著者
杉原 隆之 中川 照彦 三森 甲宇 石突 正文 四宮 謙一
出版者
Japan Shoulder Society
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.511-514, 2001

We performed a comparative study on shoulder injuries between snowboards and skis.<BR>1665 patients injured by snowboarding or skiing visited our hospital from 1997 to 1999 (males: 1173, females: 492, averagc age: 25.3). There were 883 patients injured by snowboarding (males: 667, females: 216, average age: 23.6) and 782 patients injured by skiing (males: 506, females: 276, average age: 27.3).<BR>There were 523 patients (59.2%) with upper extremity injuries caused by snowboarding. Among them there were 191 patients (21.6%) with shoulder injuries. There were 62 fractures (clavicle: 40, proximal end of the humerus: 22),78 dislocations (acromioclavicular joint: 32, shoulder joint: 46) and 1 dislocation fracture (shoulder joint). There were 235 patients (30.1%) with upper extremities injured by skiing. Among them there were 133 patients (17.0%) with shoulder injuries. There were 53 fractures (clavicle: 36, proximal end of the humerus: 14, scapula: 3),41 dislocations (acromioclavicular joint: 10, shoulder joint: 31) and 6 dislocation fractures (shoulder joints).<BR>Snowboarders fall on their hands frequently. Therefore upper extremity injuries and shoulder injuries caused by snowboarding are considered to be more than by skiing.
著者
吉村 英哉 望月 智之 宗田 大 菅谷 啓之 前田 和彦 秋田 恵一 松木 圭介 中川 照彦
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.217-219, 2007

Previous studies reported a presumably unusual bony attachment of the pectoralis minor muscle. However, less attention has been given to the insertion of the continuation to the glenohumeral joint. The purpose of this study was to evaluate the frequency of this abnormal insertion of the pectoralis minor muscle, and also to investigate the relation between this continuation and the capsule. 81 anatomic specimen shoulders from 41 cadavers were dissected. The insertion of the pectoralis minor tendon to the glenohumeral joint was carefully investigated. The pectoralis minor tendon ran beyond the coracoid process and extended to the superior portion of the glenohumeral joint in 28 out of 81 specimens (34.6%). The continuing insertion divided the coracoacrominal ligaments into two limbs. The continuation was more variable, and consisted of the whole tendon in 6, the middle part in 5, the lateral part in 15, and the medial part in 2 specimens. Furthermore, the pectoralis minor tendon inserted to the posterosuperior border of the glenoid in 6, to the greater tuberosity in 7, and both to the glenoid and the greater tuberosity in 15 specimens. The prevalence of the anomalous insertion of the pectoralis minor tendon revealed to be as high as 34.6% in the present study. This may suggest that the pectoralis minor tendon plays an important role in the stability of the glenohumeral joint.
著者
小串 直也 中川 佳久 宮田 信彦 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0712, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】高齢者の多くは加齢に伴い特有の不良姿勢をとり,その中でも頭部前方突出姿勢は臨床において頻繁に観察される。頭頸部は嚥下機能と強く関係していることから,頭部前方突出姿勢は嚥下機能に影響を与えると考える。また,嚥下時の食塊移送には舌の運動が重要であり,舌筋力の低下は嚥下障害の原因のひとつである。しかし,高齢者の頭部前方突出姿勢が舌筋力に与える影響についての報告はない。そこで,本研究は高齢者の頭部前方突出姿勢が舌筋力に与える影響について検討した。【方法】対象はデイサービスを利用している神経疾患の既往のない虚弱高齢者16名(平均年齢85.6±7.7歳)とした。使用機器は舌筋力計(竹井機器工業株式会社製)と舌圧子(メディポートホック有限会社製)を用いた。測定は舌突出力と舌挙上力の2項目とし,各2回ずつ測定した。舌突出力の測定は口唇に舌圧子を当て,舌を最大の力で突き出させた。舌挙上力の測定はまず被験者に開口させ,口腔内で舌圧子を固定し,舌を最大の力で押し上げさせた。また,被験者の第7頸椎棘突起にマーカーを貼り付け,測定中の頭頸部をデジタルビデオカメラ(SONY社製)により撮影した。その後,Image Jにて第7頸椎棘突起を通る床との水平線と第7頸椎棘突起と耳珠中央を結んだ線のなす角を計測し,舌突出力測定中および舌挙上力測定中の頭蓋脊椎角(以下CV角)を算出した。測定肢位は端座位とし,頭部をアゴ台(竹井機器工業株式会社製)に固定した。分析は各々2回の平均値を代表値とし,舌筋力とCV角の関係を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を求めた。【結果】舌突出力は平均値0.23±0.10kg,舌突出力測定中のCV角は平均値29.50±5.79°となり,相関係数R=0.70で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。舌挙上力は平均値0.22±0.09kg,舌挙上力測定中のCV角は平均値29.57±5.74°となり,相関係数R=0.72で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。【結論】今回,高齢者の舌筋力とCV角の間に有意な正の相関を認めた(p<0.01)。このことから,高齢者の舌筋力と頭部前方突出姿勢は関係していることが明らかになった。舌筋力の低下は嚥下障害における原因のひとつであり,実際に嚥下障害患者に対して舌負荷運動が実施される。また,舌と姿勢の関係について頸部の屈伸や回旋が舌運動や舌圧に与える影響については報告されてきた。しかし,高齢者の頭部前方突出姿勢と舌筋力の関係については報告されていなかった。CV角は頭部前方突出の程度を表現しており,加齢とともに小さくなる。頸椎の過剰な前彎を伴う頭部前方突出姿勢では舌骨下筋群が伸張され,舌骨を下方に引くと考える。舌骨には舌筋の一つである舌骨舌筋が付着しており,舌骨の下方偏位は舌の運動を阻害するため,舌筋力とCV角の間に有意な相関を認めたと考える。したがって,舌筋力の向上には姿勢の改善が必要であると考える。
著者
中川 良尚
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.19-28, 2020-03-15

