から,富士山頂から水平距離が20km以内の山麓の都市部ではオゾン濃度の日変化は大きく,地域規模の大気汚染の影響を受けていることがわかった。一方,富士山頂から東に約30km離れた丹沢山頂では,夜間に富士山麓の都市部と同レベルまでオゾン濃度が低下することがあり,高度1500m付近でも気象条件によっては,地域規模の大気汚染の影響を受ける場合があることがわかった。このためほぼ同じ高度である富士山の中腹で観測されたオゾン濃度の大きな変化は,地域規模の大気汚染の影響によるものと推定された。
著者
三浦 泰昌 関島 和幸 平井 唯優 五十嵐 大造 井上 知昭 植松 斉 久保井 榮 松山 明彦 吉田 誠 鈴木 昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.497-504, 2000-07-15
被引用文献数
1 1

スプレーカーネーション'ライト・ピンク・バーバラ'に対する小売店の品質評価と形状, 体内水分および器官別糖含量ならびに花の品質保持期間の関係について調査した.1. 外見から最高級品(H), 中級品(M)および最下級品(L)に分類して, 切り花の長さ50cm, 1本当たりの小花数3輪に調整して, 試験開始時の器官別の含水率を比較したところ, いずれもHが最も高く, Mがこれに次いで高く, Lは顕著に低かった.また, 試験期間中の吸水量もこの順になり, Hの含水率が常時高く維持された.2. HとMでは試験開始後10日間で全て開花したが, 品質保持期間はHが15日と最も長く, Mは約10日と短く, Lでは開花に達することなく枯死した.3. 試験開始時のHとMの花弁のグルコースとフルクトース含量はほぼ11∿13mg/100mgDWであったが, Lでは4∿6mg/100mgDWと低かった.またHではこれら糖含量が5日後まで低下した後, 8mg/100mgDW前後のほぼ一定した値を示したのに対して, Mでは15日後まで直線的に低下した.Lでは10日後まで4∿6mg/100mgDWの低い値を維持した.4. 試験開始時におけるHのがくのスクロース, フルクトースおよびグルコース含量はほぼ4∿6mg/100mgDWで, 15日後までほぼ直線的に低下したが, Mのフルクトース, グルコース含量は試験開始5日後までに急激に低下した.Lではいずれも2∿3mg/100mgDWと低く, 15日後まで緩やかに低下した.5. Hの葉身のスクロース含量は試験中9∿12mg/100mgDW前後を保ち, Mは16mg/100mgDWから12mg/100mgDWと緩やかに低下した.フルクトースとグルコース含量は1mg/100mgDW以下と低く, 試験期間中ほぼこの値を維持した.一方, Lのスクロース含量は2mg/100mgDW前後, フルクトースとグルコースは1mg/100mgDW以下で推移した.6. 茎のスクロース含量はいずれも4∿6mg/100mgDW前後で推移したが, グルコースは試験開始時2mg/100mgDW前後から15日後までほぼ直線的に低下し, フルクトースは全期間を通じて1mg/100mgDW以下の低い値を示した.7. 3階級とも花弁から銀が検出されたことから, 全てSTS等の処理済みと考えられた.以上の結果, STS等処理後のカーネーション切り花の品質保持期間に対して, 切り花購入時の含水率と花弁のフルクトースおよびグルコース含量が大きく影響すると推測された.
著者
濱野 恵 三浦 周行 田部井 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.559-561, 1998-07-15
被引用文献数
3 4

イチゴ'女峰'の果実生育の初期に発現する遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により解析した.開花後0, 2, 4, 7, 10, 13日の果実から抽出したRNAを基に合成したcDNAをPCR反応の鋳型に用いた.異なる遺伝子発現を示唆するPCR産物11本のうちSGR101, SGR701の2本をサブクローニングして塩基配列を決定した.ホモロジー検索の結果, SGR101はリボソームタンパクS6キナーゼのホモローグであるアラビドプシスのcDNAと, SGR701はインゲンマメのヒドロキシプロリンリッチ糖タンパクの遺伝子と高い相同性があった.SGR101およびSGR701はともに痩果の相対生長速度が最も高く果実が生理的に活発な時期に発現しており, それらが果実生育にかかわる機能について考察した.
著者
泉 洋輔 三浦 賢治
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
no.23, pp.91-96, 2006-06-20
被引用文献数
1

In soil-structure interaction problem, dynamic impedance function and foundation input motion (FIM) is fundamental physical properties. We carried out an axisymmetric finite element method (AX-FEM) analysis to verify the accuracy of FIM between "Response and Limit Strength Calculation (RLSC)" and AX-FEM. The acceleration response spectrum (ARS) obtained by RLSC almost envelops those obtained by AX-FEM in the range of the whole periods. Therefore, it can be said that the evaluation of the embedding effect in RLSC is conservative, particularly in a short period range. Also, it is observed that the spectrum at the foundation bed of the free field computed by SHAKE is similar to FIM, but the former response is underestimated in specific period ranges. Furthermore, it is shown that presentation of the numerical tables of transfer function of FIM is useful in practical design through comparison ARS of multi-layered soil model with that of equivalent two-layered soil model by RLSC.
著者
山崎 篤 田中 和夫 吉田 澪 三浦 周行
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.40-46, 2000-01-15
被引用文献数
4 18

