著者
中村 佳正 今井 潤 中山 功 代田 典久 近藤 弘一 岡崎 龍太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

Caratheodoryの補間問題などに登場するPerronの連分数についてはChebyshev連分数のqdアルゴリズムに相当する計算量O(N^2)の連分数展開算法は知られていなかった.これに対して,まず,単位円周上の直交多項式の理論を基礎として,直交多項式の3項漸化式をLax表示とする新しい可積分系Schurフローを導出し,その差分化によって離散時間Schurフローの漸化式を与えた.さらに,離散時間SchurフローによるO(N^2)の計算量のPerron連分数展開アルゴリズムと代数方程式の零点計算アルゴリズムを定式化した.これにより,1)古典直交多項式-Chebyshev連分数-Toda方程式,2)単位円周上の直交多項式-Perronの連分数-Schurフローという対応図式が完成した.Thronの連分数の計算アルゴリズムの開発にも取り組んだ.まず,双直交多項式の3項間漸化式をLax表示とする可積分系である相対論戸田方程式に注目し,その可積分な離散化によって離散時間相対論戸田方程式のタウ関数解を見い出した.さらに,このタウ関数解の漸化式を用いて,Thronの連分数をO(N^3)の計算量で計算する連分数展開アルゴリズムを定式化した.従来,Thronの連分数については離散可積分系に基づく算法は知られていなかった.通常のFGアルゴリズムでは分母が零となり計算できない場合でも本アルゴリズムによって連分数が求められることもわかった.また,第2種Painleve方程式PIIの解のBacklund変換をLax対の両立条件としで表し,さらに,Lax対のひとつを直交多項式の3項間漸化式とみて,直交多項式に関連した連分数の係数がBacklund変換により相互に代数的に結ばれることを示した.この連分数がAiry関数のLaplace変換の連分数展開を与えることを証明した.
著者
中村 彰宏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.559-566, 2011-11-15 (Released:2011-12-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