失語症状の長期経過を明らかにする研究の一環として,右手利き左大脳半球一側損傷後に失語症を呈した270例の病巣別回復経過と,その中で言語機能に低下を示した37症例のSLTA総合評価法得点各因子の機能変遷の既報告を俯瞰した.次に,2年以上適切な言語訓練を行った失語症121例について,SLTA総合評価法得点に影響を及ぼす要因を調査した.その結果,1)失語症状の回復は損傷部位や発症年齢によって経過は大きく異なるが,少なくとも6か月以上の長期にわたって回復を認める症例が多いこと,2)言語訓練後に回復を示した機能は脆弱である可能性が高いこと,3)発症年齢,Wernicke領野を含む上側頭回の病変の有無,発症3か月時SLTA総合評価法得点などが予後に重要な因子であること,が示唆された. 以上のことから,失語症の訓練においては,1)長期にわたって変化しうる失語症状そのものに着目する必要があること,2)病院外来における訓練実施が望ましいこと,が考えられた.

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著者
中川済 著
出版者
三育社
巻号頁・発行日
1903
著者
向井 章悟 中川 泰彰 田中 慶尚
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.1037-1040, 2012

The symptoms of cartilage injury of humeral head are not well known. We experienced two cases of traumatic cartilage injury of humeral head in American football players.<BR>Both cases were young(21 and 20 years old), male college American football players and they were both running backs. The first case complained of motion pain for 1 year since he had fallen on his left shoulder after a tackle. This case showed osteoarthritic change and impression fracture of humeral head. The second case complained of pain and felt a click in abduction-external rotation after a blunt hit on his right shoulder by tackle one week before. The MRI showed Bankart lesion and cartilage injury of humeral head.<BR>In both cases, full thickness cartilage defects of humeral head were observed and these lesions were engaged to the anteroinferior edge of glenoids when the shoulders were abducted and externally rotated. They were treated by arthroscopic Bankart repair and returned to the sports after standard rehabilitation. Now they are relieved of their symptoms.<BR>There are few reports of cartilage injury of humeral head because the diagnosis is difficult without arthroscopy. These two lesions are located in the posterior portion of humeral head, which is different from typical Hill-Sachs lesions. There are cartilage lesions in anterior glenoid in both cases, which may induce the symptoms such as subluxation or click in abducted-external rotated position. These cases reveal that cartilage injury of humeral head is not rare in high-energy injury, especially in collision sports.
著者
中嶋 仁 加納 一則 奥川 和幸 中川 法一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da0985, 2012

