- 著者
-
中村 正
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.55-63, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
- 参考文献数
- 15
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は高齢者に好発する炎症性リウマチ疾患で,全世界的に地域差や遺伝的相違があり白色人種,特に北欧に多い.肩甲帯,骨盤帯の近位筋群痛やこわばりを主症状とし,筋痛はあるが筋力低下や筋萎縮はなく,肩・股関節痛を伴うことが多い.炎症の主座である滑液包炎の原因は不明であり,診断に結び付くような特異項目はなく炎症指標の増高を認め,血清筋原性酵素値上昇や筋電図・筋生検での異常はなく,抗核抗体,リウマトイド因子,抗シトルリン化ペプチド抗体も通常陰性である. 大型血管炎に分類され肉芽腫性血管炎である巨細胞性血管炎(GCA)を合併することがあり,PMRとGCAとは共通の,あるいは連続的な病因を持つ関連性の深い病態を有していると推測される.頭痛,浅側頭動脈の怒張,蛇行,発赤,圧痛,特に,顎跛行や上肢跛行は特徴的で,視神経領域への血管炎の影響で視野・視力異常を来たし,失明は不可逆的で治療は急を要する. 超音波検査やmagnetic resonance imaging,fluoro-deoxy-glucose positoron-emission-tomographyなどの画像検査の進歩で,早期診断,早期治療が可能になり,ステロイド剤が著効することが特徴で,炎症指標の陰性化と症状の軽快を確認しながら比較的早めに通常減量するが,その後はごく少量ずつの漸減が望ましく再燃例では再増量やメトトレキサートなどを追加する.Interleukin-6阻害療法の有効性が報告され,免疫チェックポイント阻害療法に伴うPMR発症が報告されている. 画像診断の進歩や治療法の工夫でPMRとGCAへの臨床的方策は深まったものの,疫学的解明や病態生理の進展など,新たな課題が挙がってきた.