著者
中村 良介 山本 聡 松永 恒雄 小川 佳子 横田 康宏 石原 吉明 廣井 孝弘
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-24, 2014-03-25 (Released:2017-08-25)

我々は月探査機「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)データの全量解析を行い,月表面に露出しているカンラン石・低カルシウム輝石に富む岩相の全球分布を調べた.その結果,(1)カンラン石はモスクワの海・危難の海といった地殻が薄く比較的小さい衝突盆地周辺に(2)低カルシウム輝石は月の三大衝突盆地,すなわち南極=エイトケン盆地・雨の海・プロセラルム盆地の周囲に,それぞれ局在することが明らかとなった.表層の斜長岩地殻が完全に吹き飛ばされた衝突盆地の内部では,その下にあるマントルが大規模に溶融して「マグマの海」が形成される.原始地球への巨大衝突によって形成された月は,当初数百km以上の厚さのマグマオーシャン(マグマの大洋)によって覆われていた.「マグマの海」は,このマグマオーシャンのミニチュアであり,SPが捉えたカンラン石・低カルシウム輝石の分布は,その分別結晶化過程を反映していると考えられる.今後「かぐや」分光データの詳細な解析をすすめ,「マグマの海」の組成およびその分化過程を読み解いていけば,同じ手法を用いてマグマオーシャンの分化過程や月の内部構造・バルク組成にも強い制約を加えることができるだろう.同様に月の「マグマの海」の研究は,ほぼ同規模の小惑星ベスタ上のマグマオーシャンや,月よりもさらに規模の大きい地球のマグマオーシャンの分化過程についても,新たな知見をもたらすことが期待される.
著者
中村 太士
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.217-232, 2003-02-28 (Released:2009-05-22)
参考文献数
54
被引用文献数
31 29

河川・湿地生態系は,森林(植物群集)と河川の相互作用系,上流から下流に向けての土砂・有機物・栄養塩・熱エネルギーの流れ,洪水(土石流)攪乱や氾濫原によって特徴付けられる独特な生態系であり,自然復元にあたってはこれらの特徴を回復・維持することに主眼がおかれなければならない.現在,日本の河川・湿地生態系では,こうしたプロセスの分断と水域・陸域の生態系の分離が顕著である.復元(restoration)は「人為的攪乱以前の環境に戻すこと」として定義されるが,修復(rehabilitation)は「人為的影響が強く元に戻すことが不可能な場合,重要な機能と生息場環境を提供する自律した生態系をめざして改良すること」として定義される.日本の場合,土地利用的制約から後者を適用した方が良い場合が多い.自然復元計画における事前調査では,過去50年程度のデータをできるかぎり流域レベルで収集し,生態系の劣化をもたらしている要因を明らかにすることが重要である.自然再生事業に対しては,目的→目標→実施→評価(モニタリング)の手順を公開で進めることが必ず要求される.目標としては,周辺域で再生区の自然環境に等しく,未だ人為的影響を受けていない地域を選出することが望ましい.しかしこうした地域が存在しない場合,過去の空中写真や資料から目標像を描く以外方法はなく,北海道では1960年頃の景観が目標像となる可能性が高い.モニタリングによる評価方法としては,できる限りくり返しを持ったBefore(事前)-After(事後)-Reference(標準区)-Control(対象区)-Impact(再生区)(BARCI)で実施することが望ましい.復元計画でまず考えなければならないことは,事前調査で明らかになった生態系の劣化を進めている制御・制限要因を取り除くことであり,回復力のある生態系はこれだけで元に戻ることができる.人間が積極的にかかわって工事を実施し自然にもどそうとする行為は,最終的な手段である.釧路湿原の保全計画では,水辺林・土砂調整地による流域負荷量の軽減,ならびに蛇行氾濫原・湿地の復元などが計画されている.現在,湛水実験によるハンノキ林の制御,湿原再生のためのBARCIの実施,さらにデータベースの構築とWebによる公開をめざしている.標津川では蛇行河川ならびに氾濫原再生をめざして,過去のデータの収集と目標像の設定を行った.現在は,河跡湖を一部本川と連結する実験を行っており,河床変動,栄養段階,魚類,植生,水質,地下水などの観点から蛇行流路復元の効果が明らかになると思われる.
著者
高薄 敏史 菱山 豊平 平 康二 中村 豊 竹内 幹也 近藤 哲 加藤 紘之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.254-258, 2001-01-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
12