【はじめに】 呼吸リハビリテーションにおける排痰法は、気道、肺包内の分泌物を移動促進させ肺包換気を改善させることで、無気肺、肺炎予防を行う重要な方法である。排痰法には、体位ドレナージ、咳嗽、ハッフィング、呼吸介助、スクイージング、機械刺激等がある。その中でも、体位ドレナージ位でのハッフィングは、末梢気道領域に分泌物が存在する場合に第一に用いられる排痰法である。また、ハッフィング時に患者が両腕を組み胸郭を介助することで呼気流量が増大し分泌物の移動を促進するとされており、排痰法の指導方法としてもよく目にする。しかし、臨床場面において患者から、胸が上手く押せない、息を吐く時と胸を押すタイミングが分からない等の声を聞くことがある。また、自己胸郭介助を行っている患者を見ても、呼気流量が明らかに増大している印象を持つことが少ないため、ハッフィング時に自己胸郭介助を行うことの有用性に疑問を持つ。 そこで今回の研究の目的は、ハッフィング時の自己胸郭介助の有無や介助方法の違いによる、最大呼気流量(PEF)の変化を調査することである。【対象】 対象は、肺疾患を有さない健常人18名(男性12名、女性6名)、平均年齢34.5±9.7歳、平均身長167±8.5cm、平均体重62.2±13.5kgである。【方法】 PEFの測定はピークフォローメーター(CHEST社製ASSESS)にフェイスマスクを接続して左側臥位にて行った。対象者は測定前に、ハッフィングと自己胸郭介助の練習を十分に行った。そして、胸郭介助を行わない方法(介助無法)、両腕を胸の前で組むようにして両胸郭介助を行う方法(両側介助法)、左上肢は胸の前で組むようし、右上肢は肘屈曲位で体幹に添え右側胸郭のみを介助する方法(片側介助法)の3種類の胸郭介助を行った。各3回ずつ測定し、それぞれの最大値を採用した。統計学的分析として、介助無法、両側介助法、片側介助法によるPEFの平均値を一元配置分散分析を用いて検討した。【説明と同意】 今回の研究は、当院の倫理委員会の規定に基づいて実施した。本研究の趣旨、内容、中止基準および個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。【結果】 介助無法の平均PEFは282.7±72.5L/min、両側介助法は275±72.4 L/min、片側介助法は276.1±77.2 L/minであった。3種類の自己胸郭介助法の間に有意な差は認められなかった。【考察】 用手的呼吸介助手技のように、呼気時に他動的に胸郭を介助することでPEFが増大することは知られている。今回の研究において、自己で胸郭介助を行ってもPEFに変化が無いことがわかった。PEFが変化しなかった理由は、腕組をして胸郭介助することは胸郭の解剖学的運動方向に合わせて介助することに、限界があるためだと考える。排痰能力は呼吸機能だけでなく、分泌物の性状や量、および気道状態が影響するため、PEFの値だけで評価することは難しい。しかし、排痰時時に自己胸郭介助を行うか否かは大きな問題ではないことが窺える。排痰法を必要とする呼吸器疾患患者には高齢が多いため、ハッフィングと胸郭介助といった異なった動作を同時に行うことは非常に難易度が高い。そのことから、ハッフィングそのもの能力を低下させてしまう恐れがあると考える。また、呼吸補助筋である肩甲帯周囲筋や体幹筋が筋力低下している呼吸不全患者にとって、胸郭介助の方に上肢筋を使用することは、息切れ感を増大させる可能性があると考える。高齢者で上肢、体幹の筋力低下が著明な患者には、自己胸郭介助を行う必要性は低く、ハッフィングに集中するように指導した方がよいと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究おいてに、排痰時に胸郭介助を行うことがPEFに影響をおよぼさないことがわかった。本研究は、日々の臨床の中で通常に行われている事に対する再検証作業である。再検証することで新たな発見や再確認にするべき事が出てくる。そのことが、明日からの理学療法への自信と確信になりうる可能性があることから、本研究の意義は深いと考える。
著者
光永 臣秀 平石 哲也 宇都宮 好博 三原 正裕 大川 郁夫 中川 浩二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.726, pp.131-143, 2003
被引用文献数
3

1999年の台風18号は, 山口県の周防灘沿岸に甚大な被害を及ぼした. 本研究では, Myers の傾度風モデルおよびマスコンモデルにより風域場を再現し, 被害発生に至るまでのこの台風による高潮と波浪のシミュレーションを行い, 山口県周防灘沿岸代表11地点の被災時における各施設への波力等の外力を推定した. これにより, 現行の設計方法を用いて護岸や防波堤の被災メカニズムについての検討考察を行った結果, 防災基準の設定時の想定を越えた異常潮位や波浪の発生により, 護岸においては基準を超えた越波による裏埋土砂の洗掘と, 想定を越えた引き波による負圧発生, 防波堤においては浮力の増大により堤体が不安定化が生じ被災に至ったものとの結論を得た.
著者
中川 聡
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.105-111, 2015-01-01

