著者
宮﨑 照雄 佐々木 誠一 豊田 淳 白井 睦 池上 正 本多 彰
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-22, 2019 (Released:2020-09-20)

タウリン生合成能がないネコでは、タウリン枯渇食の供与により生体中のタウリンが欠乏状態に陥る。タウリンの欠乏により、タウリンの胆汁酸抱合率が顕著に減少する。さらに、胆汁中の胆汁酸濃度の有意な減少と胆汁酸組成の変化が生じる。そこで、タウリンの欠乏が、肝臓における胆汁酸合成過程に及ぼす影響について、胆汁酸合成経路の中間代謝物である酸化ステロールの変化について検討した。その結果、タウリン欠乏ネコの肝臓において、胆汁酸合成経路のClassic pathway の酸化ステロールの有意な増加とAlternative pathway の酸化ステロールの有意な減少が確認された。タウリン欠乏による胆汁酸組成の変化は、胆汁酸合成経路で異なる中間代謝物の変化に伴っており、タウリンが胆汁酸合成系の代謝に関与する可能性が示唆された。
著者
横川 正美 野本 あすか 佐々木 誠 三秋 泰一 井上 克己 洲崎 俊男 立野 勝彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0572, 2007

【目的】消化器系への血流分布や交感神経系の活動は、運動時と食後とでは対照的であり、食後の運動療法では時間帯や方法を考慮する必要がある。本研究では食後経過時間の違いが中等度運動時の代謝および心拍血圧反応に及ぼす影響を検討した。<BR>【方法】対象は研究内容について同意の得られた健常男性12名であった。運動は3分間のウォーミングアップの後、各自の60% peak Vo2強度の負荷量で15分間、自転車こぎ運動を行った。運動は食後30分後に行う「A条件」と、食後2時間後に行う「B条件」の2条件を設けた。2条件の測定順序はランダムとし、7~14日間の間隔を空けて別の日に測定した。対象者は測定前日夜より12時間以上の絶食とし、測定当日は午前中に食事摂取と運動行った。食事は市販されているカレーライス (500g、571kcal相当)を用いた。その主な栄養成分は糖質 114.5g、タンパク質 14.1g、脂質6.3gであった。食事の際の水分摂取は200-400mlの範囲であった。運動中は酸素摂取量、ガス交換比(R)、心拍数、酸素脈、収縮期血圧、拡張期血圧(DBP)、二重積を測定し、安静時、運動開始5分、10分、15分の値を算出した。統計学的分析は、Bonferroniの方法で条件内と条件間で各測定項目の平均値の比較を行った。<BR>【結果】条件内の比較では2条件ともに、DBP以外のすべての測定項目で運動中の値は安静時に比べて有意に増加していた(すべてp<0.001)。DBPは、A条件では安静時との間に有意差が認められた運動時間はなかった。運動開始15分は5分よりも有意に低く(p<0.05)、安静時よりも低値であった。B条件のDBPは運動開始5分が安静時よりも有意に高く(p<0.05)、5分以降は下降し、15分は10分よりも有意に低かった(p<0.05)。RはA条件では運動開始5分が1.086±0.052と最も高く、10分、15分と時間経過に従い低下し、すべての組み合わせで有意差が認められた(p<0.05)。B条件では運動開始5分が1.068±0.046と最も高く、10分、15分では5分よりも有意に低値を示した(いずれもp<0.001)が、10分と15分の間には有意差はなかった。条件間の比較では、Rの運動開始10分の時点にのみ有意差が認められ、B条件がA条件よりも低値であった(p<0.05)。<BR>【考察】今回の結果から、食後30分では運動初期に消化器系血管床の反応遅延や糖質代謝優位の影響により、食後2時間に比べて運動定常状態に至るまでに遅れが生じていることが示唆された。本研究では3分間のウォーミングアップを行ったが、食後十分な休憩をとらない時間に運動を行う場合、十分なウォーミングアップがより重要となると考えられた。
著者
春日井 邦夫 舟木 康 小笠原 尚高 佐々木 誠人 山本 さゆり 川村 百合加 足立 和規 山口 純治 田村 泰弘 井澤 晋也 土方 康孝 海老 正秀
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.913-926, 2019

