著者
中川 善典 桑名 あすか
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.105-124, 2018 (Released:2021-04-12)

本研究は,民芸論や民具学において殆ど着目されてこなかった,民芸/民具の作り手の人生に注目した質的研究で ある。具体的にはまず,準備的検討として,対象物をほぼ共有する一方,殆ど交わることなく発展してきた民芸論 と民具学においてそれぞれ中心的な役割を果たした柳宗悦と宮本常一とに注目し,両者に共通する作り手像とし て「社会から軽視された作り手」「使い手と信頼で結ばれた作り手」「集団的な力に導かれた作り手」の3つを抽 出した。次いで,高知県芸西村に古くから伝わる民芸/民具の唯一の伝承者である宮崎直子氏が笠製作に見出し ている意味を解明するためのライフ・ストーリー・インタビューを行った。彼女は高齢であり,後継者がいない ため,この笠製作の技術は消えつつある。このインタビューにより,作り手に関する上記の三側面は確かに彼女に とっての笠製作の意味を理解する上で重要なテーマになっていることが分かった。また,それらが互いに関連し 合う構造が明らかになった。最後に,消えつつある民俗文化財の保存に際して,作り手のライフ・ストーリーとと もにそれを後世に残す意義について検討した。
著者
山田 剛一 中川 裕志
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.57-58, 1996-03-06

話し言葉を扱おうという研究が増えている。話し言葉の特徴として挙げられる現象はいくつかあるが、その一つに、助詞の省略(脱落)と呼ばれているものがある。例えば、次の文では「私の発表」という名詞句の後ろに助詞が存在しない。(1)私の発表何番目でしたっけ?特にかしこまった場面でなければ、話し言葉では、このような無助詞の名詞句が頻繁に現れる。既存の書き言葉の文法を持った解析システムでは無助詞を扱うことはできないので、何らかの助詞を補って、書き言葉での適格文にする必要がある。しかし、本当に助詞が省略されていて、それを補わなければならないのだろうか。
著者
宇野 豊三 中川 照真 松本 幹生
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.1245-1249, 1971 (Released:2010-02-16)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

ガスクロマトグラフ試料室中におけるクエン酸の熱分解反応を検討し,その分解生成物に,よるクエン酸の定量法を考案した.180~360℃における熱分解生成物は,無水イタコン酸,無水シトラコン酸およびアセトンであることが標品との同定により確認された.これら生成物のうち無水イタコン酸と無水シトラコン酸について分解の温度依存性などの基礎的検討により得られた知見に基づいて,分析条件を設定した.すなわち,試料室温度(分解温度)250℃,カラム充てん剤20% PEG 20MクロモゾルブW(60~80メッシュ),カラム温度175℃,カラム長さ1.5m,キャリヤーガス窒素45ml/min,検出器水素炎イオン化型であった.本法をミグレニン製剤中のクエン酸の定量に応用し,満足すべき結果を得た.
著者
村尾 俊道 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治 本田 豊
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.645-651, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14

京都市の「らくなん進都」と京都駅を直結する新設路線として平成22年10月から運行を開始し、その後9年にわたりバス乗車人員が一貫して増加し続けてきた京都らくなんエクスプレス(R’EX)を取り上げ、乗車人員が増加し続けた経過を記録するとともに、平成28年経済センサス及び平成18年事業所・企業統計調査の2時点間の比較により、沿線企業がその間に従業者数を増加させてきた要因について考察を行った。その結果、輸送力の増強や定時性・速達性の確保、バス待ち環境の改善、車内モニター・バスロケーションシステム、優れたデザインの導入などバス交通を高度化し、あわせて地域地区や都市整備を適切に進めることで、輸送力の限られるバスであっても、まちを変え得る可能性があることを明らかにした。
著者
箕田 春香 林 孝雄 中川 真紀
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.79-85, 2004-07-31
参考文献数
23
著者
中川 晋作 岡田 直貴
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.112-115, 2008 (Released:2008-06-18)
参考文献数
19

分子生物学の著しい発展により感染病原体の特性や細胞のがん化機構の解明が進み,それらの成果が免疫学と結びつくことで,感染症およびがんに対する新たなワクチン戦略の構築と検証が進んでいる.近年,ウイルス感染による発がんを予防するワクチンも開発された.これまでは,疾病の予防薬としてワクチンが用いられてきたが,今後は生体の免疫系の制御による治療用ワクチンも開発されてくるであろう.いまやワクチンは,感染症やがんにとどまらず,さまざまな疾病に対して開発されようとしている.本稿では,ワクチン開発の現状について紹介する.
著者
中川 靖夫
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-12, 1983-01-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1
著者
中川 浩子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.145-167, 2009-09