水溶性大豆多糖類(SSPS)は, 分離大豆蛋白質を製造する過程で副生するオカラから抽出した水溶性の多糖類である.食物繊維含量が高く, 水溶液は低粘度であり, 酸性下でも熱安定性に優れた特徴を持つ.分散安定性, 乳化性, 結着性, 造膜性に優れることから, 食物繊維強化食品への利用のみならず, 様々な食品の物性改良剤として利用されている.本稿ではSSPSの多糖類としての基本的性質と食品における物性改良機能について紹介する.
著者
中村 佳正 江口 真透 辻本 諭 小原 敦美 太田 泰広 広田 良吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中村は正定値行列の空間上の算術平均演算と調和平均演算の繰り返しによって,与えられた正定値行列の平方根行列に2次収束する算術調和平均のアルゴリズムを定式化した.このアルゴリズムは情報幾何学的には空間の2点間の互いに双対な測地線上の中点をたどる算法という意味をもつ.小原は算術調和平均のアルゴリズムが定義される正定値行列空間を対称錘の空間上に拡張し,これらの平均演算が測地線の中点を定めるなど対称錘の空間の情報幾何構造を解明した.正定値が成り立たない場合,算術調和平均のアルゴリズムは一般に収束しない.近藤と中村は,算術調和平均のアルゴリズムの漸化式の一般項が行列式表示されることを発見した.可解なロジスティックマップについても同様な表示が見つかった.さらに,この表本式と系の可解性に基づいて,不変測度と積分計算によらずに,系のLyapunov指数が正となることを示した.さらに,中村と辻本はアルゴリズム機能をもつ離散時間可積分系のプロトタイプである離散時間戸田方程式(qdアルゴリズム)の並列化の研究を開始した.まず,2個のプロセッサーによる分散メモリ型並列計算機システムを構築し,qd表を左右に2分割してそれぞれのプロセッサーで並列に計算させることに成功した.この並列化によって3重対角行列の固有値計算時間が約60%に減少した.さらに,qd表の特性に注目して一部を斜め45度に分割することでさらに並列化効率が改善されることを確認した.以上の研究は可積分によるアルゴリズム開発の今後の研究において有用になるものと考えられる.
著者
崔 京 蘭 大崎 純 中村 奎吾
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.82, no.737, pp.1137-1143, 2017 (Released:2017-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Recently, a number of designers have focused on free-form surface shell to realize a free architectural form that is different from the analytical curved surface such as cylindrical or spherical surfaces. However, in order to create rational architectural forms, constructability and cost are also essential factors to be considered. Developable surface is a special form of ruled surface generated by continuous movement of the straight line. It can be obtained by adding the condition that the normal vector of the surface does not change along the generating line (generatrix). Because the generatrix is a straight line without torsion, the formwork of continuum shell is easily created. Since the twisting process is not required, it has a high workability characteristics. In this study, several developable surfaces are combined to form a curved roof structure. The (n,1) Bézier surface is used for modeling the surface. Optimization problem is formulated for minimizing the maximum principal stress under several static loading conditions including vertical and horizontal loads. The coordinates of control points of the Bézier surface are chosen as design variables. The developability condition is numerically assigned so that the tangent vectors at the same parameter value of the two Bézier curves along the boundary exist in the same plane as the directing line. The G0 and G1 continuity conditions are assigned for connecting the Bézier surfaces. Optimal solutions are found using nonlinear programming approach, where the sensitivity coefficients are computed by the finite difference approximation. As the result of optimization, a variety of developable surfaces are obtained by connecting Bézier surfaces. Since the control points of the curves are chosen as design variables, the calculation efficiency is high. The stress distribution also greatly improved by using the maximum stress as the objective function.
著者
中村 朋博 吉塚 久記 吉住 浩平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2116, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 足部は歩行中、床面に唯一接している体節であることから、足部内の位置的変化は上位関節の運動連鎖の変容を生じさせるとの報告がある。その中でも距骨下関節は近位の骨・関節への荷重伝達の中核をなすため、同関節の機能的な破綻は立脚期の身体全体に影響を及ぼすものと考えられる。 臨床では、 距骨下関節・横足根関節過回内を呈した症例を多く経験するが、その様な症例では回内側立脚初期において円滑な重心移動が阻害されている印象を受ける。しかし、足部に関する三次元解析機器を用いた先行研究は少ない。そこで、距骨下関節の回内固定により、床反力および下肢関節モーメントに如何なる影響が生じるかを検討した。【方法】 対象は足部に整形外科的、神経学的既往を有さない健常成人15名(男性15名、平均年齢20.8±1.5歳、平均身長169.6±3.4cm、平均体重61.0±3.5kg)とした。被検者の反射マーカーの設置は臨床歩行分析研究会の推奨する15点マーカー法を採用した。解析動作は自由歩行と距骨下関節回内固定の2条件とし、それぞれ至適速度での歩行を三次元動作解析システムVICONMOTION SYSTEM社製VICON MX・AMTI社製床反力計)を用いてサンプリング周波数100Hzにて計測した。また、距骨下関節の固定は非伸縮性ホワイトテープを使用し、距腿関節底背屈に制限を与えずに川野の扇型スパイラル法で利き足を測定肢とし、回内位で固定した。比較項目は利き足側下肢の立脚期における床反力鉛直成分・床反力前後成分・足関節底背屈モーメントのピーク値と積分値であり、それぞれを体重で正規化した。また、床反力鉛直成分に関しては立脚期中に示す二峰性波形の第一頂点に到達する時間も算出した。なお、統計学的解析には対応のあるt検定を用い危険率は5%未満とした。【説明と同意】 ヘルシンキ宣言を遵守し、全ての被検者に研究主旨を説明後、紙面にて同意を得た。 【結果】 足関節背屈モーメントのピーク値は自由歩行0.154±5.9%,回内歩行0.100±0.3%となり、回内歩行時では有意に低下していた。(p>0.01)。また、床反力鉛直成分の第一頂点までの所要時間は自由歩行0.125±3.3秒、回内歩行0.135±3.3秒となり、回内歩行時では有意に低下していた(p>0.05)。なお、その他の床反力前後成分・足関節底屈モーメントには有意差が認められなかった。【考察】 床反力鉛直成分の第一頂点に至る過程は歩行時の踵接地から足底接地の時期に該当する。今回、距骨下関節を回内固定することにより、踵接地から足底接地において有意な所要時間の遅延が認められた。入谷は距骨下関節回内位では、立脚初期に重心移動の時間的停滞が出現すると報告している。 一般的に、踵接地の距骨下関節回内位では距骨が踵骨に対して底屈することにより距腿関節は背屈方向へと偏位し、距骨下関節回内を伴った距腿関節背屈は足部全体を外反位にしやすくなる。また、足部外反位は距腿関節背屈の主動作筋と補助筋のバランスを変化させる。そのため、踵接地から足底接地に移行する際の足関節底屈への制動が阻害されやすく、足関節背屈モーメントが低下したものと推察される。 今回、距骨下関節回内固定に伴う足関節背屈モーメントのピーク値が低下したにも関わらず、踵接地から足底接地までの所要時間が遅延したのは、距骨下関節回内により距腿関節が背屈方向へ偏位した結果として、踵接地時の距腿関節の底背屈の切り替えが遅延し、踵接地から足底接地までの所要時間の遅延が生じたものと推測される。【理学療法学研究としての意義】 今回の結果から距骨下関節の回内変位は立脚初期の荷重のタイミングを遅延させる因子となるとともに足関節背屈モーメントを低下させることが分かった。このことから、距骨下関節の回内変位は立脚初期の下肢の荷重機構に大きな影響を及ぼすとともに足関節背屈筋群に対して大きなストレスを加えている可能性があると考える。今後は症例数を増やし立脚初期だけではなく、立脚中期以降の多角的視点から歩行を分析する必要があると考えられる。
著者
佐藤 朝美 松河 秀哉 椿本 弥生 荒木 淳子 中村 恵 松山 由美子 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S43039, (Released:2019-08-13)
参考文献数
6