<p>日本の一般生活者の便秘に関するインターネット調査を実施した.51.5%が便秘を自覚し,その有意な因子は加齢,女性,糖尿病,痔疾患,脳血管疾患であった.便秘自覚者3000名の約1/3が便秘薬・下剤を服用し,43.8%は刺激性下剤を服用していた.入手方法は,医師処方37.2%,薬局購入67.5%であった.排便回数が週3回未満や硬便の割合はそれぞれ約1/3で,硬便,下痢便の人のQOLは有意に低下していた.便秘治療薬の1カ月間の支払い金額あるいは支払い可能金額は,約75%が1000円未満であった.日本人便秘自覚者の多くに十分な便秘治療が行われていないと思われ,適切な便秘診療の普及が望まれる.</p>
著者
安江 健 平山 望 武田 愛生 小針 大助 岡山 毅 小松﨑 将一 山川 百合子 佐々木 誠一 豊田 淳
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.191-197, 2021-05-25 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21

ウシの飼育管理作業が農学系大学生の心理・生理的状態に及ぼす影響を調べた.ブラッシング,体重測定,除糞,給餌作業を各5分間実施し,各作業の前後には5分間の安静を含んだ.被験者の心電図と体軸の加速度を連続記録し,試験開始前と終了後には唾液アミラーゼ(sAA)とストレスレスポンススケール(SRS)を測定した.心電図のR-R間隔をスペクトル解析し,それぞれ交感神経と副交感神経活性の指標であるLF/HFとHF nuを比較した.ストレス指標であるsAA濃度は試験開始前と終了後で差はなかったが,SRSは有意(P<0.01)に低下した.心拍変動解析の結果では,LF/HFとHF nuのどちらも作業間には差がなかった一方で,安静間ではブラッシング前より後でLF/HFは低く,HF nuは高くなり(どちらもP <0.05),ウシへのブラッシングが農学系大学生にリラックス効果をもたらすことが示唆された.
著者
藤沢 寛 上原 道宏 森山 繁樹 佐々木 誠
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.47-54, 2000
参考文献数
2
被引用文献数
1

我が国の地上デジタル放送方式(ISDB-T方式)では, 畳み込み符号の符号化率, 時間インターリーブ長, キャリア変調方式(これらを階層パラメータと呼ぶ)をOFDMセグメントごとに設定可能である.しかし, 階層パラメータを切り替えて運用する手法は十分に検討されておらず, 切り替え時にデータが大きく破損することが考えられる.今回, 1セグメント構造のISDB-T方式において, 階層パラメータ切り替え時に生じる問題を明確にし, その対策手法について検討を行った.さらに本手法でのデータ破損量を求めたので報告する.
著者
村田 道雄 佐々木 誠 安元 健
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

マイトトキシンは、植物プランクトンである渦鞭毛藻が生産する分子量3422のポリエーテル化合物であり、天然物中最大の分子量と非常に強い毒性によって、現在最も注目されている海洋天然物である。われわれは、1993年にマイトトキシンの平面構造とエーテル環が連続している部分の立体化学を明らかにしたが、その他の鎖状部分に関しては未解明の部分が多い。本一般研究Bにおいて、エーテル環をつなぐ部分の立体配座(F-G環の間の2個の不斉炭素とM-N環の間の2個の不斉炭素)を主に有機合成化学的手法により決定することができさらに、C1-C14とC134-C142の側鎖部分に関して立体化学と回転配座を求めた。新たに開発したNMRのスピン結合定数(^<2,3> J_<C,H>と^3 J_<H,H>)と分子力場計算を併用した方法をこの部分に適用した結果、側鎖に存在するすべての不斉炭素を推定することができた。さらに、推定立体構造を有する合成フラグメントと天然物のNMRデータを比較することによって確認作業を進め、同時に、エナンチオ選択的なフラグメントCの合成を行ない、天然の分解物と比較することによって絶対構造を決定することができたので、ここにマイトトキシンの完全構造決定が完成した。
著者
石橋 靖子 佐竹 將宏 塩谷 隆信 佐々木 誠 高橋 仁美 菅原 慶勇 笠井 千景 清川 憲孝 渡邊 暢 藤井 清佳 河谷 正仁
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.469-473, 2005-05-31 (Released:2017-11-10)
参考文献数
17

吸気筋トレーニングによる吸気筋力の増強が期待される低負荷量を調べるために,健常成人を対象に,最大吸気口腔内圧の20%,15%,10%負荷にて1回15分間,1日2回,4週間にわたって吸気筋トレーニングを行った.結果,いずれのトレーニングでも,呼吸筋力は有意な増強を示したが,肺機能検査値には変化がみられなかった.本研究では,健常成人による低負荷量吸気筋トレーニングの効果がみられたことから,今後,臨床的な応用が示唆された.
著者
野田 拓斗 坂本 理々子 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.421-424, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
13