杙創(刺杭創, Impalement injury)は刺創の要素に加えて鈍的外傷の要素をもつ穿通性挫創とも言うべき特異な開放性損傷である.われわれは最近15年間に杙創8例を経験したので治療法の選択を中心に報告する.患者は全例男性で年齢は12~57歳(平均38.9歳)であった.刺入経路,損傷臓器の有無を確認するために腹部X線検査, CT検査および刺入路造影を行った.治療法としては刺入路を十分検索し,デブリードマン,ドレナージを行い,臓器損傷を合併した場合はそれらを修復し,必要に応じて人工肛門,膀胱瘻を造設した.その結果, 1例に術後の肺塞栓を認めたが, 8例全例を救命しえた.杙創における治療方針はまず刺入路を明かにしたうえで,損傷臓器を的確に把握し,それに対する処置を的確に行うことで救命率を高め得る.
著者
白崎 良演 中村 浩章 羽田野 直道 町田 友樹 長谷川 靖洋
出版者
横浜国立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

我々は、2次元電子系がメゾスケールの大きさである場合、強磁場下で系のネルンスト係数に量子振動が見られる(量子ネルンスト効果)ことを平成17年度から平成18年度にかけて線形応答理論を用いた理論計算で示していた。平成18年度にフランスのグループ(Bhenia, et. al. ESPCI, Paris)から、ビスマス(Bi)単結晶のネルンスト係数およびエッチングスハウゼン係数の測定結果が発表され、ネルンスト係数の量子振動が現実の系で示された。我々はこの実験結果の検討を行い、試料の3次元性の効果を取り入れた理論拡張を行った。我々は磁場中の3次元バリスティック系を考え、運動の自由度を磁場に垂直な2次元面内の自由度と磁場に平行な自由度に分け、2次元面内の運動成分は有限サイズのバリスティックなものと見なしてネルンスト係数を考察した。その結果、3次元系でもネルンスト係数の量子的な振動が現れ、ネルンスト係数のピークは弱磁場側に尾を引く左右非対称の形を持つことが分かった。この形はBiの実験結果と一致する。このように、量子ネルンスト効果が3次元系において理論・実験両面から確認された。一方、Biのネルンスト係数のピークは実験値が理論値に比べ非常に大きい。この原因の理論的解明は今後の課題として残っている。我々は量子ホール系における輸送係数の基本関係に関しても考察を行った。従来、電気伝導度テンソルの非対角成分の磁場微分と対角成分との間では線形な関係式が提案され、研究が進められていた。我々は線形応答理論を用いて量子ホール系の輸送係数を理論・解析的に導出し、成分間の関係が非対角成分の磁場微分と対角成分の二乗が比例する非線形な関係であることを示した。この理論では、電子の不純物散乱により、ランダウ準位近傍の電子状態密度がローレンツ型になると仮定している。我々はGaAsによる実験結果を用いて、数テスラ程度の磁場のもとでこの関係が良く成立していることを確かめた。
著者
中村 喜宏 松尾 学 岡 哲資 関 亜紀子
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.233-244, 2015-05-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

There has been a significant progress in wearable computing technology. However, the existing character input methods for wearable computers have some defects and are not practical. This paper proposes and evaluates two character input methods for wearable computers using a distance sensor at the wrist and five mechanical switches at the fingertips. The results of our evaluation show that the proposed methods are sufficiently fast and easy to learn for practical use. This paper also discusses reasons for user errors and limitations of the methods.
著者
金本 良嗣 中村 良平 矢澤 則彦
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.251-266, 1989-10-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
7