2013年の初めに,OSCILLATE*1 trial1)とOSCAR*2 study2)という2つの大規模多施設共同研究の結果がNew England Journal of Medicine誌に発表された。いずれの研究も,成人の急性呼吸窮迫症候群 acute respiratory distress syndrome(ARDS)において,高頻度振動換気法high-frequency oscillation(HFO)と通常の人工呼吸法を比較したものである。その結果は,HFOは,通常の人工呼吸以上の効果はないどころか,OSCILLATE trialではかえって死亡率を増加させる,と報告された。はたして,これらの臨床研究は,HFOを正当に評価する研究だったのだろうか。Summary●成人のARDS患者に対して,OSCILLATE trialとOSCAR studyの2つの大規模研究では,HFOは通常の人工呼吸以上の効果はないと発表された。しかし,これらの研究では,プロトコルと患者選択に問題があった可能性が指摘されている。●ARDSの肺病変は均一ではなく,異なる病態に合ったHFO戦略を構築すれば,HFOが有効に作用する可能性がある。●現在,日本呼吸療法医学会のワーキンググループが,日本版成人用HFOプロトコルを作成中である。
著者
竹下 治範 藪田 有沙 北 早織 若林 知子 猪野 彩 原田 祐希 中川 素子 中川 道昭 波多江 崇 濵口 常男
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.nt.2019-0002, (Released:2020-01-30)
参考文献数
16

要 旨:PTP 包装から錠剤を押し出す際,高齢者や手指の不自由な患者に対して押し出しやすい方法を提案することは重要な課題である.今回,PTP 包装からの錠剤の押し出し方法について客観的な評価とともに,人を対象とした官能評価試験で検討した.調剤薬局に来局し,同意を得た患者64 名を対象に,PTP 包装からの錠剤の押し出し方法についての官能評価試験を実施した.その結果,『指の腹』が押し出しやすいと回答した人が18 名(28%),『爪』と回答した人が46 名(72%)であった.データ解析の結果,男性に比べて女性で,さらに年齢が増すにつれPTP 包装から錠剤を取り出す際は,爪の方が押し出しやすいという傾向が明らかとなった.高齢化社会を迎える本邦において,高齢患者への服薬支援の一環として,PTP 包装からの錠剤の押し出しやすい方法の提案についても薬剤師が積極的に関与すべきだと考える.
著者
澤田 晶子 西川 真理 中川 尚史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第34回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.36-37, 2018-07-01 (Released:2018-11-22)

群れで生活する霊長類は,他個体との親和的な関係を維持するために社会的行動をとる。複数の動物種が同所的に生息する環境では,異種間での社会的行動も報告されており,ニホンザルとニホンジカが高密度で生息する鹿児島県屋久島や大阪府箕面市においても,両者による異種間関係(以下,サル-シカ関係)が報告されている。サル-シカ関係の大半は,シカによる落穂拾い行動(樹上で採食するサルが地上に落とした果実や葉を食べる)であるが,稀に身体接触を伴う関係もみられる。本発表では,これまでに発表者らが西部林道海岸域で観察した異種間交渉の事例を報告する。敵対的行動(攻撃・威嚇)と親和的行動(グルーミング),いずれの場合でもサルが率先者になることが多かった。シカへのグルーミングはコドモとワカモノで観察され,サルとシカの組み合わせに決まったパターンはなかった。シカがグルーミングを拒否することはなく,シカからサルへのグルーミングは確認されなかった。コドモとワカモノによる「シカ乗り」も数例観察された。ワカモノのシカ乗りは交尾期(9月~1月)に起きており,前を向いて座った状態でシカの背中や腰に陰部を擦りつける自慰行動がみられた。実際に交尾に至ることはなかったものの,ワカモノにとってはシカ乗りが性的な意味合いをもつことが示唆される。一方のコドモは,非交尾期でもシカに乗ることがあった。その際,シカの首に座ったり背中にぶら下がったりと体位や向きにバリエーションがみられたこと,自慰行動を示さなかったことから,コドモにとってのシカ乗りは遊びの要素が強いと考えられる。先行研究との比較を通して,サル-シカ関係について議論し情報を共有したい。
著者
中川 麻子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.6_51-6_60, 2012 (Released:2012-05-30)
参考文献数
33

「美術染織」とは、明治から大正時代にかけて制作された絵画的な染織作品であり、近代染織を語る上で重要な存在である。本稿では明治時代初期から1893 年(明治26 年)頃を対象にし、国内外の博覧会に出品された染織作品について検討を行った。1876 年(明治9年)フィラデルフィア万博出品の成功を受けて、内国博には多くの絵画的な染織作品が出品された。また業者によって積極的に新しい技術の開発が行われ、1882 年(明治15年) 前後にはますますこの傾向が強まった。1886 年(明治19 年)京都色染織物繍纈共進会の出品分類に現れた「美術色染」「美術織物」の語は、染織分野に初めて「美術」の語が持ち込まれた例であり、はじめて《美術染織》概念が誕生した。1889 年(明治22 年) パリ万博では染織作品が「美術」とは認められなかった。しかし1893 年(明治26 年) シカゴ万博において、平面的かつ大型で、観賞用の性質が強い作品が美術部出品を果たし「美術的織物」と呼ばれ絶賛された。このシカゴ万博を機会に《美術染織》の概念と「平面」、「大型」、「鑑賞用」という作品形式が確立した。