〔目的〕身体活動量の多さが運動耐容能の高さや運動後の心拍数の回復過程(Heart Rate Recovery:HRR)に影響するかを明らかにすること.〔対象と方法〕健常学生18名を対象に身体活動測定器を着用させ,身体活動指標として運動量,歩数を求めた.また,運動負荷試験を実施し,最高酸素摂取量(peakVO2/kg),運動終了後5分まで1分ごとに心拍数の回復値を測定し,運動量,歩数との相関関係の検討を行った.〔結果〕身体活動指標とpeakVO2/kgとの間に相関関係はなかった.運動量とHRRの間には相関関係がなかったが,歩数とHRRとの間には相関関係があった.〔結語〕身体活動量は運動耐容能と関連しないこと,身体活動指標のうち,運動強度を反映する運動量はHRRと関係しないが,運動強度を反映しない歩数がHRRの早さに寄与していることが示唆された.
著者
金子 諒 藤澤 真平 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.411-416, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
10 2

〔目的〕本研究では,足趾把持筋力トレーニングが最大速度歩行の床反力に及ぼす影響を検討することを目的とした。〔対象〕健常な学生27名とした。〔方法〕対象者を男女別に無作為にトレーニング群,対照群に振り分けた。足趾把持筋力,10 m最大速度歩行時の速度,歩数,歩行率,歩幅,最大速度歩行時の床反力を介入期間の前と後に測定した。トレーニング群には4週間の足趾把持筋力トレーニングを行わせ,対照群には普段通りの生活をさせた。〔結果〕トレーニング群は有意に足趾把持筋力が増強し,10 m最大歩行速度が速くなった。また,床反力横方向第3波,歩行率において増加傾向がみられた。〔結語〕蹴り出しにおける脚の運びの方向性が適正化することで,歩行率が改善し,最大歩行速度が向上する可能性が示唆された。また,最大歩行速度向上に対して床反力垂直方向の最大波に増加がみられなかったことから,足趾による制動力が高まったことでソフトに踵接地でき,踵接地による衝撃が減少したことが示唆された。
著者
佐々木 誠人 永芳 郁文 吉武 明人 本山 達男 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.914-916, 1999-09-25
参考文献数
4
被引用文献数
1

We studied the pathological diagnosis of the synovium of the subacromial bursa of 30 patients with shoulder impingement syndrome without rotator cuff tear. The diagnosis consisted of three types, i. e. chronic synovitis (73.3%), degeneration (16.7%) and fibrosis (20%). The results of a group with friction finding observed arthroscopically at the undersurface of the coracoacromial arch were more or less the same as one of another group without the finding. In deciding the surgical indication to the shoulder impingement syndrome of intact rotator cuff tear, clinical findings are very important.
著者
時安 樹子 木藤 伸宏 奥村 晃司 吉用 聖加 佐々木 誠人 川嶌 眞人
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.83, 2004