ヘドニック・アプローチは,環境条件の違いがどのように地価あるいは住宅価格の違いに反映されているかを観察し,それをもとに環境の価値の推定を行う。本稿の主目的は,実際にヘドニック・アプローチを用いて環境の価値を測定しようとする人々のための手引として役立つことである。したがって,この手法に関する最近の研究を紹介するとともに,この手法を用いる際の具体的な手順や結果の解釈の仕方などについても解説する。また,誤まった適用を避けるためには手法の理論的基礎の正確な理解が必須であるので,ヘドニック・アプローチの理論的基礎を解説し,実際に適用する場合にどのようなバイアスが生じやすいか,それらに対する対策はどうすべきなのかなどの問題も議論する。
著者
山本 成一 中村 遼 上野 幸杜 堀場 勝広 関谷 勇司
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_46-3_57, 2015-07-24 (Released:2015-09-24)

インターネット接続が普及し,さまざまな場面でネットワーク技術が利用されるようになった.しかしながら,その運用形態は進化していない.機器毎の固有の設定を個別に実施する旧来からの手法にとどまっている.研究レベルでは,いくつかの提案がされているが,現在のネットワーク利用に対し,実用的な運用レベルの要求を満たすものではない.本研究では,新しい運用管理アーキテクチャGINEW (General Integrated Network EngineeringWorkbox)を提案した.そのプロトタイプ実装の適用結果を報告する.
著者
山本 正浩 中村 龍平 笠谷 貴史 熊谷 英憲 鈴木 勝彦 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-11-09)

深海熱水噴出孔では海底面から熱水が噴出し、周囲の海水によって冷却されることで鉱物が沈殿し鉱体が形成される。我々はこの鉱体の主要成分である硫化鉱物が導電性を持つことを明らかにしている。鉱床下に存在し、海底に湧出する熱水は還元的な化合物(硫化水素、水素、メタン)に富み、海底面から浸透し鉱床近傍で接する海水は酸化的な化合物(酸素、硝酸、硫酸)を含む。我々は、熱水中の還元剤の持つ電子が硫化鉱物を介して海水中の酸化剤に受け渡される放電現象の存在を提唱し、実際にこの現象が深海熱水噴出域の海底の広域で起きていることを現場電気化学計測によって明らかにした。また、この放電現象を人為的に制御することで発電技術として利用可能であることも明らかにしている。本発表では、上記について説明するとともに、今後の深海底発電技術の開発、およびその模擬として行っている陸上温泉での発電試験の結果についても紹介する。
著者
大澤 修一 中村 文一 西谷 紘一
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.733-736, 2010 (Released:2011-12-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Self-localization is an important technique for vehicle automation. Extended Kalman Filtar (EKF) is a major sensor fusion technique for self-localization of mobile vehicles. To calculate Kalman gains, variance matrices are necessary. However, it is laborious to obtain variance matrices. In this paper, we compare the structure of the grid point observer with that of EKF, and propose a design method of decding variance matrices by using digital filter design method. In addition, effectiveness of the proposed method is confirmed by the experiments.
著者
中村 聡美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-13, 2018-06-30 (Released:2019-10-01)
参考文献数
26

本研究の目的は,集団認知行動療法による介入の評価を質的・量的の両側面から行い,介入によるうつ病休職者の職場のストレスに対する認知および行動の変容過程を質的側面から明らかにすることである。企業組織に在籍し,うつ病休職中で復職を目指す16名に対して集団認知行動療法を実施し,前後に質問紙調査および半構造化面接を行った結果,当事者の語りおよびBDI-Ⅱの得点差(Z=-2.330, p=.017)から,介入後の抑うつ気分に改善が認められた。同時に,職場のストレス処理に対する認知および行動からなる労働スタイルにも変化が生じ,柔軟性が増していた。休職前の〈埋没的労働スタイル〉は,休職中に〈職務解放労働スタイル〉へと変化し,集団認知行動療法後は〈職務統制労働スタイル〉へと変化しており,各段階を連続的に捉えると,核となる現象特性として,《自己完結的労働スタイル》の緩和のプロセスが認められた。職場復帰を目指すうつ病休職者に対して集団認知行動療法を実施する際,《自己完結的労働スタイル》に関わる認知や対処行動(解決策)に着目し,緩和の方向を意識して介入することが目標になり得ると考えた。
著者
中村 豪志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.765-769, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

