著者
中村 宏
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電氣學會雜誌 (ISSN:00202878)
巻号頁・発行日
vol.89, no.970, pp.1230-1235, 1969-07-01 (Released:2008-11-20)
参考文献数
18

雨の激しい暗夜,実験用送電線に定格電圧の数割高い電圧を印加すると,電線は夕だちのような激しい放電音を発生しながら淡い真珠色の長大なネオンのように輝く。第5.1図は4導体の2回線送電線のコロナ放電の情況を撮影した写真である。もっとも,この写真はカメラのシャッタを約2分間開放して撮影したものだから,何万回とくり返えされた放電の光の集積を示しているものであり,肉眼ではこれほど詳明には見えない。暗闇になれた目でじっとひとみをこらしていると,あたかも電線の周囲にたくさんのほたるが群れているかのようにちかちかと光って見えるのである。望遠レンズを使ってこの放電の様子を詳しく観察すると,電線表面の放電には第5.2図に示すように,(i) 電線からほとばしり出るように,先端が枝分れしながら激しく光る強い放電(ii) 淡い光を発しながら比較的安定して持続する弱い放電の2種類があることがわかる。さらに,ストロボスコープによってこの放電を正負に分離して観測すると,(i) は正半波において発生する正コロナであり,(ii)は負半波において発生する負コロナであることが確認される。次に,シンクロスコープによってこれらの放電の波形を観測すると第5.3図を得る。負コロナパルスは波頭長0.01μsに達するきわめて急しゅんなパルスであり,正コロナは波頭しゅん度は負コロナより低いが,振幅は数倍に達するきわめて強い放電であることがわかる。(1)送電線のコロナ雑音は,このようなコロナパルスが送電線上の何百万箇所かで,1秒間に何万回かくり返えして発生することによって生ずる高周波雑音である。コロナパルスの波頭しゅん度から考えると,そめ雑音の周波数スペクトルは数十メガヘルツ以上の高い周波数にまで広がっていることが予想されるが,実際上は受信機の内部雑音以下の強さの雑音は問題にならない。このため,電線から発生するコロナ雑音が電波障害上の問題となるのは,主として中波のラジオ受信機(受信周波数540kHz~1.6MHz)に対してであり,テレビジョン放送(使用周波数90~222MHz,590~770MHz)およびFM放送(使用周波数76~90MHz)に対してはほとんど問題にならない。また,ラジオ放送でも都市近郊のように放送局からの電波が強い所では,じゅうぶん信号対雑音比が確保されるから受信障害とはならない。受信障害は放送局から非常に遠く離れている地方や山にさえぎられて放送電波がよく届かない弱電界地域において,放送波に対して雑音の割合が大きくなった場合にのみ発生するのである。
著者
中村 好一 松原 優里 笹原 鉄平 古城 隆雄 阿江 竜介 青山 泰子 牧野 伸子 小池 創一 石川 鎮清
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.72-82, 2018

<p><b>目的</b> 地方紙における遺族の自己申告型死亡記事の記載事項を集計し,その地域での死亡やそれに伴う儀式の実態を明らかにするとともに,死亡記事のデータベースとしての利点と問題点を明らかにする。</p><p><b>方法</b> 栃木の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄に掲載された2011~2015年の栃木県内の死亡者全員のデータを集計解析し,一部の結果は人口動態統計と比較した。観察項目は掲載年月日,市町村,住所の表示(市町村名のみ,町名・字まで,番地まで含めた詳細な住所),氏名,性別,死亡年月日,死因,死亡時年齢,通夜・告別式などの名称,通夜などの年月日,告別式などの年月日,喪主と喪主の死亡者との続柄の情報である。</p><p><b>結果</b> 観察期間中の掲載死亡者数は69,793人で,同時期の人口動態統計による死亡者数の67.6%であった。人口動態統計と比較した掲載割合は男女で差がなく,小児期には掲載割合が低く,10歳代で高く,20歳台で低下し,以降は年齢とともに上昇していた。市町別の掲載割合は宇都宮市や小山市など都市化が進んだ地域では低く,県東部や北部で高い市町がみられた。最も掲載割合が高かったのは茂木町(88.0%),低かったのは野木町(38.0%)であった。死亡日から通夜や告別式などの日数から,東京などで起こっている火葬場の供給不足に起因する火葬待ち現象は起こっていないことが判明した。六曜の友引の日の告別式はほとんどなく,今後,高齢者の増加に伴う死者の増加によって火葬場の供給不足が起こった場合には,告別式と火葬を切り離して友引に火葬を行うことも解決策の1つと考えられた。死亡者の子供,死亡者の両親,死亡者の子供の配偶者が喪主の場合には,喪主は男の方が多いことが判明した。老衰,自殺,他殺の解析から,掲載された死因の妥当性は低いことが示された。</p><p><b>結論</b> 栃木県の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄の5年分の観察を行い,実態を明らかにした。約3分の2に死亡が掲載されており,データベースとしての使用に一定の価値があると考えられたが,記載された死因の妥当性は低いことが判明した。</p>
著者
中村 一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.14-15, 1955-11-10
著者
中村 一
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.190-197, 1965-11-15