本研究では,保護者が子どもの成長や学びについて深く考えるために,デジタルストーリーテリングワークショップを開発し,その効果を明らかにすることを目的とする.園で撮影された写真を用いた活動をデザインし,実践した結果,子どもの成長だけでなく,保護者自身,園や先生の役割についての振り返りが促されていた.また保育者からは,本WSのDST作品や保護者の対話に対して,「子どもを共に育てる」気持ちを共有できたというポジティブな見解が示された
著者
中村 周作
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表では,黒潮文化圏における伝統的魚介類食について,主要ないくつかの県,たとえば千葉県,高知県他の具体的な事例をもとに,この圏域の飲食文化にみられる地域的共通性と特異性について考察を試みる。研究方法として,文献等より抽出した各地の伝統的魚介類食に関して,食材他諸要素の分析を通じて地域的共通性と特異性を見出す。さらに,各地の主要な伝統食および,それらに関するイベントなどの実地観察調査の成果を紹介する。<br><br> 2015(平成27)年の都道府県別魚種別漁獲量(属人)統計より,主な県になじみ深い魚種をあげる。千葉県では,生産量の多い順にサバ類(県全量比の32.4%),イワシ類(同31.8%),ブリ類(9.7%)の他,スズキ類が全国1位,コノシロ全国2位,貝類が全国3位の生産をあげている。一方,高知県では,カツオ類(28.4%),マグロ類(24.4%),イワシ類(21.4%)の他,カジキ類が全国2位となっている。この他の主要な漁業県をみると,静岡県では,カツオ類(39.5%),サバ類(27.8%),マグロ類(14.8%),イワシ類(18.5%)の他,貝類が全国4位である。三重県では,イワシ類(42.6%),サバ類(17.4%),カツオ類(17.1%),マグロ類(9.7%)の他,イサキが全国4位,イカナゴが5位である。和歌山県では,イワシ類(26.5%),サバ類(23.6%),アジ類(16.1%)の他,タチウオが全国3位である。宮崎県では,イワシ類(49.9%),マグロ類(15.1%),サバ類(12.0%),カツオ類(11.2%)となっている。これらは,属人統計ゆえに厳密に言えば地産魚介ではないし,今日の全国流通の中にあっては,これらが地元で食べられているとは言いがたいが,少なくとも各地において,馴染みの深い料理(食材)であるということができる。<br><br> 農文協『日本の食生活全集』(全50巻)は,昭和初期に各地で食べられていた食に関する聞き書きをまとめたものである。本シリーズ中に魚介類料理が,のべ2,888品目あげられている。主な県についてみると,千葉県では,計101品目記載された中,食材としてはイワシ(掲載数15),アサリ9など,静岡県では,64品目中ボラ10,カツオ6など,三重県では,57品目中イワシ7,サンマ6など,和歌山県では95品目中カツオ10,クジラ9など,高知県では57品目中サバ5,カツオ,ソウダガツオ,マグロ,アユ(各4)など,宮崎県では44品目中イワシ5,アジ5などが出てくる。こうしてみると,イワシ,カツオ,サバ,アジが濃淡はあるもののほぼ全域,サンマが和歌山以東など広域で食されるのに対し,局所的に出てくるのが静岡のイルカ3,和歌山のクジラ,高知のマンボウ,ウミガメ,宮崎の棒ダラ,ムカデノリなどであった。次に,複数県にまたがって出てくる料理数を各県別にあげると,和歌山県18,高知県16,静岡県13,千葉県12,三重県11,宮崎県10となる。黒潮にのって西へ東へと移動しつつ,各地に定着した紀州漁民が伝えた料理の多いことが推測される。主な料理としては,「ドジョウ汁」(5県),「イワシなどのつみれ」,「カツオの塩辛」,「アサリ飯・味噌汁」(各4県),「サバずし」,「サンマずし」,「アユのせごし」,「カニ巻き汁」(各3県)などが出てくる。<br><br>最後に,発表者が,今まで取り組んできた宮崎県の「こなます」,「ムカデノリ」,「棒ダラの煮付け」,「塩クジラの麦がゆ」他,高知県の「やえこ」他,千葉県のカツオ料理他の伝統的魚介料理の実地・実食調査の成果を紹介する。<br><br><br><br><br><br>
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019 (Released:2019-08-10)
参考文献数
4