The purpose of this paper is to examine the psychological processes of women making decisions about whether to continue to work or not. The study used the "Career Anchor Self-Analysis Form" developed by Edger Schein in 1978. Using the form, the author interviewed five women who had 15-38 years of continuous working experience.Five types of career anchor were found: post-tradition, relativity, dream/purpose, security/stability and lifestyle. Two major limits were also found: one was that women do not appear to have a consistent career anchor. Another was that women tend to respond to questions with self-criticism, which keeps them from exploring their career anchors fully. These limits can arise from problems in the interview methodology and the relationship between narrator and interviewer.In order to explain women's psychological processes in choosing whether to continue to work, this paper proposes a new interview framework the "Life-Career Anchor Search". The "Life-Career Anchor Search" has four characteristic features: ① It focuses not only on women's working careers but also on women's life-careers, ② It encourages women to find positive aspects of their past experience so that women become able to perceive their own abilities, values, motives and needs, ③ It finds specific types of middle-aged women's career anchors, and ④ It is future-oriented in asking women how they would like to live in the future congruent with their own life career anchors.本論の目的は女性たちの「働き続ける」、「辞めない」という選択がどのような心理的プロセスで行われるかを探索することである。方法として1978年にエドガー・シャインによって構築された「キャリア・アンカー自己分析表」の質問を用い、組織で15年から38年勤務した経験をもつ女性たちにインタビュー調査を行った。その結果、キャリア・アンカーとして脱伝統、関係性、夢・目標、保障・安定、ライフスタイルの5つが推測された。一方で、女性のキャリア・アンカーにはシャインが主張したような明確な一貫性が見られない、インタビューでは自己批判的な語りが多く女性たちのアンカーが十分に探索出来ない、という限界が明らかになった。これらの限界はインタビュー方法の問題、語り手と聞き手の関係性の問題に起因すると考えられた。女性たちの「働き続ける」という選択を説明するには新しいインタビュー方法が必要である。これを「ライフキャリア・アンカー調査」として提示する。「ライフキャリア・アンカー調査」は、①女性たちの働き方(キャリア)だけでなく、生き方(ライフキャリア)も聞く、②女性たちが肯定的に振り返り、自らの能力、価値、動機・ニーズに自覚的になることを重視する、③中年期女性特有の「ライフキャリア・アンカー」を発見する、④自らの「ライフキャリア・アンカー」をこれからの生き方にどう活かすかも聞く未来志向である、という特徴をもつ。
著者
中川 清
出版者
白鴎大学
雑誌
白鴎大学論集 (ISSN:09137661)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.139-191, 1995-12
著者
中川 靖章 錦見 俊雄 桑原 宏一郎 岡 昌吾 木下 秀之 中尾 一泰 趙 晃済 稲住 英明 加藤 貴雄 中尾 一和 木村 剛 Nishida Motohiro Kato Takao Fukushima Hiroyuki Yamashita Jun K. Wijnen Wino J. Creemers Esther E. Kangawa Kenji Minamino Naoto Nakao Kazuwa Kimura Takeshi
出版者
Wiley Blackwell
雑誌
Journal of the American Heart Association (ISSN:20479980)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, 2017-02

Background-Recent studies have shown that plasma levels of the biologically inactive prohormone for brain natriuretic peptide (proBNP) are increased in patients with heart failure. This can contribute to a reduction in the effectiveness of circulating BNP and exacerbate heart failure progression. The precise mechanisms governing the increase in proBNP remain unclear, however. Methods and Results-We used our recently developed, highly sensitive human proBNP assay system to investigate the mechanisms underlying the increase in plasma proBNP levels. We divided 53 consecutive patients hospitalized with heart failure into 2 groups based on their aortic plasma levels of immunoreactive BNP. Patients with higher levels exhibited more severe heart failure, a higher proportion of proBNP among the immunoreactive BNP forms secreted from failing hearts, and a weaker effect of BNP as estimated from the ratio of plasma cyclic guanosine monophosphate levels to log-transformed plasma BNP levels. Glycosylation at threonines 48 and 71 of human proBNP contributed to the increased secretion of proBNP by attenuating its processing, and GalNAc-transferase (GALNT) 1 and 2 mediated the glycosylation-regulated increase in cardiac human proBNP secretion. Cardiac GALNT1 and 2 expression was suppressed by microRNA (miR)-30, which is abundantly expressed in the myocardium of healthy hearts, but is suppressed in failing hearts. Conclusions-We have elucidated a novel miR-30-GALNT1/2 axis whose dysregulation increases the proportion of inactive proBNP secreted by the heart and impairs the compensatory actions of BNP during the progression of heart failure.
著者
飯山 直樹 鎌田 磨人 中川 恵美子 中越 信和
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.579-584, 2002-03-30
参考文献数
35
被引用文献数
11 13

棚田畦畔がもつ草地性植物の生育地としての機能を把握するため, 徳島県上勝町樫原地区において, 次のようなことを明らかにした。当地では, 全水田面積に対する畦畔面積の割合は29.4%であり, 水田に付随する草地の面積は大きい。植物群落は, 畦畔の物理的な構造に対応して異なっており, 土や石垣等の様々な物理環境の畦畔があることにより, 地域内の植物の多様性が高められている。畦畔における年間の草刈り回数の違いは植生高や遷移度に影響を与え, 刈取り回数が多いほど (最大3回), それらが低く保たれた。一方, 草刈り回数の違いは, 植物群落の種組成や多様度には大きな影響は及ぼさなかった。出現種数や多様度は草刈りが行われないまま2年間放置された畦畔でも変わらず維持されていたが, 5年間放置されると極端に減少していた。
著者
中川 鉄水
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会機関誌えねるみくす (ISSN:24323586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.726-733, 2021

<p>水素貯蔵材料アンモニアボランは米国などで車載用水素源として研究されてきたが,分散型電源の水素源としても大きな可能性がある。本稿ではアンモニアボランの基礎知識と課題,および沖縄県事業とNEDO事業等での本グループの取り組みを紹介する。 </p>