造園計画の哲学的側面は2つの問題に関して顕著にあらわれる。第1に造園が他の物的諸計画 (建築, 土木など) と協同して有機的生活環境を作り上げるための統一的な理論はないだろうかという問題がある。そのような理論的体系のひとつとして哲学そのものがある。ただしその哲学は科学との明確な相違点を自覚しつつ, しかも科学の諸成果を価値領域にもちこんで, 人間の未来を実験的に築いていくための理論を提供するものでなければならない。第2に専門化した造園計画の特色はなにかという問題がある。その特色は造園が扱う自然的材料にみられるが, ここで自然という言葉の哲学的内容が問題化する。私は自然の本質的特性である安定性と不安定性に注目して, 不安定性要因をより多くもつものとして, 「みかけの自然」の概念を仮説的に使用することによって造園計画の特色をより深い意味でとらえようと試みた。
著者
大垣 正信 小杉 健一 奥山 圭一 中村 達三郎
出版者
日本熱物性学会
雑誌
熱物性 (ISSN:0913946X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.86-91, 1991-04-20 (Released:2010-03-16)
参考文献数
3

宇宙往還機では空力的問題や構造的問題に加え、 熱的問題も大きな課題である。 ここでは、 宇宙往還機の開発時に想定される種々の熱的問題について述べている。
著者
中村 隆
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.40-45, 2017-01-01 (Released:2018-01-15)
参考文献数
21