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
中村 雄二郎
出版者
建築史学会
雑誌
建築史学 (ISSN:02892839)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.76-92, 1990 (Released:2018-09-13)
著者
中村 達 古川 誠一
出版者
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

寄生蜂が様々な方法で寄主の免疫作用に対抗し、寄生に成功するのが知られているのに対して、同じ捕食寄生性昆虫である寄生バエについてはほとんど研究されていない。本研究では、ヤドリバエがどのように寄主免疫作用をくぐり抜けて寄生成功するのか明らかにするため、寄主体内での幼虫周辺や寄主の変化について経時的に調査した。寄主に侵入後、ハエ幼虫はバリア構造物と名付けた寄主組織からなる構造物に包囲されることがわかった。このバリア構造物は内側が寄主の血球由来、外側が脂肪体細胞由来で、ハエ幼虫はこの構造により、寄主によるメラニン化などの免疫反応から逃れていると考えられた。

1 0 0 0 OA がんと鍼灸3

著者
小川 卓良 金井 正博 黒川 胤臣 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 小内 愛 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.693-706, 2010 (Released:2011-01-20)
参考文献数
19

今回が3回目の 「がんと鍼灸」 のパネルディスカッションである。 西洋医学のがん或いはがん患者に対しての攻撃的で深刻な副作用を伴い、 かつ免疫能を減退させる医療が適切か否か多くの医師・識者より疑問視されている現状がある。 それに対し副作用が無く、 QOLを高め、 免疫能を賦活する鍼灸治療はがん患者の予防から緩和ケア・再発防止までのあらゆる場において有用性は高いとの期待があり、 その成果は蓄積されつつある。 第1回で緩和ケアでの有用性を、 第2回では内外の文献調査結果を報告した明治国際医療大学の福田氏は今回がん化学療法による末梢神経障害に対し鍼治療の安全性と有効性について報告した。 防衛医科大学校の黒川氏は大学病院での補完療法としてがん患者の身体・精神症状の改善、 QOLの改善、 副作用の軽減、 術前・術後の障害対策等に鍼治療を行いその有効性について述べた。 埼玉医科大学の小内氏は、 大学病院での併療治療としての鍼治療の有効性と有効性の背景因子に言及された。 森ノ宮医療大学の中村氏は非摘出のがん患者の化学療法の副作用に対し長期に灸治療を行い、 その有効性について報告した。 以上は、 化学療法と放射線療法を併用した状態での鍼灸治療の有効性、 特に副作用の軽減とQOLの改善に鍼灸治療は有効であるという報告であったが、 第1回より一貫して主に術後の再発予防を目的とした西洋医学的治療を一切含まない鍼治療を含む自律神経免疫療法で報告された素問八王子クリニックの真柄氏は、 免疫に関わる種々のサイトカインの増加等による免疫力の改善や、 時に非摘出の進行癌でさえ縮小が可能であること、 今回は特に自身の臨床例における再発率を現代医学のそれと比較して数段再発率が低いことを報告し、 癌の再発予防に自然治癒力に関する研究に、 今迄以上の関心を持つべきであると強調した。 今回は更に今迄以上がんの鍼灸治療の大規模研究が望まれた結果になった。
著者
大石 泰也 尾田 一貴 田嶋 信子 齊藤 紀子 坂田 理枝 中村 啓二 石丸 敏之
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.222-228, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
18
被引用文献数
6

