著者
五十嵐 彰
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.185-196, 2018

<p>配偶者とのみ性的関係をもつ,いわゆる「不倫」の禁止は現代の結婚制度の根幹を支える要素のひとつといえる.しかしながら,では誰が「不倫」をするのかを明らかにした日本の研究はほぼ見当たらない.本稿では日本における「不倫」行動の規定要因を機会および夫婦間関係のフレームワークを用いて検討した.分析結果から,労働時間や夫婦間関係の親密さ(会話頻度,セックスの頻度),子どもの数は「不倫」行動の発生に効果を与えないことが示された.男女ともに効果のある変数は学歴であり,高学歴になればより「不倫」しなくなるといえる.男性のみに効果のある変数は収入および妻との収入差であった.男性は収入が上がれば,また妻の方が収入が高ければ「不倫」するようになるといえる.</p>
著者
五十嵐 大介
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.505-475, 2007-12

With the implementation of the highly systematic and well organized Iqta system, which depended on the completion of the cadastral survey (1313-25), referred to as al-rawk al-Nasiri, in Mamluk ruled Egypt and Syria (1250-1517), the Mamluk state and political system were constructed on this foundation. In this manner, the regimes of foreign military rulers, which were based on the Iqta system, which had been developed in the Arab-Muslim world since the latter half of the tenth century, reached an apex in the highly systematized Mamluk regime. As the fundamental land system of the period, the Iqta system served as the axis of political, military and governmental systems and formed the system that was the core of the ruling structure in which the Mamluks, who comprised the ruling class, controlled rural areas through possession of the Iqta lands and thereby held a grip on the supply of food, public works, economic and religious activities of the cities through the redistribution of the wealth obtained from the rural areas, and this influence reached throughout the entire society. However, the rapid expansion of the amount of land designated as waqf (religious endowment) following the latter half of the fourteenth century had a great influence on the Mamluk regime. This was not limited to the fact that due to the transformation of the state's land (amlak bayt ai-mal) into the waqf, the amount of land that could be distributed for the Iqta's was decreased and the economic foundation of the Mamluks continued to shrink. The increasing importance of the waqf, which was fundamentally independent from state control, as a self-regulating system for the redistribution of wealth that linked the cities and rural areas is thought to be link to the problem of relativizing and reduction of the social role of the Iqta system. From this point of view, I employ narrative and archival sources in this study to consider the sudden expansion of the waqf, whose social role from the late fourteenth century to the early sixteenth century in Egypt and Syria reached a stage that could not be ignored, the influence of the expansion of the waqf on the Mamluk regime, and amidst these factors, how the Mamluk military ruling class maintained the ruling structure, particularly in regard to the economic aspect. As a result, I make clear that they were involved at various levels in the waqf system as donators and beneficiaries, as administrators, and as leaseholders of waqf land, and thereby they were able to obtain wealth and social influence and were also able to maintain the Mamluk regime of ruling structure by incorporating the waqf system within it.
著者
五十嵐 弘樹 沼田 靖 田中 裕之
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第26回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.235, 2015 (Released:2015-10-20)

現在、食品廃棄物の再利用を進めるために付加価値のある物を抽出、生産する検討がなされている。糖は食品廃棄物中に多く含まれており、化粧品の原料や機能性を持つ糖を抽出、回収する試みが行われている。そのプロセスにおいて抽出物の定量分析をその場で行う必要がある。糖の分析には高速液体クロマトグラフィーが用いられている。しかし、この方法では糖の種類により異なるカラムを選択する必要がある。そこで、その場でも適応できるより簡便な糖の定量分析法の開発が望まれる。その方法としてラマン分光法に着目した。本研究では、同一分子量の糖の定量分析を確認するためにグルコースとその立体異性体であるガラクトース、及びマンノースの同定と定量を行った。得られたラマンスペクトルは各単糖によって異なっていた。また、得られたピークから作成した各単糖の検量線は良好な直線性を示し、ラマン分光法による定量が可能であると考えられる。
著者
五十嵐 泰正
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.18, pp.28-40, 2005

In the context of sociology in Japan, where ethnic homogeneity has been assumed and vernacular culture has rapidly vanished since the end of WWII, it has been usual that the term &ldquo;diversity&rdquo; has carried a critical nuance. However, recently, in the age of late modernity, &ldquo;diversity&rdquo; has come to be embedded into the logic of global capitalism and the efforts of national and municipal governments that hope to attract fluid multinational companies and a cosmopolitan &ldquo;creative class&rdquo;. The author seeks to articulate the meaning of &ldquo;diversity&rdquo; in this context, and to point out that what kind of urban practices would be excluded in the recent urban redevelopments that have sought to create cities with diverse urban amenities. This paper examines the paradox that some restrictions on what can be done in the urban space are required to guarantee the diversity in that same urban space.
著者
佐賀 信之 森田 哲平 新井 豪佑 徳増 卓宏 幾瀬 大介 石部 穣 笹森 大貴 横山 佐知子 五十嵐 美紀 横井 英樹 岩波 明
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.751-759, 2016 (Released:2017-06-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