【はじめに】<BR> 拘縮肩の理学療法の目的は、疼痛軽減と関節可動域(以下、ROM)改善が主である。症状の改善が得られない場合、関節鏡を併用した授動術が行われる。臨床的には、それによって改善傾向に進む症例と、改善が得られず、再度拘縮肩へと移行するケースがある。後者の場合、理学療法として単にROM訓練、筋機能訓練に主眼を置くアプローチのみでは限界を感じている。<br> 今回、ROM制限、疼痛が強く、上肢運動機能改善に難渋した拘縮肩を有する症例を経験し、肩甲帯・体幹の動き、重心の位置に着目し理学療法を行い職場復帰まで至ったので報告する。<br>【症例紹介】<BR> 年齢:47歳 性別:男性 職業:消防士<br> 診断名:右肩関節拘縮<br> 現病歴:平成15年10月下旬、階段から転倒しそうになり右手で手すりをつかんだ際に疼痛出現。近医受診し注射治療にて様子を見ながら仕事を続けていた。その後、徐々に夜間痛、運動時痛増強し、12月に当院受診。12月18日右肩関節鏡視下授動術施行となった。<br> 手術所見:前方関節包付近に瘢痕様組織あり。前・後・下方関節包を鏡視下に切離し完全屈曲、外旋60獲得。<br>【術前理学療法評価】<BR> 安静時痛visual analogue scale(以下、VAS)0/10、夜間痛VAS 10/10、運動時痛VAS 10/10、疼痛部位は肩関節前方にあり、肩峰下・結節間溝部に圧痛が認められた。ROMテストでは右肩関節屈曲115、外転80、外旋10、内旋60であり、外転時肩甲帯挙上・体幹左側屈、外旋時肩甲骨内転・体幹右回旋による代償が強く認められた。徒手筋力テストは疼痛のため測定困難であった。筋の状態は右頚部筋の緊張亢進、右棘下筋の萎縮が認められた。姿勢評価として右肩峰、肩甲骨下角の高さが左側と比較して低く、胸椎に軽度左凸の側弯が認められた。<br>【術後理学療法所見】<BR> 術翌日より理学療法開始し、術後2週間三角巾固定。訓練時のみ三角巾除去。術後、疼痛・脱力感の訴え強く、立位にて右上肢下垂困難、振り子運動、肘・手関節のROM訓練も困難な状態であった。アライメントは胸椎後彎・右側肩甲骨外転・肩関節内転、内旋・肘関節屈曲・右肩甲帯挙上位であった。それによって右肩関節から頚部周囲筋の筋緊張亢進し、右頚部・右肩甲骨内側に疼痛があった。また、胸椎後弯により肩甲骨外転位となり関節窩と骨頭の位置関係が崩れていた。また動作時、左側へ重心移動を行う傾向があった。今後その状態にて挙上を行うと疼痛・可動域制限が生じると考え、挙上しやすい環境を作ることが重要と判断した。<br>【理学療法アプローチ】<BR> (1)頚部筋のリラクゼーションを目的として、スリングセラピー施行。(2)下部体幹安定性の獲得を目的としてエアスタビライザーを用いて坐位保持訓練、左右への重心移動を行い、胸椎伸展に伴う肩甲骨の内転運動を促した。(3)身体全体の正中化を図る目的として右下肢での片脚起立訓練、ストレッチポールを用いた立位保持を行った。(4)関節包内運動、ROM制限となる筋・靭帯に対するストレッチを行い、ROMの改善を図った。<br>【経過】<BR> 術後1ヶ月にて退院となり、下肢荷重検査を施行した。その結果、左下肢での荷重が多く、上半身重心の左側方偏位より左下肢への荷重量が増加していた。<br> 術後2ヶ月頃より疼痛軽減が認められ、下部体幹の安定化、坐位・立位でのアライメントの改善、身体正中化が得られた。<br> 術後3ヶ月での評価においては、安静時痛VAS 0/10、夜間痛VAS 2/10、運動時痛VAS 5/10であった。ROM制限は依然として認められるが、右肩関節屈曲120、外転100、外旋20、内旋50と改善した。また、術前と比較して体幹・肩甲骨での代償運動は軽減した。姿勢では、両肩峰・肩甲骨下角の高さも改善し、下肢荷重検査においても左右差の改善が認められた。疼痛の軽減に伴い右肩関節を動かすことへの恐怖感も軽減し、右上肢での日常生活動作が可能となり、職場復帰可能となった。<br>【まとめ】<BR> 本症例は術前より疼痛強くROM制限が著明であるため、肩関節そのものに対するアプローチよりも、肩関節の運動機能を発揮できる環境作りのために、全身的なアプローチを行った。依然としてROM制限、筋機能低下は残存しているものの、本症例に行ったアプローチは疼痛を伴う症例に行うことは有用であると思われ、具体的詳細、考察を加え報告する。
著者
三好 扶 佐藤 秀太 佐々木 誠 明石 卓也 小笠原 正勝 津田 保之
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.173-184, 2018-09-15 (Released:2018-09-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食品加工業は労働集約型産業であり,原材料処理工程に近いほどその作業工程は人手に頼らざるを得ないのが現状である.しかしながら人手不足,後継者不足が顕在化している昨今では,ロボットシステムによる人手不足解消が喫緊の課題となっており,作業工程をロボット化することで省人化・省力化を図る意義は高い.本研究では缶詰製造工程の定量充填作業を具体の事例とし,作業者によって実施される「定量となる適正な組み合わせ判別」を機械学習によって判別アルゴリズムとして構築し,このアルゴリズムを実装した定量充填作業用ロボットシステムの試作機の開発を目的とする.適正な組み合わせ判別アルゴリズムは焼成切身の3次元特徴量(平均高さ,水平投影面積,およびこれらの積として得られる体積)を教師データとし,その正答率は約95%を得た.このアルゴリズムを実装したロボットシステムは,1缶分(焼成切身腹部および尾部1対を充填)を30秒程度で把持・搬送・充填を可能としたが,現時点では75%の作業精度(達成率)となった.作業者が1缶あたり5秒程度で充填することから,動作速度向上ならびに作業精度の向上といった課題を残すが,作業者による定量充填作業の作業代替となるロボットシステム化が可能であることが示唆された.
著者
佐々木 誠
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.160-163, 2002-08-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3