Blood culture collection is strongly recommended prior to the start of broad spectrum antibiotics. Once causative organisms are identified, the narrow spectrum antibiotics are introduced (de-escalation). In Fukuoka Red Cross Hospital, the infection control team (ICT) has been encouraging doctors to take 2 sets of blood culture, prior to the commencement of carbapenem. We compared the implementation of blood culture collection prior to the commencement of carbapenem from 2013 to 2016. During this period, the implementation rate was increased from 33.0% to 71.1% (P < 0.05), respectively. The de-escalation was also improved from 10.3% to 33.0% (P < 0.05), in the respective period. The cost in the use of carbapenem in 2016 was significantly decreased. This cost effectiveness showed a positive outcome when de-escalation took place, compared with a simulated case of continuous use of carbapenem. The total pharmaceutical cost reduction over this period was increased from 136,437 yen to 547,205 yen. The result showed the endorsement of mandatory blood culture collection prior to carbapenem use improved de-escalation as well as pharmaceutical cost.
著者
岸田 晶夫 木村 剛 橋本 良秀 中村 奈緒子 舩本 誠一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

優れた生体適合性・生体機能性を有する脱細胞化生体組織を規範として、新しい生体材料である人工生体組織(Tissueoid:生体組織のようなもの)の概念を提唱し、その創製を通じてバイオマテリアルの設計概念および作製プロセスの獲得を目指した。脱細胞化組織の特性の要因のひとつとして生体組織の微細構造があることを見いだした。その要素をコラーゲンあるいは人工材料で作製した組織体に組み込み「Tissueoid」の開発概念を立証した。
著者
林 良和 郭 柄霖 平島 剛 伊藤 竜也 中村 壮志 笹木 圭子
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.135, no.7, pp.63-70, 2019-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
23

Removal of borate in mine drainages by co-precipitation with hydroxyapatite (HAp) was developed from a laboratory scale to a pilot scale. Weakly acidic initial pH facilitated to enhance dissolution of Ca(OH)2 and decrease the dissolved carbonate concentration, leading to efficient immobilization of borate and arsenate. The NH4H2PO4 lowered best the equilibrium B concentration among different phosphate sources, avoiding the lattice strain of HAp. The added molar ratio of P/Ca significantly influenced the decreasing behavior of the B concentration, showing the optimal value of 0.3. In case of P/Ca larger than 0.30, the excess concentration of PO43- was probably adsorbed on Ca(OH)2 particles to prevent the dissolution, resulting in inhibiting the formation of HAp. In case of P/Ca smaller than 0.30, the production of HAp was limited, leading to less immobilized borate. All the optimized conditions as above were applied to the pilot scale with a 250 L reactor, where borate concentration was effectively reduced in also both batch and continuous tests.
著者
中村 悦大
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1_37-1_64, 2012 (Released:2016-02-24)
参考文献数
35

Voters' perception of Japanese party system after the electoral reform was investigated and compared with the perception under the LDP dominance era. Tobit principal component analysis was applied to the feeling thermometer data in seven different dataset and analyzed the changes and continues of the voters' perception toward party system. As the result, I found voters put parties on two dimensional space, whose first dimension is the left-right policy frame and the second dimension is governmental party - opposition party distinction. The two dimensional space emerged after the Koizumi cabinet. I also found there is a fair correlation between the voters' principal component score of the governmental party- opposition party dimension and the retrospective evaluation of the cabinet.
著者
中村 武 藤原 悌三
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B = Disaster Prevention Research Institute Annuals. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.B-1, pp.307-316, 1985-04-01

Results of field survey after 1983 Tottoriken-chubu earthquake which took place at 1:51of Octpber 31, 1983, was reported. Damage in cottage structures in several towns near theepicenter was summarized first. In the latter half, results of structural analysis for the east annexbuilding to the main building of Kurayoshi city office was reported to investigate the cause andthe process of damage in the columns on the second floor.