皮膚トラブルは,義肢装具の使用における大きな阻害因子の1つである.皮膚トラブルの原因には,力学的要因と生物学的要因の2つがある.力学的要因は圧力とせん断力によるもので,装着時には効率的な力の分散がなされなければならない.ライナーは圧力分散に優れているが,適合が十分でない場合には,たとえライナーを装着していても傷はできる.生物学的要因は感染によるもので,装着時の温湿状態が感染のリスクを高めるため,衛生管理は極めて重要である.皮膚トラブルを防ぐには,自己管理に向けた教育を入院訓練中に行うことが重要であり,退院後も義肢装具使用者に対し皮膚トラブルを早期に発見し,対処できる体制が必要である.
著者
本田 俊介 立花 孝 西川 仁史 峯 貴文 長井 大治 船曳 久由美 小林 佐智 野村 星一 中村 真理
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1025, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 肩関節は人体最大の可動域を持つ多軸性関節であり、その動きを3次元的に捉えることは難しい。そして結帯動作について、指椎間距離という指標はあるが、その実測値は不明瞭であり、結帯動作として記述した報告が少ない。そこで今回下垂位から最大結帯位に至るまでの連続的動作の実測値を導き出し、肩甲骨の動き及び上腕骨の内旋や伸展の関連度合いを理解する事を目的として、Motion Captureを用いた3次元的動作分析を行った。【対象と方法】 健常成人男性10名(平均年齢27歳,平均身長171cm)の右肩関節を対象とした。体表指標点として、体幹に4点(第7頚椎,第7胸椎,胸骨頚切痕,剣状突起)、肩甲骨に5点(烏口突起,肩鎖関節,肩峰角,棘三角,下角)、上腕骨に3点(三角筋粗面,内・外上顆)と内・外側茎状突起に2点の計14点の反射マーカを貼付した。撮影は立位にてまず下垂位を撮影し、以降結帯動作をとってもらい、被検者の母指先端が尾骨、第5腰椎、第12胸椎、第7胸椎の位置に達した所で撮影した。その際皮膚上のマーカと実際の骨上とはずれが生じているため、各々の撮影場面でマーカを定位置に張り直した。なお、体幹側屈の代償を抑えるために反対側も同様の動きを行ってもらった。使用システムはQualisys社製ProReflex ,MCU-500で7台のCCDカメラを使用。サンプリングレートは60Hzである。そしてQToolsを用いてデータ解析を行った。【結果】 まず肩甲骨の動きについて、前傾は下方回旋と比べて序盤動きが大きいものの、最終的には16.9°で、下方回旋とほぼ同じ数値を示した。上腕骨の動きについて、まず内旋は0°から41.4°と初期に大きな動きを行う特徴を示し、最終的に47°で、肩甲骨の動きに対して1対2.8という比率を示した。伸展は下垂位-3.1°から最終的に26.7°まで変化した。外転は、最後の第12胸椎から第7胸椎の相では変化が少ないという特徴を示した。【考察】 肩甲上腕関節の運動について、まず内旋に着目すると母指先端が尾骨から第7胸椎に到達するまでに6.6°しか内旋しておらず、下垂位から母指先端が尾骨に到達するまでにほぼ最大に近い内旋を行っている事がわかった。次に外転と伸展について、この2つの運動は、臼蓋に接触した小結節を徐々に前方から下縁に向かって移動させている事に貢献しているものと思われる。また、第12胸椎から第7胸椎の相で内旋と外転は殆ど変化が無い事から、肩甲上腕関節運動の限界が示唆され、第12胸椎以降は肩甲骨運動によって行われていると思われる。肩甲骨の前傾と下方回旋については、臼蓋の関節面を前下方へ向けるためのもので、小結節の移動を行いやすくさせると同時に、見かけ上の上腕骨の内旋及び伸展を補強していると考える。
著者
中村 祐輔 重田 祥範 渡来 靖
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.213-222, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

地上気温観測において,その観測値は周辺環境に大きく影響される.観測点周辺の土地利用は一般的に不均一であるために,その影響を受けた気温のばらつきを評価することは観測値の空間代表性を理解する上できわめて重要である.そこで本研究では,一つの気温観測所周辺域で発生する気温のばらつきを評価することを目的に地上気温の多地点観測を行なった.観測は,熊谷地方気象台の周辺域において2014年3月1日から2015年2月28日にかけて実施された.観測の結果,観測領域内の気温のばらつきは年平均で1°C程度であることが示された.さらに,熊谷地方気象台が位置する地点の気温は,観測領域内において恒常的に高い傾向を示した(平均+0.4°C).そして,領域内における気温のばらつきの要因としては都市が影響していることが示唆された.
著者
山田 昌寛 中村 克彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第48回, no.人工知能及び認知科学, pp.205-206, 1994-03-07

論理プログラミングにはSLD融合にもとづく後向き推論による方式のほかに, 単位融合にもとづく前向き推論による方式があることが知られている. 後向き推論の方式は代表的な論理言語であるProlog, PARLOG, GHCなどに採用され広く使われているが, 前向き推論のアプローチは一般的な論理プログラミングの方式としてこれまであまり発展していない. しかし, この方式には大量のデータに対するデータ駆動型の計算を効率よく行えるという特長がある. この考えにもとづいて, われわれはデータ駆動型の前向き推論によって, reactive open systemを実現するような計算方式を提案し, このための並列論理型言語Monologを開発している. 本報告では並列論理型言語Monologの概要と, 代表的な探索問題である8クイーン問題のMonologによる計算方法とPrologのコンパイル法について報告する.
著者
中村 豊
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.11, no.10, pp.739-745, 1982-10-30 (Released:2010-03-18)
参考文献数
17
被引用文献数
1