従来の立位重心動揺測定は膝関節伸展位で行われており,膝関節屈伸運動を伴う立位での動作や移動を直接には反映していない。そこで,膝関節屈伸運動時の足圧の作用中心点(以下,COP)を特定するために,若年健常者27名を対象に,スクワット動作時のCOPのフォースプレートによる測定再現性と特性について検討した。級内相関係数(ICC1,1)は,総軌跡長(LNG)とY(前後)方向最大振幅(YD)で0.6を上回り,X(左右)方向最大振幅(XD),矩形面積(REC AREA),X(左右)方向動揺平均中心変位(DEV OF MX)で0.6を下回った。従来の重心動揺測定のパラメータとの関連を検討した結果,静止立位条件と相関のあるパラメータがあったが,関連性は必ずしも強くはなかった。また,スクワット動作時のLNGとCross TestのREC AREAとの間に示された関連は弱かった。以上より,健常者におけるスクワット動作時のCOPは,LNGと前後成分で再現性が示される一方で,左右成分およびREC AREAで冗長性が示され,静止立位での側方不安定性に起因する動揺性を反映するが,その関連性は必ずしも強くはなかった。従来の測定でのパラメータとの間に相関を認めなかったパラメータが多かったことからも,本COP測定によって新たな情報が提供される可能性が示唆された。
著者
千葉 直美 半澤 宏美 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.43-48, 2004 (Released:2004-04-08)
参考文献数
13

異なる肩関節屈曲角度での上肢クローズドキネティックチェイン(CKC)運動時筋力を測定し,運動方向による差異を比較するとともに,基本動作との関連を検討した。対象は若年健常女性14名(19.1±1.2歳)である。方法として,まず肩関節屈曲0°,30°,60°,90°方向への上肢CKCでの伸展運動時等速性筋力を,60,180,300 deg/secの運動速度で測定した。また,車椅子10 m駆動時間,30秒間に反復可能なプッシュアップ回数,T字杖免荷率の3項目を測定した。各肩関節屈曲角度における上肢CKC運動時のPeak Torque/Body Weightは,全ての運動速度において差異を認めなかった。筋力と基本動作との関係について,Peak Torque/Body Weightは,プッシュアップ回数との間に相関が示されなかったが,300 deg/secではいずれの運動方向においても車椅子10 m駆動時間との間に負の相関関係,60 deg/secにおける全ての運動方向でT字杖免荷率との間に関連があることが示唆された。また,T字杖免荷率と低角速度での肩関節屈曲30°方向におけるPeak Torque/Body Weightとの間の相関関係は統計学的に有意であった。以上より,異なる肩関節屈曲角度における上肢CKC運動時筋力は,運動方向によって関与する筋の種類や活動動員比率が異なると推察されるものの,運動方向特異性は示されなかった。また,車椅子10 m駆動時間は,CKC運動時筋力の角速度特異性が反映される一方で,運動方向の相違には影響されず,T字杖免荷率は,筋力の角速度特異性ならびに運動方向特異性に影響されることが示唆された。
著者
茂内 卓 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.495-498, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
19

〔目的〕本研究の目的は,立位での動的バランステストにおける腹部ベルト装着の効果を検討することである.〔対象と方法〕対象は,健常大学生14名とした.腹部ベルト装着時,非装着時における前方リーチテストのリーチ距離,5 mの継ぎ足歩行の時間,段差踏み換えテストの時間を計測し比較した.〔結果〕前方リーチテストと継ぎ足歩行テストでは,ベルト装着の有無による差がなかった.段差踏み換えテストでは,ベルト装着時に時間が有意に短縮した.〔結語〕健常者における腹部ベルトの装着は,立位での動的バランス能力を要する3種類の動作課題のうち,段差踏み換えテストで有効であることが示された.この理由として,動作課題の難易度と課題の動作特性の要因が影響している可能性があると推察された.
著者
今 直樹 堀尾 暁 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.403-407, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
10

