著者
武田 昂樹 中川 朋 山田 晃正 小西 健 奥山 正樹 西嶌 準一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1314-1319, 2015 (Released:2015-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

症例は40歳台,男性.201X年2月,1週間来の腹痛と嘔吐の増悪を主訴に当院を受診.来院時,腹部全体の圧痛・反跳痛を認めた.腹部X線画像で上行結腸周囲に多数の点状石灰化像を認めた.小腸niveau像を認めたが,free airは認めなかった.腹部造影CT検査では,右結腸静脈の石灰化に加え,上行結腸の腸管壁の造影不良と壁肥厚を認めたため,腸管壊死と診断して,緊急開腹手術を行った.開腹時所見では,上行結腸から横行結腸の中央部に腸管壊死を認め,結腸部分切除を行った.病理検査では,粘膜面の潰瘍形成,静脈血管壁の石灰化と上行結腸粘膜下層の広範な線維化領域を認め,特発性腸間膜静脈硬化症による虚血性大腸炎と診断した.術後経過は良好で,術後16病日に退院となった.本症例は10年以上の漢方薬(梔子柏皮湯®)の服用歴があり,病因との関連性が示唆された.現在,漢方薬内服を中止して経過観察中である.
著者
田村 博宣 高木 愼 矢部 孝 樋口 満 柳田 可奈子 中川 豪晴
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.520-525, 2010-09-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1

含歯性嚢胞は,歯牙交換期に好発する歯原性嚢胞であり,下顎小臼歯,下顎智歯によく発生する。これまで,本嚢胞の研究では臨床統計学的研究や病理組織学的な検討がなされることが多く,含歯性嚢胞内に埋伏する歯牙に関して,萌出後の長期経過および長期予後についての報告はほとんどみあたらない。本症例は初診時において,嚢胞の大きさ,含まれる埋伏歯の深さ,埋伏歯の角度,埋伏歯の近遠心的位置のいずれにおいても深刻な状態であったが,これに対し,速やかに嚢胞を摘出し処置後10 年間の長期経過を見たところ良好な治療結果を得ることができた。これにより,含歯性嚢胞内に存在する埋伏歯は,できるだけ早期に摘出することができれば,嚢胞の大きさ,埋伏歯の深さに関わらず自然萌出が期待できることが示唆された。このことは今後の含歯性嚢胞に対する処置の参考に成りうるものであり,小児歯科臨床にとって意義のある症例であると考えたため報告することとした。
著者
清水 邦義 吉村 友里 中川 敏法 松本 清 鷲岡 ゆき 羽賀 栄理子 本傳 晃義 中島 大輔 西條 裕美 藤田 弘毅 渡邉 雄一郎 岡本 元一 井上 伸史 安成 信次 永野 純 山田 祐樹 岡本 剛 大貫 宏一郎 石川 洋哉 藤本 登留
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.126-130, 2017-05-25 (Released:2017-06-01)
参考文献数
4
被引用文献数
3 2

木材を用いた家の価値が見直されている中で,木材から放散される揮発性成分の機能性が注目されている。季節ごとの温度や湿度の変化の大きい我が国においては,木材から放出される揮発性成分も大きく変化していると考えられる。本研究では,スギ(Cryptomeria japonica)の無垢材を内装に用いた建物(A棟)と,表面に塗装を施された内装材またはビニールクロスで覆われた内装材を用いた建物(B棟)の室内において,年間を通して揮発性成分を定期的に捕集し,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)分析による比較を行った。その結果,木材の揮発性成分の大半を占めるセスキテルペン類の量は,どちらの棟においても冬季より夏季で高く,年間を通してB棟よりもA棟の方が常に高いことが明らかになった。
著者
井上 道雄 本橋 裕子 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.231, 2015