2014年4月より2015年3月までの1年間に昭和大学附属烏山病院を初診し,DSM-IV-TRの診断基準によってADHD(注意欠如多動性障害)と診断された成人ADHD患者54名(男性30名,女性24名,平均年齢29.4±7.9歳)を対象とした.うつ病など他の精神障害の診断を受けているものは被験者54名中4名であった.被験者らに知的な遅れはなく平均15年の高等教育を受けていた.全被験者に対し,次の評価尺度を施行した.抑うつ症状については,SDS(Self-rating Depression Scale)を,不安症状についてはSTAI(State Trait Anxiety Inventory),ADHD症状の程度については,CAARS-S(The Conners' Adult ADHD Rating Scales),自閉症スペクトラム障害の症状の程度についてはAQ(Autism-Spectrum Quotient),知的機能についてはJART(Japanese Adult Reading Test-25)で評価を行った.その結果,被験者らの抑うつ症状は日本人の神経症圏における抑うつの度合いと同程度であった.不安症状は,STAIの段階IVに相当する高い不安であった.自閉症的傾向は健常人より有意に高かった.項目間の相関をSpearmanの相関係数を用いて解析を行うと,ADHD症状と抑うつ症状の間には,弱いが有意な正の相関がみられた.ADHD症状と不安症状の間には,中程度の有意な正の相関がみられた.本研究の被験者の多くは気分障害や不安障害の診断を受けていないが,それでも,被験者が有する不安症状や抑うつ症状の程度は,健康人のそれと比して高いものであった.さらに,ADHD症状が強い場合,不安症状や抑うつ症状が強くなる可能性があることが示唆された.
著者
五十嵐 元道
出版者
関西大学法学研究所
雑誌
ノモス = Nomos (ISSN:09172599)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.17-36, 2020-06-30

本稿は、科研費若手研究「紛争下での文民死者数データの生成の構造と、その歴史的展開の分析」(課題番号19K13639)、ならびに関西大学法学研究所「帝国」的実践研究班研究費に基づく研究成果の一部である。
著者
杉山 直子 杉江 秀夫 五十嵐 良雄 伊藤 政孝 福田 冬季子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-55, 1998-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

小児自閉症の一部において, 脳内セロトニン, カテコラミンの低下がありうるという仮説に基づき, 自閉症児に対しカテコラミンの前駆物質である1-dopa少量投与を行い, 症状改善の有無をcross-over designによる二重盲検試験により検討した.Cross-over analysisでは順序効果, 時期による効果, 薬剤効果を検討したが, 薬剤の有効性は認められなかった.しかし症例によっては, 一部症状の改善の認められた例が20%あった.
著者
五十嵐力 著
出版者
大日本図書
巻号頁・発行日
vol.巻1, 1916
著者
東 邦彦 坂井 文彦 五十嵐 久佳 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.361-366, 1991-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
19

既往に片頭痛を持つ若年者に脳梗塞が発症した4例につき, 脳梗塞の危険因子としての片頭痛の意義につき検討した.症例1はmigraine with auraの発作中, 脳梗塞が発症したと考えられ, その病態としては前兆の原因となる脳血管攣縮が遷延し脳梗塞に移行したと考えられた.症例2~4の3例はmigraine without auraの患者で, 脳卒中発作は発症様式, CT, MRI所見よりはいずれも脳塞栓症と診断され, 脳塞栓症に頭痛が前駆あるいは随伴した可能性が考えられた.そのうち2例は妊娠中の発症であった.migraine without auraに脳梗塞が発症した機序としては, 片頭痛が脳梗塞に移行したというよりも片頭痛にもとづく血小板凝集能の亢進による5HT, ノルエピネフリンの放出, エストロゲソをはじめとする性ホルモンの変動による凝固系の亢進などを介して脳梗塞の危険因子となった可能性が考えられた.

3 0 0 0 OA 修辞学綱要

著者
五十嵐力 著
出版者
啓文社
巻号頁・発行日
1935
著者
小林 憲弘 小坂 浩司 浅見 真理 中川 慎也 木下 輝昭 高木 総吉 中島 孝江 古川 浩司 中村 弘揮 工藤 清惣 粕谷 智浩 土屋 かおり 寺中 郁夫 若月 紀代子 加登 優樹 小関 栄一郎 井上 智 村上 真一 金田 智 関 桂子 北本 靖子 堀池 秀樹 米久保 淳 清水 尚登 髙原 玲華 齊藤 香織 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.223-233, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

