- 著者
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有田 豊
佐藤 一喜
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.1, pp.26-30, 1995-03-30
スカシバガ類の成虫の羽化(Fig.1)は天候の良いときには朝はやく,曇りや雨の日には昼間一日中行なわれること,また羽化が長期間にわたって行なわれることなどが知られている.著者の一人佐藤は名古屋市北区の神社の境内のシラカシQuercus myrsinaefoliaの1本の大木の幹から数10頭のコシアカスカシバSesia scribaiが発生しているのを見つけた(Figs 3-4).そこで1993年8月10日から9月30日までの間に,コシアカスカシバの羽化日とその日の天候,羽化場所,羽化時刻,羽化時の気温,照度,湿度などを朝7時から夕方4時まで毎日調査した.調査した1993年の夏(7-9月)は,例年と異なり気温が低く,雨の多い年であった.最初の羽化が見られたのは8月27日(♀)で,最後は9月25日(♀)で,30日間のあいだに20♂25♀の45頭であった.羽化場所(羽化口(Fig.2))は45個のうち,北に9個,北東に0,東に1個,南東に4個,南に1個,南西に8個で,西に6個,北西に16個で,北西に一番多かった(Figs 3-5).また多くの羽化口は幹の150cm以下の所にあった.羽化時刻は,記録の取れた38個体の内,午前中に25個体,午後に13個体が羽化した.また晴れの日は午前8-10時までの羽化が多く,曇りや雨の日は午前7時から午後3時までの昼間一日中羽化が見られた(Table 1).羽化時の気温は23.5°-26.5℃の間に多く見られ,26個体がこの範囲で羽化していた(Fig.6).羽化時の照度は大部分が5,000lux以下の明るさの時であった(Fig.7).また,羽化時の湿度は60-92%までとばらつきが大きく,羽化と湿度との関係は見られなかった(Fig.8).コシアカスカシバの羽化場所は食草の木の幹の北と北西の部分に多く,また幹の150cm以下の所にあった.これらのデータは,成虫の羽化は気温が上昇しはじめて23℃頃が刺激になって,羽化が始まることを伺わせる.