はじめに経鼻胃管を利用する重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では、骨格変形や嚥下障害等により、適切な胃管留置ならびに胃内に管があることの確認がときに困難である。当院では、管の胃内留置を確認するため、pHチェッカーを用いて逆流物が胃酸と同等のpH5.5以下であることを確認している。一方で、重症児(者)の胃酸分泌抑制薬使用者へのpHチェッカーの有用性を検討した報告は乏しい。目的経鼻胃管を使用する重症児(者)において、胃酸分泌抑制薬の内服がpHチェッカーの結果に与える影響について検証する。対象当院重症児(者)病棟に入院中で経鼻胃管を利用している17人。方法カルテ診療録を調査し、胃管の留置位置が適正であると確認できた例の、注入前と胃管交換時に用いたpHチェッカー5.5 (JMS)の値と内服情報を収集し、その関係について検討した。経鼻胃管内腔の容量が最低1.6mlであるため、胃内容物が1.6ml以下は除外した。結果対象者の使用薬剤数は平均7.8剤、16人が胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬)あるいは制酸剤(酸化マグネシウム)を内服していた。46機会の計測を行った。そのうち、胃内容物が1.6ml以下は25機会(全体の54%)であった。残りの21機会分のpH値で検討を行った。21機会中、胃酸分泌抑制薬もしくは制酸薬内服ありの19機会でpH 5.5以下は14機会(74%)だった。考察胃残が十分引けない機会が相当数あり、重症心身障害児の胃酸分泌抑制薬・制酸薬内服者で、pHチェッカーで逆流物を胃内容物であると同定できた割合は半数以下であった。胃残が十分量引けない例での内服薬の間接的影響の有無は今回は検討できていない。胃残が十分量引ければ、pHチェッカーは74%の感度で呼吸器分泌物と胃内溶液が鑑別できる。今後、胃酸分泌抑制薬・制酸薬の非内服者における、胃逆流物量、pHチェッカー値のデータが蓄積し、今回のデータと比較を行うことが必要である。
著者
中川 幹子 江崎 かおり 宮崎 寛子 手嶋 泰士 油布 邦夫 高橋 尚彦 犀川 哲典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.292-299, 2012 (Released:2015-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
3

早期再分極に見られる心電図所見の特徴は,J点の上昇およびJ波(QRS終末部に見られるノッチもしくはスラー)の存在である.J点上昇とJ波では出現頻度や出現誘導が異なっており,臨床的意義は同一ではないと考えられる.すなわち,健常若年男性に見られるJ点上昇はV2~V4誘導で高率に認められるのに対し,J波は主に下壁誘導とV4~V6誘導に出現する.われわれの検討では,J波は男性の12.0%,女性の9.3%に認められ,若年群と高齢群にピークを有する2峰性パターンを示した.ホルター心電図を用いた検討によると,健常人においてもJ波は夜間に増高する日内変動を示し,心拍数や自律神経活動に影響を受けることが示された.加算平均心電図を用いた検討では,J波はQRS内部に含まれていた.また,心エコー図上,左室内に心室中隔から乳頭筋に付着する偽腱索をもつ症例では,J波の合併率が有意に高く,これらの心室内構造物がJ波や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.
著者
菊池 良和 梅﨑 俊郎 澤津橋 基広 山口 優実 安達 一雄 佐藤 伸宏 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.41-46, 2017-03-20 (Released:2018-04-23)
参考文献数
34

吃音症は成長していくにつれ、表面上の吃音は軽減したようにみえる。しかし、吃音を隠す努力を行うことで、思春期・青年期に社交不安障害(SAD)を合併することがある。 そのため、吃音症における社交不安障害の合併とその性質を把握することが必要である。 本研究では、2011 年から 2016 年まで九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科に吃音を主訴に来院した 100 名(平均 24 歳、男女比 3.7:1)に、社交不安障害の重症度尺度である LSAS-J を記入したものを解析した。年代で比較すると、10 代、20 代に比べて、30 代は有意に LSAS-J の値が低下していた。性別差を検討すると、10 代のみ女性が男性よりも有意に LSAS-J の値が高かった。また、成人吃音者では、50%が SAD に相当した。以上より、吃音を主訴で来院する場合は、表面上の吃音だけではなく、SAD の合併の有無を考えて診療する必要があることが示唆された。
著者
立花 綾香 加地 剛 七條 あつ子 高橋 洋平 中山 聡一朗 中川 竜二 前田 和寿 早渕 康信 香美 祥二 苛原 稔
出版者
日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.155-159, 2016-05