水道水中の臭素酸イオン (BrO3-) を既存の告示法よりも高精度かつ迅速・簡便に分析するために, LC/MS/MSによる測定方法を検討し, 臭素酸イオンを高感度に検出でき, さらに水道水中に含まれる他の陰イオンを良好に分離可能な測定条件を確立した。さらに, 本研究で確立した測定条件が全国の水道水に適用できるかどうかを検証するために, 水道事業体等の23機関において水道水に臭素酸イオンを基準値 (0.01 mg L-1) およびその1/10 (0.001 mg L-1) となるように添加した試料を調製し, 各機関で最適化した様々な測定条件で試験を行った。その結果, いずれの機関においても厚生労働省が示している「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たしたことから, 本分析法は水道水中の臭素酸イオンを基準値の1/10 (0.001 mg L-1) まで高精度に分析可能であると評価した。
著者
菊池 友和 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 鈴木 真理 田中 晃一 磯部 秀之 三村 俊英
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.51-58, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
19
被引用文献数
3

【はじめに】本邦でVDT作業者のQOLや作業能力を指標とした鍼治療に関する報告は極めて少ない。 そこで、 この前向き研究では鍼治療がVDT作業者のQOLと作業能力に及ぼす影響について検討した。 【方法】VDT作業者61例、 男性41例、 女性20例である。 鍼治療は1回/週、 個々の頸や肩の症状に応じて行った。 評価はSF-36とWAIを、 初診時と1ヵ月後の値を統計学的に検討した。 【結果】VDT作業者のSF-36は、 身体的健康度、 精神的健康度、 体の痛み、 日常役割機能 (身体) が上昇し、 活力も上昇する傾向が認められWAIも上昇した。 治療前のSF-36の各項目とWAI値、 さらに鍼治療後における体の痛みとWAI値の改善率に正の相関関係が認められた。 【結論】鍼治療によりVDT作業者の有する頸肩こりの症状が改善するとともに、 QOLと作業能力が向上した。 今後増加が予想されるVDT作業者のQOLや作業能力の向上に対し、 鍼治療の有用性が高いことが示唆された。
著者
鈴木 真理 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 菊池 友和 田中 晃一 磯部 秀之 大野 修嗣 三村 俊英 君嶋 眞理子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.829-836, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

【はじめに】近年、 情報化の発達により、 VDT作業者は急増している。 VDT作業者における心身の疲労は以前から問題視されているが、 多くのVDT作業者が有する頸肩こりや眼疲労に対する鍼治療効果についての報告は数少ない。 そこでこの前向き研究では、 VDT作業者の愁訴に対する鍼治療効果について検討した。 【方法】対象はVDT作業者61例 (男性41例、 女性20例) である。 鍼治療は、 週1回、 計4回、 個々の頸や肩の症状に応じて、 円皮鍼を用いて行った。 評価は、 頸こり・肩こりと眼疲労を自己記入式で行った。 VAS値の経時的変化、 また鍼治療前と4週後のVAS値より改善率を算出し、 眼疲労と頸こり・肩こりの関連について検討した。 【結果】鍼治療により頸こり、 肩こり、 眼疲労のVASの値はともに、 初診時より徐々に減少を示した。 また、 眼疲労と頸こり・肩こりの改善率には正の相関が認められた。 【結論】VDT作業者の頸や肩のこりに対し鍼治療を行い、 頸肩こりが軽減するとともに、 眼疲労も改善することが示された。 鍼治療は産業医学の分野で有用性の高いことが示唆された。
著者
李 娥英 冨士田 裕子 五十嵐 博
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.65-80, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
47

湿地生態系における生物多様性は,湿地周辺での農業活動や都市化のような様々な人為攪乱によって脅かされている.湿地の農地開発前後の植物相調査データを比較することにより,湿地の荒廃に伴う植物相の変化の特徴を明らかにすることを本研究の目的とし,北海道南部の静狩湿原で植物相調査を実施し,植物リストを作成した.リストでは,さらに開発以前に実施された植物リストと我々が作成した植物リストに出現する植物種を,湿地性在来植物種/非湿地性在来植物種/湿地性外来植物種/非湿地性外来植物種の4つの属性に区分し,絶滅危惧植物種と準絶滅危惧植物種も区別した.開発以前の植物リストと比較したところ,開発以後の方が維管束植物種の全体種数は増加していた.その内訳をみると,湿地性在来植物種の出現数は減少し,一方,非湿地性在来植物種,湿地性外来植物種,非湿地性外来植物種は増加していた.次に,開発以前の植物リスト,開発以後の残存湿原部植物リスト,湿原周辺部(湿原を道路,排水路,植林地に変えたところ)植物リストごとに,科別,属性別の種数を算出した.開発以後に残存湿原部で顕著に減少したのは,カヤツリグサ科とイグサ科の湿地性在来植物種であった.残存湿原部で多くのカヤツリグサ科とイグサ科の湿地性在来植物種が消失していたことから,これらの植物種は人為撹乱に敏感であり,生態的耐性が低いことが示唆された.一方,湿原周辺部では,キク科,イネ科,バラ科の湿地性在来植物種以外の属性の植物種が多く出現した.特に,湿原周辺部で新たに出現したキク科とイネ科の植物種は,人為撹乱に対して強い耐性を持ち,湿原域へ侵入しやすいことが示唆された.また,湿原面積の減少は希少植物種の消失につながることが示唆された.