〔目的〕介護老人保健施設における在宅復帰の要因を明らかにすることとした.〔対象と方法〕全国老人保健施設協会に加入している九州・沖縄の介護老人保健施設(542施設)の施設ケアマネジャーとした.郵送による自記式質問紙調査を行った.〔結果〕有効回答は147通だった(回収率27.1%).在宅復帰支援に関する要素は,3因子から構成されていることが分かった.在宅強化型老健は,それ以外の老健と比較して利用者に対するADL支援と家族介護者に対する情報提供支援の実践度が高かった.〔結語〕老健からの在宅復帰には利用者に対するADL支援とともに,家族介護者に対する教育的支援が重要な要因である.
著者
中村 瑛一 有本 梓 田髙 悦子 田口(袴田) 理恵 臺 有桂 今松 友紀
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.4-13, 2016 (Released:2017-04-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

目的:父親と母親における親役割達成感の関連要因を明らかにし,今後の育児支援を行ううえでの示唆を得る.方法:2012年9~11月にA市B区福祉保健センターが行った,3歳児健康診査対象児の父親と母親各222人を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った.調査内容は,基本属性,親役割達成感,父親の育児支援行動(情緒的支援行動・育児家事行動),育児ソーシャル・サポート,過去の子どもとのかかわり等とした.父親と母親おのおので,親役割達成感を従属変数とした重回帰分析を実施した.結果:父親113人,母親144人の有効回答を得た.父親は,健診対象児の出生順位が低いほど,母親への情緒的支援行動が多いと認識しているほど,親役割達成感が高かった.また,「育児が思うようにいかない」と感じているほど,親役割達成感が低いことが示された.母親は,子どもをもつ前に子どもとふれあう機会があった場合や,父親からの情緒的支援行動が多いと認識しているほど,親役割達成感が高かった.また,健康状態が悪いほど,親役割達成感が低いことが示された.結論:父親と母親における親役割達成感の関連要因はおのおのに異なっていたが,父親から母親への情緒的支援行動の多さは共通の要因であった.父親の育児参加を促し,特に夫婦間の会話を多くもち,父親が母親の気持ちに寄り添う等の情緒的支援行動を促進させていくことは,父親と母親おのおのの親役割達成感を高めることが示唆された.
著者
秦 吉弥 中村 晋 野津 厚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.58A, pp.250-263, 2012 (Released:2013-04-19)

下記の論文は撤回されました.記秦吉弥,中村晋,野津厚:2011年東北地方太平洋沖地震における藤沼ダムでの地震動の評価-海溝型巨大地震へのサイト特性置換手法の適用-,構造工学論文集,Vol. 58A,pp. 250-263,2012.撤回の理由2019年3月15日に大阪大学より公表された研究活動上の特定不正行為に関する調査結果において,本論文に対して第一著者による特定不正行為(ねつ造)が認定されたため,撤回した.
著者
南 雅代 Minami Masayo 中村 俊夫 Nakamura Toshio 平田 和明 Hirata Kazuaki 長岡 朋人 Nagaoka Tomohito 鵜澤 和宏 Hoshino Keigo
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.18, pp.134-143, 2007-03