純型肺動脈閉鎖(pulmonary atresia with intact ventricular septum:以下PAIVS)の治療方針の決定には右室の大きさ,肺動脈の閉鎖様式に加え,冠動脈が右室内腔と繋がる異常交通(類洞交通)の有無や程度が重要とされる.今回胎児期に類洞交通を評価できたPAIVSの一例を経験したので報告する.超音波検査にて胎児の右室が小さいことを指摘され妊娠23週に紹介となった.初診時の超音波検査にてPAIVSと診断した.また右室心尖部に心筋を貫通する両方向性血流を認め,類洞交通の存在が疑われた.その後冠動脈を起始部から系統的に描出することで,左冠動脈前下行枝からの大きな類洞交通であることを確認した.右室が高度の低形成でかつ大きな類洞交通があることから単心室修復が必要となることが予想された.児は出生後,心臓超音波検査,心臓血管造影にて同様の診断がなされ,単心室修復に至った.胎児超音波で冠動脈を起始部から系統的に観察することで,類洞交通の評価が可能となりそれにより,出生前から治療方針の検討ができ,家族への説明に有用であった.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.11, 2018-01-20

忘年会や新年会などで,酒を飲む機会が多い季節を迎えた.飲酒運転に対する社会の目は厳しく,今や犯罪として処罰される.では診療上における飲酒は如何であろうか. 運送業界や航空業界では,就労12時間前からの禁酒が規定されている.さらに就労時には,呼気におけるアルコール濃度測定を義務付けている会社も多い.したがって午前8時半から仕事に従事する場合には,前日の午後8時半からはソフトドリンクしか飲めないことになる.
著者
中川 祥平 鈴木 基之 松本 和幸 北 研二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.533-539, 2014-03

本論文では,音声からの感情推定において特徴量を正規化して識別を行う方法を提案する.従来感情識別に用いられている平均パワーやピッチといった韻律的特徴量は,感情による変化だけではなく発話内容そのものによって大きく変化する.そのため,たとえ同じ感情で発話されたとしても発話内容が異なれば異なる韻律となり,感情推定の性能低下を招き得る.そこで本論文では,平静の感情で同じ発話内容を発話した音声からも特徴量を抽出し,それとの差分に注目することで感情による特徴量の変化のみを抽出する方法を提案する.使用している5種類の特徴量(平均パワー,ピッチ等)ごとに減算による正規化,除算による正規化,正規化なし,の三つの方法で正規化し,全ての組み合わせの中で最も性能が向上する組み合わせを探索した.その結果,最適な組み合わせによる識別性能は,正規化を行わない従来法と比較して5.98%向上した.正規化法に関する分析を行ったところ,平均パワーは正規化が必要(演算は減算でも除算でも大きな差はない)であり,一方ピッチとMFCCは正規化なし,残りの二つの特徴量についてはどちらでも性能は大きくは変化しないことがわかった.
著者
中川靖士 羽田 久一 今井 正和 砂原 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.12, pp.193-198, 2002
被引用文献数
3

インターネットのブロードバンド化により映像配信が盛んに行われるようなりつつある。しかし、限られた人手や予算の中で映像内容を理解し、整理や編集することが難しいため、視聴者にとって理解しにくい内容となっている。本研究では、解説者が手作業で行っているサッカー映像のゲーム分析を自動化する。映像に対して2値化、円形度、ハフ変換、アフィン変換、オプティカルフローを用いて画像解析を行い、選手、ボール、ラインを認識し、視点移動、カメラワーク認識、プレー認識を行う。その結果を時間、場所、チーム、プレーについて数値化したスコアブックで管理する。さらにスコアブックからボールキープ時間やボールの移動軌跡に展開する。実際の映像に対して実験を行い、手作業との比較において本手法の有効性を確認した。
著者
渡辺 研一 高橋 誠 中川 雅弘 太田 健吾 佐藤 純 堀田 卓朗
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.255-263, 2006-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

2-フェノキシエタノールの麻酔剤としての効果を, 9種の主要な増養殖対象種 (ブリ, マダイ, マアジ, カンパチ, シマアジ, ヒラメ, トラフグ, メバル, クロソイ) について, 水産用医薬品であるFA100と比較, 検討した。網で掬っても魚が暴れない程度に麻酔が罹り, 麻酔後清水に移して一晩経過後に死亡個体が認められない2-フェノキシエタノール濃度は, おおむね200~1, 000μl/lであった。一方, FA100の効果的で安全な濃度はおおむね100~500μl/lであり, 2-フェノキシエタノールの場合と比較して範囲が狭かった。2-フェノキシエタノールで麻酔すると, FA100の場合より麻酔からの覚醒時間が短く, 麻酔翌日の生残状況が優れた。さらに, 2-フェノキシエタノールでは観察されなかった麻酔液表面の泡立ちがFA100で観察された。以上のことから, 2-フェノキシエタノールは増養殖における麻酔剤として優れていることが示唆された。