健常女性12名を対象にNeutral,Knee-In & Toe-Out,Knee-Out & Toe-Inの3条件の下肢アライメントで,高さ40 cmの台から床反力計への片脚着地動作を行い,筋放電,床反力を測定した。Knee-In & Toe-OutではNeutralよりも大腿直筋の最大筋放電・積分値,外側広筋の積分値,身体内側方向への床反力が有意に大きかった。Knee-Out & Toe-Inでは身体外側方向への床反力が有意に大きかった。結果よりKnee-In & Toe-Outでは,大腿直筋と外側広筋が収縮することで脛骨を前方に強く引き出す力が働き,また身体内側への床反力を受けて大腿骨に対する脛骨の内側への剪断力が生じるため,ACL損傷が起こりやすいのではないかと考えられた。Knee-Out & Toe-Inでは下腿内旋位によるACLの張力の高まりに加え,大腿骨に対する脛骨の外側への剪断力が生じるためNeutralに比してACL損傷が起こりやすいと考えられた。
著者
大浪 洋二 佐々木 誠 菊池 元宏
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-6, 1997

Prostaglandin F2α-analogue(PGF2-A)の0.8~2.4mgを妊娠2~8か月の29例の牛に処置した結果、妊娠4か月までの16例全例が流産したが、妊娠5か月では6例中5例が流産し、妊娠6~8か月では流産しなかった。一方、Dexamethasone(Dx)、30mgを妊娠3~9か月の8例の牛に処置した場合は、妊娠4か月までの2例は流産しなかったが、妊娠5か月では3例のうち2例が流産した。しかし、妊娠6か月の1例は流産せず、妊娠8~9か月では2例とも流産、または早産した。胎盤停滞の発生は妊娠4か月までは認められなかったが、妊娠5か月以降では全例胎盤が停滞した。その発生状況には、PGF2α-AおよびDx処置牛のあいだに差はなかった。両薬処置後の血中Progesterone値(P値)の消長は、PGF2α-A処置流産牛では、処置日の平均は5.7ng/mlであったが、流産前後にはいずれも0.9ng/ml以下に下降した。また、非流産牛のPGF20-A処置日のP値は平均6.1ng/mlで、処置後の経過日数とともに急減したが、0.9ng/ml以下に下降したものはなかった。一方、Dx処置牛では、流産牛の処置日のP値は平均6.8ng/m1で、処置後3日以降は1.Ong/ml以下となった。非流産牛のDx処置日のP値は9.2ng/mlで、その後一時的に低下するものの、いずれも1.7ng/m1以下にはならなかった。以上の結果から、牛の妊娠4か月までの流産誘起にはPGF2α-Aが極めて有効であるが、妊娠6か月以降ではDxが有効であった。
著者
井沢 邦英 瀬川 徹 門原 留男 岩田 亨 山本 正幸 佐々木 誠 矢次 孝 松元 定次 江藤 敏文 元島 幸一 角田 司 土屋 涼一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2757-2763, 1990-12-01
被引用文献数
10

肝細胞癌自然破裂18例について病態, 治療法, 予後を検討した. 教室経験した肝細胞癌の 7.1% を占め, このうち11例 (61%) が出血性のショック状態を呈していた. 治療法は, 1期的根治的肝切除が5例で, 1例が術死の外は, 4例が1年以上生存し, そのうちの1例は7年3ヶ月の現在生存中である. 姑息的治療は6例で, 破裂部肝部分切除あるいは破裂部縫縮が3例, 肝動脈塞栓術 (以下 TAE) 2例, 肝動脈枝結紮1例で, すべてが両葉多発であった. 術死が2例, 最長生存期間は5ヶ月18日であった. 全身管理のみで, 破裂に対し処置が出来なかったものは7例で, 自然止血後の2ヶ月目肝不全死が最長生存であった. 検査値ではコリンエステラーゼ, 血小板数, プロトロンビンタイムで肝切除群と姑息的治療群, 無治療群の間に有意差がみられた. 切除可能であるならば可及的に切除することにより長期生存が期待されると考えられた.
著者
花里 俊廣 平野 雄介 佐々木 誠
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.591, pp.9-16, 2005-05-30 (Released:2017-02-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1 13

This study aims to discuss the spatial configuration of the large-sized condominium units currently supplied in the Tokyo Metropolitan Area analyzed by adjacency graphs of the Space Syntax Theory. The analysis has been carried out on four controlled groups as to the floor area from approximately 70 to 125 square meters. The result turns out that the larger a floor area is, the more varieties of adjacency graphs we can observe. We also obtain another finding according to the classification of adjacency graphs by means of Relative Asymmetry Value (RA) that there is a tendency to the private-room-aggregation type prevails rather than the more hierarchically ordered living-room-centered type.