ネギの花芽分化に及ぼす温度条件を明らかにすることを目的として, 中生品種の'金長'と'浅黄九条', 晩生品種の'長悦'を用いて, 昼温と夜温の影響を調べた.昼温を20℃として夜温を3∿15℃と変えて20∿60日間の低温処理を行った結果, いずれの品種においても花芽分化は7℃で最も促進され, 次いで3℃で促進された.また, 15℃という比較的高い夜温下でも処理期間を60日まで延長すると, '金長'と'浅黄九条'では50%以上の個体で花芽分化したが, '長悦'では10%の個体でしか分化しなかった.夜温を7.0℃として昼温を7.0∿26.5℃と変えて20∿75日間の低温処理を行った結果, '金長'と'浅黄九条'において, 抽台率は昼温13.5℃と20℃で高く, 昼温7.0℃と26.5℃でわずかに低かった.'長悦'の抽台率はいずれの昼温と処理日数においても'金長'と'浅黄九条'に比べ低かった.それでも, '長悦'の抽台率は昼温7.0℃と13.5℃では75日後に60%以上に達したが, 昼温20.0℃と26.5℃では著しく低く, 特に昼温26.5℃ではほとんど抽台しなかった.したがって, '長悦'では20℃前後で脱春化が起きていると考えられた.以上の結果, ネギの花芽分化最適夜温は, 昼温20℃の場合7℃であること, また'長悦'では20℃前後で脱春化が起こるが, '金長'と'浅黄九条'では26.5℃以下の温度ではほとんど脱春化は起こらないことが明らかとなった.
著者
奥谷 喬司 橋本 惇 三浦 知之
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.91-96, 2004-01-31
被引用文献数
1

鹿児島湾の水深100m前後の海底には,古来から漁業者が「たぎり」と呼ぶ噴気孔がある。その周辺には有鬢動物の1種サツマハオリムシの大群集の存在が知られているが,それに伴って出現するキヌタレガイ科の1種を研究した結果,Solemya(Solemya)に属する新種と考えられるので記載する。Solemya(Solemya) tagiri n. sp.タギリキヌタレガイ(新種・新称)殻長2cm前後,外見は他のキヌタレガイ類と似ていて,細長い亜方形,殻頂はほとんど聳えず,後位7/9付近。漆塗り様の殻皮の色はややうすく,放射状彫刻に沿って細い赤褐色の色帯がある。靱帯は後位,外からは見えず後背縁と靱帯受との間にある。後背縁は僅かに持ち上がる。内部に支柱はない。消化管を欠き,鰓は著しく大きい。鹿児島湾の水深76〜116mの「たぎり」付近。備考:日本産の小型種,アサヒキヌタレは明らかな外靱帯があり(Acharax),またキヌタレガイでは靱帯は内在し(Petrasma),靱帯受にひだがある点で異なる。東太平洋のSolemya reideiはやや大きく(6cm)で,内面に靱帯葉と弾帯受に支柱を持つ点で区別される。
著者
三浦 麻子 松村 真宏 北山 聡
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.446-452, 2008

Weblogs are one of the most popular personal websites in Japan, where entries are made in journal style and displayed in reverse chronological order. This study examined the relationship between weblog authors' target audience (i.e., orientation) and the actual situations depicted in their weblogs by combining a questionnaire survey of the authors with an analysis of their weblog content data. Based on a questionnaire survey of 736 Japanese weblog authors, their target audience was divided into four clusters: (a)general public, (b)self, (c)self and offline friends, and (d)various others. To assess the actual situations depicted in their weblogs, the amount of happy and unhappy emotional expression in their writing and the frequency of interpersonal communication (comments, bookmarks, and trackbacks) were calculated from their log data. The results suggested that weblog authors wrote different types of content and used different types of communication depending on their audience, whereas the weblog content itself still showed the diary-like characteristic of personal daily-life records.
著者
上嶋 宏 三浦 孝夫 塩谷 勇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.137-144, 2004-02-01
被引用文献数
2

本論文では,同義語,多義語を用い,単語のもつ意味のあいまい性を考慮した文書分類を提案する.本論文での文書分類は,シソーラスと単語がもつ複数の意味の使用頻度を用いる.これらを考慮することにより単語のもつ意味のあいまい性を排除し,分類精度を向上させる.本論文ではワードネットを用いて実験を行い,82%を超える高い分類正解率を得たことを示す.