During the past several decades, many medieval skeletons were excavated from archaeological sites in the Yuigahama area, Kamakura, Japan. The excavations yielded more than 5,000 individuals in varying states of preservation from the Zaimokuza, Seiyokan, Yuigahama-minami and Chusei Shudan Bochi sites. Medieval Kamakura was an ancient capital of the Kamakura Shogunate, and a lot of people lived in Kamakura with high population density. The human skeletons excavated from the Zaimokuza site are reported to be humans dead by competition at the end of the Kamakura Shogunate, but a detailed study on dating of the human skeletons has not made yet. In this study, we measured ^<14>C ages, together with carbon and nitrogen isotope ratios, of human skeletal remains excavated from the Yuigahama-minami site and Chusei Shudan Bochi site. The δ^<13>C and δ^<15>N were not different between human skeletal samples of both sites, while the ^<14>C ages were different between them: The human bones of the Yuigahama-minami site are 100 year younger than those of the medieval collective-cemetery site. All of ages of human skeletons from both of the sites are older than the latest Kamakura period. The δ^<13>C and δ^<15>N values of the medieval Kamakura people are higher than those of terrestrial mammals, indicating that they exploited some amount of marine fish and/or mammals with higher δ^<13>C and δ^<15>N as protein sources. Therefore, the ^<14>C ages obtained for human skeletons could be order than the true ages. ^<87>Sr/^<86>Sr isotopic ratios of human skeletons of the Yuigahama-minami site tend to be higher than those of the Chusei Shudan Bochi site. Soils, plants and animals feeding on them in a given locality have ^<87>Sr/^<86>Sr values that generally mirror underlying bedrock composition, and thus ^<87>Sr/^<86>Sr ratios of human skeletons are useful tools for assessing migration in prehistory. The result obtained in this study suggests that Yuigahama-minami humans and Chusei Shudan Bochi humas lived in different areas. More skeleton samples should be analyzed for determining detailed ^<14>C ages of humans excavated from the Yuigahama sites, and for estimating migration of prehistory of the medieval Kamakura humans.
著者
中村 英人
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.147, 2011

生物の進化にともない生合成経路も進化してきた。分類群ごとに特徴的な化合物組成は化石の形態形質同様に生物とその生合成経路の進化過程について重要な示唆を与える。生物由来の有機分子は生体の死後,生物分解や化石化過程を経て失われてゆくが,一部の脂質分子は地質学的時間を経てなお残存し,古生代や中生代など古い時代の堆積物からも検出される。特定の起源生物に由来することが明らかな化合物はバイオマーカー(分子化石)として,それらの生物の起源の探索や古環境復元などに応用されてきた。近年,分子生物学の発展に伴い,多様な生体化合物の代謝生理が急速に明らかになりつつある。化合物レベル,骨格レベルでの生合成経路と生理機能の解明は,テルペノイドバイオマーカーの起源分類群の化石形態には残らないような古生態学的特徴を復元する手がかりになり,起源分類群の進化過程についてもいっそうの理解をもたらす可能性がある。
著者
中村 英人 沢田 健
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in Organic Geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.31-42, 2007
参考文献数
16

The chemical compositions of woody fossil fragments collected by picking manually and density centrifugation from sandstones of the Lower Cretaceous Yezo Group in Oyubari, central Hokkaido, Japan were analyzed by KOH/methanol hydrolysis (saponification) after solvent extraction. Organic compounds bound in macromolecules of the woody fragments with ester bonds, obtained by saponification, were mainly composed of short-chain (C<sub>14</sub> to C<sub>18</sub>) fatty acids and series of <i>n</i>-alkanols ranging from C<sub>12</sub> to C<sub>28</sub> homologues. These ester bound constituents are attributed to moieties of polyester parts of selectively preserved resistant macromolecule like cutin or suberin. Even carbon-number predominance was observed in both compounds, which indicated that biological components were well preserved. The bound fatty acids showed similar distribution patterns among all samples, indicating that these moieties might have been altered by strong diagenetic processes. On the other hand, the distribution patterns of <i>n</i>-alkanols significantly varied. In particular, those of long-chain (>C<sub>20</sub>) <i>n</i>-alkanols varied possibly depending on plant taxonomy. Thus, we suggest that these parameters are strongly useful as molecular paleobiological indicators for chemotaxonomic analyses. Also, the distributions of short-chain <i>n</i>-alkanols and the ratios of short to long-chain homologues are presumably useful indicators for diagenesis, taphonomy and environment.